なんでもQ&A お答えします 1975年3月号
月刊ボディビルディング1975年3月号
掲載日:2018.04.19
農繁期のトレーニング法は?
Q ボディビル歴は4カ月です。家業が農業ですので,仕事の性質上,1年を通じて同じ調子でトレーニングを続けることはどうしてもできません。
いまは農閑期なので,からだの調子もよく,トレーニングも十分に行えます。しかし,農繁期になると体力が激しく消耗し,食欲も減退してしまうたちなので,トレーニングも思うようにできなくなるのではないかと気づかっています。もしも農繁期になってトレーニングができなくなるようなことになれば,せっかく農閑期の間に得たトレーニングの効果も,農繁期の間に失われてしまうと考えられるので,それを思うとゆううつでなりません。
そこでおたずねしますが,農閑期にの間に得た効果を維持するには,からだにムチ打つようにしても,農繁期において,現在のスケジュールを行うようにする必要があるのでしようか。
現在のトレーニング・スケジュールはつぎのとおりです。
いまは農閑期なので,からだの調子もよく,トレーニングも十分に行えます。しかし,農繁期になると体力が激しく消耗し,食欲も減退してしまうたちなので,トレーニングも思うようにできなくなるのではないかと気づかっています。もしも農繁期になってトレーニングができなくなるようなことになれば,せっかく農閑期の間に得たトレーニングの効果も,農繁期の間に失われてしまうと考えられるので,それを思うとゆううつでなりません。
そこでおたずねしますが,農閑期にの間に得た効果を維持するには,からだにムチ打つようにしても,農繁期において,現在のスケジュールを行うようにする必要があるのでしようか。
現在のトレーニング・スケジュールはつぎのとおりです。
以上を隔日的に週3日行なっています。(福島県・原博幸 22歲)
A ボディビルの原則として,からだにムチ打つようなトレーニングは誤りといえます。
長期の修練を積んだ人が体力的に充実しているときに,多少の肉体的の苦痛をともなうようなトレーニングをしても,強いて誤りとはいえませんが,あなたのように修練期間の短い者が,しかも農作業で肉体的に過労な状態のときに無理なトレーニングをすることは絶対に慎まなければなりません。
仕事によって体力が著しく消耗し,食欲が減退してしまうという状態は,もはや肉体的に過酷な状態にあるわけで,たとえトレーニングの内容が初歩的なものであるとしても,正常な時に行なっていたトレーニングを,そのまま継続できるような状態ではありません。そのような状態のときに,からだに無理を強いるようなトレーニングを行うのは,それまでに得た効果を維持できるどころか,むしろ,トレーニングを中止した場合よりも早く筋を細化し,体力を減退させることになります。また,そのようなトレーニングを続行するときは,逆に健康を損ねてしまうことにもなります。いかに気力をもってトレーニングを行なっても,からだの組織が消耗したままの状態では効果を得ることも維持することもできません。
からだの組織が消耗している状態とは,その質と機能が低下している状態であり,筋についていえば,太さと収縮カ(筋力)および柔軟性と弾性が減退している状態といえます。筋がそのような状態にあるときに,回復するいと間も与えずに,さらに筋を消耗させるようなトレーニングを無理に行えばその結果は明白で,かえって筋を細化し,筋力を減退させてしまうことになります。
トレーニングを行えば,当然のことながら体力が消耗します。だからといって,体力を消耗させるようにトレーニングを行えば効果が上がるというものではありません。
トレーニングの目的は,あくまでも体力を強化するためと,それを維持するための刺激をからだに与えることにあります。いいかえれば,トレーニングは,からだを消耗させるために行うのではなく,からだに刺激を与えるために行うものです。
そして,このようなトレーニングによってからだに与えられる刺激は,それが与えられた時のからだの状態によて有効度が異なってきます。つまり,からだにとって良い刺激になるか否かは,トレーニング時のからだの状態が良いか悪いかということによってかわってくるということです。トレーニング前にすでに体力が著しく消耗しているようでは,いかに運動の仕方が技術的に上手であっても,与えられる刺激は有効なものとはなりません。有効なものとするには,与えられる刺激を有効なものとなし得る身体的な態勢を整えてトレーニングにのぞむようにしなければなりません。
したがって,あなたの場合,からだにムチ打ってトレーニングを行うといった無謀なことは考えずに,いかにすれば,農繁期において,トレーニングを行うに足る体力を保持することができるかということについて考えることです。
体力が著しく消耗するということと食欲が減退するということは,密接なかかわりをもっています。体力の著しい消耗が,食欲を減退させる原因になることもあれば,その反対のこともあります。このことを考慮して対策を立てるようにしてください。一応,その対策について述べておきますから参考にしてください。
<食事について>
○食欲がないときは,少量でも栄養価の高いものを食べるようにする。また,食事の回数を増やすことによって,努めてからだが必要とする栄養を摂るようにする。
○食欲がないと,得てして,水分の多いもので胃を満たそうとしがちになるが,食事の際(または前後)にはできるだけひかえるようにする。必要以上に水分をとると,胃の消化力が低下し,それが悪循環となって一層食欲を減退させることにもなる。
○食事前1時間半くらいは,間食を多量にとらないようにする。とりすぎると食事の際に食欲が減退してしまう。間食が必要とされるときは,食事までの時間を考慮して,食事にさしさわりのない程度に食べる。
○上記のことと矛盾するようであるが空腹も度が過ぎると食欲がなくなるので,ときには軽い間食をとる必要もある。
<体カの消耗についての対策>
体力的な面での手だてとしては,疲労を翌日まで持ち越さないために,体力をできるだけ早く回復させる何らかの処置が必要である。
○労働や運動によってからだが緊張しているようであれば,軽い体操を行うなり,入浴するなりしてからだをほぐし,就寝前に,身心共にくつろいだ時間を持つようにする。
○睡眠および休息は,当然のことながら,許される範囲でできるだけ十分にとるようにする。それも,解放された気分でとるように心がける。
○仕事のときはやむを得ないが,それ以外のことでは,体力がすり減らされると感じるような行為は慎しむ。
<トレーニング上の注意>
○農繁期になっても,体力的な低下を感じなければ,現在のスケジュールを続行してもよい。
○ただし,現在のスケジュールを継続することに少しでも体力的な負担を感じたなら,すみやかにトレーニング量および強度を軽減する。
○トレーニング量および強度は,あくまでもからだが許容できる範囲で行うようにする。つまり,からだの状態に合わせてセット数,使用重量,運動種目などを減らすようにする。そして,トレーニングの週間頻度を2度にしたり,実施種目を2つに分けて2つのコースとして,各々,週に2日ずつ行うようにする。
<スケジュール例>
Aコース(月・木)
ベンチ・プレス
スタンディング・プレス
カール
Bコース(火・金)
シット・アップ
スクワット
ベント・オーバー・ローイング
○トレーニングを続行するにつれ,使用重量が日増しに重く感じるようになったときは,すみやかにトレーニングを中止し,疲労をとるための休養期間を置くようにする。
○以上述べたことがらは,体力について,多少なりともトレーニングを行なってもさしつかえのない場合についていえることであり,その点を誤解しないこと。いかように対策を溝じても,農繁期においてトレーニングを行うに足る体力を保持することができなければ,そのときは,いさぎよくトレーニングを中断すべきで寸。(担当・竹内威)
長期の修練を積んだ人が体力的に充実しているときに,多少の肉体的の苦痛をともなうようなトレーニングをしても,強いて誤りとはいえませんが,あなたのように修練期間の短い者が,しかも農作業で肉体的に過労な状態のときに無理なトレーニングをすることは絶対に慎まなければなりません。
仕事によって体力が著しく消耗し,食欲が減退してしまうという状態は,もはや肉体的に過酷な状態にあるわけで,たとえトレーニングの内容が初歩的なものであるとしても,正常な時に行なっていたトレーニングを,そのまま継続できるような状態ではありません。そのような状態のときに,からだに無理を強いるようなトレーニングを行うのは,それまでに得た効果を維持できるどころか,むしろ,トレーニングを中止した場合よりも早く筋を細化し,体力を減退させることになります。また,そのようなトレーニングを続行するときは,逆に健康を損ねてしまうことにもなります。いかに気力をもってトレーニングを行なっても,からだの組織が消耗したままの状態では効果を得ることも維持することもできません。
からだの組織が消耗している状態とは,その質と機能が低下している状態であり,筋についていえば,太さと収縮カ(筋力)および柔軟性と弾性が減退している状態といえます。筋がそのような状態にあるときに,回復するいと間も与えずに,さらに筋を消耗させるようなトレーニングを無理に行えばその結果は明白で,かえって筋を細化し,筋力を減退させてしまうことになります。
トレーニングを行えば,当然のことながら体力が消耗します。だからといって,体力を消耗させるようにトレーニングを行えば効果が上がるというものではありません。
トレーニングの目的は,あくまでも体力を強化するためと,それを維持するための刺激をからだに与えることにあります。いいかえれば,トレーニングは,からだを消耗させるために行うのではなく,からだに刺激を与えるために行うものです。
そして,このようなトレーニングによってからだに与えられる刺激は,それが与えられた時のからだの状態によて有効度が異なってきます。つまり,からだにとって良い刺激になるか否かは,トレーニング時のからだの状態が良いか悪いかということによってかわってくるということです。トレーニング前にすでに体力が著しく消耗しているようでは,いかに運動の仕方が技術的に上手であっても,与えられる刺激は有効なものとはなりません。有効なものとするには,与えられる刺激を有効なものとなし得る身体的な態勢を整えてトレーニングにのぞむようにしなければなりません。
したがって,あなたの場合,からだにムチ打ってトレーニングを行うといった無謀なことは考えずに,いかにすれば,農繁期において,トレーニングを行うに足る体力を保持することができるかということについて考えることです。
体力が著しく消耗するということと食欲が減退するということは,密接なかかわりをもっています。体力の著しい消耗が,食欲を減退させる原因になることもあれば,その反対のこともあります。このことを考慮して対策を立てるようにしてください。一応,その対策について述べておきますから参考にしてください。
<食事について>
○食欲がないときは,少量でも栄養価の高いものを食べるようにする。また,食事の回数を増やすことによって,努めてからだが必要とする栄養を摂るようにする。
○食欲がないと,得てして,水分の多いもので胃を満たそうとしがちになるが,食事の際(または前後)にはできるだけひかえるようにする。必要以上に水分をとると,胃の消化力が低下し,それが悪循環となって一層食欲を減退させることにもなる。
○食事前1時間半くらいは,間食を多量にとらないようにする。とりすぎると食事の際に食欲が減退してしまう。間食が必要とされるときは,食事までの時間を考慮して,食事にさしさわりのない程度に食べる。
○上記のことと矛盾するようであるが空腹も度が過ぎると食欲がなくなるので,ときには軽い間食をとる必要もある。
<体カの消耗についての対策>
体力的な面での手だてとしては,疲労を翌日まで持ち越さないために,体力をできるだけ早く回復させる何らかの処置が必要である。
○労働や運動によってからだが緊張しているようであれば,軽い体操を行うなり,入浴するなりしてからだをほぐし,就寝前に,身心共にくつろいだ時間を持つようにする。
○睡眠および休息は,当然のことながら,許される範囲でできるだけ十分にとるようにする。それも,解放された気分でとるように心がける。
○仕事のときはやむを得ないが,それ以外のことでは,体力がすり減らされると感じるような行為は慎しむ。
<トレーニング上の注意>
○農繁期になっても,体力的な低下を感じなければ,現在のスケジュールを続行してもよい。
○ただし,現在のスケジュールを継続することに少しでも体力的な負担を感じたなら,すみやかにトレーニング量および強度を軽減する。
○トレーニング量および強度は,あくまでもからだが許容できる範囲で行うようにする。つまり,からだの状態に合わせてセット数,使用重量,運動種目などを減らすようにする。そして,トレーニングの週間頻度を2度にしたり,実施種目を2つに分けて2つのコースとして,各々,週に2日ずつ行うようにする。
<スケジュール例>
Aコース(月・木)
ベンチ・プレス
スタンディング・プレス
カール
Bコース(火・金)
シット・アップ
スクワット
ベント・オーバー・ローイング
○トレーニングを続行するにつれ,使用重量が日増しに重く感じるようになったときは,すみやかにトレーニングを中止し,疲労をとるための休養期間を置くようにする。
○以上述べたことがらは,体力について,多少なりともトレーニングを行なってもさしつかえのない場合についていえることであり,その点を誤解しないこと。いかように対策を溝じても,農繁期においてトレーニングを行うに足る体力を保持することができなければ,そのときは,いさぎよくトレーニングを中断すべきで寸。(担当・竹内威)
他の部分に比べて胸囲が増えないが
Q 4カ月前にバーベル(35㌔)とフラット・ベンチを購入し自宅でトレーニングを始めました。
トレーニング法は,専門書を参考にしたものであり,開始時以来,同じトレーニング・コースで行なっています。過日,体位を測定した結果は,自分なりにほぼ満足のいくものでした。しかし,体位の増え方について全く不満がないということではなく,少なからず気になることがあります。というのは胸囲の増加が他の部分の増加に比べて少ないのではないかということです。まず,その点についてご意見をいただきたいと思います。そして,少ないようであれば,その原因についてご指摘ください。
ついでに,ビルダーの胸囲の測り方についてお教えください。
トレーニング法は,専門書を参考にしたものであり,開始時以来,同じトレーニング・コースで行なっています。過日,体位を測定した結果は,自分なりにほぼ満足のいくものでした。しかし,体位の増え方について全く不満がないということではなく,少なからず気になることがあります。というのは胸囲の増加が他の部分の増加に比べて少ないのではないかということです。まず,その点についてご意見をいただきたいと思います。そして,少ないようであれば,その原因についてご指摘ください。
ついでに,ビルダーの胸囲の測り方についてお教えください。
以上のとおりです。終了後もさほど疲労を感じません。
(奈良県・多田保雄,工員,23歲)
A 質問の趣意にそい。まず,胸囲の増え方が他の部位のサイズと比べて妥当であるかどうかということについてお答えします。
トレーニングによる効果は,ことに初期のトレーニングにおける効果をサイズの増加の面からいえば,通常,胸囲の増加が他の部位のサイズの増加よりも顕著であるといえます。ただし,このことは傾向としていえるのであり効果の現われ方にも個人差があることを考えれば,胸囲の増加の方が少ないということもあり得ることです。
しかし,あなたの場合は,上述のことを考慮しても,胸囲の増加が他の部位に比べて少ないとお答えすることが妥当かと思われます。効果の成否について,早急に結論を下すことはもとより慎まなければなりませんが,あなたの場合には,それなりの原因がトレーニングの内容にあると考えられるからです。
その原因として第1に考えられることは,胸部の発達を促すためのベンチプレスにおける負荷が不十分なのではないかということです。あなたの体位および,他の運動種目の使用重量から推測すると,ベンチ・プレスの使用重量が35㌔というのは軽るすぎる感じがします。
つまり,他の部位の発達が,初期のトレーニングの効果としては割合い順調に得られたのに比して,胸部の発達があまり得られなかったということは他の部位のための運動種目の使用重量が適切であったと考えられるのに反して,ベンチ・プレスの使用重量のみが軽すぎたのではないか,ということです。あなたの所有されているバーベルの総重量が35㌔であることからして,あるいは不足を承知の上で,現在も行なっているのかしれませんが,使用重量が不足であるという推測にはおそらく誤りはないと思われます。したがって,胸部を発達させるには,なにはともあれ,まず,所有重量の不足を解消することです。
もし,ただちに,所有重量を増やすことが困難でしたら,重量が補充できるまでの暫定的な方法として,ベンチプレスの反復を,正確な動作で行える範囲で無制限に増やしていくように行うとよいでしよう。(註:セット数は筋を著しく消耗させないために少なくする必要があります)
このような方法によれば,使用重量の不足をいくぶんなりとも補うことは可能ですが,反復回数があまりにも多回数になると,その効果が,筋の肥大よりも持久力の強化に重点が移ってしまうので,筋の肥大のためには,上述したようにあくまでも暫定的な方法であるといえます。筋の肥大を多分に期待できるのは,通常,20回くらいまでと考えられています。
胸囲の増加がほとんど得られなかった原因として,第2に考えられることは,もちろん推察ではありますが,広背筋の発達があまり見られなかったのではないかということです。
胸囲が増加する主な要因としては,胸廓が大きくなることと,大胸筋,および広背筋の発達があげられます。そのような理由から,胸囲を増やすには広背筋の運動も決してなおざりにはできません。
あなたが行なっている運動種目の中では,ベント・オーバー・ローイングが広背筋のための運動種目です。したがって,もしも,推察どおり広背筋の発達があまり見られなかったとすればその原因はベント・オーバー・ローイングのやり方にあると考えられます。
がいして,広背筋のための運動種目は,ただ無造作に行なっても効果が得にくいといえ,広背筋を的確に刺激するには動作上のコツがいります。初級者がこの運動を行う際によく見受ける動作上の誤りは,引きあげ動作のときに,上体が起きすぎてしまうことと,バーベルを引きつける位置が外(腹部の方ではなく胸部の方)すぎることです。引きあげ動作のときに上体が起きすぎたり,引きつける位置が外すぎると,広背筋にはあまり効かないで,背中の上部のあたりに効いてしまうようになります。
参考までにスタンダードなべント・オーバー・ローイングのやり方について説明しておきますので,一応検討してみてください。
<かまえ>左右のグリップの間隔を肩幅より1こぶしくらい広くして,オーバー・グリップの握り方でバーベルを持ち,上体を床面と平行ぐらいになるまで前倒する。
<動作>上体を起こさないようにしてシャフトがみぞおちのやや下あたりにくるようにバーベルを引きあげる。
<注意>グリップに力を入れずにバーベルを引っかけるように持ち,できるだけ腕の力を抜いて,肘でバーベルを引きあげるように行う。また,シャフトを腹部に引きつけるために,手首を手前へ巻き込まないようにする。十分にバーベルを引きあげたという自覚が持てれば,手首を巻き込んでまでシャフトを強いて腹部に付ける必要はない。
肘がじゃまになって,シャフトを腹部の方へ引きあげにくい場合は,両足の間隔を広く取り,つま先を開いてかまえるか,躍の下に木片またはプレートを敷いて行うようにするとよい。
<呼吸>バーベルを引きあげながら息を吸い,おろしながら吐く。
<胸囲の測り方>
ビルダーの胸囲の測定法は一般的な身体検査における方法とは異なります。一般的な方法では,肺の中の空気の容量を普通の状態にして,乳の位置で水平に測りますが,ビルダーの場合は,広背筋の発達を重視して,ワキの下いっばいの位置で測ります。それも,普通時(ノーマル)と拡張時(エキスパンド)の2とおりの測り方があり,通常,雑誌などに記載されているビルダーのサイズは拡張時のものです。
①普通時==大胸筋および広背筋がパンプ・アップ(トレーニングなどにおいて使われた筋が一時的に膨張すること)をしていない状態で,両腕を垂直にさげ,肺の中の空気の容量を普通の状態にし,広背筋を拡張することなく測ります。
②拡張時==大胸筋および広背筋をパンプ・アップさせ,できるだけ息を多く吸い込み,胸郭と広背筋を拡張させて測ります。
いずれの方法も,ワキの下いっばいの位置を水平に測ります。測定する際にはメジャーが背の部分で傾斜したりたるんだりしないように十分留意してください。自分で測るときは,鏡に写し横から見るようにして測るとよいでしよう。(担当・竹内威)
トレーニングによる効果は,ことに初期のトレーニングにおける効果をサイズの増加の面からいえば,通常,胸囲の増加が他の部位のサイズの増加よりも顕著であるといえます。ただし,このことは傾向としていえるのであり効果の現われ方にも個人差があることを考えれば,胸囲の増加の方が少ないということもあり得ることです。
しかし,あなたの場合は,上述のことを考慮しても,胸囲の増加が他の部位に比べて少ないとお答えすることが妥当かと思われます。効果の成否について,早急に結論を下すことはもとより慎まなければなりませんが,あなたの場合には,それなりの原因がトレーニングの内容にあると考えられるからです。
その原因として第1に考えられることは,胸部の発達を促すためのベンチプレスにおける負荷が不十分なのではないかということです。あなたの体位および,他の運動種目の使用重量から推測すると,ベンチ・プレスの使用重量が35㌔というのは軽るすぎる感じがします。
つまり,他の部位の発達が,初期のトレーニングの効果としては割合い順調に得られたのに比して,胸部の発達があまり得られなかったということは他の部位のための運動種目の使用重量が適切であったと考えられるのに反して,ベンチ・プレスの使用重量のみが軽すぎたのではないか,ということです。あなたの所有されているバーベルの総重量が35㌔であることからして,あるいは不足を承知の上で,現在も行なっているのかしれませんが,使用重量が不足であるという推測にはおそらく誤りはないと思われます。したがって,胸部を発達させるには,なにはともあれ,まず,所有重量の不足を解消することです。
もし,ただちに,所有重量を増やすことが困難でしたら,重量が補充できるまでの暫定的な方法として,ベンチプレスの反復を,正確な動作で行える範囲で無制限に増やしていくように行うとよいでしよう。(註:セット数は筋を著しく消耗させないために少なくする必要があります)
このような方法によれば,使用重量の不足をいくぶんなりとも補うことは可能ですが,反復回数があまりにも多回数になると,その効果が,筋の肥大よりも持久力の強化に重点が移ってしまうので,筋の肥大のためには,上述したようにあくまでも暫定的な方法であるといえます。筋の肥大を多分に期待できるのは,通常,20回くらいまでと考えられています。
胸囲の増加がほとんど得られなかった原因として,第2に考えられることは,もちろん推察ではありますが,広背筋の発達があまり見られなかったのではないかということです。
胸囲が増加する主な要因としては,胸廓が大きくなることと,大胸筋,および広背筋の発達があげられます。そのような理由から,胸囲を増やすには広背筋の運動も決してなおざりにはできません。
あなたが行なっている運動種目の中では,ベント・オーバー・ローイングが広背筋のための運動種目です。したがって,もしも,推察どおり広背筋の発達があまり見られなかったとすればその原因はベント・オーバー・ローイングのやり方にあると考えられます。
がいして,広背筋のための運動種目は,ただ無造作に行なっても効果が得にくいといえ,広背筋を的確に刺激するには動作上のコツがいります。初級者がこの運動を行う際によく見受ける動作上の誤りは,引きあげ動作のときに,上体が起きすぎてしまうことと,バーベルを引きつける位置が外(腹部の方ではなく胸部の方)すぎることです。引きあげ動作のときに上体が起きすぎたり,引きつける位置が外すぎると,広背筋にはあまり効かないで,背中の上部のあたりに効いてしまうようになります。
参考までにスタンダードなべント・オーバー・ローイングのやり方について説明しておきますので,一応検討してみてください。
<かまえ>左右のグリップの間隔を肩幅より1こぶしくらい広くして,オーバー・グリップの握り方でバーベルを持ち,上体を床面と平行ぐらいになるまで前倒する。
<動作>上体を起こさないようにしてシャフトがみぞおちのやや下あたりにくるようにバーベルを引きあげる。
<注意>グリップに力を入れずにバーベルを引っかけるように持ち,できるだけ腕の力を抜いて,肘でバーベルを引きあげるように行う。また,シャフトを腹部に引きつけるために,手首を手前へ巻き込まないようにする。十分にバーベルを引きあげたという自覚が持てれば,手首を巻き込んでまでシャフトを強いて腹部に付ける必要はない。
肘がじゃまになって,シャフトを腹部の方へ引きあげにくい場合は,両足の間隔を広く取り,つま先を開いてかまえるか,躍の下に木片またはプレートを敷いて行うようにするとよい。
<呼吸>バーベルを引きあげながら息を吸い,おろしながら吐く。
<胸囲の測り方>
ビルダーの胸囲の測定法は一般的な身体検査における方法とは異なります。一般的な方法では,肺の中の空気の容量を普通の状態にして,乳の位置で水平に測りますが,ビルダーの場合は,広背筋の発達を重視して,ワキの下いっばいの位置で測ります。それも,普通時(ノーマル)と拡張時(エキスパンド)の2とおりの測り方があり,通常,雑誌などに記載されているビルダーのサイズは拡張時のものです。
①普通時==大胸筋および広背筋がパンプ・アップ(トレーニングなどにおいて使われた筋が一時的に膨張すること)をしていない状態で,両腕を垂直にさげ,肺の中の空気の容量を普通の状態にし,広背筋を拡張することなく測ります。
②拡張時==大胸筋および広背筋をパンプ・アップさせ,できるだけ息を多く吸い込み,胸郭と広背筋を拡張させて測ります。
いずれの方法も,ワキの下いっばいの位置を水平に測ります。測定する際にはメジャーが背の部分で傾斜したりたるんだりしないように十分留意してください。自分で測るときは,鏡に写し横から見るようにして測るとよいでしよう。(担当・竹内威)
アレルギーの原因と予防法
Q ふだんはいたって健康で,1年間に2~3回カゼをひく以外は病気をしたことはありません。ただ,アレルギー体質で,生魚やよく火の通っていない肉などを食べると全身にじんましんができ,それが1週間から10日もなおりません。またカゼ薬によってもじんましんが出ることがあります。じんましんにならない良い方法はないものでしょうか。
(鎌倉市・細田庄一)
(鎌倉市・細田庄一)
A アレルギーの疾患を大別すると,食物によるアレルギーと薬物によるアレルギーがあります。食物アレルギーの主成分であるアレルゲンは無害食物であっても,それを食べた人に病巣があると,気管支喘息,下痢,腹痛,発熱,じんましんなどを起こします。食物アレルギーも肉類・牛乳・さば・まぐり・かつお・あじ・かに・えび・かき等,その内容によって異なってきます。
食物アレルギーの症状を列記すると
①胃腸炎
アレルゲンとなる食物を食べることによって,健康人であっても嘔吐や下痢,腹鳴を起こします。
②じんましん
とくに海産物などを食べると起こり,体の一部,または全身に激しいかゆみを発生します。
③湿疹(類似疾患が多いので注意)
④気管支喘息
気管支喘息患者がアレルゲンを食べると喘息を発作します。とくに,季節の変わり時,台風や嵐の前夜などに多く見られます。
⑤頭痛
初期症状としては,不安から疲労全身の倦怠感,あくび,目まい。耳鳴りなどをともないます。
これらの疾患の中で,患者自身がアレルギー徴候を予知する人がありますが,アレルゲンとなると食物を確実に診断,予防することが大切です。
食物アレルギーのほかに薬物アレルギーがありますが,病気の治療のために投与した薬物の副作用・併発行為として頭痛,じんましん,目まい,嘔吐などが起こります。薬物は病因が明確な患者に対して与えられなければなりませんが,日本では薬店,薬局で直接購入することができますので,アレルゲン保持者が知らないで服用した場合アレルギー症状を呈することがよくありますので注意してください。
アレルギー症状を呈したときの簡単な治療法としては
①食べたものをなるべく早く体外に出す。そのためには,ひましゆ等の下剤を使用するとか,水分を多くとってトイレに行く回数をふやす。
②保温を避ける。平熱より1~2度程度低く保つのがよい。もちろん熱い風呂は避ける。冷水で薬用石けんを使うようにする。
③24時間くらいは食事をひかえ,その間はせいぜい酵素の入った乳酸菌飲料等だけにする。
④抗ヒスタミン剤の軟膏を塗布する。
⑤油っこいものを避ける。
簡単にできる治療法としては以上のようなものですが,何よりも,自分でこれを食べるとじんましんになると予知できるものは食べないことです。お酒を飲むとじんましんになる人,あるいは生魚。よく火のとおっていない肉類,甲殻類等を食べるとアレルギーになる人が多いようですが,そのようなものはなるべく避けて,自分の体に合った食べ物から栄養源を補給するようにしてください。(担当・能丸康司)
〔解答は'59ミスター日本,NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・能丸康司先生〕
食物アレルギーの症状を列記すると
①胃腸炎
アレルゲンとなる食物を食べることによって,健康人であっても嘔吐や下痢,腹鳴を起こします。
②じんましん
とくに海産物などを食べると起こり,体の一部,または全身に激しいかゆみを発生します。
③湿疹(類似疾患が多いので注意)
④気管支喘息
気管支喘息患者がアレルゲンを食べると喘息を発作します。とくに,季節の変わり時,台風や嵐の前夜などに多く見られます。
⑤頭痛
初期症状としては,不安から疲労全身の倦怠感,あくび,目まい。耳鳴りなどをともないます。
これらの疾患の中で,患者自身がアレルギー徴候を予知する人がありますが,アレルゲンとなると食物を確実に診断,予防することが大切です。
食物アレルギーのほかに薬物アレルギーがありますが,病気の治療のために投与した薬物の副作用・併発行為として頭痛,じんましん,目まい,嘔吐などが起こります。薬物は病因が明確な患者に対して与えられなければなりませんが,日本では薬店,薬局で直接購入することができますので,アレルゲン保持者が知らないで服用した場合アレルギー症状を呈することがよくありますので注意してください。
アレルギー症状を呈したときの簡単な治療法としては
①食べたものをなるべく早く体外に出す。そのためには,ひましゆ等の下剤を使用するとか,水分を多くとってトイレに行く回数をふやす。
②保温を避ける。平熱より1~2度程度低く保つのがよい。もちろん熱い風呂は避ける。冷水で薬用石けんを使うようにする。
③24時間くらいは食事をひかえ,その間はせいぜい酵素の入った乳酸菌飲料等だけにする。
④抗ヒスタミン剤の軟膏を塗布する。
⑤油っこいものを避ける。
簡単にできる治療法としては以上のようなものですが,何よりも,自分でこれを食べるとじんましんになると予知できるものは食べないことです。お酒を飲むとじんましんになる人,あるいは生魚。よく火のとおっていない肉類,甲殻類等を食べるとアレルギーになる人が多いようですが,そのようなものはなるべく避けて,自分の体に合った食べ物から栄養源を補給するようにしてください。(担当・能丸康司)
〔解答は'59ミスター日本,NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・能丸康司先生〕
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