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なんでも Q&A お答えします 1975年4月号

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月刊ボディビルディング1975年4月号
掲載日:2018.03.24

頸の発達に有効な運動法

Q 男らしい肉体をつくるためには,頸の発達も不可欠の条件だと思います。しかし,いままで貴誌の中で紹介された数々の有名ビルダーのトレーニング法をみても,いっこうに頸に関係ある運動は見当りません。にもかかわらず,彼らの頸は実にすばらしいものです。そこで,1人でもできる比較的効果のある運動があったら教えてください。へッド・ストラップは所有しています。(名古屋市 S・T)
A 運動を紹介する前に,まず頸部における主な筋について説明します。頸部における主な筋は,胸鎖乳突筋,頭板状筋,および頭半棘筋ですが,僧帽筋の上部も後頭隆起から起こっています。
 胸鎖乳突筋は,首を横へひねったときに,耳の後ろから鎖骨のあたりに隆起して見える筋で,この筋の発達は,抵抗を頭の前面(額),または側面から与えることによって可能です。
 頭板状筋は,主に頸の横の部分から後部にある筋で,その発達は,頭の後面および側面から抵抗を与えることによって可能です。
 頭半棘筋は,頸の後部にあって,頭を伸展(前へ倒した頭を持ちあげ,または後へ反らす)させる作用を有する筋で,頭の後面から抵抗を与えることによって発達を促すことができます。


<頸の運動種目>
〇レスラー・ブリッジ
<かまえ>マットに仰臥し,両膝を立てる。両足を肩幅ぐらいに開いて殿部の近くに位置する。
<動作>頭と両足で体重を支えながら体を上方へ反らしあげる。つまり,頭と両足を支点にして体で橋(ブリッジ)をつくる。
 ブリッジの状態になったならば,両脚で調子をとりながら,後頭部から額の方へ体重が移動するように頸を反らしていく。頸の力が弱いうちは両手をマット(または床)に付いて補助しながら行なってもよい。
 動作上の注意としては,体重の移動をできるだけ頸の力によって行うようにする。
<効果>頸全体のバルクを増し,強靭にする。後頭部で体重を支える状態では頸の後ろの部分に効き,額で支える状態では頸の前と横の部分に効く。


〇フロント・ブリッジ
<かまえ>うつ伏せの状態で,頭と両足を支点にしてブリッジをつくる。
<動作>頭部における支点が額から後頭部,後頭部から額へと移動するように体重をかけて動作を行う。
<効果>頸全体のバルクを増し,強靭にする。額で体重を支える状態では頸の前と横の部分,後頭部で支える状態では頸の後ろと横の部分にかけて強く効く。

〇スーパイン・ネック・レイズ
<かまえ>頸から上をベンチの端から出して仰臥し,額に重量(ダンベルまたはプレート)をのせて両手で落ちないようにおさえる。
<動作>頸の力を使って,頭だけの上下運動を行う。額を傷つけないようにタオルを当てて行うとよい。
<効果>頸の前の部分と横の部分に有劾。

〇フロント・ネック・レイズ・ウィズ
・ヘッド・ストラップ
<かまえ>へッド・ストラップの前側に重量を吊るし,中腰になり,上体を前傾させる。中腰の姿勢をとるかわりにベンチに腰をかけてもよい。
<動作>頸の力を使って頭の上下運動を行う。
<効果>頸の後ろの部分に特に有効。横の部分にも効く。
 この運動は,上体の前傾角度によって負荷の強くかかるポイントがいくぶん異なるので,そのことを考慮して行うようにするとよい。

〇サイド・ライイング・ネック・レイズ
<かまえ>肩から上をベンチの端から出して横向きに寝る。このとき,下になった方の手を床に付いて体を支えるようにする。この姿勢で側頭部に重量をのせ,空いている方の手で落ちないように押える。
<動作>頸の側面を上へ向けた状態で頸の力を使って頭の上下運動を行う。
1セットごとに向きをかえて行う。
<効果>頸の横の部分にとくに有効。
[註]他の運動で,とくに頸の横の部分に有効なものとしては,ブリッジを前後運動だけに止めずに,頸を左右にまげないように行う方法がある。


<頸の運動を行う際の注意事頃>
①頸の運動を行う際は,決して無理な抵抗をかけないようにする。無理をすると,頸の筋を痛めるだけではなく,ときには頸椎がずれることにもなりかねない。
②運動前に必ず頸部のウォーム・アップを行う。
③急激に強い抵抗をかけないようにする。重量を使用する場合は,徐々に負荷を増していく。ブリッジの場合は,両手で体重を支え,ならしながら徐々に深く屈伸するようにする。
④運動中は,終始気をぬかずに慎重な動作で行う。とくに初心者のうちはこの点に充分注意されたい。
(担当・竹内威)

エンド・オブ・バー・ローイングの正しいやり方は?

Q トレーニングを始めて9カ月になります。広背筋の発達を促すために,最近,エンド・オブ・バー・ローイングをはじめました。ところが,目的の広背筋には効かないで,僧帽筋にばかり効いてしまいます。また,上腕二頭筋が疲れて仕方がありません。このようなことになるのは,運動法に誤りがあるからでしょうか。(鳥取県・工藤保)
A 運動法に誤りがあると推察されます。僧帽筋に効いてしまうというのは,おそらく,運動の際に上体が起きすぎていることに原因があると思われます。エンド・オブ・バー・ローイングは,その運動の際に上体が起きすぎていると,重量を上体に沿って膝のあたりから胸の方向へ引き上げるようになるので,広背筋には効かずに僧帽筋に効いてしまうようになります。
 したがって,広背筋に効かすためには,上体を引き上げたときのバーと平行になるぐらいに前に倒し,重量を腕力に頼らず肘で引くような感じで,腹部または胸の下部へ引きつけるように行います。バーを引きつける動作を腕力に頼って行うと,あなたがいわれるように上腕二頭筋が疲れてしまいます。バーを握るのにも,できるだけグリップに力を入れないようにして,指で軽く引っかけるようにし,引き上げ動作は,肘から先の力をできるだけ抜くようにして行うのがポイントといえます。
(担当・竹内威)

ふくらはぎを太くするためには

Q ふくらはぎを太くするためにこれまでカーフ・レイズを行なってきましたが,ほとんど効果がみられませんでした。それで現在は,カーフ・レイズをやめてジャンプを行なっています。
 腓腹筋を完成させるためには,ジャンプは欠かすことのできない運動種目だと聞いていましたが,最も効果的な反復回数とセット数などはどのようにすればよいのでしょうか。
 僕がいま行なっているジャンプ運動は,器具を何も用いないで,上へ思いきり跳びあがるジャンプです。そのようなジャンプを,少し前までは50回×5セット行なっていましたが,現在は80回×3セット行なっています。このようなやり方でよいでしようか。
(埼玉県 金子公一・14才)
A 質問にお答えする前に,カーフ・レイズによる効果が得られなかったことについて考えてみたいと思います。
 カーフ・レイズの運動としての効果を,腓腹筋を完成させるという点に関していえば,不足するところがないとはいえません。だからといって,カーフ・レイズが下腿三頭筋の発達を促すのに有効ではないということはありません。下腿三頭筋を発達させるには,やはり有効な運動種目であり,とくに下腿部のサイズを増やすのに有効であるといえます。
 このように,カーフ・レイズが運動としての効果の面での特長を有しているにもかかわらず,君が,この運動による効果をまったく得られなかったというのは,それこそ,まったくおかしなことであるといわざるを得ません。
 文面から推察すると,君は,効果の得られなかった原因を単的にカーフ・レイズの有効性に結びつけて考え,カーフ・レイズのもたらす効果を軽く見ているのではないかと思われます。もしもその通りであれば,それは誤りです。カーフ・レイズはカーフ・レイズなりに下腿三頭筋に対して有効です。それを,効果を得られなかったからといって,他にトレーニングの方法に原因があるか否かをたださずに,運動種目本来の効果を疑問視してやめてしまうのは早計です。
 このようなことは全ての運動種目についていえることで,効果を得られなかったときは,その運動をやめてしまう前に,トレーニングの方法と運動のやり方に誤りがないかを検討してみる必要があります。誤りがあるか否かをただしもしないで,運動種目をかえてしまうような態度では,他の運動種目を行なっても,トレーニングの方法に対する正しい判断と運動のやり方に慎重さを欠くことになるので,十分な効果を期待することは難しいといえます。
 したがって君も,一応はカーフ・レイズのトレーニングの方法と,運動のやり方について誤りがなかったか否かをただしてみる必要があるのではないかと思います。検討の結果,誤りがなければ問題はありませんが,次に述べることがらを参考にして考えてみてください。


<トレーニングの方法>
〇セット数と週間頻度
 実施者の体力と回復力に個人差があるのでどのようにすればよいかということはいちがいにはいえません。実施者自身が自分の体力と回復力を考慮して,自分に合ったセット数と週間頻度を収得するようにしなければなりません。
 ただし,そのように自分に合ったセット数と週間頻度を収得する過程において注意しなければならないことは,早急に結論を出そうとしないことです。結論を出すことを急ぎすぎると,いつしかトレーニングがオーバーになり,かえって適切なセット数と週間頻度を収得しにくくなります。初めは余裕のあるスケジュールを組んで行い,効果の有無,または成果と,体力的な余裕とをにらみ合わせて,徐々に適切なものにしていくようにしなければなりません。そして,効果の有無または成果を見るにしても,1週間や10日の短期間で結論を出すことをしないで,3週間から1カ月ぐらいの期間を置いて見るようにする必要があります。
 最初に行うスケジュールの目安として,初級者の場合なら,2~3セットを隔日的に週3日が適当と思われます。
 1セットの反復回数については下腿三頭筋のように日常生活で多く使われる筋は多回数を行うのがよいと考えられているので,1セット当り20~30回ぐらい行うのが適当と思われます。50回,100回の多回数を連続して行うことは,その効果が筋の肥大よりも持久力の養成に重点が移ってしまうので適切とはいえません。そのような多回数の反復が可能であるならば,負荷を重くして行うほうが効果的であると考えられます。

〇運動のやり方
 運動のやり方については,1月号のQ&Aに記述してありますが,それを補足する意味で次のことを述べることにします。
 クリーンやジャークのように総合的な力を強化するための運動は別として,個々の部位を部分的に強化し,発達させる運動は,発達または強化を意図するからだの部分に,的確に刺激を与えるように行うことが大切です。いわゆるコツを使って安易な動作で運動を行うのでは,たとえ反復回数と使用重量が増加できても十分な効果を得ることは難しいといえます。
 このような動作上の誤りによる効果の半減は,カーフ・レイズのみについてではなく,すべての運動種目に共通していえることです。コツを使い安易な方法で運動を行えば,かなり重い重量の反復も容易であり,また,力量以上の回数を反復することも可能です。しかし,そのような運動のやり方は,使用重量と反復回数による自己満足は得られても,実質的な筋の強化,または発達を促すためには不的確といえます。
 筋の強化または発達を期待して運動を行うのであれば,筋を的確に刺激することのできる動作で運動を行うようにしなければなりません。そして,反復回数と使用重量を増加するにしても,筋を的確に刺激することのできる動作をくずすことのない範囲で増やすようにしなければなりません。もともと筋力の向上と筋の肥大はほぼ比例するものであるからして,筋を的確に刺激できる動作に終始し,反復回数と使用重量を増加する際にもその態度をくずさないように行えば,必ず反復回数と使用重量の増加(筋力の向上)に筋の発達(肥大)がともなうものです。
 このことを無視して,コツを使い,安易な方法で運動を行うようでは,いたずらに体力を消耗させるだけで,十分な効果を得ることは困難です。トレーニングの効果は,たんに体力と筋力を消耗させるような方法では十分に得られないということを自覚することです。上手なトレーニングのやり方は,体力と筋力をいたずらに消耗させないように留意し,ていねいな動作で筋を的確に刺激するように行うことです。
 では,上述のことがらに関連してカーフ・レイズで最も多く見うけられる動作上の誤りについて述べることにします。
 カーフ・レイズでよく見かける動作上の誤りは,踵をあげるときに,下腹部と大腿部を前方へせり出し,下半身を湾曲させて行うことです。このような動作は,いわば,負荷に対してクッションの働きをしてしまうので,下腿三頭筋にかかる負荷が軽減されてしまいます。いいかえれば,コツを使って行う安易な方法といえるので,下腿三頭筋に十分な刺激を的確に与えることが難しくなります。
 下腿三頭筋に的確な刺激を与えるには,踵をあげるときに,下半身を湾曲させないように留意し,踵と肩の上下動がともなうように運動を行うようにしなければなりません。

 さて,ジャンプについての質問ですが,結論を述べる前に前述のことがらに関連した誤りがないかどうかをただしてみる必要があると思います。
 文面によると,君は現在,垂直ジャンプを1セット当り80回として3セット行なっているそうですが,80回という反復回数は,正確な動作では容易に行えるものではありません。これも推察ではありますが,運動の動作に誤りがあるものと思われます。
 文面には,ただ上へ思いきり高く跳びあがるとしか書いてありませんが,反復回数から判断して,おそらく膝の屈伸を強く使用したジャンプを行なっているものと考えられます。もし,そのような動作によるジャンプを行なっているものとすれば,80回という反復回数もさしておどろくにはあたりませんが,そのような運動のやり方は,下腿三頭筋の発達には効果的とはいえません。君の運動のやり方が,推察のとおりであれば直ちに改める必要があります。

〇下腿三頭筋に効果的な垂直ジャプのやり方
 下腿三頭筋,ことに腓腹筋の発達を促すための効果的な垂直ジャンプのやり方は,できるだけ膝の屈伸を使わないように行うことです(運動の要領は1月号のQ&Aに記載してありますので参考にしてください)。このような動作で行えば,下腿三頭筋を強度に使用することになり,それも運動の性質上,間断なく連続してジャンプを行わなければならなくなるので,筋に十分な刺激を与えることが可能になります。

〇反復回数とセット数
 ご質問の反復回数についてお答えしますが,やり方の項で述べた動作を忠実に守って行えば,80回という回数は容易に行えるものでないということが納得できると思います。常に正確なフォームを保って,1回1回,全力で跳びあがるのであれば,20~30回が妥当な回数であるといえます。したがって,1セットの回数は20~30回として行うのがよいと考えられます。
 そして,よしんば,筋力が強くなったとしても,回数の増加にさほどとらわれることはないと思います。筋力が強くなったら,それだけ高く跳びあがることを心がけて運動を行うか,重量を左右の手に持って行うようにすればよいでしょう。ただし,重量を使用する場合は,絶対に肩にかつがないようにしてください。肩にかついで行うと,着地の際に頸を痛めるおそれがあります。
 セット数は,君の年令的な体力から考えて2~3セットで十分でしよう。
 週間頻度については,翌日に疲労が残らなければ5日ぐらいは行なってもよいとは思いますが,隔日的に週3日行うのが無難です。トレーニングを頻繁に行なったからといって,必ずしも効果があがるとはいえません。トレーニング量の少い分には多少なりとも効果を得ることは可能ですが,やりすぎる場合は,まったく効果を得ることができなくなるおそれがありますから。そのことをよくわきまえて行うようにしてください。(担当・竹内威)

休養が第一薬物に副作用あり
――カゼの原因と予防法――

Q ボディビルを始めて3年になります。生まれつき病弱で,細身のからだでしたので,なんとか丈夫になりたいとトレーニングを始めたわけです。そのおかげで食欲も増進し,体重も3年前に比べて8kgほど増えました。ただ,いまだにカゼには弱く,季節の変わりめなどには必ずといっていいくらいカゼで寝こみます。効果的なカゼの予防法を教えてください。(文京区・佐藤,24才)
A 一般にカゼ,感冒は身体を急激にひやし,皮膚の感覚が寒いと感じたときに患りやすくとくに秋から冬,春から夏といった季節の移り変わりの時期に多い疾病です。
 外気温が下がっているとき(早朝,夜半など)などに,急に薄着のままで戸外に出たりすると,血液の流動が悪くなり,足や腰が冷え,鼻腔や咽喉頭に単純な貧血が起こって,ウイルスに対する抵抗力が衰えるために発作性症状として,クシャミ,せき,鼻水,のどの痛み,頭痛,だるさ,微熱といった症状を呈します。
 夏の暑い日に,冷房室から急に炎天下に出たり,冬期に暖房室から戸外に出たりするのもカゼの原因です。またトレーニングで汗をかいた直後に冷たいシャワーを浴びたり,汗でぬれた下着をそのまま身につけていたりするのもよくありません。せっかくのその日にやった練習の効果も,カゼによって逆にマイナスになってしまいます。
 また,やたら厚着をすることもよくありません。温度の変化に気をつけ,皮膚の保温に必要な最少限度の着衣をつけることが大切です。
 カゼの一般炎症にはだいたい次のようなものがあります。
①アデノウイルス炎
 喉の乾燥や目の充血などの症状があり,夏期に多く,プールで感染する
②急性扁桃炎
 特殊細菌により,高熱や喉の痛み,肩桃腺の腫れる症状を呈す。
③気管支炎炎
 せきが出て,くしゃみ,鼻水が止まらない。
④異常肺炎
 カゼの終末期に肺のX線に特殊像を見る。
⑤ポリオ不全
 高熱直後完治する。
⑥急性耳下腺炎(おたふくかぜ)
 幼児期に多い。流行性感染症以上のほかに,鼻炎や副鼻腔炎などのように気管や気管支に細菌が繁殖するとクシャミがでたりのどが痛んだりします。これはすでにカゼの初期症状です。保温に注意し,温い飲食と早く休息をとることが大切です。また,カゼには入浴が悪いとされていますが,その原因は,病原体のウィルスが内部の温度に敏感であるため,体温を一定にしていることが必要です。したがって,急に皮膚を温めたり冷やしたりする入浴は避けるべきです。
 日常,気温の高低に注意し,衣類や寝具の温度調節を敏感にしなければなりません。とくに,寝具は時々日光によって乾燥・滅菌をしてください。
 カゼに患った場合,なるべく外出を避け,マスクをつけ,牛乳・たまご・スープ・おかゆ・果物などの消化のよいものを食べて休養することが早期回復の早道です。ウィルスによる発熱の感冒症にはサルファ剤,抗生物質剤を服用することがあります。いずれにしても早くなおさないと併発症のおそれもあります。カゼくらいと油断することは禁物です。(担当・能丸康司)

慢性下痢の原因と予防法

Q ボディビルを始めて2年になります。以前から胃腸が弱く慢性下痢に悩まされてきました。それが原因してか,身長は172cmあるのに体重は54kgしかありません。ボディビルを開始する以前は52kgだったので,2年間で2kg増えたことになります。現在は健康管理程度にトレーニングしていますが,なんとか胃腸を丈夫にし慢性下痢を解消したいといつも思っていますが,何か良い方法はないものでしようか。(文京区・長野)
A 食物は口→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門という経路で排世されます。その間,栄養源は小腸で吸収されます。
 糞便には不良性未消化食物(植物性線維,殼物の皮,動物性筋線維,未消化の澱粉,脂肪,食道・胃・腸の消化内面の新陳代謝産物,細菌,寄生虫卵など)があり,その形状には,固形有形,泥状,水様,粘液,血漿便と様々です。
 ふつう1日に3回の食事を摂取することによって,1日1回の排世が好ましいものです。
 泥状以下の無形の状態を一般に下痢といっていますが,これは腸管の蠕動が亢進されたとき,あるいは水分の吸収が不十分となり不定時に排池される場合に起こります。
 下痢の原因は,胃,腸,肝臓,膵臓いずれかに病巣が発生したときに多く,また,細菌が付着した飲食物を口にし,小腸から大腸の粘膜に細菌が感染した場合にも起こります。
 下痢便は水分が多く,排世時に不快感の著しいときは,大腸後側の病気で大腸カタルによることが多い。その中で,とくに赤痢には注意を要します。排便後,さらに不快感があり,腹痛,腹鳴をともなって再三,再四トイレにかけこむ現象は特殊な大腸カタルとして重視すべきです。

 下痢の原因を列記してみると
1.食物性アレルギー
 特殊な食品による下痢で,腹痛は軽く,腹鳴があり,水様性で無熱。
2.神艇性下痢
 感情興奮性の強い人に多くみられ,無熱,習慣性。
3.不良性(低酸性)下痢
 夏季に多く,発汗が多量で塩分摂取不足が原因。
4.胃無酸性
 潜在性の場合が多い。
5.急性胃腸カタル
 細菌の付着物を口にしたときに起こる。嘔吐,腹痛,発熱をともなう。
6.食中毒
 細菌性,毒物中毒で,発熱の高い重症。
7.急性肝炎
 発熱,はきけのあと下頻があり,黄痕をともなう。
8.赤痢・疫痢
 腹痛,粘液便,粘液血便,発熱があり,下痢の回数が多い。
9.腸結核
 1日2~3回の下痢があり,便秘になる。
10その他
 寄生虫症,結腸がん,直腸がんなどがあり,不規則的な排便で下痢,発熱をともなう。
 下痢をした場合は,急性,習慣性のいずれかによってまずその病因を完全に完治することが肝心です。下痢のために不快な日々をおくることは精神的にも肉体的に大きなマイナスです。
(担当・能丸康司)
月刊ボディビルディング1975年4月号

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