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なんでもQ&Aお答えします 1975年7月号

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月刊ボディビルディング1975年7月号
掲載日:2018.06.28

急激に運動量を増やすのはマイナス

Q ボディビル歴は約1年。開始してからの数ヵ月は経過も順調で、体重も増加し筋力も強くなりました。その当時の使用重量はベンチ・プレス55kgで10回、スクワット57.5kgで10回、体重は58.5kg(開始時の体重55kg)。

 そのようなわけで、すっかり気分をよくし、調子にのって、その後、運動の使用重量をどんどん増やし、3ヵ月後にベンチ・プレスを65kg、スクワットで70kgを行うようになりました。ところがどうしたことか、その時点で急に体調が悪くなり、かえって筋力が弱くなり体重も減少しだしました。そしてさらに、3ヵ月経った現在では、ベンチ・プレスが55kg、スクワットも55kgと、すっかり以前の力に戻ってしまい、体重は開始時の55kgより1kg下まわって54kgになってしまいました。

 何ヵ月も意欲的にトレーニングを行なった結果がこのようなありさまで、いまでは、ボディビルに対する自信さえなくしてしまいました。そして、このままでは、トレーニングを続ければ続けるほど、ますます力が弱くなり、体重も少なくなってしまうような気がしてなりません。いっそのことボディビルをやめてしまおうかと思っています。

 どうかそのような私の不安を取りのぞき、再びトレーニングに意欲が持てるように、このような結果になった原因について説明していただきたいと思います。

(宇都宮市・吉野)
A あなたと同じようなケースはよく見うけられることです。そのようになった原因は、トレーニングの過度にあると考えて、まず間違いないと思います。それも、ごく短時間のうちに使用重量や運動量を急激に増やしていったときになりやすい現象だと思います。

 新しい効果(その効果を得てから、ごく短期間しか経っていない場合、つまり、効果を得てからの修練期間が短いもの)は身体的に不安定で、真に身についたものとはいえません。

 トレーニングで得た効果、すなわち筋の肥大、または筋力が真に身についたものとなるには、それ相応の時間的経過が必要です。つまり、その効果を得てから後に、さらにそれをどのくらいの期間にわたって修練を続行し、効果を持続したかによって、身に付く程度が変わってきます。

 したがって、新しい効果というものは、いいかえれば、長い期間の修練によって得た効果よりも、トレーニングをやめてしまったときの減退が速く、また、過度な運動に耐える性質が安定していないといえます。あなたの場合も、このような新しい効果の不安定な性質を考慮しないでトレーニングを続けたところに、お手紙のような失敗をまねいた原因があるのではないかと思われます。

 あなたのように、ごく短期間のうちに筋力が著しく向上した場合は、いわば、新しい効果の上に、さらに新しい効果が急速に積み重ねられていった状態です。ということは、その反面、得た効果の安定度は非常に低く、また、もろくもあったといえます。

 そのような状態でも、トレーニングの仕方に無理がなければ別に問題が生じることはありませんが、しかし、力が急速に強くなることに気分をよくし調子にのって、短期間に運動の使用重量をどんどん増やしていくと、自分でもわからないうちに無理をしていることになり、ついには、ある時点を境にして、筋が正常な状態とはいいがたい状態になってしまいます。

 このような状態になると、筋は少しぐらいの休養では元に戻らなくなってしまいます。しかし、そのような筋の状態を考慮して、十分な休養をとるようにすれば調子をくずさなくてすみます。だが、回復のための処理を無視して、次々と無理なトレーニングを続けていくと、筋の状態は日増しに悪くなり、ついにはあなたのような事態になってしまいます。

 つまり、そのような事態になるまでの効果が、ごく短期間で得たものであるだけに、筋そのものが非常に不安定な性質を有していたといえるので、過重な運動を続けることになると、筋の萎縮も早く、いままでに得られた効果もごく短期間で失なわれてしまうことになるのです。あなたの場合も、おそらくこのような経過をたどって効果が減退していったのであろうと考えられます。

 そして、いったんそのような状態に落ち込んでしまうと、簡単には以前のピークの状態に戻せるものではありません。したがって、今後のトレーニングは、次に述べることがらにそって行うようにしてください。

(1)まだ、オーバー・ワークの状態が継続していると判断されるので、完全に疲れがとれるまでトレーニングを休む。

(2)トレーニング再開後は、以前のピークのときを忘れて、初心にかえって行う。

(3)無理のない重量を使用し、多少余裕を感じられても、同じ重量で2週間は行うようにする。そして、重量を増やすときは2.5kgずつとする。

(4)1セットの反復回数は、力を出しきることをしないで、つねに2回程度の余力を残す範囲に止める。つまりがんばれば10回行えるところは8回程度で止める。

(5)使用重量を増加した日は、割合に軽く感じられるものであるが、意識的に回数をセーブして実施する。

(6)使用重量を増加した日の次のトレーニングのときに、重量が重く感じられるようであれば、回数にこだわらずに、絶対に無理のない範囲で行うこと。疲労が残っているようだったら、思いきってトレーニングを休むか、軽減する。

(7)トレーニングをしていて、日を追うごとに筋力が低下していると感じられるときは、オーバー・ワークの兆候と考えられるので、疲れが抜けたと思えるまでトレーニングを休む。

経験5力月、上体の集中トレーニングは是か否か

Q ボディビル歴5ヵ月。体力はどちらかというと弱いほうでしたが、トレーニングを始めてからは体力、体位とも少しずつ向上してきました。そのようなわけで、最近はトレーニングに対しても意欲的になり、これからは、上体の強化と発達を集中的に促したいと考えています。
そこで質問ですが、現在の私に合うと思われる上体の集中的なトレーニング法についてお答えください。
トレーニング開始時と現在の体位および筋力(各種目の使用重量)は次
のとおりです。

<1>体位
記事画像1
<2>各種目の使用重量
記事画像2
(愛媛県 K・Y 学生 21歳)
A 体位および筋力の向上は、いままでのところ共に良好といえます。このような経過から判断して、今後、トレーニングの方法さえ誤らなければ、人並以上の体格と体力を得ることは大いに可能と思われます。ボディビルの効果を信じて、これからもあせらずに大らかな気持でトレーニングを続けてください。

 それでは、質問に答えるというよりは、質問に関連して現在のあなたに必要と思われることがらについて述べることにします。

(1)まず現段階において、上体の集中的なトレーニングを行うことが果たして是か否かというと、それは否とお答えするほうが妥当なようです。なぜならば、現段階でそのようなトレーニングを行うことは、トレーニングの強度、および量からいって、体力的に無理と判断されるからです。

 ボディビルは、本来、トレーニングの強度および量において、体力的に過度にならないように行うことが原則です。その原則を無視するようなトレーニングの仕方は、体力を著しく消耗させるので、かえって効果が得られなくなります。短期間で過大な効果を得ようとして、無理なトレーニングをすることは厳に慎しまなければなりません。

(2)初級者がトレーニングの内容を極端に変えることは好ましくありません
 実施者が、すでに上級者といえるような体力的水準に達しており、しかも、体験的に自己の体力を把握しているのであれば、斬新な刺激を筋に与えるという意味で、トレーニングの内容を著しく変えて行うこともときには必要です。しかし、体力が弱く、体験的にも未熟で、自己の体力をよく把握しているとはいえない初級者が、極端にトレーニング内容を変えることはよくありません。

 まして、あなたが考えておられるような内容の変化は、トレーニングの強度と量に著しい増加がともなうと思われるので、絶対によくありません。経験の浅い初級者が、過大な効果を望む気持から、自分だけの判断でトレーニング内容を大幅に変えることは、得てしてトレーニングの強度と量が過度になりがちで、適正さを欠くことになります。

 したがって、初級者がトレーニングの内容を変えるときは、つねに、その時点における自己の体力と、トレーニングの内容を基準にして、無理がないと判断される範囲で少しずつ強度と量(使用重量、反復回数。セット数、実施種目)を増やすようにしなければなりません。

(3)運動種目およびトレーニングの方法は、実施者自身の段階(体格的、体力的、経験年数)に適すると考えられるもので行わなければなりません

 ボディビルの運動種目には、初級者に必要で、かつ向いていると思われる種目、あるいは不向で不要と思われる種目、あるいは中級者の段階に向いたもの、ビルダーとして完成期に近い上級者に必要な種目等があります。

 このことをいいかえれば、運動種目の採用は、実施者のそれぞれの段階において、必要かつ適すると思われるものを吟味して選ぶことが大切なのです。このようなことはトレーニング法についてもいえることです

 初級者のように、身体的な基礎が十分でない段階で、高度な種目や高度なトレーニング法を採用しても、そこには、身体の内的な条件と運動との間に不適正な点があるので、さしたる効果は得られないといえます

 高度な種目やトレーニング法を採用して、それなりの効果を得るにはその種目なりトレーニング法に適切に反応し得るだけのからだができていなければなりません。このことを無視して、欲ばっていたずらに高度な種目やトレーニング法を採用することは、効果を得るのに、かえって遠まわりすることになります。

 したがって、あなたもよくこのことを自覚して、現在の自分の体格と体力を冷静に判断した上で、現段階に適すると考えられる種目と方法でトレーニングするようにしてください。はっきりいって、現在のあなたは基礎的なからだをつくる段階にあるといえるので、トレーニングはより基礎的な種目とスケジュールで行うのがよいでしよう。それには、からだを胸・肩・腕・背・脚・腹に大別し、各部分の基本的な運動をそれぞれ1種目ずつ行うとよいでしょう

 以上のような理由で、現在ではあなたが考えておられるような上体の集中的トレーニングを行なっても決して良い結果は得られないと思います。こう申しては失礼かとは思いますが、ベンチ・プレスの使用重量が30キロぐらいの状態では、胸部のための補強的な種目をベンチ・プレスの他に行なっても、それによって見ばえのするような発達を得られるものではありません。

 また、いま程度の体格と力量から判断して、各部位の補強種目をいろいろと行なっても、そうそう良い結果が得られるものでもありません。そのようなトレーニングを行うことは、体力の著しい消耗をきたし、かえって逆の効果をまねくことになります。

 現段階で着実な効果を期待するには各部位の運動を多種目採用することをしないで、むしろ、基本的な運動を部分ごとにそれぞれ1種目だけ選び、それらの運動における力量を向上させることだけを考えてトレーニングを行うことです。現段階では、そのようなトレーニングでも、まだまだ十分な効果が期待できるはずであり、そうすることが最もよい結果に結びつくものと考えられます。ある程度の力量を得るまでは焦らずに、じっくりと行うことです。

<トレーニングにおける目標>
 トレーニング・スケジュールは、ある程度の力量に達するまで、現在のものをそのまま継続すればよいでしよう。そして、次のことを当面の目標として行うようにしてください。

ベンチ・プレス 50キロ 10回
スクワット   60キロ 10回

そして、この目標に到達したら、そのときに初めて、追加種目のことを考えるようにしてください。

 ところで、あなたは現在、手紙の文面にある5種目にシット・アップを加えた6種目の運動を行なっておられるものと思いますが、もしも、今のスケジュールを消化するのに体力的に我慢を強いられるようなら、それは、トレーニングが過度と考えられますから次のことを配慮してください。

<栄養は十分に摂っているか>
イ.栄養が不足していると、疲れやすくまた回復も遅い。

ロ.栄養のバランスはよいか。

ハ.ことに蛋白質が不足していないか。あなたの場合、トレーニングの効果を十分に期待するには、1日に75gの蛋白質が欲しい。仕事が肉体労働であれば、その分も加味して摂ることが必要です。

ニ.カロリーは十分か。体重を増加するには、カロリーをとくに十分に摂る必要がある。
ホ.食事と食事の間隔が長すぎないか。または短かすぎたりしないか。空腹でもないのに無理に食べるのはよくないが、空腹の状態を長時間ほおっておかないこと。そのような状態でからだを使うことは、体力を著しく消耗させる。したがって、そのような時は、間食をとるようにする。

<必要な休養をとっているか>
イ.休養は疲労を癒し、消耗した身体組織を回復させる。トレーニングの効果は、消耗した身体組織がトレーニング前の状態に回復した後に、超回復というかたちで得られるのであるから、その分も含めた休養をとるようにしなければならない。

ロ.睡眠は充分にとっているか。睡眠は最大の休養であるから、寝不足にならないように注意する。必要な睡眠時間は、睡眠の深さによっても違うが最低7時間は欲しい。

ハ.熟睡できるか。寝具に不備な点があったり、就寝直前に水分や食物をとりすぎると安眠のさまたげになる。また、筋肉が硬化していると熟睡できないことがある。そのようなときは、就寝前にからだをほぐすようにする。筋肉を硬化させないためには過度なトレーニングを慎しみ、トレーニング後にクール・ダウンを行うようにする。就寝直前にトレーニングを行わないようにすることも大切である。

ニ.不必要に、疲れたからだを酷使することはないか。疲れたからだを酷使することは、平時よりも疲労の進行を大きくする。したがって、疲れているときに、無理にトレーニングを行なったり、不必要なことでからだを酷使するのは慎むことである。

(解答は’59ミスター日本、NE協会 指導部長・竹内威先生)
月刊ボディビルディング1975年7月号

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