なんでもQ&Aお答えします 1975年8月号
月刊ボディビルディング1975年8月号
掲載日:2018.06.30
練習と受験勉強を両立させたいが
Q
ボディビル歴は約8ヵ月。効果も自分なりに満足のいくもので,ボディビルを始めてほんとうによかったと思っています。これからもどのようなことがあってもボディビルだけは続けていくつもりです。そこでご相談いたします。
というのは,現在,私は受験勉強のためトレーニングが思うように行えません。私にとっては,勉強をすることも,また,からだを鍛えることも,双方とも必要かつ大切なことと考えています。トレーニングが過ぎれば勉強にさしつかえるし,といってトレーニングをなおざりにするのも残念です。なんとか上手に両立させる方法はないものでしょうか。
ちなみに現在行なっているトレーニング・スケジュールは下記のとおりです。よい方法をご教授ください。
@トレーニング・スケジュール
(隔日的に週3日行なっています)
○シット・アップ15〜20回×2セット
○スクワット 55㌔ 10回×3セット
○ベンチ・プレス
50㌔ 10回×3セット
○ベント・オーバー・ローイング
30㌔ 10回×3セット
○ネック・ビハインド・プレス
30㌔ 10回×3セット
○ツー・ハンズ・カール
20㌔ 10回×3セット
以上ですが,夜おそくまで勉強をする関係上,翌日に疲れが残ります。
(石川県 水野 尚 高校生 18才)
ボディビル歴は約8ヵ月。効果も自分なりに満足のいくもので,ボディビルを始めてほんとうによかったと思っています。これからもどのようなことがあってもボディビルだけは続けていくつもりです。そこでご相談いたします。
というのは,現在,私は受験勉強のためトレーニングが思うように行えません。私にとっては,勉強をすることも,また,からだを鍛えることも,双方とも必要かつ大切なことと考えています。トレーニングが過ぎれば勉強にさしつかえるし,といってトレーニングをなおざりにするのも残念です。なんとか上手に両立させる方法はないものでしょうか。
ちなみに現在行なっているトレーニング・スケジュールは下記のとおりです。よい方法をご教授ください。
@トレーニング・スケジュール
(隔日的に週3日行なっています)
○シット・アップ15〜20回×2セット
○スクワット 55㌔ 10回×3セット
○ベンチ・プレス
50㌔ 10回×3セット
○ベント・オーバー・ローイング
30㌔ 10回×3セット
○ネック・ビハインド・プレス
30㌔ 10回×3セット
○ツー・ハンズ・カール
20㌔ 10回×3セット
以上ですが,夜おそくまで勉強をする関係上,翌日に疲れが残ります。
(石川県 水野 尚 高校生 18才)
A
勉強や仕事のためにトレーニングが思うように行えないということは,ボディビルを愛好するものにとっては切実な悩みであると思います。しかし,その時の状況にもよりますが,それなりに満足のいくトレーニングの方法というものはあるものです。
トレーニングを行う以前に,勉強や仕事によって,すでに,からだが疲弊しているようであれば,もちろんトレーニングはひかえなければなりません。そのような状態でトレーニングを行うことは,むしろ,からだのためにはマイナスになります。したがって,まず,充分な栄養を摂ることと,休養を上手にとることによって体調を立て直し,しかる後にトレーニングを行うようにしなければなりません。
以上のことはさておき,一応,現在のあなたのからだの状態が,トレーニングを行なってもさしつかえないものであるとして,現状に則すると思われるトレーニングの方法について述べることにします。
㋑実施種目はそのままにして,セット数を減らして行う。このようにしてトレーニングを行うのが現状では最も手っとり早い方法であるといえる。
㋺現在のトレーニング量をそのままにして,2〜3日おきに週2日行うようにする。
この方法も現状におけるひとつの方法とはいえるが,前回のトレーニングの疲労を次回までに回復させる利点はあっても,トレーニング後の疲労の軽減にはならない。したがって,トレーニング後にかなりの疲労を感じるならば㋑の方法で行うほうがよい。
㋩㋑の方法を採用しても,なおかつ体力的にトレーニングが負担になるようなら,㋑と㋺を合せた方法で行うとよい。つまり,現在の実施種目はそのままでセット数を減らし,それを2〜3日おきに週2日行う方法である。このような方法で行うことは,現状では最も安全であるといえるが,効果の面で不足することはいなめない。しかし,体調的に,このような方法をとらざるを得ないときは,それはそれでいたしかたがない。むしろ,わずかずつでも体力が向上することに満足してトレーニングを行うことである。
㊁実施種目を減らして行う。
現在採用している種目は全て基礎的な種目であるが,その中でも最も重要な種目のみを選んで行うようにする。現在行なっている種目を必要な順に強いて段階をつけるならば次のようになる。
①シット・アップ
スクワット
②ベンチ・プレス
③ネック・ビハインド・プレス
④ベント・オーバー・ローイング
⑤カール
したがって,このような方法を採用するときは,①〜③の4種目を行うのが無難と考えられる。
以上述べた方法はごく常識的な方法で,今さら聞くまでもないと思っておられるかもしれませんが,このようなことは,わかっていながら意外と実行しにくいことでもあります。したがって,その点を考え,ボディビルの先輩として,あえて述べた次第です。
では次に,趣きを異にする方法について説明します。
◎分割法
この方法は全採用種目を2分(または3分)した2つ(または3つ)のトレーニング・コースを作り,各コースをちがう日に,週に2日(または3日)ずつ行う方法である。したがって運動を行う日数が前述の方法よりも多くなるので,適切に行えば勉強や仕事によるストレスの解消にも効果がある。
①全種目を2分する方法
<Aコース>
①ベンチ・プレス
②ネック・ビハインド・プレス
③ベント・オーバー・ローイング
<Bコース>
①シット・アップ
②スクワット
③ツー・ハンズ・カール
(ベント・オーバー・ローイングに変えてベント・アーム・プルオーバーを行うようにしてもよい)
以上のA・B各コースを次のように週に2日ずつ行うとよい。
月 火 水 木 金 土 日
A B 休 A B 休 休
②全種目を3分する方法
<Aコース>
①ベンチ・プレス
②ネック・ビハインド・プレス
<Bコース>
①ベント・オーバー・ローイング
②ツー・ハンズ・カール
<Cコース>
①シット・アップ
②スクワット
以上のA・B・Cの各コースを週に2日ずつ行う。
月 火 水 木 金 土 日
A B C A B C 休
分割法とは元来,普通の方法によって,からだの発達をかなり得た人が,さらにその上の発達を期待して行う方法で,上述したものとは内容的に著しく異なります。しかし,内容的に著しいちがいはあっても,現在のあなたの体力と生活状況からすれば,分割法で行うのは決して誤りではなく,むしろ,疲労を軽減すに適した方法であるといえます。したがって,あなたの場合,分割法を採用することは,多大な効果を得るためというよりも,トレーニングによる疲労を少なくすることにあるのですから,まちがってもトレーニング量を欲ばらないことです。トレーニングの内容が上述したものでも,現在の状態に相応した効果は十分期待できますからそのつもりで信念を持って行うようにしてください。
勉強や仕事のためにトレーニングが思うように行えないということは,ボディビルを愛好するものにとっては切実な悩みであると思います。しかし,その時の状況にもよりますが,それなりに満足のいくトレーニングの方法というものはあるものです。
トレーニングを行う以前に,勉強や仕事によって,すでに,からだが疲弊しているようであれば,もちろんトレーニングはひかえなければなりません。そのような状態でトレーニングを行うことは,むしろ,からだのためにはマイナスになります。したがって,まず,充分な栄養を摂ることと,休養を上手にとることによって体調を立て直し,しかる後にトレーニングを行うようにしなければなりません。
以上のことはさておき,一応,現在のあなたのからだの状態が,トレーニングを行なってもさしつかえないものであるとして,現状に則すると思われるトレーニングの方法について述べることにします。
㋑実施種目はそのままにして,セット数を減らして行う。このようにしてトレーニングを行うのが現状では最も手っとり早い方法であるといえる。
㋺現在のトレーニング量をそのままにして,2〜3日おきに週2日行うようにする。
この方法も現状におけるひとつの方法とはいえるが,前回のトレーニングの疲労を次回までに回復させる利点はあっても,トレーニング後の疲労の軽減にはならない。したがって,トレーニング後にかなりの疲労を感じるならば㋑の方法で行うほうがよい。
㋩㋑の方法を採用しても,なおかつ体力的にトレーニングが負担になるようなら,㋑と㋺を合せた方法で行うとよい。つまり,現在の実施種目はそのままでセット数を減らし,それを2〜3日おきに週2日行う方法である。このような方法で行うことは,現状では最も安全であるといえるが,効果の面で不足することはいなめない。しかし,体調的に,このような方法をとらざるを得ないときは,それはそれでいたしかたがない。むしろ,わずかずつでも体力が向上することに満足してトレーニングを行うことである。
㊁実施種目を減らして行う。
現在採用している種目は全て基礎的な種目であるが,その中でも最も重要な種目のみを選んで行うようにする。現在行なっている種目を必要な順に強いて段階をつけるならば次のようになる。
①シット・アップ
スクワット
②ベンチ・プレス
③ネック・ビハインド・プレス
④ベント・オーバー・ローイング
⑤カール
したがって,このような方法を採用するときは,①〜③の4種目を行うのが無難と考えられる。
以上述べた方法はごく常識的な方法で,今さら聞くまでもないと思っておられるかもしれませんが,このようなことは,わかっていながら意外と実行しにくいことでもあります。したがって,その点を考え,ボディビルの先輩として,あえて述べた次第です。
では次に,趣きを異にする方法について説明します。
◎分割法
この方法は全採用種目を2分(または3分)した2つ(または3つ)のトレーニング・コースを作り,各コースをちがう日に,週に2日(または3日)ずつ行う方法である。したがって運動を行う日数が前述の方法よりも多くなるので,適切に行えば勉強や仕事によるストレスの解消にも効果がある。
①全種目を2分する方法
<Aコース>
①ベンチ・プレス
②ネック・ビハインド・プレス
③ベント・オーバー・ローイング
<Bコース>
①シット・アップ
②スクワット
③ツー・ハンズ・カール
(ベント・オーバー・ローイングに変えてベント・アーム・プルオーバーを行うようにしてもよい)
以上のA・B各コースを次のように週に2日ずつ行うとよい。
月 火 水 木 金 土 日
A B 休 A B 休 休
②全種目を3分する方法
<Aコース>
①ベンチ・プレス
②ネック・ビハインド・プレス
<Bコース>
①ベント・オーバー・ローイング
②ツー・ハンズ・カール
<Cコース>
①シット・アップ
②スクワット
以上のA・B・Cの各コースを週に2日ずつ行う。
月 火 水 木 金 土 日
A B C A B C 休
分割法とは元来,普通の方法によって,からだの発達をかなり得た人が,さらにその上の発達を期待して行う方法で,上述したものとは内容的に著しく異なります。しかし,内容的に著しいちがいはあっても,現在のあなたの体力と生活状況からすれば,分割法で行うのは決して誤りではなく,むしろ,疲労を軽減すに適した方法であるといえます。したがって,あなたの場合,分割法を採用することは,多大な効果を得るためというよりも,トレーニングによる疲労を少なくすることにあるのですから,まちがってもトレーニング量を欲ばらないことです。トレーニングの内容が上述したものでも,現在の状態に相応した効果は十分期待できますからそのつもりで信念を持って行うようにしてください。
上腕の迫力を増すために
Q
ボディビル歴3年,自宅でトレーニングしているものです現在,上腕のサイズは38cmありますが,腕を上にあげないで肘を屈するサイド・ポーズをとると,どのようにしても横(中央)の部分に迫力が出ません。来年はコンテストに出場するつもりですので,それまでに,この欠点をなんとか克服したいと考えています。適切なアドバイスをお願いします。なお,現在行なっている上腕のトレーニングは次の6種目をそれぞれ10回×3セット行なっています。
①ツー・ハンズ・カール
②インクライン・ダンベル・カール
③コンセントレーション・ダンベル・
カール・オン・インクライン・ベンチ
④フレンチ・プレス・スタンディング
⑤フレンチ・プレス・ライイング
⑥ワン・ハンド・フレンチ・プレス・ライイング
(静岡県・原口 明 会社員23才)
ボディビル歴3年,自宅でトレーニングしているものです現在,上腕のサイズは38cmありますが,腕を上にあげないで肘を屈するサイド・ポーズをとると,どのようにしても横(中央)の部分に迫力が出ません。来年はコンテストに出場するつもりですので,それまでに,この欠点をなんとか克服したいと考えています。適切なアドバイスをお願いします。なお,現在行なっている上腕のトレーニングは次の6種目をそれぞれ10回×3セット行なっています。
①ツー・ハンズ・カール
②インクライン・ダンベル・カール
③コンセントレーション・ダンベル・
カール・オン・インクライン・ベンチ
④フレンチ・プレス・スタンディング
⑤フレンチ・プレス・ライイング
⑥ワン・ハンド・フレンチ・プレス・ライイング
(静岡県・原口 明 会社員23才)
A
まず,迫力を欠く原因について考えてみる必要があると思います。原因としては次の2つが考えられます。
①デフィニションの有無
②上腕の部分的な発達の強弱
では,この2点について説明しながら,あなたのご質問にお答えすることにします。
①デフィニションの有無について
デフィニションが不足している場合は,筋の発達が弱くないかぎり皮下脂肪をおとすことで腕へ迫力を増すことは可能です。つまり,腕のデフィニションがよくなれば迫力も出てくるということです。
この場合,腕のデフィニションをよくするには,腕の皮下脂肪をおとすことだけにとらわれず,全身の体脂肪をおとすように心がけることです。というのは,外見的にいって,筋の隆起を純いものにしてしまうほどに,腕に皮下脂肪がのっている状態では,からだ全体にかなりの量の脂肪がついているものと考えられるからです。
したがって,腕の皮下脂肪をおとすことのみを考えてトレーニングを行なっても,そうそうおちるものではありません。全身的に脂肪をおとすことを考え,その上で,腕のデフィニションを増すためのトレーニングを行うようにすることです。
それにはまず,体脂肪を少なくするための手だてとして,食事の内容を制限することが必要です。ようするに,食事の内容を低カロリー食にすることです。といっても,ただ低カロリー食にするために減食するのでは栄養不良になってしまいますので,蛋白質,ビタミン類,ミネラル等は充分に摂るようにしなければなりません。中でも,ビルダーにとり,もっとも必要な栄養素といえる蛋白質は,とりわけ十分に摂るようにしなければなりません。
低カロリー食のために制限する食物は,体内で脂肪に転化する含水炭素を多く含むもの(主食類,および糖分を多く含むもの)と油脂(とくに動物性のもの)の多いものです。
このようにして,食事の内容を低カロリー食にすることは,からだに供給する熱量を,体内で消費される熱量よりも少い量におさえることになるので,体内における脂肪の燃焼を促し,体脂肪の消化を促進させます。体脂肪の消化を運動量を増やすことだけで促そうとしてもなかなか効果のあがるものではありません。
ボディビルは,どちらかというと,その運動の性質からいって,筋の疲労が激しい割にはカロリーの消費量が少ないといえます。茶わん1ぱいのごはんに含む熱量を消費するのに,ときには20セット以上もの運動が必要です。
したがって,運動量を増やすことのみによって体脂肪をおとそうとすることは,下手をすると運動が過度になりオーバー・ワークになってしまうおそれもあります。このことをよく考えて食事の内容を上手に制限し,オーベー・ワークにならないようにトレーニングを行うようにしてください。
トレーニングのやり方は,体脂肪をおとすには1セット当りの反復を多回数にして運動を行うのがよいとされていますので,1セット10回以上の多回数制を採用するようにしてもよいでしよう。
しかし,多回数制を採用して行うこと以上に,運動を行う際に大切なことは,運動を正確な動作で行うことです。つまり,反動を使わないでていねいな動作でじっくりと運動を行うか,あるいは,反動を使わずに,しかも動作の途中から加速度をつけるようにしないで,筋を収縮させるときに,できるだけ速い動作で,瞬間的に筋を収縮させるようにし,そして筋を伸ばすときには,ゆっくりと伸ばすように運動を行うようにすることです。このようにして運動動作を行えば,運動による消費熱量を比較的に増加させることができます。
ともあれ,皮下脂肪がのっているために,腕の迫力がないと判断されるようであれば,筋の発達状態にかかわらず,一応は体脂肪をおとしてみることが必要と思われます。皮下脂肪をおとした結果,意外に筋の発達が弱くてもそれはそれでよいといえるでしよう。
からだについた脂肪にまぎらわされることなく,自分のからだの発達状態を本当に知ることは,ビルダーとしての反省を促すために必要なことです。
②上腕の部分的な発達の強弱について
皮下脂肪がさほどのっていないのに迫力がないというのであれば,それは上腕部の発達の仕方自体に原因があると考えられます。つまり,上腕三頭筋の外側頭か,または上腕筋の発達が弱いためと判断されます。したがって,その部分の発達を促すための運動を行うことが必要になります。
上腕三頭筋は三つの頭を有し,外側に位置するのが外側頭です。この外側頭は,通常的にいえば,他の二頭(長頭と内側頭)よりも発達しやすい部分であるといえ,上腕部における伸筋であるところの上腕三頭筋を使う運動を行なっていれば,外側頭のための運動を特別に行わなくてもかなり発達するものです。
しかし,上腕部全体の比較からしてもし,その部分の発達が弱いと判断されるなら,その発達を促すための運動を特別に行うことはビルダーとして完成するには必要なことでしよう。
◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
左右のグリップの間隔を1~2こぶしぐらいにしてバーベルを持ち,シャフトをみぞおちのあたりにおろすようにしてベンチ・プレスを行う。手首を痛めるおそれがある場合は,サムレス・グリップ(親指をひひとさし指にそろえる握り方)で行うとよい。
◎リバース・ディップ(リバース・プッシュ・アップ)
横向きにしたベンチを後ろに置き腰から下,両脚を前方へなげ出すようなかっこうで伸ばし,後ろ手にベンチのフチをつかみ,肘を屈伸して体を上下させる。この場合,両足を他のベンチまたは箱などの上に乗せて行うと一層効果的である。また,体重のみでは負荷が軽るすぎるときは,プレートを大腿部の上に置いて運動を行うようにする。運動の動作は,上腕部の平行を保って肘を屈伸させるよりも,いくぶん左右横へ開くように屈伸させるほうがよいと考えられる。呼吸の仕方は,肘を屈しながら息を吸い,伸ばしながら吐くようにする。
◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ
両手の間隔を狭くして腕立伏臥肘屈伸(いわゆる腕立て伏せ運動=プッシュ・アップ)を行う。この場合,上腕部を体側に密着させないで,いくぶんワキを広げる(といっても,広げすぎてもよくない)ようにして行うとよい。ワキをしめ,双方の上腕が平行になるようにして動作を行うと長頭に強く効き,外側頭に対する効果が減じてしまうから注意する。また,体重のみでは負荷が不十分なときは,両足を高くすることで運動負荷を増すよりも,トレーニング・パートナーに上背部(下部ではない)を押してもらうか,または,なるたけ上背部に重量がかかるように,重量物を背負って運動を行うようにする方がよい。そしてこの際における運動の目的は,胸を鍛えることではなく上腕三頭筋の外側頭を鍛えることにあるのだから,そのことをよくわきまえ,外側頭を意識しながら運動を行うにすることである。
以上,上腕三頭筋の外側頭について述べました。では次いで上腕筋について述べます。
上腕筋は,上腕骨下半から前腕の尺骨上端に付着している筋で,上腕二頭筋の下にあります。腕をまげたときに上腕二頭筋と上腕三頭筋の外側頭との間にごぶ状に隆起するのがそれです。
運動に際し,上腕筋は,上腕二頭筋と協応して働くので,通常的には,上腕二頭筋を使用する運動種目によって発達が促されます。しかし,そのような運動種目のみでは上腕筋の発達が不十分であると判断されるなら,それを発達させるための特別な運動を行う必要があります。
◎ブレキアリス・カール
左右のグリップの間隔を両ももの幅ぐらいにしてバーベルを持ち,両肘を斜め後方に引くようにしてバーベルを上腹部の前まで引きあげる。
バーベルの持ち方は,アンダー・グリップとオーバー・グリップのどちらでもよいが,オーバー・グリップのほうが効果的と考えられる。
◎ダンベル・リバース・カール
ダンベルを用いてリバース・カールを行うのであるが,上腕筋に効かすには普通のやり方ではなく,少々変った動作で行うようにする。
手の甲を上に向けてダンベルを持ち,肘を斜め横の方へ張るようにして,ダンベルを肩の高さぐらいまであげる。ただし,この場合,肘は斜め横へ移動させても,ダンベルはほぼ垂直にあげるようにする。効果的な運動の動作を会得するには,片手にダンベルを持ち,空いている他方の手を上腕筋の上に添えて行うとよい。
◎ナロウ・グリップ・チニング
左右のグリップの間隔を2こぶし以内にして,チンニング・バーにぶらさがり,両肘を少し開げるようにして体を引きあげる。バーの握り方は,オーバー・グリップとアンダー・グリップのいずれでもよい。実際に運動を行なってみて,有効と思われる握り方を採用すればよい。
まず,迫力を欠く原因について考えてみる必要があると思います。原因としては次の2つが考えられます。
①デフィニションの有無
②上腕の部分的な発達の強弱
では,この2点について説明しながら,あなたのご質問にお答えすることにします。
①デフィニションの有無について
デフィニションが不足している場合は,筋の発達が弱くないかぎり皮下脂肪をおとすことで腕へ迫力を増すことは可能です。つまり,腕のデフィニションがよくなれば迫力も出てくるということです。
この場合,腕のデフィニションをよくするには,腕の皮下脂肪をおとすことだけにとらわれず,全身の体脂肪をおとすように心がけることです。というのは,外見的にいって,筋の隆起を純いものにしてしまうほどに,腕に皮下脂肪がのっている状態では,からだ全体にかなりの量の脂肪がついているものと考えられるからです。
したがって,腕の皮下脂肪をおとすことのみを考えてトレーニングを行なっても,そうそうおちるものではありません。全身的に脂肪をおとすことを考え,その上で,腕のデフィニションを増すためのトレーニングを行うようにすることです。
それにはまず,体脂肪を少なくするための手だてとして,食事の内容を制限することが必要です。ようするに,食事の内容を低カロリー食にすることです。といっても,ただ低カロリー食にするために減食するのでは栄養不良になってしまいますので,蛋白質,ビタミン類,ミネラル等は充分に摂るようにしなければなりません。中でも,ビルダーにとり,もっとも必要な栄養素といえる蛋白質は,とりわけ十分に摂るようにしなければなりません。
低カロリー食のために制限する食物は,体内で脂肪に転化する含水炭素を多く含むもの(主食類,および糖分を多く含むもの)と油脂(とくに動物性のもの)の多いものです。
このようにして,食事の内容を低カロリー食にすることは,からだに供給する熱量を,体内で消費される熱量よりも少い量におさえることになるので,体内における脂肪の燃焼を促し,体脂肪の消化を促進させます。体脂肪の消化を運動量を増やすことだけで促そうとしてもなかなか効果のあがるものではありません。
ボディビルは,どちらかというと,その運動の性質からいって,筋の疲労が激しい割にはカロリーの消費量が少ないといえます。茶わん1ぱいのごはんに含む熱量を消費するのに,ときには20セット以上もの運動が必要です。
したがって,運動量を増やすことのみによって体脂肪をおとそうとすることは,下手をすると運動が過度になりオーバー・ワークになってしまうおそれもあります。このことをよく考えて食事の内容を上手に制限し,オーベー・ワークにならないようにトレーニングを行うようにしてください。
トレーニングのやり方は,体脂肪をおとすには1セット当りの反復を多回数にして運動を行うのがよいとされていますので,1セット10回以上の多回数制を採用するようにしてもよいでしよう。
しかし,多回数制を採用して行うこと以上に,運動を行う際に大切なことは,運動を正確な動作で行うことです。つまり,反動を使わないでていねいな動作でじっくりと運動を行うか,あるいは,反動を使わずに,しかも動作の途中から加速度をつけるようにしないで,筋を収縮させるときに,できるだけ速い動作で,瞬間的に筋を収縮させるようにし,そして筋を伸ばすときには,ゆっくりと伸ばすように運動を行うようにすることです。このようにして運動動作を行えば,運動による消費熱量を比較的に増加させることができます。
ともあれ,皮下脂肪がのっているために,腕の迫力がないと判断されるようであれば,筋の発達状態にかかわらず,一応は体脂肪をおとしてみることが必要と思われます。皮下脂肪をおとした結果,意外に筋の発達が弱くてもそれはそれでよいといえるでしよう。
からだについた脂肪にまぎらわされることなく,自分のからだの発達状態を本当に知ることは,ビルダーとしての反省を促すために必要なことです。
②上腕の部分的な発達の強弱について
皮下脂肪がさほどのっていないのに迫力がないというのであれば,それは上腕部の発達の仕方自体に原因があると考えられます。つまり,上腕三頭筋の外側頭か,または上腕筋の発達が弱いためと判断されます。したがって,その部分の発達を促すための運動を行うことが必要になります。
上腕三頭筋は三つの頭を有し,外側に位置するのが外側頭です。この外側頭は,通常的にいえば,他の二頭(長頭と内側頭)よりも発達しやすい部分であるといえ,上腕部における伸筋であるところの上腕三頭筋を使う運動を行なっていれば,外側頭のための運動を特別に行わなくてもかなり発達するものです。
しかし,上腕部全体の比較からしてもし,その部分の発達が弱いと判断されるなら,その発達を促すための運動を特別に行うことはビルダーとして完成するには必要なことでしよう。
◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
左右のグリップの間隔を1~2こぶしぐらいにしてバーベルを持ち,シャフトをみぞおちのあたりにおろすようにしてベンチ・プレスを行う。手首を痛めるおそれがある場合は,サムレス・グリップ(親指をひひとさし指にそろえる握り方)で行うとよい。
◎リバース・ディップ(リバース・プッシュ・アップ)
横向きにしたベンチを後ろに置き腰から下,両脚を前方へなげ出すようなかっこうで伸ばし,後ろ手にベンチのフチをつかみ,肘を屈伸して体を上下させる。この場合,両足を他のベンチまたは箱などの上に乗せて行うと一層効果的である。また,体重のみでは負荷が軽るすぎるときは,プレートを大腿部の上に置いて運動を行うようにする。運動の動作は,上腕部の平行を保って肘を屈伸させるよりも,いくぶん左右横へ開くように屈伸させるほうがよいと考えられる。呼吸の仕方は,肘を屈しながら息を吸い,伸ばしながら吐くようにする。
◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ
両手の間隔を狭くして腕立伏臥肘屈伸(いわゆる腕立て伏せ運動=プッシュ・アップ)を行う。この場合,上腕部を体側に密着させないで,いくぶんワキを広げる(といっても,広げすぎてもよくない)ようにして行うとよい。ワキをしめ,双方の上腕が平行になるようにして動作を行うと長頭に強く効き,外側頭に対する効果が減じてしまうから注意する。また,体重のみでは負荷が不十分なときは,両足を高くすることで運動負荷を増すよりも,トレーニング・パートナーに上背部(下部ではない)を押してもらうか,または,なるたけ上背部に重量がかかるように,重量物を背負って運動を行うようにする方がよい。そしてこの際における運動の目的は,胸を鍛えることではなく上腕三頭筋の外側頭を鍛えることにあるのだから,そのことをよくわきまえ,外側頭を意識しながら運動を行うにすることである。
以上,上腕三頭筋の外側頭について述べました。では次いで上腕筋について述べます。
上腕筋は,上腕骨下半から前腕の尺骨上端に付着している筋で,上腕二頭筋の下にあります。腕をまげたときに上腕二頭筋と上腕三頭筋の外側頭との間にごぶ状に隆起するのがそれです。
運動に際し,上腕筋は,上腕二頭筋と協応して働くので,通常的には,上腕二頭筋を使用する運動種目によって発達が促されます。しかし,そのような運動種目のみでは上腕筋の発達が不十分であると判断されるなら,それを発達させるための特別な運動を行う必要があります。
◎ブレキアリス・カール
左右のグリップの間隔を両ももの幅ぐらいにしてバーベルを持ち,両肘を斜め後方に引くようにしてバーベルを上腹部の前まで引きあげる。
バーベルの持ち方は,アンダー・グリップとオーバー・グリップのどちらでもよいが,オーバー・グリップのほうが効果的と考えられる。
◎ダンベル・リバース・カール
ダンベルを用いてリバース・カールを行うのであるが,上腕筋に効かすには普通のやり方ではなく,少々変った動作で行うようにする。
手の甲を上に向けてダンベルを持ち,肘を斜め横の方へ張るようにして,ダンベルを肩の高さぐらいまであげる。ただし,この場合,肘は斜め横へ移動させても,ダンベルはほぼ垂直にあげるようにする。効果的な運動の動作を会得するには,片手にダンベルを持ち,空いている他方の手を上腕筋の上に添えて行うとよい。
◎ナロウ・グリップ・チニング
左右のグリップの間隔を2こぶし以内にして,チンニング・バーにぶらさがり,両肘を少し開げるようにして体を引きあげる。バーの握り方は,オーバー・グリップとアンダー・グリップのいずれでもよい。実際に運動を行なってみて,有効と思われる握り方を採用すればよい。
[解答='59ミスター日本,NE協会指導部長・竹内威氏]
月刊ボディビルディング1975年8月号
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