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玉利新理事長にきく……
JBBAのかかえる諸問題

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月刊ボディビルディング1975年8月号
掲載日:2018.01.17
――まず、これからのJBBAのボディビル運動の進め方についてうかがいたいんですが。
玉利 ボディビル運動には本来3つの面があると思います。つまり、へルス(健康)、ストレングス(力強さ)ビューティ(美しさ)の3つです。

 この3つは個々バラバラに存在するのではなく、相互に依存し合ってボディビル運動に価値と個性を与えていると考えられます。現在のボディビル運動はどちらかというと“力強さ”と“美しさ”の面、つまり、パワーリフティングとボディ・コンテストの面からのみ世の中から認められているのではないでしようか。

 これから大切なことは、ボディビルが“健康”の獲得にいかに役立つかということを世の中にもっと強調しなければならないことだと思います。

 しかし、そのためには、健康ぐらい個人差のあるものはないのですから、トレーニング方法もパワーやコンテスト向きの練習一辺倒ではなく個別性のある生活管理までを含んだトレーニング内容にする必要があると思います。したがって、協会の活動も大別すれば、パワーリフティングやコンテストを開催する競技団体的性格と、健康管理や体力づくりを推進する増健運動的性格の2つが車の両輪のようにうまくころがって行かねばならないでしよう。

 ことしの5月、ワシントンで開かれたトリム運動推進のためのスポーツ体育の専門家会議は、「二十一世紀に人類が渡る橋、それはスポーツ(身体活動)しかない」と決議していますが、そのくらい私たちの時代には様々な生きるためのマイナス要因が大きくなりつつあります。

 なかでも心身のアンバランスから起こる“文明病”や“成人病"の克服こそ最重要な問題で、私たちボディビル運動というスポーツ体育活動にたずさわるものの使命感をもってとり組まねばならぬことと思われます。

 なおトリムとは、ヨーロッパで云われている標語で、心身のバランス回復のために行うスポーツ・体育活動のことをいい、日本でも近く首相直属の審議会が設立されるようです
――ボディビル界の一本化の話がもちあがっているようですが、その後どうなっているんですか。
玉利 現在の日本のボディビル界は3つに別れてしまっているようですがこれもコンテストやパワー大会を中心に考え、その主導権をどうするかということにとらわれるから起こる現象でしよう。

 日本のボディビル界は、日本人の健康と力強く美しい心身の創造のために発展するのだという主体性を失わず、その上で国際的に協調し、交流していくべきでしよう。そのように考えれば、いつの日か日本のボディビル界が大同団結する日が必ずくると信じます。

 そのような機運が生まれてきたら過去のいきさつや感情にとらわれず未来の日本のスポーツ体育界のため大きな目的の下、ひとつになるための努力を惜しむべきではないと思います。また、復帰の希望者が現実に存在するなら、意志を表明してもらい、具体的に検討すべきです。

 その場合、復帰意志を明示し、正式に文書を協会に提出してもらい、審議の上決定すべきです。復帰が正式に決定する以前はJBBAのコンテストやパワーリフティングには出場を認めるべきではないでしよう。

 要は、同じ日本のボディビル界に生きる仲間同志です。共通の目的があり、共通のルールを守るなら、ひとつになることは日本のボディビル界の力が強くなり、国際交流にも様々なプラスがあるでしよう。

 同時に、ボディビル界が団結して国民総健康運動に参加しないと、すでに日本体育施設協会、BG財団、余暇開発センター等は五団体連絡協議会を定期的に開催して、その推進方法を医者、体育学者、スポーツ関係者、関係官庁等を交え検討している状況ですので、時流にとりのこされかねません。その意味からもJBBAの旗のもと、力をひとつにすべく理事長として努力するつもりです
――ボディ・コンテストそのものが、一般の人から見れば、なんか異質の人間のコンテストのように思われがちですが、これに対するPRとか対策はお考えですか。
玉利 コンテストの在り方については国際交流の問題もあり、日本独得なスタイルにつくり直すということは現実に困難でしよう。

 ただ、一般社会人に受け入れられにくいということは、これはボディビルダーの逞しい肉体が否定されるのではなく、逞しい肉体しか感じさせないボディビルダーが一般社会人の感覚にひっかかるからでしよう。ですから、逞しい肉体にふさわしい知性や社会性や人間的魅力を感じさせるボディビルダーなら、社会は必ず理解するものと思います。
記事画像1
――パワーリフティングの方法も、せっかく国際式のルールにしながら、ふたたび2種目制にもどってしまいましたが、もう一度デッド・リフトを加えた国際式の3種目制にするお考えはないのでしようか。
玉利 パワーリフティングのあり方、とくに2種目制か3種目制かという問題については、賛否両論があると思いますが、JBBAが現在とっている2種目制には、それなりの意味があると思います。

 ということは、競技者の安全管理と練習場の破損防止ということに重点をおいて決定された制度だと思います。現在、ボディビル運動は市民スポーツとして、いわゆる室内のジムで盛んに行われている実状を考えると、健康第一の指導方針を打出している各ジムにとって、デッド・リフトが背筋や背骨をいためる練習者が出る可能性を避けたいことでしよう。同時に、現在の施設面から見て床板の破損の場合も考えられます。

 しかし、将来パワーリフティングが国際ラインとの交流が実現した時点では、当然、再検討すべきでしよう
月刊ボディビルディング1975年8月号

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