JBBAボディビル・テキスト⑥
指導者のためのからだづくりの科学 各論−解剖〈1〉
月刊ボディビルディング1974年1月号
掲載日:2018.07.11
日本ボディビル協会指導員審査会委員長
佐野 誠之
佐野 誠之
各論−序説
前号にて総論を終わったが、各論を執筆するに当り、私の基本的考えを述べておきたい。
総論で述べたことは爾後の各論より導き出された結論的な事項で、諸原則や諸法則等のうち、最少限必要と考えたものを所感をまじえて記したが、誌面の都合上、説明不足の個所もあったことと考えるゆえ、それらのことはこれから記していく各論によって理解をしていただきたい。
体力トレーニングを合理的に進めるためには、先ず行動体力の要素である筋力・持久性・敏捷性・柔軟性・巧緻性、その他パワーや意志のトレーニング法等の基礎的な理解を深めておくことが必要であり、練習する人の条件に即して進めなければ効果は得られない。
すなわち、発育段階・性差・体力差・年令差・いままでの練習(鍛練)差等に応じてどのように進めたらよいかを知るためには、あらゆる角度からの科学的分析がきわめて大切である。
人間の身体能力を左右する諸要素を解明するためにも、筋肉・循環・呼吸・栄養・適性・年令・性別・練習法・疲労・障害等について、現場で起こる指導上の問題点を考えるためにも、解剖・生理・栄養・トレーニング理論等これら基礎的教養を広く身につけ、指導の具体的プランを工夫するよりどころとすることが大切である。
指導にあたっては、このような理論によって裏付けされたトレーニング、すなわち、理論を基とし、それに創意工夫して、実状に応じたトレーニング計画をたてねばならない。このことはスポーツ競技においても、保健体育においても同様であろう。
ボディビルと科学の接触に当って、最も困難なことは、ボディビル関係者(とくに選手や、または選手出身のコーチ等)の方で科学的知識が少なく、科学者の方ではボディビルの正しい姿をほとんど知っていないことであり、これがいろいろの誤解や誤った観念の生じる原因であろう。
これをなくするためには、お互いに基礎的な知識をしっかりと勉強し、一現象のみをとりあげるようなことをせずに、全体を正しく認識することが大切である。
基礎的な学問には各部門にわたって専門書も多い。しかし、体育スポーツ関係の科学書で重要なことは、現場の指導者の知識の程度を見きわめて平易に書かれていると同時に、現場で生かすように記述されていることが大切である。
このような配慮のもとに書かれたものは少ない。とくに、ボディビル関係においては、基礎知識を吸収するのに適当な書物を探すことに苦労されていることであろう。医学的な解剖や生理のものでは難解であったり、重点のおきどころも違っているように考えられるので、一応の指針として、浅学非才をも顧みず記述していくつもりであるできるだけ簡単平易にと心掛けているので、意のあるところを汲んでいただきたい。
総論で述べたことは爾後の各論より導き出された結論的な事項で、諸原則や諸法則等のうち、最少限必要と考えたものを所感をまじえて記したが、誌面の都合上、説明不足の個所もあったことと考えるゆえ、それらのことはこれから記していく各論によって理解をしていただきたい。
体力トレーニングを合理的に進めるためには、先ず行動体力の要素である筋力・持久性・敏捷性・柔軟性・巧緻性、その他パワーや意志のトレーニング法等の基礎的な理解を深めておくことが必要であり、練習する人の条件に即して進めなければ効果は得られない。
すなわち、発育段階・性差・体力差・年令差・いままでの練習(鍛練)差等に応じてどのように進めたらよいかを知るためには、あらゆる角度からの科学的分析がきわめて大切である。
人間の身体能力を左右する諸要素を解明するためにも、筋肉・循環・呼吸・栄養・適性・年令・性別・練習法・疲労・障害等について、現場で起こる指導上の問題点を考えるためにも、解剖・生理・栄養・トレーニング理論等これら基礎的教養を広く身につけ、指導の具体的プランを工夫するよりどころとすることが大切である。
指導にあたっては、このような理論によって裏付けされたトレーニング、すなわち、理論を基とし、それに創意工夫して、実状に応じたトレーニング計画をたてねばならない。このことはスポーツ競技においても、保健体育においても同様であろう。
ボディビルと科学の接触に当って、最も困難なことは、ボディビル関係者(とくに選手や、または選手出身のコーチ等)の方で科学的知識が少なく、科学者の方ではボディビルの正しい姿をほとんど知っていないことであり、これがいろいろの誤解や誤った観念の生じる原因であろう。
これをなくするためには、お互いに基礎的な知識をしっかりと勉強し、一現象のみをとりあげるようなことをせずに、全体を正しく認識することが大切である。
基礎的な学問には各部門にわたって専門書も多い。しかし、体育スポーツ関係の科学書で重要なことは、現場の指導者の知識の程度を見きわめて平易に書かれていると同時に、現場で生かすように記述されていることが大切である。
このような配慮のもとに書かれたものは少ない。とくに、ボディビル関係においては、基礎知識を吸収するのに適当な書物を探すことに苦労されていることであろう。医学的な解剖や生理のものでは難解であったり、重点のおきどころも違っているように考えられるので、一応の指針として、浅学非才をも顧みず記述していくつもりであるできるだけ簡単平易にと心掛けているので、意のあるところを汲んでいただきたい。
第二章 解剖学的事項
第1節 緒論
体育の基盤は人体である。人体の構造と機能の知識なしには体育はなりたたないだろう。
人体を理解する方法として、そのかたちやっくりの方から知ろうとするもの(解剖学)と、その機能面から生命現象を知ろうとするもの(生理学)との2つに分けて考えられる。
この両者は、車の両輪のようなもので、そのいずれを欠いても完全ではない。体育においても同様に最も重要な基礎知識の供給源である。
解剖学の分野も非常に広く各種の分化研究がなされているが、そのうちでわれわれが必要とするものは、身体の構造により動きの諸原則を知るためであり、また、その形態の正常・異常を知るために必要な知識で、生体学(体表解剖学)とか、形態学とか呼ばれているものである。
肉体を対象とする体育において解剖学がまず第一の基礎となるのは当然であり、この基礎的な知識の理解なくしては一歩も前進できないはずである。
解剖学の専門書により勉強されることはいいことであるが、人によっては難解複雑で適当なものの選択に大いに困惑されると考えると共に、体育におけるそれと、医学におけるそれとは、自ずから重点のおき所も違っているべきであるとの考えから、とくに運動器官、すなわち骨格と筋肉に重点を置き他の器官系については詳細な構造等をできるだけ省略し、系統の全景をつかんでもらうように概要的に分り易く記していく。
人体を理解する方法として、そのかたちやっくりの方から知ろうとするもの(解剖学)と、その機能面から生命現象を知ろうとするもの(生理学)との2つに分けて考えられる。
この両者は、車の両輪のようなもので、そのいずれを欠いても完全ではない。体育においても同様に最も重要な基礎知識の供給源である。
解剖学の分野も非常に広く各種の分化研究がなされているが、そのうちでわれわれが必要とするものは、身体の構造により動きの諸原則を知るためであり、また、その形態の正常・異常を知るために必要な知識で、生体学(体表解剖学)とか、形態学とか呼ばれているものである。
肉体を対象とする体育において解剖学がまず第一の基礎となるのは当然であり、この基礎的な知識の理解なくしては一歩も前進できないはずである。
解剖学の専門書により勉強されることはいいことであるが、人によっては難解複雑で適当なものの選択に大いに困惑されると考えると共に、体育におけるそれと、医学におけるそれとは、自ずから重点のおき所も違っているべきであるとの考えから、とくに運動器官、すなわち骨格と筋肉に重点を置き他の器官系については詳細な構造等をできるだけ省略し、系統の全景をつかんでもらうように概要的に分り易く記していく。
〈1〉人体の構造(人体の組み立て)
人体は体幹と体肢(四肢)に大別され、体幹は頭・頸・胴体に区分されるまた人によっては頭部・躯幹・四肢の3部に分けるものもある。
頭部と頸、および体幹の後側の骨が集まって脳脊髄腔をつくり、ここに脳と脊髄を入れる。
体幹には脳脊髄の前方に体腔があり体腔は横隔膜によって胸腔と腹腔とに分れ、胸腔には心臓・肺臓等を入れ、腹腔には胃腸・腎臓・肝臓等を入れている。ただし四肢にはこのような腔所がなく、中軸に骨格があり、これに筋肉がついている。また、全身の外面は皮膚によって覆われている。(参考図1)
頭部と頸、および体幹の後側の骨が集まって脳脊髄腔をつくり、ここに脳と脊髄を入れる。
体幹には脳脊髄の前方に体腔があり体腔は横隔膜によって胸腔と腹腔とに分れ、胸腔には心臓・肺臓等を入れ、腹腔には胃腸・腎臓・肝臓等を入れている。ただし四肢にはこのような腔所がなく、中軸に骨格があり、これに筋肉がついている。また、全身の外面は皮膚によって覆われている。(参考図1)
〔参考図1〕体幹、体腔の略図A−体幹の縦断面、B−同横断面 C−体腔の縦断面、D−同横断面
体幹の背面のうち、頸・胸・腹の3部の範囲にある部分を背部という。胸と腹を合わせて胴と呼ぶこともあるがこれは正式の解剖学名ではない。各体部についての名称は参考図に示す(参考図2、3)
〔参考図2〕 体部の名称(前面)
〔参考図3〕 体部の名称(後面)
A−細 胞
すべての生物体は細胞によって組立てられており、人体もその例外ではない。細胞は生物体の構成単位であり、原形質と核を有し、元来球形であるがそのほかに細胞間質というものがあって、これが生物体の重要な構成材料をなしている。(参考図4)
すべての生物体は細胞によって組立てられており、人体もその例外ではない。細胞は生物体の構成単位であり、原形質と核を有し、元来球形であるがそのほかに細胞間質というものがあって、これが生物体の重要な構成材料をなしている。(参考図4)
〔参考図4〕 細胞の構造模型図
細胞はみな同じ形と働きをもっているものではなく、種々な働きをするため、数多くの種類があり、それぞれ違った機能をもっている。そして、その形態も構造もそれぞれ変わっている。
B−組 織
同じ働きと同じ形態を有する細胞の群を組織という。人体はいくつかの組織を材料としてできている。組織を①上皮組織②支持組織③筋組織④神経組織の4つに大別することができる。
①上皮組織−−体の表面、体腔の内面器官の内空面等、すべての自由表面を覆うもので原則として一般に膜状をなしている。自由表面の保護のほかに場所によって、刺激の感受・吸収・分泌・排泄等の働きをもっていて、形態にも特徴がみられ、その働きによって被蓋上皮・保護上皮・吸収上皮・分泌上皮・感覚上皮等に区分される。
また、細胞の形状や配列によって次のように区別される。
ⓐ扁平上皮−−㋑単層扁平上皮(肺胞や奨膜表面)㋺重層扁平上皮(皮膚・口腔・食道等のように機械的刺激の強く働く体部の表面)
ⓑ円柱上皮−−多角状または立方形で、機械的刺激には弱いが、その代わり吸収や分泌を行う(胃腸のような消化管の主要内部表面)。また、円柱上皮には繊毛上皮というのがある。(参考図5)
B−組 織
同じ働きと同じ形態を有する細胞の群を組織という。人体はいくつかの組織を材料としてできている。組織を①上皮組織②支持組織③筋組織④神経組織の4つに大別することができる。
①上皮組織−−体の表面、体腔の内面器官の内空面等、すべての自由表面を覆うもので原則として一般に膜状をなしている。自由表面の保護のほかに場所によって、刺激の感受・吸収・分泌・排泄等の働きをもっていて、形態にも特徴がみられ、その働きによって被蓋上皮・保護上皮・吸収上皮・分泌上皮・感覚上皮等に区分される。
また、細胞の形状や配列によって次のように区別される。
ⓐ扁平上皮−−㋑単層扁平上皮(肺胞や奨膜表面)㋺重層扁平上皮(皮膚・口腔・食道等のように機械的刺激の強く働く体部の表面)
ⓑ円柱上皮−−多角状または立方形で、機械的刺激には弱いが、その代わり吸収や分泌を行う(胃腸のような消化管の主要内部表面)。また、円柱上皮には繊毛上皮というのがある。(参考図5)
〔参考図5〕 上皮組織の模型図
②支持組織−−身体を支える支柱の働きをする組織で、ⓐ骨組織ⓑ軟骨組織ⓒ結合組織等に分けて考えられるも、ともに基質の割合が多く、組織の性質も基質の性質に基づいている。
ⓐ骨組織−−基質が石灰塩類に富み非常に硬く、また血管や神経が分布している。骨の主要素をなしている組織固有の骨細胞は、骨小腔の中にあって、骨細管を介して多数の細い突起で互いに吻合しあっている。(参考図6)
ⓐ骨組織−−基質が石灰塩類に富み非常に硬く、また血管や神経が分布している。骨の主要素をなしている組織固有の骨細胞は、骨小腔の中にあって、骨細管を介して多数の細い突起で互いに吻合しあっている。(参考図6)
〔参考図6〕 骨組織
ⓑ軟骨組織−−軟骨細胞、軟骨基質からできており、基質は線維とおもに蛋白質からなる軟骨質からできており、石灰塩類を含まない。(参考図7)
〔参考図7〕 軟骨組織
ⓒ結合組織−−組織と組織の間にあって両者を結合したり、空間を埋めたりする組織である。血管や神経に富み通路となっている。固有の細胞(線維細胞、形質細胞)はまばらで、線維を含んだ細胞間質が主体をなしている。それで細胞間質は基質と呼ばれ、基質中に細胞が含まれている状態である。
線維には膠原線維・弹性線維・細網線維の3種類があり、線維の種類・量・粗・密・走行方向等が性質に関係する配列状態によって疎性結合組織と強靭結合組織あるいは定形結合組織等に分けられる。
疎性結合組織は線維の走り方が一定せず、肉眼的には水にしたした綿のような感じで、結合とともに充填の役割をしている。これは皮下組織や粘膜下組織をつくっているほか、種々の器官の間や器管の小葉間をみたしている。(参考図8)脂肪組織も1種の疎性結合組織である。
線維には膠原線維・弹性線維・細網線維の3種類があり、線維の種類・量・粗・密・走行方向等が性質に関係する配列状態によって疎性結合組織と強靭結合組織あるいは定形結合組織等に分けられる。
疎性結合組織は線維の走り方が一定せず、肉眼的には水にしたした綿のような感じで、結合とともに充填の役割をしている。これは皮下組織や粘膜下組織をつくっているほか、種々の器官の間や器管の小葉間をみたしている。(参考図8)脂肪組織も1種の疎性結合組織である。
(参考図8〕 疎性結合組織
定形結合組織は線維の配列が密で、そのために丈夫であり一定の形を保っている。腱・靭帯・真皮・粘膜固有層・骨膜等がそれである。(参考図9)
〔参考図9〕 定形結合組織
③筋組織−−運動という役目を担当する組織で、筋細胞(筋線維)の集合体で、筋細胞と間質からなっている筋線維の性質によって平滑筋組織と横紋筋組織に分かれる。
間質は血管や神経の通路となっており、筋細胞は内部に細い筋原線維の並行線条を見ることができるが、この原線維が収縮の本態である。
平滑筋組織は細長い紡錘形の細胞からなり、血管・内臓諸器官・眼球内部の筋・立毛筋などに見られ、意志に随わないから不随意筋ともいう(参考図10)。
間質は血管や神経の通路となっており、筋細胞は内部に細い筋原線維の並行線条を見ることができるが、この原線維が収縮の本態である。
平滑筋組織は細長い紡錘形の細胞からなり、血管・内臓諸器官・眼球内部の筋・立毛筋などに見られ、意志に随わないから不随意筋ともいう(参考図10)。
〔参考図10〕 平滑筋組織
横紋筋組織は筋線維にこまかい横走りの縞が見られるからこの名がついており、長さは普通5〜12cm、太さは30〜80ミクロン(だいたい髪の毛の太さであるが、この太さや長さは、これらの筋繊維が組立てている筋肉の大きさや性格によって違う)で、骨格筋組織をつくっている。また、運動は速やかで意志の命に従うので随意筋ともいう。すべての骨格筋は横紋筋でできている。内臓の中にも咽頭・食道の上半・喉頭などの横に横紋筋をもっているところもある。(参考図11)
〔参考図11〕 横紋筋組織
心筋組織は横紋筋組織の1種であるが、これは心臓組織だけに見られる特殊組織である。
核は細胞の中軸部にあり、筋線維は分岐と結合を反復して網状を呈しており、機能の上からは不随意筋に属する。
④神経組織−−脳・脊髄・神経等をつくっている組織で、神経細胞と神経膠の2つに大別される。
神経組織を構成する単位は、神経元(ノイロン)であり、神経組織とそれから出る神経突起(軸索突起)並びに樹状突起とからなっている。ノイロンから出る2種の突起のうち樹状突起は概して短く、刺激を神経細胞に伝える。神経突起(軸索突起)は概して長く、神経細胞の興奮を他へ送る。突起のうち、線維状に長くのびるものを神経線維とよぶ。神経細胞は主として脳や脊髄等の中枢神経や神経節に見られ、神経線維は末梢神経の主体をなしている。(参考図12)
核は細胞の中軸部にあり、筋線維は分岐と結合を反復して網状を呈しており、機能の上からは不随意筋に属する。
④神経組織−−脳・脊髄・神経等をつくっている組織で、神経細胞と神経膠の2つに大別される。
神経組織を構成する単位は、神経元(ノイロン)であり、神経組織とそれから出る神経突起(軸索突起)並びに樹状突起とからなっている。ノイロンから出る2種の突起のうち樹状突起は概して短く、刺激を神経細胞に伝える。神経突起(軸索突起)は概して長く、神経細胞の興奮を他へ送る。突起のうち、線維状に長くのびるものを神経線維とよぶ。神経細胞は主として脳や脊髄等の中枢神経や神経節に見られ、神経線維は末梢神経の主体をなしている。(参考図12)
〔参考図12〕 神経線維の構造
神経膠は中枢神経における支持組織で、一般体部における結合組織に相当していて、神経の機能には直接関係はない。
C−器 官
いろいろな組織が集まって特別な働きをするものを器官という。すなわち器官とは一定の形と一定の機能をもった体部のことである。
D−器官系
いくつかの器官が一定の順序に連結され、集まって同じ目的の生理作用をするのを系統(器官系)という。たとえば、胃・小腸・大腸・肝臓・膵臓等の器官が集まって消化系統をなすようなものである。
器官系の分け方には、形態学的、あるいは生理学的な立場によっていろいろあるが、本講では一応次の区分に従って記していく。
人体は①骨格系②筋系③循環系(脈管系)④呼吸器系⑤消化器系⑥泌尿器系⑦神経系⑧感覚系⑨生殖器系と内分泌腺の10器官系からなり、各系統は協力して全身の保全をはかっている。
すなわち、人体は細胞→組織→器官→器官系→人体という1種の階層性を見せている。
人体をつくる細胞の数はもちろん正確に算えることはできないが、学者により100兆以上とか200兆前後とか、あるいは30兆とかいわれているが、化学的には非常に多数の元素からできており、体重の約60%にも及ぶ水分と蛋白質・含水炭素・無機質等が構成成分である。(参考表1および2)
C−器 官
いろいろな組織が集まって特別な働きをするものを器官という。すなわち器官とは一定の形と一定の機能をもった体部のことである。
D−器官系
いくつかの器官が一定の順序に連結され、集まって同じ目的の生理作用をするのを系統(器官系)という。たとえば、胃・小腸・大腸・肝臓・膵臓等の器官が集まって消化系統をなすようなものである。
器官系の分け方には、形態学的、あるいは生理学的な立場によっていろいろあるが、本講では一応次の区分に従って記していく。
人体は①骨格系②筋系③循環系(脈管系)④呼吸器系⑤消化器系⑥泌尿器系⑦神経系⑧感覚系⑨生殖器系と内分泌腺の10器官系からなり、各系統は協力して全身の保全をはかっている。
すなわち、人体は細胞→組織→器官→器官系→人体という1種の階層性を見せている。
人体をつくる細胞の数はもちろん正確に算えることはできないが、学者により100兆以上とか200兆前後とか、あるいは30兆とかいわれているが、化学的には非常に多数の元素からできており、体重の約60%にも及ぶ水分と蛋白質・含水炭素・無機質等が構成成分である。(参考表1および2)
〔参考表1〕 人体の原形質の化学的組成
〔参考表2〕人体のおもな器官の化学的成分
すなわち、人体は各種器官系の組合わせでできており、これがどのように運営されているかの問題は生理学であるが、もともと形態と機能は不可分のものである。ある構造を考えるときには必ずその機能をも考える必要がある。
このような意味から各器官系の役割の大要を記してみよう。
①骨格系−−骨が主体をなす身体の支柱である。人体は骨以外はだいたい軟らかい組織でできている。また、骨格には筋肉が結びついていて、骨がお互いに動くようになっているので、受動的運動器官としての役割をも果たしている。
②筋 系−−筋肉という器官の集まりであり、運動をつかさどっている。すなわち能動的運動器官である。ゆえに①の骨格系と合わせて運動系と呼ぶこともある。ただし、身体には平滑筋による内臓や血管等の運動があることも理解すべきである。
③循環系(脈管系)−−血液およびリンパという体液に溶けこんだ物質を体の一部から他の部へ運ぶ役目をしている。身体の内部の運河のようなもので、物質運搬がその役目である。
④呼吸器系−−肺とその附属器官で構成され、空気中から酸素を摂取し、体内で発生した炭酸ガスを放出するこの器官系で摂った酸素は、消化器系で吸収した栄養分を燃焼させて、身体活動のエネルギーを発生させる働きをするとともに、熱を生じ体温を保っている。
放出する炭酸ガスは燃焼のときに生じた分解物の1つである。
⑤消化器系−−身体の組織に必要な物質と、身体の活動に必要なエネルギー源を摂取する役目を果たしている。
⑥泌尿器系−−栄養分の燃焼によって生じる分解物のうち、炭酸ガス以外の産物(主として窒素化合物)を尿として体外に出す役目で、その主体は腎臓である。ただし、尿と大便は区別すべきであり、食物から栄養分を吸収した残滓が大便であり、尿とは全く性質が違うものである。
⑦神経系−−中枢神経と末梢神経とに分けられるが、いずれも身体内部の通信情報機関である。中枢神経(脳および脊髄)は未梢神経から集められた情報に適当に反応して、これを再び末梢神経によって筋肉や腺に伝達する仕事をしており、身体各部の連絡をとり、身体を1つの有機体にまとめている。
⑧感覚系−−外界の情報を神経に伝える器官系で、求心性神経の終末器官と考えてよい。
⑨生殖器系−−個体の生命保存になくてはならないもので、種族維持を使命とする。
⑩内分泌系−−形態的には1つの系統に属するものではなく、いろいろの系統に属しており、俗にホルモンと呼ばれる種々の化学物質を血液の中に送り、発育や機能を調整する。
以上が人体の組立ての大要である。(各系統参考図は後述各項にて)
このような意味から各器官系の役割の大要を記してみよう。
①骨格系−−骨が主体をなす身体の支柱である。人体は骨以外はだいたい軟らかい組織でできている。また、骨格には筋肉が結びついていて、骨がお互いに動くようになっているので、受動的運動器官としての役割をも果たしている。
②筋 系−−筋肉という器官の集まりであり、運動をつかさどっている。すなわち能動的運動器官である。ゆえに①の骨格系と合わせて運動系と呼ぶこともある。ただし、身体には平滑筋による内臓や血管等の運動があることも理解すべきである。
③循環系(脈管系)−−血液およびリンパという体液に溶けこんだ物質を体の一部から他の部へ運ぶ役目をしている。身体の内部の運河のようなもので、物質運搬がその役目である。
④呼吸器系−−肺とその附属器官で構成され、空気中から酸素を摂取し、体内で発生した炭酸ガスを放出するこの器官系で摂った酸素は、消化器系で吸収した栄養分を燃焼させて、身体活動のエネルギーを発生させる働きをするとともに、熱を生じ体温を保っている。
放出する炭酸ガスは燃焼のときに生じた分解物の1つである。
⑤消化器系−−身体の組織に必要な物質と、身体の活動に必要なエネルギー源を摂取する役目を果たしている。
⑥泌尿器系−−栄養分の燃焼によって生じる分解物のうち、炭酸ガス以外の産物(主として窒素化合物)を尿として体外に出す役目で、その主体は腎臓である。ただし、尿と大便は区別すべきであり、食物から栄養分を吸収した残滓が大便であり、尿とは全く性質が違うものである。
⑦神経系−−中枢神経と末梢神経とに分けられるが、いずれも身体内部の通信情報機関である。中枢神経(脳および脊髄)は未梢神経から集められた情報に適当に反応して、これを再び末梢神経によって筋肉や腺に伝達する仕事をしており、身体各部の連絡をとり、身体を1つの有機体にまとめている。
⑧感覚系−−外界の情報を神経に伝える器官系で、求心性神経の終末器官と考えてよい。
⑨生殖器系−−個体の生命保存になくてはならないもので、種族維持を使命とする。
⑩内分泌系−−形態的には1つの系統に属するものではなく、いろいろの系統に属しており、俗にホルモンと呼ばれる種々の化学物質を血液の中に送り、発育や機能を調整する。
以上が人体の組立ての大要である。(各系統参考図は後述各項にて)
〈2〉解剖学用語について
解剖学で使われる用語であるが、肉眼的な現象に対しては、万国共通に用いられるように「ラテン語」が定められている。各国ではそれぞれ各国独自の用語と対称され、合わせ用いられているが、現在は1955年に決定され1960年に補修されたPNA(パリ解剖学名)が用いられている。
わが国では「日本解剖学会編・解剖学用語」がそれで、PNA(1965年)と対照される11版(1969年)が用いられている。
それらのうち「からだの方向」「形態用語」について、とくに正しい意味を知っておく必要がある重要なものについて記しておく。体部と部位については参考図②③および(⑬を参照されたい。
わが国では「日本解剖学会編・解剖学用語」がそれで、PNA(1965年)と対照される11版(1969年)が用いられている。
それらのうち「からだの方向」「形態用語」について、とくに正しい意味を知っておく必要がある重要なものについて記しておく。体部と部位については参考図②③および(⑬を参照されたい。
〔参考図13〕 からだの部位
A−方向を示す用語(参考図14)
〔参考図14〕 からだの解剖学的方向
〇矢状面−−身体を前後に貫く垂直面のことで、矢状面は無数であるが、そのうち身体の真中をとおるものを正中面といい、この面が身体と交わる線を正中線という。また、身体を水平に前後に貫く方向を矢状という。
〇前額面−−矢状面に垂直に貫く垂直面を前額面といい、その方向を前頭(前頭方向)という。
〇水平面−−直立位で地面に平行な面のことで、「矢状面」「前額面」とはそれぞれ直交する。
〇内側と外側−−身体の同側にある2点のうち、正中面に近い方を内側、遠い方を外側という。たとえば、外側翼突筋・内側翼突筋がその例である。
〇内と外−−(前述の内側と外側と間違えないよう注意) 2点のうち、身体の中心に近いものを内、遠いものを外という。これを深および浅ということもある。すなわち、身体や器官の表面から遠いか近いかをいっているものである。例、浅胸筋・深胸筋。
〇前と後−−直立位で身体の前面に近い方を前、後面に近い方を後というこれを腹側、背側ということもある例、脳脊髄神経の前根・後根。
〇上と下−−直立位においての方向であるが、体幹においては頭側、尾側というように用いることもある。
〇近位と遠位−−主として四肢に用いられ、2点のうち、体幹に近い方を近位、遠い方を遠位という。
B−形体(形態)用語
〇体−−骨または器官の中央部を占める大きな部分。例、上腕骨体・子宮体。ただし「○○○のような形(または構造)の器官」という意味に用いられることもある。例、毛様体。
〇頭−−骨その他の器官の端の丸くなって肥厚した部分。例、上腕骨頭。
〇葉−−器官を大きく区分したとき、その各部をいう。例、脳の前頭葉・後頭葉・頭頂葉。また、葉をさらに細かい形態単位に分けた場合、これを小葉というように用いることもある。
〇門−−器官の表面において導管・脈管・神経などが出入りするところ。普通1つの器官には1つの門がありその部分は少しくぼんでいる。例、肺門。
〇窩−−表面からくぼんでいるところで、骨にも軟部にも用いる。例、腋窩。
〇切痕−−骨その他の器官のへりのところで、刀でえぐったように彎入している場所をいう。例、坐骨切痕。
裂−−さけめのような狭い間げき。例、大脳縦裂。
洞−−ほらあなの意味であるが、いろいろ異なった意味に用いられる。例、胸膜洞・静脈洞・リンパ洞・上顎洞。
前庭−−本室の手前の室を示し、玄関というような意味である。例、口腔前庭・膣前庭。
突起−−表面からつき出ている部分で、多くは骨に用いられるが、内臓器官その他いろいろなものに使われている。例、乳様突起。
顆−−尖端の肥厚している突起をいう。例、頭顆。
結節−−周囲から比較的はっきりと区別された肥厚部で、むすびこぶのようになったところ。例、耳介結節。
粗面−−骨にあって、周囲から多少隆起してザラザラした面で、筋肉の付着面をなしている。例、橈骨粗面。
棘−−骨にあって、トゲのように尖った小さい突出部。例、坐骨棘。
稜−−長く連なった隆起部。例、腸骨稜。
襞−−膜様の軟部が折れ曲って、2重層をつくり、表面から隆起しているもの。例、小腸の輪状ひだ。
乳頭−−乳首状の突出部をいう。例舌乳頭·賢乳頭。
以上、解剖学の緒論的事項の大略を述べたが、次回は第2節・骨格系について述べる予定である。なお、参考文献は前号で紹介したが、各章の終わりに各部門別に紹介する。
〇前額面−−矢状面に垂直に貫く垂直面を前額面といい、その方向を前頭(前頭方向)という。
〇水平面−−直立位で地面に平行な面のことで、「矢状面」「前額面」とはそれぞれ直交する。
〇内側と外側−−身体の同側にある2点のうち、正中面に近い方を内側、遠い方を外側という。たとえば、外側翼突筋・内側翼突筋がその例である。
〇内と外−−(前述の内側と外側と間違えないよう注意) 2点のうち、身体の中心に近いものを内、遠いものを外という。これを深および浅ということもある。すなわち、身体や器官の表面から遠いか近いかをいっているものである。例、浅胸筋・深胸筋。
〇前と後−−直立位で身体の前面に近い方を前、後面に近い方を後というこれを腹側、背側ということもある例、脳脊髄神経の前根・後根。
〇上と下−−直立位においての方向であるが、体幹においては頭側、尾側というように用いることもある。
〇近位と遠位−−主として四肢に用いられ、2点のうち、体幹に近い方を近位、遠い方を遠位という。
B−形体(形態)用語
〇体−−骨または器官の中央部を占める大きな部分。例、上腕骨体・子宮体。ただし「○○○のような形(または構造)の器官」という意味に用いられることもある。例、毛様体。
〇頭−−骨その他の器官の端の丸くなって肥厚した部分。例、上腕骨頭。
〇葉−−器官を大きく区分したとき、その各部をいう。例、脳の前頭葉・後頭葉・頭頂葉。また、葉をさらに細かい形態単位に分けた場合、これを小葉というように用いることもある。
〇門−−器官の表面において導管・脈管・神経などが出入りするところ。普通1つの器官には1つの門がありその部分は少しくぼんでいる。例、肺門。
〇窩−−表面からくぼんでいるところで、骨にも軟部にも用いる。例、腋窩。
〇切痕−−骨その他の器官のへりのところで、刀でえぐったように彎入している場所をいう。例、坐骨切痕。
裂−−さけめのような狭い間げき。例、大脳縦裂。
洞−−ほらあなの意味であるが、いろいろ異なった意味に用いられる。例、胸膜洞・静脈洞・リンパ洞・上顎洞。
前庭−−本室の手前の室を示し、玄関というような意味である。例、口腔前庭・膣前庭。
突起−−表面からつき出ている部分で、多くは骨に用いられるが、内臓器官その他いろいろなものに使われている。例、乳様突起。
顆−−尖端の肥厚している突起をいう。例、頭顆。
結節−−周囲から比較的はっきりと区別された肥厚部で、むすびこぶのようになったところ。例、耳介結節。
粗面−−骨にあって、周囲から多少隆起してザラザラした面で、筋肉の付着面をなしている。例、橈骨粗面。
棘−−骨にあって、トゲのように尖った小さい突出部。例、坐骨棘。
稜−−長く連なった隆起部。例、腸骨稜。
襞−−膜様の軟部が折れ曲って、2重層をつくり、表面から隆起しているもの。例、小腸の輪状ひだ。
乳頭−−乳首状の突出部をいう。例舌乳頭·賢乳頭。
以上、解剖学の緒論的事項の大略を述べたが、次回は第2節・骨格系について述べる予定である。なお、参考文献は前号で紹介したが、各章の終わりに各部門別に紹介する。
月刊ボディビルディング1974年1月号
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