フィジーク・オンライン

"ハヤシライス"

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1974年2月号
掲載日:2018.07.15
記事画像1
野沢秀雄

〈西洋料理か日本料理か?〉

 海外旅行にいった人なら気づくことだが、カレーライスやハヤシライスはどこの国の食堂にもない。

 洋食皿に盛って出されるので、西洋料理とまちがいやすいが、実は純ジャパニーズだ。ただし、名前の由来は海を渡ってきたもので、カレーライスはCurry and riceの略。Curryとは北インド地方の方言のkari。つまりソースを意味する。また「ハヤシもあるでよ」のハヤシライスはhashed rice、つまり小さい肉の入ったごはん料理をいう。

 前回のカレーライスに引きつづいて今回はハヤシライスを登場させよう。

〈スタミナの秘密〉

 カレーライスとハヤシライスの共通点は、どちらも肉・野菜・フルーツ・スパイスなどをよく煮こみ、ドロリとしたソース状のものをつくることにある。ちがう点は、カレーライスが「うこん」という植物からとった黄色の粉末を用いるのに対し(「うんこ」ではないので念のため)、ハヤシライスは、トマトピューレ(トマトをつぶしたもの)やトマトケチャップを使うことだ。さらに、カレーライスがクミンやコリアンダー、フェネグリ、桂皮、ニクズク、丁字、ウイキョウ、デイル、カルダモン、メースなどの香味料と干しょうが、干とうがらし、こしょうなどの香辛料を併用して、ピリピリしたカラさをきかせるのに対し、ハヤシライスは、タマネギ、パセリ、セロリ、グリーンピースなどの野菜によって香辛料の代理をさせる点がちがっている。

 また、観察力のするどい人なら、カレーライスの肉が角切りで大きいのに対し、ハヤシライスの肉は、こまぎれのように小さくなってることに気づくだろう。

 さて、スタミナの秘密は、動物性タンパク質の肉と、植物性の野菜をふんだんに使っているので、単品料理としてバランスがとれていること。また、カレーライスと同様に、バターや油を使用するので、カロリーの高い点にある。さらに、トマトには、浄血・消化促進作用があるので、体内への栄養吸収をよくする効果がある。

 そのほか一般に共通することだが、ニンジンには強精作用があり、神経衰弱に効果がみられ、タマネギには浄血・発汗・消化促進・興奮作用がある。また、じゃがいもには浣腸・殺菌・粘膜強化作用、ラッキョウには消化促進・発汗・駆虫・肺結核の治療効果などがあるといわれる。

 つまり、「食は医なり」と中国医学でよくいわれるように、ふだん台所にあるもので、薬理効果があるものを、それとは気づかずに毎日食べており、それが健康につながっているのだ。

〈ハイバルに抜かれるとき〉

 ハヤシライスは砂糖を特別に加えなくても、野菜に含まれている甘味のために、どちらかというと子供たちに人気が高い。といっても人気が高いのは小学校4年生くらいまで。このころになると大人の世界にあこがれの気持を持つため、カレーの辛みに対して「じっとがまんの子」顔をしかめながら「おいしいね、パパ」とかなんとかいいながら、大人と同じものを食べる喜びに満足する。最近は身心の発達が早いせいか、ハヤシライスが人気の座を明け渡すのも、だんだん早くなりつつある。

 だが、どちらが高級料理かとなるとハヤシライスの方に軍配があがる。レストランのメニューをみると、たいていハヤシライスの方が50円程度値段が高い。材料に、パセリやグリーンピースなどを必要とするほか、じっくりとていねいに煮込まないと、味がまずくなるためであろう。

〈じょうずな食べ方〉

 ハヤシライスは、ルウを使いさえすれば誰にでも簡単にできる。料理なべにサラダ油をひき野菜をいためる。はしが通るようになったら、肉100gを加える。適当量の水を加えて、やや煮たったところヘルウを加える。よく煮こむ。最後にグリーンピースと、きざんだパセリを加えるとでき上がり。スタミナをつけたいときは、トンカツやウインナーソーセージを同時にとりあわすとよい。

 外食のときも同様に、200円のカレーライスよりも250円のカツカレーを食べた方が栄養的にも得である。ハヤシライスの場合も同様のことがいえる。専門店ではラッキョウやショウガを出してくれるところが多い。遠慮しないで充分食べることがスタミナによいのだ。粉末チーズをパラパラ振りかけると、また変わった味になる。生卵がある店なら、1個つけることにより、カロリーもタンパク質もグーンと向上する。

 夕食にハヤシライスを採用したときのカロリー計算は次のとおり。
記事画像2
月刊ボディビルディング1974年2月号

Recommend