なんでもQ&Aお答えします 1974年3月号
月刊ボディビルディング1974年3月号
掲載日:2018.07.07
睡眠不足はトレーニングにどう影響するか?
Q 私は毎日の仕事における拘束時間が長く、勤務後トレーニングすると就寝時刻が深夜になってしまい、平均睡眠時間が6~7時間しかとることができません。
このことはトレーニングにどの程度のマイナスとなるのでしょうか。理想的には8時間以上の睡眠をとるのが良いことはわかっていますが、それ以下の睡眠時間でも筋肉は発達していくのでしょうか。(仙台市・高山順三)
このことはトレーニングにどの程度のマイナスとなるのでしょうか。理想的には8時間以上の睡眠をとるのが良いことはわかっていますが、それ以下の睡眠時間でも筋肉は発達していくのでしょうか。(仙台市・高山順三)
A
ボディビルに必要な三大要素は運動、栄養、休養です。その中でどれが最も大切なものであるかは簡単にはいえません。しかし、休養のうちの睡眠ひとつをとっても非常に大きな役割を占めていることには違いなく、睡眠が不足であればトレーニング効果も当然マイナスになることは確実です。
では何時間の睡眠不足であるときは何%ぐらいのマイナスになるかは非常に難しい問題ですが、それだけにまた考えてみる意義もあるというものです。
睡眠は時間だけで決定されるものではなく、睡眠の深さということも重視しなければなりません。したがって、何時間の睡眠ならそれでよいとは一概にはいえません。
それにもう1つ大切なことは、何時から睡眠に入るかということです。同じ8時間睡眠をとったとしても、夜の10時に床につく人と、深夜の1時か2時に床につく人とでは、疲労の回復度という点で大きな差が生じてきます。一般的には夜10時頃に睡眠に入るのが理想的とされています。
このようなことから、何時頃に床につき、何時間睡眠をとり、どの程度深く眠ったかが問題になるのです。あなたのように睡眠時間が多少短くても、毎日だいたい決まった時刻に就寝できるのはまだ幸いでしょう。交替制の勤務の人の場合は、毎日一定した生活のリズムを保つことが難しく、たとえ8時間以上寝たとしても充分な睡眠量を確保したとは断定できません。
睡眠の果す役割は大きく、「ビルダーは夜つくられる」とも言えるほどだと思います。睡眠中は自律神経における副交感神経の緊張状態を保ち、物質代謝も同化します。これが不足すると良くなるべき体も良くなりません。
8時間の睡眠を完全な睡眠量として100%とした場合、7時間のときの睡眠効果は95%、6時間では90%、5時間では75%、4時間では55%ぐらいだという説もあり、それから考えるとあなたの6~7時間という睡眠は90~95%の睡眠効果だといえます。ただしこのパーセンテージは最も理想的な時刻に睡眠についたときの数字です。あなたの場合は深夜の就寝ですから、多少これよりマイナスかも知れません。だいたい85~90%程度でしょう。この程度の睡眠時間であればとくにトレーニング効果に影響はないと思います。もっとも、これは計算上のことでありあなたが毎日ぐっすり寝ている実感がなければやはり寝不足です。
では次に、睡眠時間が長ければ長いほど、物質代謝の同化や疲労の回復が促進されるかというと、必ずしもそうではないのです。あまりに長い睡眠は寿命を短縮したり、頭脳の働きに悪影響を与えるという人もいます。しかしこれとても個人差があり、毎日9時間以上眠らなければ疲労がとれないという人もいます。
毎度私ごとで恐縮ですが、筆者(そんなイメージでもないのですが)は毎日9時間から10時間も寝ています。そんな習慣がついてしまったためか、8時間の睡眠ではその日1日中寝不足気味で、頭がガンガン痛むほどです。何年か前に仕事の関係で1日平均6時間の睡眠しかとらなかったこともありますが、そのときはそれが習慣になってしまってそれほど寝不足とも思わず、トレーニングにマイナスだったとも感じませんでした。
それがここ数年、必要以上とも思える睡眠をとる習慣がついてしまったので、前述のデータのように頭脳の働きが悪くなっているのかも知れません。なんとなくそんな実感もあり、そうでなくても悪いのに、いまではこのように支離滅裂な文章を書いているありさまですから本当のことでしょう。これで私の寿命が短命だったらこのデータは確実です。
私の最近の親友であるJFBB‘73ミスター・オールジャパンの坂口賢三氏は睡眠時間が非常に短く、その分は栄養で補っていると笑ってうそぶいています。このように、あまり神経質に物事を考えないさっぱりした性格が疲労回復にプラスしているのかも知れません。
結論は6時間ぐらいまでの時間であればとくに気にすることはないということです。それと、自分自身がそれだけの睡眠時間で十分だと感じているのであればそれでよいのです。
ボディビルに必要な三大要素は運動、栄養、休養です。その中でどれが最も大切なものであるかは簡単にはいえません。しかし、休養のうちの睡眠ひとつをとっても非常に大きな役割を占めていることには違いなく、睡眠が不足であればトレーニング効果も当然マイナスになることは確実です。
では何時間の睡眠不足であるときは何%ぐらいのマイナスになるかは非常に難しい問題ですが、それだけにまた考えてみる意義もあるというものです。
睡眠は時間だけで決定されるものではなく、睡眠の深さということも重視しなければなりません。したがって、何時間の睡眠ならそれでよいとは一概にはいえません。
それにもう1つ大切なことは、何時から睡眠に入るかということです。同じ8時間睡眠をとったとしても、夜の10時に床につく人と、深夜の1時か2時に床につく人とでは、疲労の回復度という点で大きな差が生じてきます。一般的には夜10時頃に睡眠に入るのが理想的とされています。
このようなことから、何時頃に床につき、何時間睡眠をとり、どの程度深く眠ったかが問題になるのです。あなたのように睡眠時間が多少短くても、毎日だいたい決まった時刻に就寝できるのはまだ幸いでしょう。交替制の勤務の人の場合は、毎日一定した生活のリズムを保つことが難しく、たとえ8時間以上寝たとしても充分な睡眠量を確保したとは断定できません。
睡眠の果す役割は大きく、「ビルダーは夜つくられる」とも言えるほどだと思います。睡眠中は自律神経における副交感神経の緊張状態を保ち、物質代謝も同化します。これが不足すると良くなるべき体も良くなりません。
8時間の睡眠を完全な睡眠量として100%とした場合、7時間のときの睡眠効果は95%、6時間では90%、5時間では75%、4時間では55%ぐらいだという説もあり、それから考えるとあなたの6~7時間という睡眠は90~95%の睡眠効果だといえます。ただしこのパーセンテージは最も理想的な時刻に睡眠についたときの数字です。あなたの場合は深夜の就寝ですから、多少これよりマイナスかも知れません。だいたい85~90%程度でしょう。この程度の睡眠時間であればとくにトレーニング効果に影響はないと思います。もっとも、これは計算上のことでありあなたが毎日ぐっすり寝ている実感がなければやはり寝不足です。
では次に、睡眠時間が長ければ長いほど、物質代謝の同化や疲労の回復が促進されるかというと、必ずしもそうではないのです。あまりに長い睡眠は寿命を短縮したり、頭脳の働きに悪影響を与えるという人もいます。しかしこれとても個人差があり、毎日9時間以上眠らなければ疲労がとれないという人もいます。
毎度私ごとで恐縮ですが、筆者(そんなイメージでもないのですが)は毎日9時間から10時間も寝ています。そんな習慣がついてしまったためか、8時間の睡眠ではその日1日中寝不足気味で、頭がガンガン痛むほどです。何年か前に仕事の関係で1日平均6時間の睡眠しかとらなかったこともありますが、そのときはそれが習慣になってしまってそれほど寝不足とも思わず、トレーニングにマイナスだったとも感じませんでした。
それがここ数年、必要以上とも思える睡眠をとる習慣がついてしまったので、前述のデータのように頭脳の働きが悪くなっているのかも知れません。なんとなくそんな実感もあり、そうでなくても悪いのに、いまではこのように支離滅裂な文章を書いているありさまですから本当のことでしょう。これで私の寿命が短命だったらこのデータは確実です。
私の最近の親友であるJFBB‘73ミスター・オールジャパンの坂口賢三氏は睡眠時間が非常に短く、その分は栄養で補っていると笑ってうそぶいています。このように、あまり神経質に物事を考えないさっぱりした性格が疲労回復にプラスしているのかも知れません。
結論は6時間ぐらいまでの時間であればとくに気にすることはないということです。それと、自分自身がそれだけの睡眠時間で十分だと感じているのであればそれでよいのです。
トレーニング・パートナーとの効率的なトレーニング法は?
Q いつも一緒にトレーニングができるパートナーがいれば楽しくしかも効果的に練習ができると思います。つきましてはトレーニング・パートナーと練習するときの最も効率の良いトレーニング方法等を教えてください
(愛知県・池田晴夫)
(愛知県・池田晴夫)
A
トレーニング・パートナーとは、たんに友人と一緒にトレーニングすることを意味するのではなく、自分1人ではできない範囲の運動をもパートナーの補助を借りて鍛えようとするところにその目的があります。
トレーニング・パートナーがいなくてもトレーニングはできますが、パートナーがいた場合の方が多くの点で効率的ですので、できるだけパートナーを見つけることをお勧めします。しかし、パートナーと自分との歯車が噛み合っていないときには逆にマイナスになることもあるくらいですから、2人のトレーニングがお互いにプラスになるように、いつも注意することです。2人の人間が長期間一緒にトレーニングを続けることは、それ自体がすでにたいへん難しいことで、長い間には2人のコミニケーション上のトラブルも生じて、うまくいかなくなるかも知れません。
その他、いろいろの障害も数知れません。2~3列挙してみますと、①パートナーとのトレーニング時間が自分と合わない。②パートナーのボディビルのレベルと自分のレベルとの差があり過ぎる。③パートナーとスケジュールの意見が食い違う。等が考えられます。
バーベルを相手にする以前にパートナーとうまくいかなくてはなりません。ひと口にトレーニング・パートナといっても、すべての条件が自分とうまく合っている人を見付けるのは容易ではありませんし、トレーニングを始めてからいろいろ面倒くさいことも多く、いない方がずっとスッキリしていてトレーニングし易いと思うことも起きてきます。しかし、適当なパートナーがいれば楽しく変化に富んだトレーニングもできますし、いろいろな危険からも解放され、お互いに叱咤激励し合えばスランプな時も簡単に克服できたり、1人でやるよりはるかに効果的であることはいまさらいうまでもありません。
ジムでパートナーを探す場合は、自分と同じ程度のレベルの人を選ぶか、あるいは自分より少し上のレベルの人を選ぶのが適当です。そして、レベル以上に大切なもう1つの点は、自分とうまくやって行くことができそうな人を見つけることです。
自宅で練習している人の場合は、近所のボディビル愛好者を見つけてパートナーにしなければなりませんので、探すのではなく、この場合はパートナーをつくるのです。そのときはレベルの差は問題ではなく、良いパートナーとなるように指導していかなくてはなりません。
さて、あなたのご質問のトレーニング法について述べましょう。
パートナーと自分との間に体格上、筋力上の差がある場合にはハンディキャップをつけることです。トレーニングを通じて体力の弱い方の人が数キロ軽いウェイトを使用するか、あるいは体力差が少しの場合は、同じウェイトを使って回数の方でハンディキャップをつけるのが良いでしょう。
そして、体力の弱い方の人は少しでも体力の強いパートナーに近づこうと努力し、強い人は逆にこの差をさらに引き離そうと努力しなければなりません。友人であっても妥協していては効果が薄れてしまいます。2人とも常に全力でトレーニングすることです。
最初から重量や回数にハンディをつけたトレーニングの場合は、トレーニングを積むにしたがって弱い人の方が楽になる傾向がありますので、そのときは当然、ウェイトや回数を調節しなければなりません。スタミナの個人差もありますから、その点についても考慮して進行していくことです。トレーニングは2人が同時に行なっていく方法もありますが、これは器具が2人分無いとできませんし、補助もできないので不便です。
1人がトレーニングしているときは一方の人がかけ声をかけてやったり、補助をしてやる方が良いでしょう。交替交替でトレーニングすれば、どちらか一方の人が常に休息しているわけですから、セット間のインターバルもスムーズにとれて一石二鳥です。
パートナー同士はトレーニング中にボディビル以外の話をしないことも大切です。トレーニングに関係のない会話は必要以上にインターバルを長くする元ですから気をつけてください。
シーソー・ゲームのように、お互いにどちらかが終わったら直ぐにまたトレーニングを開始して、一定のリズムをつくるところがパートナー・トレーニングのポイントです。そして、スケジュールの中に、パートナーの補助を借りて行うフォースド・レピティションズ法を入れることができるので、筋力の増大に多大な効果を期待できる点が、このパートナー・トレーニングの最大の長所でもあります。
フォースド・レピティションズ法とは、自分の力ではもう持ち上げることができなくなった状態から、パートナーの補助によってさらに何回か持ち上げる方法です。ベンチ・プレス、アーム・カール、チンニング等にとくに有効で、これをともにかけ声をかけ合いながらトレーニングすれば、1人で練習するよりも早い期間に効果が出るでしょう。シット・アップも2人で行う方が精神的にも楽にできます。
トレーニング・パートナーとは、たんに友人と一緒にトレーニングすることを意味するのではなく、自分1人ではできない範囲の運動をもパートナーの補助を借りて鍛えようとするところにその目的があります。
トレーニング・パートナーがいなくてもトレーニングはできますが、パートナーがいた場合の方が多くの点で効率的ですので、できるだけパートナーを見つけることをお勧めします。しかし、パートナーと自分との歯車が噛み合っていないときには逆にマイナスになることもあるくらいですから、2人のトレーニングがお互いにプラスになるように、いつも注意することです。2人の人間が長期間一緒にトレーニングを続けることは、それ自体がすでにたいへん難しいことで、長い間には2人のコミニケーション上のトラブルも生じて、うまくいかなくなるかも知れません。
その他、いろいろの障害も数知れません。2~3列挙してみますと、①パートナーとのトレーニング時間が自分と合わない。②パートナーのボディビルのレベルと自分のレベルとの差があり過ぎる。③パートナーとスケジュールの意見が食い違う。等が考えられます。
バーベルを相手にする以前にパートナーとうまくいかなくてはなりません。ひと口にトレーニング・パートナといっても、すべての条件が自分とうまく合っている人を見付けるのは容易ではありませんし、トレーニングを始めてからいろいろ面倒くさいことも多く、いない方がずっとスッキリしていてトレーニングし易いと思うことも起きてきます。しかし、適当なパートナーがいれば楽しく変化に富んだトレーニングもできますし、いろいろな危険からも解放され、お互いに叱咤激励し合えばスランプな時も簡単に克服できたり、1人でやるよりはるかに効果的であることはいまさらいうまでもありません。
ジムでパートナーを探す場合は、自分と同じ程度のレベルの人を選ぶか、あるいは自分より少し上のレベルの人を選ぶのが適当です。そして、レベル以上に大切なもう1つの点は、自分とうまくやって行くことができそうな人を見つけることです。
自宅で練習している人の場合は、近所のボディビル愛好者を見つけてパートナーにしなければなりませんので、探すのではなく、この場合はパートナーをつくるのです。そのときはレベルの差は問題ではなく、良いパートナーとなるように指導していかなくてはなりません。
さて、あなたのご質問のトレーニング法について述べましょう。
パートナーと自分との間に体格上、筋力上の差がある場合にはハンディキャップをつけることです。トレーニングを通じて体力の弱い方の人が数キロ軽いウェイトを使用するか、あるいは体力差が少しの場合は、同じウェイトを使って回数の方でハンディキャップをつけるのが良いでしょう。
そして、体力の弱い方の人は少しでも体力の強いパートナーに近づこうと努力し、強い人は逆にこの差をさらに引き離そうと努力しなければなりません。友人であっても妥協していては効果が薄れてしまいます。2人とも常に全力でトレーニングすることです。
最初から重量や回数にハンディをつけたトレーニングの場合は、トレーニングを積むにしたがって弱い人の方が楽になる傾向がありますので、そのときは当然、ウェイトや回数を調節しなければなりません。スタミナの個人差もありますから、その点についても考慮して進行していくことです。トレーニングは2人が同時に行なっていく方法もありますが、これは器具が2人分無いとできませんし、補助もできないので不便です。
1人がトレーニングしているときは一方の人がかけ声をかけてやったり、補助をしてやる方が良いでしょう。交替交替でトレーニングすれば、どちらか一方の人が常に休息しているわけですから、セット間のインターバルもスムーズにとれて一石二鳥です。
パートナー同士はトレーニング中にボディビル以外の話をしないことも大切です。トレーニングに関係のない会話は必要以上にインターバルを長くする元ですから気をつけてください。
シーソー・ゲームのように、お互いにどちらかが終わったら直ぐにまたトレーニングを開始して、一定のリズムをつくるところがパートナー・トレーニングのポイントです。そして、スケジュールの中に、パートナーの補助を借りて行うフォースド・レピティションズ法を入れることができるので、筋力の増大に多大な効果を期待できる点が、このパートナー・トレーニングの最大の長所でもあります。
フォースド・レピティションズ法とは、自分の力ではもう持ち上げることができなくなった状態から、パートナーの補助によってさらに何回か持ち上げる方法です。ベンチ・プレス、アーム・カール、チンニング等にとくに有効で、これをともにかけ声をかけ合いながらトレーニングすれば、1人で練習するよりも早い期間に効果が出るでしょう。シット・アップも2人で行う方が精神的にも楽にできます。
ストリクト・スタイルは余分な動作が多くはないか?
Q 小生、トレーニングを始めて5年のビルダーです。いつも疑問に感じているのはトレーニングによる関節の可動範囲の問題です。アーム・カールを例にとると、完全に正しくストリクト・スタイルでカールする場合と、半分だけカールするいわゆるハーフ・カールとではどちらが筋肉に対して効果があるか、その点を知りたいのです。
関節の柔軟性、その他を無視して、筋肉についてだけ考えると、ハーフ・カールの方が効果が大きいように思えるのです。ストリクト・スタイルには無駄な動きが多いように感じられますがいかがでしょうか。(福岡N・K)
関節の柔軟性、その他を無視して、筋肉についてだけ考えると、ハーフ・カールの方が効果が大きいように思えるのです。ストリクト・スタイルには無駄な動きが多いように感じられますがいかがでしょうか。(福岡N・K)
A
あなたの質問を一口に申しますと、ハーフ・レインジ(半分の運動領域)の方が、フル・レインジ以上の効果があるのではないか、ということだと思います。
トレーニングもあなたのようにキャリアを積んでくると、より効果的に、より無駄のないようにといろいろ研究したり、疑問をもったりするようになるものです。その結果、フル・レインジのトレーニングよりハーフ・レインジの方がより効果的ではないかと疑問をもったのも当然だと思います。
あなたに限らず、長年トレーニングをしている人は、このこと以外にも考えれば考えるほどいろいろと疑問点が多くなってくるものです。
ビルダーのビフォア・アンド・アフターのように、全くトレーニングを経験したことがなく、しかも、ほとんど同じ体格の2人が、一方はハーフ・レインジだけのトレーニングをし、もう一方の人はフル・レインジの普通のトレーニングをして、1年後ぐらいの効果を比較できれば一番良いのですが、そんなことはいろいろな面から考えて不可能です。もし可能ならばこの問題はすぐに解決してしまうのに残念なことです。
初心者の立場からみれば、1回の動作を始めから終わりまで正確に行なってこそトレーニングの楽しみが生まれてくるというものなのに、なにも中途半端に半分動作して元に戻してしまうハーフ・レインジなどやらなくても良いだろうと考えると思いますが、上級者ともなれば、トレーニングの楽しさよりもほんのチョットでも効果的でさえあれば、その方法を採用したくなるものです。アイソメトリックスであれランニングであれ、一般のボディビル愛好者が嫌がるものも何のそのです。
ではアーム・カールを例にとって説明しましょう。
運動を開始してから終了までのうち、どの関節角度のときが最も筋肉に対して刺激を与えるかというと、肘の関節が90度のときが一番であるといわれています。難しくいえば関節角特異性といわれるもので、90度からその前後プラス、マイナス20度の範囲ぐらいしかトレーニング効果はないとのことです。したがって、フル・レインジの動範囲からその範囲の運動だけを取り出してトレーニングするのが効果的だという理屈になるわけです。それが要するにハーフ・レインジだということになるのです。
ただし、この場合のハーフ・レインジは、スタートから終了までの運動範囲をスッパリと半分にしたところの前半分と後半分を指してハーフだと解釈するのではなく、スタートと終わりの角度の一部分をカットし、その中間の最も効果的な部分を指したハーフ・レインジです。
しかし、これに対して次のようなことも考えられます。
たとえば、約2時間の劇場映画を1時半の時間内にテレビ放映しようとするとき、その映画の良いところだけ映して、比較的重要でないと思われる部分をカットするのと同じです。しかし、カットを担当したスタッフ本人は、良いところだけ選んだ濃縮ジュースみたいな立派な映画だと信じていますが、それを見た視聴者は、カットされた部分にこそその映画の良さがあったのではないかと思うかも知れません。
ハーフ・レインジ法もこれに似ていて、運動力学上から考えたのだから絶対だと思っても、現在ではその絶対であるべきあかしはできていないので、あるいはフル・レインジよりも欠点が多いかも知れないところも残っていると思います。
こうして考えれば考えるほどボディビルとは深いもので、運動動作は単純でありながら、理論付けは難しく、そこにまたボディビルの面白さもあるのでしょう。
話を元に戻して関節角特異性について考えてみると、いままでのトレーニングは間違っているのではないか?余分な動作が多くあったのではないか?とあなたの思っていると同じ疑問に突きあたるわけです。もしこれが事実であったとしても、いままでのトレーニングで立派な体格になれることをボディビルの歴史が実証しているのですから、それで満足すべきかも知れません。しかしまた、より以上に深く研究し、より短期間に筋肥大を可能にする方法があるかも知れないので、それを深く追求すべきかも知れません。
次にハーフ・レインジはフル・レインジより効果が大きいかも知れませんが、ハーフ・レインジだけを長期間続けると筋肉の可動範囲制限を起こすともいわれています。だがこれもまた確実な証拠があるわけではありません。ハーフ・レインジだけを行うのではなく、フル・レインジと交互に行うか、短期間に限って行うのが良いだろうという説もありますが、本当にハーフ・レインジの方がフル・レインジよりも効果があるとしたら、ハーフ・レインジだけをやりたいのが人情です。可動範囲制限うんぬんも、ハーフ・レインジだけを数カ月、あるいは数年間実施したからといって、筋肉の可能範囲制限のために、機械じかけのようにギクシャクした体になってしまうとは思えません。
ハーフ・レインジはフル・レインジより重い重量を扱うことができます。逆にいえば、重いウェイトを使えるから重くしなければ効果は半減してしまうのです。したがって、重量の調節に注意しなくてはなりません。
以上のような点をいろいろと考えると、ハーフ・レインジの効果がフル・レインジの効果を上回わるかどうかの判定は非常に難しいものです。両者とも一長一短があるとの解釈がいまのところ強いと思います。
(解答は五反田ボディビル・センター 位田達穂コーチ)
あなたの質問を一口に申しますと、ハーフ・レインジ(半分の運動領域)の方が、フル・レインジ以上の効果があるのではないか、ということだと思います。
トレーニングもあなたのようにキャリアを積んでくると、より効果的に、より無駄のないようにといろいろ研究したり、疑問をもったりするようになるものです。その結果、フル・レインジのトレーニングよりハーフ・レインジの方がより効果的ではないかと疑問をもったのも当然だと思います。
あなたに限らず、長年トレーニングをしている人は、このこと以外にも考えれば考えるほどいろいろと疑問点が多くなってくるものです。
ビルダーのビフォア・アンド・アフターのように、全くトレーニングを経験したことがなく、しかも、ほとんど同じ体格の2人が、一方はハーフ・レインジだけのトレーニングをし、もう一方の人はフル・レインジの普通のトレーニングをして、1年後ぐらいの効果を比較できれば一番良いのですが、そんなことはいろいろな面から考えて不可能です。もし可能ならばこの問題はすぐに解決してしまうのに残念なことです。
初心者の立場からみれば、1回の動作を始めから終わりまで正確に行なってこそトレーニングの楽しみが生まれてくるというものなのに、なにも中途半端に半分動作して元に戻してしまうハーフ・レインジなどやらなくても良いだろうと考えると思いますが、上級者ともなれば、トレーニングの楽しさよりもほんのチョットでも効果的でさえあれば、その方法を採用したくなるものです。アイソメトリックスであれランニングであれ、一般のボディビル愛好者が嫌がるものも何のそのです。
ではアーム・カールを例にとって説明しましょう。
運動を開始してから終了までのうち、どの関節角度のときが最も筋肉に対して刺激を与えるかというと、肘の関節が90度のときが一番であるといわれています。難しくいえば関節角特異性といわれるもので、90度からその前後プラス、マイナス20度の範囲ぐらいしかトレーニング効果はないとのことです。したがって、フル・レインジの動範囲からその範囲の運動だけを取り出してトレーニングするのが効果的だという理屈になるわけです。それが要するにハーフ・レインジだということになるのです。
ただし、この場合のハーフ・レインジは、スタートから終了までの運動範囲をスッパリと半分にしたところの前半分と後半分を指してハーフだと解釈するのではなく、スタートと終わりの角度の一部分をカットし、その中間の最も効果的な部分を指したハーフ・レインジです。
しかし、これに対して次のようなことも考えられます。
たとえば、約2時間の劇場映画を1時半の時間内にテレビ放映しようとするとき、その映画の良いところだけ映して、比較的重要でないと思われる部分をカットするのと同じです。しかし、カットを担当したスタッフ本人は、良いところだけ選んだ濃縮ジュースみたいな立派な映画だと信じていますが、それを見た視聴者は、カットされた部分にこそその映画の良さがあったのではないかと思うかも知れません。
ハーフ・レインジ法もこれに似ていて、運動力学上から考えたのだから絶対だと思っても、現在ではその絶対であるべきあかしはできていないので、あるいはフル・レインジよりも欠点が多いかも知れないところも残っていると思います。
こうして考えれば考えるほどボディビルとは深いもので、運動動作は単純でありながら、理論付けは難しく、そこにまたボディビルの面白さもあるのでしょう。
話を元に戻して関節角特異性について考えてみると、いままでのトレーニングは間違っているのではないか?余分な動作が多くあったのではないか?とあなたの思っていると同じ疑問に突きあたるわけです。もしこれが事実であったとしても、いままでのトレーニングで立派な体格になれることをボディビルの歴史が実証しているのですから、それで満足すべきかも知れません。しかしまた、より以上に深く研究し、より短期間に筋肥大を可能にする方法があるかも知れないので、それを深く追求すべきかも知れません。
次にハーフ・レインジはフル・レインジより効果が大きいかも知れませんが、ハーフ・レインジだけを長期間続けると筋肉の可動範囲制限を起こすともいわれています。だがこれもまた確実な証拠があるわけではありません。ハーフ・レインジだけを行うのではなく、フル・レインジと交互に行うか、短期間に限って行うのが良いだろうという説もありますが、本当にハーフ・レインジの方がフル・レインジよりも効果があるとしたら、ハーフ・レインジだけをやりたいのが人情です。可動範囲制限うんぬんも、ハーフ・レインジだけを数カ月、あるいは数年間実施したからといって、筋肉の可能範囲制限のために、機械じかけのようにギクシャクした体になってしまうとは思えません。
ハーフ・レインジはフル・レインジより重い重量を扱うことができます。逆にいえば、重いウェイトを使えるから重くしなければ効果は半減してしまうのです。したがって、重量の調節に注意しなくてはなりません。
以上のような点をいろいろと考えると、ハーフ・レインジの効果がフル・レインジの効果を上回わるかどうかの判定は非常に難しいものです。両者とも一長一短があるとの解釈がいまのところ強いと思います。
(解答は五反田ボディビル・センター 位田達穂コーチ)
月刊ボディビルディング1974年3月号
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