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なんでもQ&Aお答えします 1975年9月号

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月刊ボディビルディング1975年9月号
掲載日:2018.07.20

疲労を蓄積させないトレーニング法は

Q ボディビル歴4年,次の8種目の運動を行なっています。トレーニングの内訳は,1日に8種目すべてを行うのではなく,べンチ・プレスとシット・アップの2種目は欠かさずに,他の種目のうちいずれか4種目を加えて,都合6種目ずつ毎日行うようにしています。

 ところで,私は,年に2~3度,筋肉が極度に疲労し,それをもみほぐしてもらうのにマッサージに通わなければならなくなります。

 そこでお尋ねしますが,そのような状態になるのは,いまのトレーニング法に原因があるのでしようか。もしそうであれば,疲労を蓄積させないトレーニング法,また,筋肉を疲労させない運動法についてアドバイスしていただきたいと思います。

<運動種目と運動内容>
記事画像1
 他に2100mのランニングを毎日。

<現在の体位>
 身長166cm,休重66kg,胸囲94cm,上腕囲35cm,大腿囲55cm。
(藤沢市・平口・39才)

 年に2~3度,マッサージに通わなければならないほど筋が疲労するとのことですが,過動性萎縮による筋の硬化と判断されます。つまり,あなたの場合は,トレーニングの過多にその原因があると考えられます。

 ボディビルを単なる健康法としてではなく,多少とも筋力の強化と筋の肥大を促すことを意図して行う場合は,同一種目(または,異なる種目であっても,からだの同一部位の筋を強度に疲労させる種類の運動)を連日行うのは,回復力が並はずれて強い人でないかぎり,体力的に無理がともなうと考えられるからです。さらに,このようなトレーニングのやり方は,体力的に負担になるだけでなく,運動の効果をあげるためにも不適だといえます。

 トレーニングの効果は,運動によって消耗した筋が,休養中にトレーニング前の状態に回復した後に得られますつまり,運動(消耗)→休養(トレーニング前の状態に回復)→休養の継続(超回復=効果)という経過をたどって得られます。そして,そのような消耗→回復→超回復の経過は,過負荷による運動の場合,2~4日ぐらいの周期でなされるものと考えられています。

 したがって,トレーニングの効果を効率よくあげるためには,同一部位の運動(または同一部位の筋を強度に疲労させる種類の運動)を連日行うよりは,1~3日置きに行うほうがよいということになります。

 さて,上述したことがらに照らしてあなたが犯しているトレーニング上の誤りを指摘すれば,

①ベンチ・プレスを毎日行うのはよくない。(シット・アップについては腹部のデフィニションをよくするには毎日行うのがよいという説もあるので,あえて間違いとはいえない)
②他の種目も,6種目の中から毎日いずれか4種目を選んで行なっているということは,当然,同じ種目を2日,または2日以上続けて行なっているはずである。
③筋がマッサージに通わなければならないほど疲労するというのは,オーバー・ワークの結果である。したがって,筋が極度に疲労した状態になる以前に,適切な処置がとられなかったと判断される。

 以上の3つであるが,それではそれらの誤りをどのように是正してトレーニングを行えばよいかを,具体的に述べることにします。

①ベンチ・プレスを隔日,または2~3日置きに行うようにする。
②他の種目については,種目数にとらわれないで,2日続けて同一部位の筋を強度に使用しないように種目を選択する。
③オーバー・ワークのきざしが見えたら,筋が極度に疲労した状態になる前に適切な処置をとるようにする。つまり,蓄積された疲労を解消するために,速やかにレイ・オフ(長期休養)をとるようにする。
〔注〕ときたま調子が悪いのはそのかぎりでないが,数日以上,筋力の低下がうかがわれ,また,トレーニングが負担に感じるようであれば,それはオーバー・ワークの兆候とみてまずまちがいない。

<トレーニング法における指示>

(イ)全採用種目を1日に行い,それを隔日的,週3日のスケジュールで行う。

 この方法は最もありふれた方法であるが,1日に行うトレーニング量が従来よりも多くなるので,そのために翌日まで疲労が残るようであれば次のように調節して行う。

○種目によりセット数を少なくし,全体のトレーニング量を減らす。
○採用種目を減らし,全体のトレーニング量を少なくする。

 しかしながら。現在あなたが行なっている運動法は,各種目2セットずつであり,また,採用している8種目が全て必要な運動種目と考えられるのでもしも,これを1日に行うことが体力的に困難であれば,次に示す方法で行うのがよいでしよう。

(ロ)スピリット・ルーティーン(分割法)

 この方法は,全採用種目を2分または3分して,2つ,または3つのコースを作り,分割された各コースを,日を違えて週に2~3度行う方法である。

 このようにすれば,1日に行うトレーニング量が減少するので,当然全身の疲労も軽減される。また,同一部位の強化種目(または同一部位の筋を強度に疲労させる運動種目)を2日続けて行うことのないようにスケジュールを組めば,ある部分と他の部分を交互に鍛錬し,さらに休養させることができる利点がある。

◎分割法(例1)

<Aコース>
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<Bコース>
記事画像3
 A・Bの各コースを週に2~3度ずつ交互に行う。しかし,あなたの年令的な体力を考慮すれば,各コースとも週に2度ずつで十分と思われる。つまり,1日目A,2日目B,3日目休,4日目A,5日目B,6日目休,7日目休のスケジュールで行うとよい。

◎分割法(例2)

 上記のスケジュールで実施した結果まだ体力的にかなりの余裕があれば,そのときは採用種目を1~2種目増加して次のように行なってもよい。


記事画像4

記事画像5
〔注〕Aコースに●印の2種目を加え,そのかわりカールをBコースで行うようにしてあるが,要は,分割する際に,同一部位の筋を2日続けて強度に使用することのないようにコースを組めばよい。なお,各種目のセット数は無理のない範囲で定める。場合によっては,全種目を同じセット数にしないで,種目ごとに適当と思われるセット数を定めるようにしてもよい。

 以上,トレーニングにおける体力的な負担を軽減し,かつ疲労を蓄積させないための方法について述べましたが内容的に,たとえ無理のないトレーニング法であっても,これを継続するうちに疲労がたまってくることもありますので,そのようなときには速やかにレイ・オフ(長期休養)をとるようにしてください。

 とくに40才に近いあなたの年令ではあきずに長く継続することを第一に考え,決して無理をしないことです。
(解答・竹内威)
月刊ボディビルディング1975年9月号

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