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なんでもQ&Aお答えします 1975年12月号

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月刊ボディビルディング1975年12月号
掲載日:2018.07.31

背が高いのはパワー競技に不利か

Q.パワーリフティングのトレーニングを行なっている者です私の身長は182cmで、身長が高すぎることに悩んでいます。
 というのは、重量挙のことが頭にあり、そのことから、パワーリフティングにしても、また、ボディビルにしても背が高い人は背の低い人よりも不利に思えるからです。
 やがてはパワーリフティングの大会に出場したいのですが、そのことが気になり、練習でも集中力に欠けパワーが発揮できません。
 最近では、気にしすぎたせいか胃の調子がおかしくなり下痴ばかりしています。それで、次の質問について具体的な解答をお願いする次第です。
①身長の高い人はパワーリフティングに向かないのでしようか。
②身長が高い人と低い人では、パワーリフティングにおいてかなりのハンデがあるでしようか。
 以上のことが気になって、現在ではパワーリフティングに出場する気になれません。
 私と同じように身長が高いことで悩んでいる人が他にも大勢おられると思いますが、是非とも解答をお願いします。 (德島具・山田浩三)
A.背が高すぎることで悩んでいるとは、背の低い人が聞いたら怒り出すような話です。
 ずいぶんぜいたくな話とは思いますが。当人にとっては深刻な悩みでしよう。
 まず、あなたの質問にお答えする前に、果たして重量挙が、背の低い人に有利であるかどうか、そのことについて考えてみましよう。
 重量挙は、パワーリフティングに比べるとスピードとテクニックを多分に必要とする競技であることはいうまでもありません。そのような重量挙競技の性質からすれば、素早い動作を行うには、背の高い人よりも背の低い人のほうが、いっけん有利であるということもいえますが、絶対的なものではありません。背の低い人が有利であると目される原因は他のことによります。
 重量挙は、もとよりクラス別に選手の力量を競う競技であり、背が高い、低いというのは、各クラスの体重制限の枠の中でいわれることです。同じクラスであれば、背の低い人のほうが背の高い人よりも、当然、傾向として筋の発達もよく、また、筋力も強いといえます。したがって、競技において、背の高いことが不利と目される直接的な原因は、背の高い人のほうが背の低い人よりも、傾向的に筋の発達が劣り筋力が弱いということによります。
 以上、述べたことがらは、そのままあなたが質問された①の解答にもなると思いますが、重量挙にしろ、パワーリフティングにしろ、身長の高低にかかわらず、要は、その競技における必要な筋の発達と強化を促し、それなりにガッシリとした体艦を造るようにすればよいわけです。身長が高いからといって悲観することなく、身長にともなった体幅を造るべく大らかな気持でからだを鍛練し、より重いクラスで覇を競うくらいの心意気を持つようにしてください。
 ①の質問に関しては、上述したことがらで説明がついたと思いますので、②の質問についてお答えするとします。
 身長が高いことが、パワーリフティングにおいてハンデになるかという質問ですが、ハンデになる場合もあるというのが答えです。
 スクワットとデッド・リフトにおいては、あえてハンデとされる理由はありません。しかし、ベンチ・プレスにおいては、背の高いことが、ときにはハンデとなることがあります。
 ベンチ・プレスの正式な競技規程では、シャフトを握るときの左右のグリップの間隔が、一定の幅以内に限られており、そのことが、背の高い人にとって、あるいは不利な条件になるかもしれません。
 ベンチ・プレスという運動は、左右のグリップの間隔が、競技者の腕の長さに比較して狭くなるほどに、傾向として、重い重量をあげることが困難になります。したがって、そのことからすれば、あなたのように背の高い人は、身長にともなって腕の長さも長いと思われるので、背の低い人よりも多少不利になると考えられます。しかし、競技が全て体重別に行われるのであれば、身長が高いからといって、強いて不利とされるほどのハンデもないでしよう。よしんば、多少のハンデがあるとしても、そのくらいのハンデを克服できないようでは立派なパワーリフターとはいえません。実力のなさを他のことがらにすり変えて泣きごとをいうようでは心もとありません。そのような考え方は厳に慎しみチャンピオン目指してトレーニングに励んでください。

腹部の横側を引きしめるには

Q. ボディビルを始めて10年近くになります。1人で試行錯誤しながら自宅でトレーニングをしています。最近、体重の増加に伴ない腹部も大きくなっています。そこで現在は、腹部の種目をトレーニングの最初にもってきて、次のように実施しています。
<1日目>
①シット・アップ 35回×1セット
②レッグ・レイズ 35回×1セット
③サイド・ベンド10kg 35回×1セット
<2日目>
①レッグ・レイズ 35回×1セット
②ツイスティング・シット・アップ 30回×1セット
③トランク・ツイスト10kg 100回×1セット
 以上のように交互に毎日行うようにしています。その結果、前腹部の脂肪はかなり落ちましたが、側腹部がどうにもしまりません。したがって、腹が横にボテッと出ている感じです。ビルダーでも外腹斜筋が出ている人と出ていない人がいるようですが、それは体形の違いではなく、トレーニング種目の選択と運動の仕方にあると思います。サイド・ベンドは外腹斜筋のための運動ですが、これをやると筋肉が発達するにしたがい、かえって腹部が横に太くなるのではないでしようか。それよりもむしろ、腹部を細くするには、外腹斜筋の運動を行わずに、腹直筋の運動のみを徹底的に行うほうがよいのではないでしようか。ウエストを細くする方法をお教えください。
 現在の体位は身長171cm、体重74kg、胸囲102cm、腹囲83cmです。 (高知具・長岡正樹。公務員27才)
A.腹部の横幅が広いのを気にかけておられるようですが、あなたの場合、腹部がそのような形状をしているのはボテッという文面から推察して、外側斜筋の発達しすぎというよりは、側腹部についている皮下脂肪が原因ではないかと考えられます。
 あなたは外腹斜筋が発達することを嫌っておられるようですが、ビルダーのからだは、ウエストが細ければよいといったものではありません。ビルダーを評価する場合、外腹斜筋の発達も必要な条件になります。いかに腹直筋が発達していても、外腹斜筋の発達が、からだの他の部分に比べて弱いようではビルダーとして完成されたからだとはいえません。
 あなたがいわれるように、ビルダーの中には、腹部の横幅が広い人もいれば、また、比較的狭い人もいます。そして、横幅の広いことが、人によってはウイーク・ポイントと目される場合があります。このように腹部の横幅に個人差があるのは、外腹斜筋の発達度合によることも確かですが、多分に先天的なものといえます。つまり、胸郭の形状と骨盤の腸骨翼の広狭によるものです。
 胸郭下部の横幅が広く、骨盤の腸骨翼が広ければ、それだけ腹部も横幅の広いものになります。しかし、だからといって、横幅が広い形状の腹部を、いちがいに良くないものと決めつけてしまうのは誤りで、皮下脂肪の少ない側腹部に顕著に発達した外腹斜筋はそれなりに評価すべきでしよう。このことは、古代ギリシャのへラクレス像によっても理解できると思います。
 では、あなたの質問についてお答えします。
 腹部のための特別なトレーニングを行なった結果、前腹部の脂肪はおちてきたのに、側腹部がしまらないとのことですが、そのことについては食事の内容ももちろん無関係ではありませんが、トレーニングの仕方にも原因があると考えられます。側腹部の皮下脂肪をおとすのに肝心な種目であるサイド・ベンドのやり方がどうもうまくないようです。
 サイド・ベンドを、10kgの重量を用いて35回の反復回数で行なっているようですが、使用重量と反復回数の比較から考えると、反動を利用した粗雑な動作で運動を行なっているように思われます。もしもそのような動作で運動を行なっているのであれば、側腹部をしめるのに有効とはいえません。外腹斜筋は粗雑な運動動作でも容易にその発達は促されますが、側腹部の脂肪はそのような動作ではなかなかおちません。それどころか、ときには側腹部の脂肪がおちないままに、外腹斜筋のみが発達して、あなたも懸念されているように腹部を一層ズン胴なものにしてしまうおそれがあります。側腹部の脂肪をおとすには、それなりの運動上の所作があり、ただ腰を左右へ屈伸すればよいといったものではありません。
 側腹部の脂肪をおとすための運動法について説明します。

<サイド・ベンドにおける要点>
①動作は反動を使わずにゆっくりと行う。できることなら1回の反復に10秒くらいかけるようにする。
②体を屈曲するときには、ダンベルを持ちあげることに気をとらわれずに反対側の側腹部(腰ではない)を屈曲、収縮させることを意識して行う。つまり、ダンベルを保持している方の腕と肩に力が入りすぎないようにして、反対側の側腹部の屈曲によってダンベルが自然に引きあげられるように行う。
③この運動は呼吸の仕方が重要なポイントでもあるので、呼吸は必ず次の方法で行う。ダンベルを所持していない方の側腹部を屈曲しながら息を吐くようにし、完全に屈曲した状態で吐き切るようにする。呼気は側腹部をゆっくり伸ばしながら行う。
④反復回数は1セット当り10~12回ぐらいでよい。したがって、使用重量は、その回数を正確な動作で行うのに適した重量を用いる。使用重量が重すぎると動作が不正確になるので重量の選定に際してはそのことを十分考慮する。
⑤セット数は2~3セット。トレーニングは隔日的に行えばよい。

<レッグ・レイズ・ツー・バック>
側腹部の脂肪をおとすには後腹部のための運動をも併わせて行うのがよい。後腹部の脂肪をおとすことによって、側腹部も一段とすっきりしたものになる。
①いずれか一方の足を少し浮かして片足で立ち、息を吸い込み、その状態から、浮かしている方の脚をあまりまげないようにして息を少しずつ吐きながら斜め後方へ反らしあげる。脚をあげるときに、上体も後ろへ反らすようにして後腹部(ワキ腹の後部)をできるだけ収縮させる。
②後腹部を完全に収縮させた時点で息を吐き切るようにし、次いで、息を吸いながらゆっくりと脚と上体を元の姿勢に戻す。
③動作は往復とも常に一定した動作でゆっくりと、1回の反復を8~10秒くらいかけて行う。バランスを保つために柱などにつかまって行なってもよい。
④反復回数は1セット当り10回前後とし、間に休息をとって、左右交互に行う。休息をとらずに行うと固有背筋が疲れて動作が粗雑になるおそれがあるので注意。
⑤セット数は左右各2~3セットとし、隔日的に行う。
⑥この運動は、後腹部に意識を集中しの部分を適確に屈曲、収縮させるように留意して動作を行うことが大切である。
 上に述べた2種の運動は、一見楽そうに見えて、実際はかなりきつい運動です。要点を忠実に守り適確な動作で行うときは、側腹部と後腹部にかなりのほてりを感じるはずです。これら2種の運動は、側腹部と後腹部の皮下脂肪をおとすには有効ですが、外腹斜筋の発達はさほど促されません。
 したがって、まず、それら2種の運動を行うことによって側腹部の皮下脂肪をおとし、その結果、露呈されるであろう外腹斜筋の発達状態を見てから、外腹斜筋の強化種目を行うかどうか決めるとよいでしよう。
 次に皮下脂肪をおとすには、運動を行うことに加えて食事の内容を制限することが必要です。つまり、高蛮白、低カロリー食にもとづいた食事の内容にすることです。もちろん他の栄養素(ビタミン類、ミネラル等)は不足のないように摂るようにしてください。
月刊ボディビルディング1975年12月号

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