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なんでもQ&Aお答えします 1976年1月号

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月刊ボディビルディング1976年1月号
掲載日:2018.09.01

若い人のトレーニングのやり方

Q ボディビルを始めてから約3カ月になります。いま中学1年ですが、現在の体位は次のとおりです。
胸囲76cm、上腕囲24cm、前腕囲22cm、大腿囲46cm、下腿囲36cmです。
 ところで、最近になって自分の意に反してトレーニングすることが日増しに負担になってきました。
自分ではもっとトレーニングを行いたいのですが40分もすると疲れてしまって、どうしてもそれ以上できなくなります。
まだからだができていないからとは思いながらも、その反面、こんなことでは立派なからだになれないのではないかと不安になります。
 そこで質問ですが、このようなときにはプロティーンを飲用するようにした方がよいのでしようか。
 また、プロティーンを飲んでいれば、無理なトレーニングを行なっても効果が得られるものでしようか。(桑名市・中学生)
A 体力を強化するには、もとより栄養の面でバランスがとれた食事をすることが大切です。
そして、ボディビルのように筋の肥大と筋の強化を促すための運動を行う場合は、とりわけ蛋白質を充分にとる必要があります。
この意味で、プロティーン錠やプロティン・パウダーを飲用するのもよいでしよう。
 しかし、それもトレーニングのやり方が適切な場合にいえることで、蛋白質を十分にとりさえすれば、からだがどんどんよくなるというものではありません。
蛋白質に限らず、他の栄養素も含めて、いかに栄養のあるものを十分摂取していても、トレーニングのやり方が間違っていては思わしい効果を得ることはできません。
プロティーン錠剤やパウダーを飲用するのは、蛋白質を補給するという意味からすれば、それはそれで大いに結構なことですが君の場合、効果をあげるためにはまずトレーニングのやり方を改めることが必要と思います。
 手紙にあるように、トレーニング意欲がなくなるというのは、極度に無理なトレーニングを行なっているものと判断されます。
にもかかわらず、君自身はもっとトレーニングをやりたいと考えておられるようですが、そのことは、まさに狂気のさたといえるでしよう。
多くの人の中には、ぶったおれそうになるまでトレーニングを行なっている人もいるかも知れませんが、一般的にはそのようなトレーニングのやり方をしてもめったに効果が得られるものではなく、ともすれば健康を害してしまうのがオチです。
まして君のように、年齢が若く、身体の発育が末完成の段階では、かりに健康をそこねるようなことがないとしても、身体の健全な発達が阻害されるということが多分に考えられます。
 したがって、いまの段階では、以上のことをよく自覚して、たんにボディビルの効果を促すということだけでなく、身体の健全な発育を促すためにもトレーニング量を思いきって減らす必要があると思います。
 現在、君がどのような内容のトレーニングを行なっているのかは手紙に記されていないのでわかりませんが、
トレーニング時間が40分というのは、君の体力(体位から推察して)から判断すると多すぎるようです。
いまの段階ではウェイトを使用する運動は20分前後で十分と考えられます。
休息時間を長くとって行う場合はもとよりこの限りではありませんが、現在の君が、40分も、あるいはそれ以上の長時間、ウェイトを使用するトレーニングを行うことは、体力が過度に消耗し、かえって効果が得られなくなると考えられます。
では、現在の君に適すると判断されるトレーニング法について述べるとします。

 現在、どのくらいの数の運動種目を行なっているのかわかりませんが、まず、採用種目を数種目に限定する必要があると思います。
このことは、前述のトレーニング量を減らす必要があるということからだけでなく、身体的にいって、
現在の君の段階では、多種目の運動を行うよりは、採用種目を数種目にしぼって行うほうがむしろ効果的と考えられるからです。
そして種目の選択は、基礎的な運動種目の中から最も重要と思われる種目を選ぶようにしなければなりません。
つまり君の場合基礎的な運動種目の中からシット・アップ、スクワット、それにベンチ・プレスを加えた3種目の運動を選んで行うのが適当と考えられます。
欲ばっていろいろな運動を行なっても、上記の3種目がある程度の重量で行えるようにならなければ、そうそうよい結果が得られるものではありません。

 身体的にいって、いまの君のような段階では、多種目の運動を行うことは場合によっては、いたずらに体力を消耗することにもなるので、上記の3種目における筋的向上をさまたげる結果になります。
 さて、それでは以上に述べたことを考慮して、君に適していると考えられるトレーニング・スケジュールと、トレーニングを続けていく上での目標について述べることにします。

<トレーニング・スケジュール>
①シット・アップ 正確な動作で行える回数2〜3セット
②スクワット 10回×2セット
③ベンチ・プレス 10回×2セット

 以上の3種目を2〜3日おき、週に2度行うようにしてください。
体力的に負担を感じることがなければ、1日おきに週3回行うようにしてもよいでしょう。
いかなる場合にも、体調の悪いときはトレーニングを中心することです。

<トレーニングにおける目標>
 同じ内容のトレーニングでも、目標を定めて行なうのと、定めないで行なうのとでは、効果の面で異なってきます。
その意味で、一応の目安をおいてトレーニングを行うことが必要です。
君の場合なら、トレーニングの目標を、ベンチ・プレスで体重の70%以上の重量で10回ぐらいがよいでしょう。
 そして、目標に到達したなら、基礎種目の中から1〜2種目を選び、前述の3種目に加えて4〜5種目の運動を行なうようにするのがよいと思います。

柔道の補助トレーニング

Q 私は将来、柔道師範を職業にしたいと考えている者です。
そのようなわけで、現在は柔道の補助トレーニングとしてボディビルを行なっています。
 そこでお尋ねしますが、柔道のための脚・腰を強くし、引き手を強くするにはどのような運動を行なえばよいか、できるだけ詳しくお答えください。(東京都·鈴木)
A 柔道のような格闘技にはボディビルのような補助トレーニングは大いに有効といえます。
しかし、柔道も他のスポーツと同様に体力とワザを競う競技であるという見地からすれば、部分的な筋力の強化をはかるよりも、全身の集中力、および協応性といったものを含めてトレーニングのやり方を考えなければなりません。
その辺も含めてお答えすることにします。

<脚・腰を強化する運動>
①スクワット
スクワットは脚・腰を強化するには最も有効な運動のひとつです。
からだの安定をよくするためには、両足の間隔を狭くして行うよりは、広くしてフル・スクワット(完全にしやがむスクワット)で行うのがよいでしょう。

②スクワット・オン・トウズ
踵を浮かしたまま行うスクワットで、この運動は脚・腰を鍛練するとともに、足首の強化にも有効。

③ヒンズー・スクワット
重量を用いずに行うスクワット。可能な回数を連続して行うことにより、膝を強化し、またスタミナの養成にも有効。

④ジャンピング・スクワット
バーベルを肩にかつぐか、またはダンベルを両手にぶらさげるかしてしゃがんだ姿勢から連続的に、できるだけ高く上へ跳びはねる運動。この運動は、下半身のバネを強化すると同時に、全身的な協応性を促進し集中力を高めます。
バーベルを肩にかついで行う場合は、着地するときにシャフトが肩から浮かないように両手でしっかりと固定していてください。
シャフトがずれてクビに当ると頸椎を痛めるおそれがあります。

⑤ハイ・クリーン
 床に置いたバーベルを、膝をまげ腰をかがめた姿勢から、全身のバネを使って一気に上方へ引きあげ、立った状態で腕をかえして肩の前で受けとめる運動。全身的な協応性を高め、集中力を強化します。柔道のような格闘技には最も必要にして、かつ有効な補助運動といえます。また脚・腰の強化にも卓効があり、さらに引手を強くするのにも有効です。

⑥ツイスト
 バーベルを肩にかつぎ、体が安定する状態に両足を開いて立ち、上体を左右前後へひねる運動。
外腹斜筋を強化し、腰のねばりをよくします。

⑦サイド・ベンド・ウイズ・バーベル
ツイストの場合と同じかまえの姿勢から上体を左右横へ傾ける運動。
腰の左右横方向への力を強化すると同時に、ねばりを強くします。

⑧サイド・ベンド・ウイズ・ダンベル
片方の手にダンベルをぶらさげ、上体を左右横へ屈伸する運動。反動と加速を利用して速い動作で行うのがよいでしょう。腰の瞬発力を強化します。

<引き手を強くする運動>
①ベント・オーバー・ローイング
立った姿勢から、上体を床面と平行になるぐらいまで前倒し、その姿勢のまま、両手にぶらさげたバーベルを胸のあたりに引きあげる運動。
この運動は、普通バーベルを腹部のあたりへ引きあげるように行いますが、柔道の引き手を強くするには、反動を使って胸のあたりに引きあげるのがよいと思われます。

②ワン・アーム・ベント・オーバー・ローイング
ダンベルを片手にもち、ベント・オーバー・ローイングと同じような要領でダンベルを胸のワキあたりに引きあげる運動。

③ベント・アーム・プルオーバー
頭部だけをべンチの端から出して仰臥し、胸の上に保持したバーベルを腕を屈したまま、頭の先の床の方へおろし、おろしたら引きあげて元の位置へ戻す運動。
この運動は、動作中に両肘が開きすぎると肩を痛めるおそれがあるので、その点を十分留意して行うことが肝心です。
グリップの間隔を広くしすぎると肘が開きやすいのでどちらかというと狭く握る方が安全です。

④ニーリング・アップ・ライト・ロー
両膝を床に付いて立ち、床に置いたバーベルを腕をかえさずに肩のあたりまで引きあげる運動。
引き手を強くするには、反動と加速を利用して一気に引きあげるように行うのが効果的です。


 以上、ほかにも有効と考えられる運動種目はありますが、上記の中から必要に応じて適当な運動種目を選んで行うようにすればよいと思います。
なお上記の運動に加えて、腰および腹部の前屈力を強化するためにVシット、または重量を用いてインクライン・シット・アップを行うようにすれば、柔道の補助トレーニングとして一層よい結果を期待することができると思います。
種目当りのセット数は、採用種目が少ない場合には2セット以上行なってもかまいませんが、
採用種目を多くする場合は、1種目当り1〜2セットにして行うのが無難と考えられます。

トレーニング効果とタバコの影響

Q 僕は20才の学生です。
トレーニングを始めてから1年半になります。
現在の体位は、上腕囲(屈曲時)35cm、胸囲(拡張時)105cm、腹囲77cm、大腿囲56cm、体重70kgです。
体質はすぐ太るタイプです。
そして約1年前からタバコを吸っています。
そこでお尋ねしますが、タバコを吸っても筋肉は普通どおりに発達するものでしょうか。
それとも発達しにくくなるものでしょうか。
また、タバコを吸うために筋肉が小さくなるというようなことはないでしようか。
それと、日本のトップ・ビルダーでタバコを吸っている選手がいるかどうか。
そのことも合わせてご解答ください。(山口具宇部市・山本)
A 喫煙の習慣はタバコをたしなまない者からすれば、人間が生きていくために不必要であり、しかも不経済で、理解しがたい習慣といえるでしょう。
酒の場合と同様に、タバコを吸う人の気持はタバコを吸う人でなければ解らないでしょう。
喫煙は、解放感・休息感・気分転換を促すなど、ある意味では精神的にプラスとするところがないではありませんが、肉体的には何ら益なく、百害あって一利なしです。
 タバコに含まれている有害物質はいうまでもなくニコチンとタールです。
長期間の喫煙がガンを誘発する原因となることについてはすでにご存じでしょうが、喫煙によってもたらされる身体的な害は、そのような長期間によるものだけではありません。
たとえ1本であっても、タバコを吸うことは大なり小なり身体の正常な働きを阻害します。

 ニコチンが体内に入ると、冠状血管が収縮し、そのことによって血圧が上がり、心臓の働きに変化がおこり、また、末消血管が収縮することによって血行が悪くなるといった身体的に異常な変化が持たらされるといわれています。
それに、食事前の喫煙は、一時的に血糖の量を増すので、食欲を減退させるともいわれています。

 さて、それではあなたの質問についてお答えするとします。
タバコを吸っていても、筋がふつうどおりに発達するかどうかについてですが、答は「ノー」といわざるを得ません。
喫煙による害は、1日に吸うタバコの本数と吸い方、さらに体質によっても多少違ってきます。

 しかし、いずれにしても身体的に有害であることには変りがなく、体内に吸収される有害物質によって身体の正常な働きが阻害され、また、それらの有害物質を体外へ排泄するための臓器の負担を考えれば、喫煙の習慣が、程度の差はあれ筋の発達にマイナスになるであろうことは無視できません。

 では、喫煙が筋の発達にどの程度に影響をおよぼすかについては、残念ながらそれを具体的に示すことはできませんが、タバコの吸い方と喫煙量によって違ってくることは確かです。
1日に数本のタバコを食後に半ばふかすように吸うのであれば、さしたる影響はないかも知れません。
しかし、1日に20本以上のタバコを、しかも、煙を余すことなく肺に入れてしまうような吸い方をすれば、そこにはタバコを吸わない者との間に、筋の発達において何らかの差が生じるであろうことは否定できないでしょう。
要するに体内に吸収される有害な物質の量によって、筋の発達に及ぼす影響が左右されるということです。

 さりとて、タバコを吸うことが、あなたが懸念されているように、単的に筋の細化をもたらすかというと、そうともいえません。
多くの場合、喫煙が筋の細化に結びつくのは、過度な喫煙の習慣が、自律神経のリズムをくるわせ、それによって誘発される胃腸障害や不眠症などによります。
とはいえ、喫煙が程度の差こそあれ、筋の発達に悪影響を及ぼすのは確かなことといえるので、真にからだの発達を希望するのならタバコをやめるべきです。
 
ビルダーの事例については、私の知っている次の4氏について簡単にふれておきます。

吉村太一氏('69ミスター日本)
 1日に50本程度。

金沢利翼氏(’60 63ミスター日本)
 現在は知らないが、コンテストの当日にタバコを吸っていたのを見た記憶がある。

遠藤光男氏('66ミスター日本)
 数本を食後にたしなむ程度。

小笹和俊氏('67ミスター日本)
 かなりの本数を吸っていた時期がある。


 以上が歴代のミスター日本で喫煙の習慣があった人達です。
しかし、現在の若いトップ・ビルダーでタバコをたしなむ人はほとんど見うけられません。

 というのは、ビルダーの体格が飛躍的にレベル・アップした現在では、たんに喫煙に限らず、あらゆる面で自己を規制することがトップ・ビルダーになるための必要な条件になり、生半可な態度では栄冠を手にすることが難しくなったからでしよう。

 したがって、もしもあなたがトップ・ビルダーを目指すのであれば、ただちにタバコをやめることをおすすめします。

上腕二頭筋を的確に刺激するには

Q ボディビルを始めて8カ月。自宅でトレーニングを行なっていますが、カールの動作がどうもうまくいきません。
自分では反動を使わずに慎重な動作で運動を行なっているつもりなのに、上腕二頭筋にあまり効きません。
このような場合プリーチャー・ベンチを使ってカールを行えば、的確に上腕二頭筋を刺激することができるのではないかと思いますが、自宅で行なっている関係上、そのような補助器具もなく、どうしたらよいかと思い悩んでいます。

 そこでお願いですが、プリーチャー・ベンチを使わずにプリーチャー・カールと同様な効果を期待できる運動があればご紹介ください。(山梨具甲府市・雨宮洋一)
A 自宅でトレーニングを行うのは、ジムでトレーニングを行うのに比べると、確かに設備の面でハンデはあります。
しかしそのような設備の不足を努力と研究によって克服するのも、ボディビルにおける楽しみではないかと思います。
事実、やり方いかんによっては設備不足を克服することは十分可能です。
それではあなたの質問に答えて、プリーチャー・カールに代わるカール種目を紹介するとします。

<1>ベント・フォワード・カール
両手の間隔を2こぶし以内にして、バーベルをアンダー・グリップで持って、立った姿勢で上体を少し前傾し、両肘を前腹部に当てがい、そのままの体勢を保って、反動を使わずに、できるだけていねいにカールを行う。
この運動を正確に行うには、普通のカールよりかなり軽い重量を使わなければならないが、それでも上腕二頭筋のバルク(筋量)と隆起を高めるのに非常に効果がある。

<他方の手の甲で肘を支えて行うワン・ハンド・カール>
空いている手の方の甲を反対側のワキ腹のあたりに付け、その上にダンベルを保持した方の腕(上腕部の下部の方)を当てがって行うカール。
支える方の手を軽くこぶしに握り、手首を多少反らすようにすれば運動がやり易くなる。


 以上の2種類の運動を試してみてください。
いずれの運動も、上体の傾斜度合によって、上腕二頭筋への効き方が多少異なってくるので、あなたなりにもっともしっくりする傾斜度で行うようにするとよいでしょう。
そして、上腕=頭筋に意識を集中して正確な動作で運動するように心掛けることです。
〔解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生〕
月刊ボディビルディング1976年1月号

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