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なんでもQ&Aお答えします 1976年3月号

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月刊ボディビルディング1976年3月号
掲載日:2018.08.12

低回数制は初心者には有害か?

Q ボディビルを始めてから1ヵ月、17歳の高校生です。次の質問にお答えください。

 たいていの本に、初心者の場合は連続の反復回数を10回ぐらいにして2~3セット行うのがよいと書かれていますが、僕は普通の高校生より体力があると思うので、低回数制を採用してトレーニングを行ないたいと考えています。

 つまり、5回ぐらいの反復回数で7~10セット行う方法をとりたいのですが、そのような方法でトレーニングを行なっても、果たしてからだに害はないでしようか。現在の体位と筋力は下記のとおりです。
記事画像1
 (兵庫県 森田 宏 高校生17歳)
A 低回数制そのものは、実施者があなたのような初級者であっても、無理をしないかぎりは害となる要素はありません。しかしあなたが考えておられるような、同一の運動種目を7~10セットも行うということになると話は別です。

 実施者が長期の修練経験を有しており体力的にもかなり強化されている人であれば、特定の運動種目を7~10セット行なったからといって必ずしもトレーニングが過度になるとはいえませんが、あなたのように修練経験が浅く、ボディビルにおける体力も未だ十分とはいえない段階では、同一種目を7~10セット行うのは、トレーニングが過度になるおそれが多分にあるといえます。

 ボディビルというものは、トレーニングをたくさん行なえば効果が得られるといったものではありません。運動が過度になると、かえって効果が得られなくなります。したがって、あなたがどうしても低回数制を採用してトレーニングを行いたいのであれば、運動が過度になることのないようにセット数のとり決めには十分配慮する必要があると思います。まだ17歳という若い年齢ですから、あせらず、じっくりとトレーニングすることです。効果をあせって無理をすることはマイナスです。

 また、ボディビルの基本に照らして言っても、現段階のあなたが低回数制を採用してトレーニングを行なうことはあまりおすすめできません。

 というのは、低回数制は1セット10回前後の反復回数で行なう普通の運動法に比べて、重い重量を用いて運動を行なうので、そのような運動法を、身体的に未熟な初級者が採用するのは少なからず無理がともなうと考えられるからです。つまり、身体的に十分に鍛練されていない初級者の段階ではトレーニングにおける体力も不安定であるといえるので、そのような段階で重い負荷を用いて運動を行うことは、わずかな体調の変化が運動に大きく影響し、それが原因となってからだの調子をくずしてしまいやすいからです。

 現在のあなたは、そっちょくに申し上げれば、まだまだ基礎的な体力を養わなければならない段階にあるといえるので、しばらくの間は初歩的な方法でトレーニングを行なうのがよいのではないかと思います。つまり、1セットの反復回数を10回前後とした普通の運動法でトレーニングを行ない、ある程度の体力がついてから低回数制を採用するようにするのがよいと思います。といっても、どの程度体力がついたら低回数制を採用すればよいといったはっきりとしたきまりはありませんので、次に示すことを一応の目安にし、それが達成されたならば低回数制を採用するようにするとよいと思います。
○ベンチ・プレス 体重の100%の重量を用いて10回の反復が可能。
○スクワット 体重の100%、できることなら120%の重量を用いて10回の反復が可能。

 では、現在のあなたに適していると考えられるトレーニング法と、これから先、低回数制を採用するようになった際の初期のトレーニング法について参考までに書き添えておくことにします。
◎現在のトレーニング法

◎現在のトレーニング法

<注意事項>
①スクワットとベンチ・プレス以外の運動種目は、初めは2セットずつ、体力的に余裕が生じてきたら3セット行なうようにする。
②運動の順序は必ずしも上記のとおり行なわなければならないというものでもないので、やり易いように組み変えてもかまわない。ただし、一度決めた順序はみだりに変更しないようにする。
◎低回数制を採用したトレーニング法

◎低回数制を採用したトレーニング法

<注意事項>
①スクワットとベンチ・プレスは、いきなり重い重量を用いて運動を行なうのをさけ、事前に必ず軽い重量でウォーム・アップを行なう。ただしウォーム・アップとしてのセットは、所定のセット数に含めず、体力を40~50%程度発揮するに止どめて行なうようにする。つまり、ウォーム・アップで使用筋や体力を疲労させてしまうことのないように留意して行なう。
②全般的に、きょくたんな低回数で運動を行うのは、初期においては慎むほうがよい。ことに、スクワットとベンチ・プレス以外の運動種目については、初・中級者の段階では使用筋に重い負荷を与えるように運動をを行うよりは、できるだけていねいな動作で使用筋を十分に伸縮させるように留意して運動を行うことが大切と考えられるので、きよくたんに低回数しか反復できない重い重量の使用はひかえるのがよい。
③新らたな運動種目を採用する際は、しばらくの間、軽い重量を用いて普通の方法で運動を行ない、運動の正しい動作が身についてから低回数で行うようにする。

ボディビルをやると背が伸びないか

Q 僕は15歳で身長が162cmで体重が52kgです。ボディビルを始めてから5ヵ月たちます。最近、友だちから、あまり若いうちに重い物をかついだり、持ち上げたりすると身長が伸びなくなるときかされ心配になってきました。

 僕はからだを逞しくするためにボディビルを始めたのですが、そのために背が伸びなくなるのならボディビルをやめてしまおうかとも考えています。少なくとも身長170cm以上にはなりたいのですが、このままボディビルを続けていてもさしつかえないものでしようか。そのことにお答えください。また、身長を伸ばすための方法があれば教えてください。(埼玉県 豊田一郎 高校1年)
A ボディビルが背たけの発育にマイナスかどうかについてお答えします。ボディビルにかかわらず、少年期における運動が身長の発育に何らかの関わりを有しているといえます。そして運動の中にも比較的身長の発達に効果があると考えられているものと、そうでないものとがあり、通常私たちがボディビルと称している運動は、どちらかといえば後者に部類する運動であるといえます。あなたの友だちのいわれる言葉の意味は、おそらく、ボディビルがからだの縦軸に上から圧迫を加える運動が多いので、そのような運動を行うと身長の発育が阻害されるということでしよう。

 友だちのいわれることにもたしかに一理ありますが、しかし、そのことだけでボディビルが身長の発育に有害であると決めつけてしまうのも考えものです。ボディビルが身長の発育に有害であるかどうか、それは運動としての程度が問題といえます。運動として適切を欠けば身長が伸びにくくなるということは多分に考えられることですが、強度および量的に無理をせずに正しい方法でトレーニングを行うかぎりにおいては心配するほどのことはないでしょう。よしんば重い物を上へ持ちあげるからといっても、基本にそってトレーニングを行うときは、上へ持ちあげている時間も、ほんのわずかな時間ですから、そのために身長の発育が阻止されてしまうということもないでしよう。

 ボディビルを年少の頃から行なったために背が高くならなかったと主張する人もいますが、その反対に、若い頃から行なっていても、20歳を過ぎるまで、中には25歳近くになるまで背が伸びたという人もなかにはいます。また重量負荷と身長の伸びとの関係については、現代の医学をもってしてもはっきりした結論はでておりません。

 身長が高くなるならないは、遺伝および栄養状態の良いか悪いかということも関わりを有するので、上記のような結果を運動の面からだけとらえて論ずるのは早計といえるでしよう。しかし、そのような結果が生じることについては、トレーニングの仕方が無関係ではないと思われます。

 したがって、君も、重すぎる重量を無理に持ちあげたり、トレーニングをやりすぎたりしないように十分注意して適度に行うようにしてください。

 では、次いで身長の発育を促すのに必要と考えられることがらについて述べるとします。

 身長の発育を促すには、運動と栄養それに休養をからだに与えることが大切です。

 身長は、いまさらいうまでもなく遺伝によって大きく左右されます。とはいうものの、適切な運動を行うことと十分な栄養をとることによって、その発育を促すことが可能と考えられています。

 骨は、骨端に適当な刺激を与えると成長するといわれています。したがって、身長を伸ばすには、からだの縦軸にそって、適度な刺激を与えることのできる運動を行うのがよいともいわれています。それには跳んだり走ったりするのがよく、バーベルやダンベルを用いて行う運動に並行してナワ跳とランニングを適当に行うようにするとよいでしょう。スポーツであれば、上述のようなからだの動きを多く要求される種類のものを行うようにすることです。

 ボディビルに熱中すると、得てしてウェイトを使用する運動だけにとらわれるようになりますが、君のように少年期にある者は、いわゆるボディビル以外の他の運動やスポーツを積極的に行う必要があります。ただし、その場合、留意しなければならないことは、実行する全ての運動、あるいはスポーツを、運動として全体的にとらえてオーバー・ワークにならないように注意することです。オーバー・ワークは身体の健やかな発育を阻害しますから十分気をつけてください。

 栄養の点については、蛋白質に富んだものを十分にとるよう心がけてください。ビタミンとミネラルを摂るためには野菜や果物を食べることももちろん大切ですが、身長を伸ばすためには蛋白質を多く含む肉・魚・豆(またはその加工品、納豆・豆腐・生揚など)・牛乳(またはその加工品、チーズ・スキムミルクなど。注、バターには蛋白質はほとんど含まれていない)、たまご等をつとめて食べることです。できることなら1日に、体重1kg当り蛋白質1.5gぐらいの割合で摂ることを目標にしてください。

 また、カルシウムを摂取する意味で海草類を適当に食されることをおすすめします。

 休養に関しては、睡眠が最も大切なので8時間ぐらいはとるように心がけてください。
解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
月刊ボディビルディング1976年3月号

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