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チャンピオンへの道
<心理学によるトレーニングの効果> 1976年4月号

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月刊ボディビルディング1976年4月号
掲載日:2018.08.04
川股 宏
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Ⅲ 計画を持て

人間は、心の中で思う確かな自信や潜在意識に対し、強い暗示をくりかえすことによって、不可能なことを克服し、未来を大きく切り開くことができると前号で書いたが、それをより確かに、より強力に暗示するには、未来に対する自分自身の計画を持つことである。

心の中で思うほのかな欲望を、計画的に発展させるにはどうしたらよいのだろうか。飛行機を例にとって考えてみよう。

飛行機の発達は目をみはるばかりである。月には人間が、火星には観測ロケットが行っている。その進歩の始まりはいつか。それは一人の男が、空を鳥のように飛べたらどんなにいいだろうと考え、そしてなんとかして飛びたいと、背に翼を背負って飛び降りた時に始まる。それからグライダー、プロペラ、ジェット、ロケットと、現在のような目ざましい発達を遂げたが、19世紀末、ライト兄弟が12秒間のエンジン飛行に成功してからわずか100年そこそこのことである。

これはただ科学の進歩によって、自然に進歩したのではなく、この100年の間に大きな戦争がいくつかあり、相手国に勝つために、より強力で、より速いロケットや飛行機をつくらなければならないという大きな目的があり、その目的に向って多くの科学者たちが研究努力したからである。もちろんそこには未来に対する確かな自信と綿密な計画があったことはいうまでもなかろう。

この例をみるように、段階的に自分の計画を立て、毎日毎日、俺には必ずやれるんだ! どうしてもやってみせる! と強い暗示をくりかえし、それにはこんな種目を採用し、腕はこんなに胸はこんなに、と、頭の中に描き、それを強い口調で潜在意識に語りかけるのである。そうすることによって、やがて大きな変化が必ずあらわれるはずである。

頭に描く目標とそれにともなう計画は、全体、部分、食事、練習量などの全てに対して立て、写真があれば写真を身近に置いて、目標に向って段階的に計画を実行していくのである。あせっていきなり最終目標に焦点を合わせるのではなく、まず目先の目標を心に念じ実行することだ。

Ⅳ 潜在意識の受け入れ易い状態

では潜在意識がより効果的に受け入れ易い状態と方法を下記に連記する。

①眠りにつく寸前。朝起きたての時。電車の中や歩いている時。考えるともなしに、ああしたい、こうもしたい等と思う時。意識のはっきりしない状態の時。

②写真や絵、テープを利用した場合は具体的なのでより効果がある。写真や絵がない場合は、疑わずに本気で心に念じる。軍歌や行進曲は兵隊をより元気に行動させるために、潜在意識に訴える方法のよい例である。

③ちょっとした不安、たとえば、もうだめだなどと絶対に思わぬこと。このちょっとした不安を潜在意識は受け入れてしまう。もうこれ以上腕は太くならないのではないか、などと思うと、いくら頑張っても効果は減少する。カールひとつにしても疑いを持つな。

④夢遊病者のように、ただ想うだけではだめだ。目先の目標を想定し、即実行すること。実行のない想念は空念仏である。実行ということについてアメリカのマクナマラ前国務相が次のような名言を残している。I hear, I forget, I see, I remember, I do, I understand (人から聞いたことは忘れてしまう。それでも自分の目でみたものは覚えている。自分で実行したことのみが理解できるのである)

⑤イメージは具体的で生き生きしたものが望ましい。たとえば、3ヵ月で腕を何センチ必ず太くしてみせる。そしてこんな形で、こんな盛りあがりにする等というように。

⑥いまの自分の状態を認識し、一歩一歩、夢をふくらませていく。それがコツ。


さあきょうから目標と強い意志をもってトレーニングしよう。強い意志がくじけそうになったら、何回も何回も必ずやるんだと自分に云い聞かせよ。その結果はきっと大きく変わってくると信ずる。

Ⅴ 吉田秀雄の鬼十則

世界の「電通」を育て1961年1月に惜しくもこの世を去った吉田秀雄氏が自分の体験を基にしてつくった、有名な仕事の「鬼十則」を紹介しよう。言葉を置きかえて読んでみれば、トレーニングのバイブルともなる立派な身にしみる言葉である。

1.仕事は自分で創るべきで、与えられるべきではない。

2.仕事とは、先手先手と「働きかけ」ていくことで、受身でやることではない。

3.「大きな仕事」と取り組め。小さな仕事は己を小さくする。

4.「難しい仕事」を狙え。そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。

5.取り組んだら「放すな」。殺されても放すな。目的完遂までは。

6.周囲を「引きずり廻せ」。引きずるのと引きずられるのとでは永い間に天地の開きができる。

7.「計画」を持て。長期の計画をもっていれば忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。

8.「自信」を持て。自信がないから君の仕事には迫力も粘りも、そして厚味すらない。

9.頭は常に「全回転」。八方に気を配って1分の隙もあってはならない。仕事とはそのようなものだ。

10.「摩擦を怖れるな」。摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈末練になる。以上
【大きな目標に向って激しいトレーニングを続けるシュワルツェネガー】

【大きな目標に向って激しいトレーニングを続けるシュワルツェネガー】

月刊ボディビルディング1976年4月号

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