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JBBAボティビル・テキスト㉜
指導者のためのからだづくりの科学
各論Ⅱ(栄養について)

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月刊ボディビルディング1976年5月号
掲載日:2018.08.14
日本ボディビル協会指導員審査会委員長 佐野匡宣

<5ー2>糖質

 糖質とは、一般には植物体内で光合成によってつくられ、その構成成分や貯蔵物質となっているもので、いわゆる糖および加水分解によって糖を生ずるものの総称である。別名がいろいろとあり、炭水化物、含水炭素、デンプン、糖分、ブドウ糖等と呼ばれているものがそうである。
 生体では純粋な形としては、血糖のグルコース(ブドウ糖)、臓器や筋肉のグリコーゲンとして見出されるが、食品中ではデンプン、ショ糖の形で存在しているものが多く、われわれの摂取総カロリーの半分近くを占めている。
 糖とは、その分子の中に1個のカルボニル基と2個以上の水酸基をもつ化合物をいい、糖質は、この糖がいくつ分子の中に含まれているかによって単糖類、二糖類、少糖類、多糖類というように分けられる。
 また、糖質は炭素、水素、酸素から出来ており、水素と酸素の割合が2対1、すなわち、水と同じ割合であり、ちょうど炭素が水と結合する形で表わされているために、炭水化物とか含水炭素と呼ばれているが、水素と酸素が水の形であるのではなく、その割合が2対1ということである。
 糖質は動物の主要なエネルギー源であるが、エネルギー源とならないものもあり、また、核酸その他の構成成分となり、生理的にも重要な働きをしているものもある。

糖質の分類

①単糖類
加水分解によって、これ以上簡単な化合物に分解することが出来ない糖質すなわち糖1個からなるものを単糖類という。さらに、分子内の炭素の数によって三炭糖、五炭糖、六炭糖等と呼ばれる。天然に存在するものとしては五炭糖、六炭糖が最も多く、五炭糖は多糖類中の成分として存在しており,六炭糖は栄養上重要な働きをしている

(a)三炭糖

グリセローズ(グリセリン・アルデヒト)、ジヒドロキシアセトン(ジオキシアセトン)であるが、いずれも遊離した状態では存在せず、リン酸とエステルをつくり、リン酸塩として、重要な生体の糖代謝の中間体(中間産物)として存在しており。食物の中には存在しない。

(b)五炭糖

 遊離の型では自然界に存在することは少なく、大部分は多糖類、あるいは配糖体の構成成分として植物に広く存在している。リポーズは五炭糖で、リボ核酸や多くの助酵素の成分である。

(c)六炭糖

栄養上最も重要な糖である。

(イ)Dーグルコース(ブドウ糖)

果物の甘味で、ショ糖,麦芽糖,乳糖,デンプン、グリコーゲン等の構成上の成分である。生体では血液中に血糖として存在しており栄養学上重要なアルトーズで、生体内ですべての糖質の原料となっている。

(ロ)Dーフラクトース(果糖)

これも広く分布し、果物、蜂蜜に多く体内代謝でそのリン酸エステルは重要なものである。ショ糖,イヌリンの構造上の成分となるケトースである。

(ハ)Dーガラクトース

遊離の状態では存在せず、Dーグルコースと結合して乳糖となるほか、多糖類の構成成分として重要である。

(ニ)Dーマンノース

オレンヂの皮に少量あるが、遊離して存在することはまれで、コンニャクマンナンの主成分になっている。生体内では糖タンパク質として存在している。

②二糖類

単糖類が2つ結合して水を失なった型のもので、食品成分として重要なものである。すなわち、単糖2分子から水1分子がとれて脱水結合したものである。

(a)シュクロース(ショ糖)

ブドウ糖と果糖が結合した二糖類で広く植物界に分布するが、とくに,さとうきび、甜菜、トウモロコシ等に多い。普通、砂糖として多量に摂取されている。

(b)マルトース(麦芽糖)

ブドウ糖2分子の結合によるもので麦芽、あめ、麺の中に含まれ、またデンプンやグリコーゲンにアミラーゼが作用したときに多量に生ずる。麦芽の中に多く含まれるので麦芽糖と呼ばれる。

(c)ラクトース(乳糖)

グルコースとガラクトースが結合したもので、人乳に5~7%、牛乳,山羊乳に4?7%含まれている。

③三糖類および四糖類(少糖類)

単糖類が3あるいは4分子結合して生じる糖類で、食品中にわずかに含まれているにすぎず、栄養的にも重要なものは少ない。

④多糖類

単糖類が多数グリコシド結合(脱水結合)で重合した高分子である。1種類の単糖類が重合した単一多糖類と、2種類以上の糖や糖誘導体の重合した複合多糖類がある。
 デンプン(食品として)、グリコーゲン(食品および体成分として)、ムコ多糖類(体成分として)のように重要なものが多い。一般に消化酵素で水解されるものと(デンプン、グリコーゲン)、水解されないもの(セルローズ、ペクチン)がある。

(a)デンプン

 植物の重要な貯蔵物質として、根,茎,葉,種子等に多く含まれている穀類、羊類の主成分となっていてその固形物の1/2~3/4を占めている。多数のグルコースが結合したものでその結合の仕方により、比較的水に溶け易いアミローズと、水に不溶で粘調性のあるアミロペクチンとがある。
 生のデンプン粒は、粒子内部でデンプン分子が規則的に配列し、一部は強固なミセル(束)構造を形成しているので、このようなデンプン粒は水に溶けず、また消化酵素の作用を受けにくい。これを通常、βーデンプンと呼んでいる。
 生のデンプンに適当に水を加えて熱すると、デンプン粒の膨張がみられ内部ではミセル構造が弱まり、ミセルの間を満たしていたアミローズが粒外に出て、液は半透明の粘性流動体となる。またミセル構造も大部分分解を受けて分子の鎖状部分が自由にのびてくる。このような状態をデンプンが糊化したというが、この糖化した状態のデンプンをαーデンプンといい、αーデンプンは消化が良くまた味も良い。
 デンプン性食品を加熱処理するのはデンプンをα化することである。このようにα化したデンプンも常温で放置するといわゆる老化によってβーデンプンに戻ってしまう。
 たとえば米をたいて米のデンプンをα化したもの、すなわち、暖いたきたてのごはんはおいしいが、冷いごはんがまずいのはβーデンプンに戻ったためである。冷たいごはんをもう一度暖めてαーデンプンにすると、再びおいしいごはんとなる。
 しかしデンプンを急速に熱乾燥して水分を除くと、老化は起こりにくく長期間αーデンプンのままで保てる。乾燥飯、せんべい、ビスケット等がこれである。

(b)デキストリン

 デンプンが酵素や酸で部分的に加水分解を受けて生じる中間分解産物で消化の途中に生じる。すなわち、デンプンとマルトース(麦芽糖)との中間のものである。

(c)グリコーゲン

動物性デンプンともいわれ、あらゆる動物における貯臓カロリー源で,デンプンと同じであるが、水に溶ける点がデンプンと異る。

(d)セルローズ(繊維素)

 植物の繊維成分で、加水分解してグリコースのみが得られる点はデンプンに似ているが、グルコースが数千個β型のグリコシド結合し、重合度がデンプンより大きく、ミセル構造も強固であるため、水で煮沸してもくずれない。また、セルローズ消化酵素(セルラーゼ)以外の消化酵素の作用を受けない。わずか腸内に繁殖する細菌類によって分解利用されるが、どの程度吸収利用されるかは未だ判然としていない。草食動物、とくに反芻動物や微生物、軟体動物にセルラーゼが見出され、また腸内発酵が盛んなため、人間や他の肉食動物よりセルローズを分解して、その構成単位であるグリコースを利用している。しかし、このような消化酵素で分解されないセルローズも、少量のときは機械的に消化運動を促進し、間接に消化を助ける働きをしている。すなわち、適当な繊維は整腸作用をもつと同時に、腸内ビタミン合成を盛んにするといわれている。麦めしが身体によいといわれるのもこのためである。

(e)イヌリン

 ごぼう、ダリヤの球根、菊いも等に含まれ、Dーフラクトース(果糖)が20?30個重合したもので、酵素イヌラーゼにより加水分解して果糖を生ずる。

(f)ペクチン

 果物に多く含まれ、細胞をつなぐ役目をしている。ペクチン含量は果物の種類によって異なり、未熟なものほど多い。ショ糖と酸の適当な配合で固まり、ゼリーになる(ゲル化する)。ペクチンを生体内に摂取すると胆汁酸の吸収を抑制するため、血中コレステロールを下げる作用があるといわれている。

(g)寒天

 てんぐさ等の海藻の成分で、Dー,およびLーガラクトースの重合体で一部は硫酸エステルになっている。市販の寒天は、乾燥した海藻を熱水抽出し、凝固させたトコロテンを凍結した後、乾燥させたもので、加工用に多用されている。

(h)マンナン

 こんにゃくにあり、グルコースとマンノースが1対2の割合で重合して出来ている。故にこんにゃく粉を加水分解するとDーグルコースとDーマンノースが1対2の割合で生ずる。しかし,人間ではどの程度利用されるか充分わかっていない。

(i)その他の多糖類

 アルギン酸は褐藻類(こんぶ、ひじき、わかめ等)にあり、六単糖誘導体であるウロン酸の一種マンヌロン酸の重合物であり、結締組織その他に見られる粘質の基礎物質である。ヒアルロン酸や、軟骨その他の組織に存在するコンドロイチン硫酸は、いずれも六炭糖誘導体であるウロン酸の一種が構成成分となっている多糖類で、このように六炭糖の誘導体である糖アルコール類、ウロン酸類アミノ酸類等が成分として重合されている多糖類もある。
月刊ボディビルディング1976年5月号

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