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チャンピオンへの道
く心理学によるトレーニングの効果> 1976年7月号

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月刊ボディビルディング1976年7月号
掲載日:2018.07.20
川股宏
先月号で「鹿島守之助二十訓抜書」を記したが、なるほど簡単な言葉の中に大成するための教えがあり、道は違えど身にしみる真理と思う。この訓話をボディビルのトレーニングに言い換えてみると、こんなことになるのではないだろうか。

第1条 常識を打ち破れ!独特の練習法、食事法、休養、そしてそれらの組み合せを自分なりに研究し、実行せよ。

第2条 カールひとつにしても角度、意識度、すべて人に勝つ努力をし、改善を試みよ。

第3条 有能な指導者を求め、よいトレーニング環境をつくることに積極的になれ。

第4条 目的のないトレーニングは長続きしない。各ジムの入会者は多いが、すぐやめる会員が多い。はっきりした目的をもって、一度やると決めたらとことんやれ!

第5条 理論、理屈、知識で理論家ぶるよりも、自らそれを実行して見せよ。

第15条 鏡ばかり見て一人でほれぼれしてはいませんか。自分の体を冷静に客観的に見よ。そうすればまた欠点が見出せる。

第17条 欠点を改良せよ。欠点は自分の長所と同じように第三者には目立つものだ。自分の欠点を素直に認める心、これが心も体もどんどん伸ばすのだ。

第19条 毎日のトレーニングが百年一日のごとく前進のないものになっていないか。日々研究し、無駄をはぶいて有効なトレーニングに徹せよ。

第20条 トレーニングを苦しいと思はず、道楽とせよ。道楽とは遊び楽しむのではなく、道を楽しい気持で求めることである。目標をはっきり決めてトレーニングすれば、苦しさも自然に楽しさに変わる。

……等々と言い直してみたが、仲々意味深い訓和である。明日から、いや今日から改善を重ね、前むきなトレーニングに励もう……。常識を打ち破った自分自身の特徴ある体を作るために

◇自分と闘え

人に勝つより自分に勝て!とか、この減量苦が最大の敵、この苦しさを克服すれば勝ったも同然!などと、よく勝負師やボクサーがいう。成功にいたる最大の難関はまず自分自身に打ち勝つことだ。

誰でも他人やライバルには負けたくないという意識はあるが、案外、自分に勝つことを忘れているものだ。多くの欲望や誘惑に打ち勝ち、これを克服していくことは並大抵の努力ではできない。

たとえばタバコ。健康によくない、ガンになる率が高い、百害あって一利なしとわかっていても、なかなか止められない。戦時中、タバコがなくなると何とかというニコチンの全然ない草の葉を紙に巻いて喫ったという。酒もしかり。少しぐらいならまあいいが、酔いつぶれたり2日酔をするほど飲むことはない。これがよくわかっていながら、できないのが人間の弱さなのである。

相撲のテレビや新聞を見ていて思うのだが、この世界にも、以外と素質のある人が途中で脱落し、そんなに大きくもなく体重もない人がコツコツと努力を積み重ねて今日の地位を築いている人が多い。体重と闘う貴の花、病気やケガを克服し小さな体で頑張っている旭国、努力と節制の三重の海。みな大型の人には見られない血の出るような努力と自分との闘いに勝ったのである。

この人たちが自分との闘いに打ち勝った秘密はなんだろうか。それは相撲が好きで好きでたまらず、これこそ自分の天職だと心得、いつかはきっと大関、横綱になってみせるという大きな目標のもとに、燃えるような情熱をもって人の何倍もの努力したからにほかならない。
月刊ボディビルディング1976年7月号

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