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なんでもQ&Aお答えします 1976年7月号

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月刊ボディビルディング1976年7月号
掲載日:2018.07.21

ベンチ・プレスの握り幅とその効果

Q.ボディビル歴は7カ月です。ベンチ・プレスの握り幅についてお訊ねします。

ベンチ・プレスの左右のグリップの間隔は人によってマチマチですが、基本的にはどのくらいの間隔に握るのがよいのでしょうか。また、ベンチ・プレスによる効果は、握り幅の広狭によって違ってくるといわれますが、どのように異なるのでしようか。

なお、ベンチ・プレスにおける現在の私の筋力は、45kgで10回×2〜3セットといったところです。

(福島県 斉藤良夫 会社員 26歳)
A.ベンチ・プレスの握り幅は、あなたがいわれるとおり、たしかに人によってマチマチです。このことはベンチ・プレスの握り幅に確たる基準がない以上やむをえないことでしよう。その上、ベンチ・プレスはその握り幅の広狭によって効果が異なってくるので、運動としての正誤を、握り幅の広い狭いによって単純に断定してしまうことはできません。したがって、ベンチ・プレスの握り幅の正誤は、どのような効果を期待してベンチ・プレスを行なうのか、そのことを考慮して断定すべきです。

握り幅の広狭によって、効果の面でどう変化してくるかについては後述しますが、たとえば、大胸筋の広範囲の発達を希望する人が、肩幅よりも狭い握り幅で運動を行うのは、運動としての適正さに欠けるので誤りです。大胸筋の広範囲な発達を期待して運動を行うのであれば、その目的とする効果を得るのに最も適している握り幅で運動を行わなければなりません。

つまり、ベンチ・プレスにおける左右のグリップの幅は、運動の目的によってその間隔が定められるべきものであり、また正誤も運動の目的に即したものであるか否かによって問われなければならないということです。

では、ご質問のベンチ・プレスの基本的な握り幅について説明します。それについては、あなたの現在の体格がベンチ・プレス45kg×10回×2〜3セットという筋力から推察して、まだ初級者の段階にあるものと一応断定した上で述べさせていただきます。

初級者と断定したのは、初級者と中級者、あるいは上級者とでは、ベンチ・プレスにおける運動目的に多少の差異があるものと考えられるからです。つまり、基本的なからだをつくるために大まかな発達を期待して運動を行う初級者と、それ以上の発達と細部の発達を目的として運動を行う中・上級者とでは、当然、目的意識に多少の違いがあり、それにつれて運動のやり方自体にもおのずと差異が生じるであろうと考えられるからです。

ベンチ・プレスに限らず、運動の基本的なやり方を問うのには、実施者の体格、および体力的な段階と、運動の目的意識をはっきりさせた上で問う必要があるといえます。

中・上級者の場合には、ベンチ・プレスで大胸筋の発達を促す場合、とくに外側の部分とか、あるいは内側の部分といったように、大胸筋をさらに細分して発達を促すために、握り幅を広くしたり狭くしたりして行うことがしばしばあります。

しかし初級者の場合には、中・上級者のように握り幅をいろいろ変えてなんとおりものべンチ・プレスを行うのは、体力的に無理がともなうと判断されるので慎しむ方がよいでしよう。ある程度の重量(体重と同じくらいの重量)が正確なフォームで10回ぐらい行えるようになるまでは、握り幅をいろいろと変えたりしないで、1とおりの握り幅に徹するのがよいでしよう。

では初級者の段階で、握り幅をなんとおりも変えないで、1とおりの握り幅にするとしたら、どのくらいの幅に握るのがよいのだろうか。それにはまず、握り幅を定める前に、ベンチ・プレスを行う理由、および目的をはっきり自覚しなければなりません。

中・上級者であれば、ベンチ・プレスを腕の運動として行うこともありますが、初級者の場合は、おもに胸部の発達を促すために行うのですから、そのことがベンチ・プレスを行う理由であり目的ということになります。したがって、初級者がベンチ・プレスにおいて基本とする握り幅は、胸部(大胸筋と胸郭)を的確かつ広範囲に刺激することのできる握り幅ということになります。

一般的な基準としては、両腕を水平に拡げたときの両肘の間隔くらいにシャフトを握るのがよいでしょう。つまり、ベンチ・プレスの中間姿勢においては、上腕と前腕が直角になるような握り方です。このくらいの握り幅が大胸筋の可動範囲をもっとも大きくするので、それだけ広範囲に刺激することができるわけです。また、バーベルを胸部におろしたときに、両肘が下方へ十分に下がるので、肋軟骨に対する刺激も強められ、胸郭の拡張を促すのにも適していると考えられます。したがって、以上に述べたような握り方が、ベンチ・プレスにおけるスタンダード・グリップということにもなります。

さて、それではいまひとつの質問の握り幅の広狭による効果の差異についてお答えします。

ベンチ・プレスは、握り幅をいま述べたスタンダード・グリップより狭くするほどに、大胸筋の内側へ効果の重点が移っていき、また、上腕三頭筋にも強く効くようになります。反対に、握り幅をスタンダード・グリップよりも広くするほどに、大胸筋の可動範囲が小さくなり運動の効果が外側に偏るようになります。このことは、もとより大胸筋の性質から考えて、傾向としていえることであり、他の部分に全く効かなくなるということではありませんから誤解しないでください。

大胸筋は鎖骨、胸骨、肋骨から上腕骨上部に付着する筋であり、ベンチ・プレスのような動作では、肘を下方へ深くおろして筋を長い状態に伸展させるほどに、外側、つまり腕に寄った部分に強く効くようになります。その反対にバーベルを挙上するときに、筋がより短い状態になるように左右のグリップの間隔を狭くして運動を行うことによって、内側の部分に強い刺激を与えることが可能になります。

したがって、大胸筋を内側の部分とか外側の部分といったように細分して鍛練する場合は、大胸筋の緊張の性質をよくとらえて運動を行うことが大切になります。

ここでひとつ注意しなければならないことは、左右のグリップの間隔をただ広くしさえすれば大胸筋の外側の部分に強く効くようになるかというと、必ずしもそうではありません。あまりに広くしすぎると、バーベルを胸におろしたときに、実際には両肘が深くおりなくなるので、大胸筋の外側部に対する刺激がかえって弱められてしまうことが考えられます。

以上、あなたの質問についてお答えしましたが、最後にもう一言つけ加えておきたいことがあります。

誰でも始めの頃は基本に忠実に運動を行うものですが、運動に慣れてくると、欲が出てくるせいか、ついつい無理をしがちになります。そして中にはより重い重量で行うことにこだわるあまり、いつしか基本からはずれた雑な動作で運動を行うようになってしまう人がいます。

雑な動作とは、いいかえればごまかしの動作ということであり、そのようなごまかしの動作では、たとえ重い重量を用いて運動が行えたとしても、主使用筋の実質的な筋の肥大と筋力の向上はあまり得られません。したがってそのことをよく自覚し、時の経過につれて運動のやり方が雑な方法になってしまうことがないように心してトレーニングしてください。

「急がば廻われ」ということわざがありますが、基本を忠実に守っていくことが効果を早く得ることにつながるのです。

ベント・アーム・プルオーバーのやり方とその効果

Q.ベント・アーム・プルオーバーには頭部をベンチの端から突き出して行う方法と、ベンチの上に載せたままで行う方法との2とおりのやり方がありますが、効果の面での違いについてお答えください。

また、頭部をベンチから突き出して行う場合、どの程度出すようにすればよいのか、できるだけわかり易く説明してください。

(福井県 西山秋男 工員 21歲)
A.同じ種類の運動であっても、ちよっとしたフォームの違いで効果もまた変わってくるものです。つまり、似たような運動であっても、フォームが違うということはその運動で使われる種々の筋の緊張度合と収縮の仕方に差異がもたらされることであり、当然、効果も多少違ってきます。

そして、そのような傾向は、どちらかといえば単一の部位を鍛練する運動種目よりも、種々の部位を鍛練するような運動種目に強く見られます。ベント・アーム・プルオーバーは、広背筋、大胸筋、上腕三頭筋等を同時に鍛練する運動であり、いうまでもなく後者に属します。たとえていえば、カール運動は前者に属します。

したがって、ベント・アーム・プルオーバーは、運動のフォームの違いが広背筋、大胸筋、上腕三頭筋等、おもな使用筋の発達の仕方に比較的強い変化をもたらす運動だといえます。

ベント・アーム・プルオーバーは、いまあげた使用筋の他に、多回数を行うときには前腕にもかなり強く効きます。これら使用筋の緊張の仕方と度合が、頭をベンチに載せた状態で運動を行うのと、端から突き出して行うのとではかなり差異があります。

込みいった説明は省略させていただきますが、頭をベンチの上に載せた状態で運動を行う場合は、上腕三頭筋の緊張が強く促されるので、上腕部のバルクを増すのには有効ですが、広背筋と大胸筋に関しては、頭を突き出して行う方法の方が有効といえます。つまり、頭をベンチの端から出して行う方法では、広背筋と大胸筋の伸縮が、頭を載せて行う場合よりも大きくなるので、それだけ広範囲に効くようになるということです。

したがって、もしかりに、いずれか一方のやり方を採用するとすれば、頭を載せて行う方法を採用するのがよいと思います。上腕三頭筋に関しても、比較的重い重量の使用が可能になることから、それなりに効果を期待できるようになります。

運動上、注意することは、バーベルを床の方へできるだけ深くおろすことと、おろしたときに臀部をベンチから浮かさないようにすることです。また肘を痛めないために軽い重量を用いて充分ウォーム・アップをすることと、バーベルを床の方へおろしたときに肩を痛めることのないように、左右の上腕の内側が上へ向かないように留意することです。

さて、それでは、もう1つの質問、つまり頭部をベンチの端から出して運動を行う場合の頭の位置についてお答えします。

まず頭の位置を定めるについて配慮しなければならないことは、安定したフォームで運動ができ、しかも、可動範囲全般にわたってスムーズな動作が行えるかどうかということです。それについての要点を次にあげてみます。

①頭の出し方が足りないと、たとえフォームが安定していても上体が反りにくくなり、スムーズな動作がやりにくくなる。

②頭を出しすぎると、クビが不安定になり、頭を支えるのに余分な労力が必要となるので、肝心の動作に対する集中力がそこなわれる。また、肩がベンチからはみ出すような状態になるので、不安定な体勢になり運動がしにくくなる。

以上の2点を考慮すれば、頭の位置は出しすぎないように、また出し足りないことのないようにということになりますが、このことを具体的に述べれば次のようになります。

◎頸を後ろへ(仰臥している姿勢では下方へ)屈曲させた状態で、最も屈曲している箇所がベンチの端に当るようにする。そのような状態では、クビが十分に反りかえり、しかも、その状態を維持するのに、頸の力をほとんど必要としない。むしろ、頭は頸の力を抜いて自然な感じで下方へ落とすような感じになる。

初心者の運動量とレイ・オフ

Q.年齢16歳、ボディビル歴6カ月です。現在は下記のスケジュールでトレーニングを行なっています。

<トレーニング・スケジュール>
記事画像1
以上の内容で週に4度行なっています。トレーニング後の疲労度はかなり強で、トレーニングしない日も体がなんとなくだるく感じます。

そこで質問ですが、ボディビルの本にも定期的にレイ・オフする必要があると書いてあるので、10日間ほどトレーニングを休もうかと考えています。しかし、その間に、果たして筋肉が細くなり筋力が低下してしまうようなことはないでしようか。そのことが気になってなかなかレイ・オフをする決心がつきません。そのことについてお答えください。

ちなみに、現在の体位は、身長170cm、体重55kg、胸囲84.5cm、腹囲69cm、上腕囲28.5、前腕囲26cm、大腿囲43.5cmです。

(神戸市 広田春男 高校生 16歳)
A.あなたが現在行なっているトレーニング法は、内容的に問題とすべき点がいろいろあるようです。しかしそのことについては後でふれるとして、まずは質問にお答えすることにします。

レイ・オフによって筋が細くなり、筋力が低下してしまうことについてはイエスともノーとも断定した答えはいたしかねます。

レイ・オフが身体的な向上を直接的にもたらすかどうかは、レイ・オフに入るときのからだの状態と、レイ・オフの日数によって変わってきます。つまり、からだが長期間の休養をどの程度に必要としているかどうかで変わります。からだが別に疲れてもおらず、長期間の休養をとくに必要としない状態でレイ・オフすれば、多くの場合、筋は細くなり、筋力は低下します。

しかし、からだに疲労がたまっている状態でレイ・オフする分には、必要以上に休みすぎることがないかぎり、筋が細くなり筋力が低下してしまうようなことはないと思われます。そればかりか、強度な蓄積疲労を除くためにレイ・オフするときは、その蓄積疲労がとり除かれた後には、レイ・オフ前よりもかえって筋が太くなり、筋力が強くなることもあります。

あなたは、トレーニングしない日もからだがだるいとのことですが、これは病気でないかぎり、蓄積疲労によるものと考えられます。したがって、からだがだるいのが、もしも、疲れがたまっていることに原因があるのだとすれば、レイ・オフによって筋が細くなり筋力が低下してしまうことはあまりないと思います。場合によっては、かえって筋の肥大と筋力の向上がもたらされることもあります。

あなたの場合、レイ・オフの目的はあくまでもからだにたまった疲れを除くことにあるのですから、レイ・オフの期間(日数)は、からだが回復するに十分なものでなければなりません。あらかじめ1週間とか10日間とか、期間を定めてレイ・オフするようにしてもよいのですが、回復ぐあいによってはさらに期間を延長する必要もでてきます。それでも体調が回復しないときは医師の診察を受け、疾病の有無を確かめることも必要です。

さて、それでは冒頭に述べたトレーニング上の問題についてふれることにしましょう。あなたの体調がよくないのは、これから述べることがらと無関係ではなく、おそらくそれらのことが原因になっているものと思われます。

あなたのトレーニング法は、ひとことにいえば、その量と強度において無理があるといえます。具体的にいえば

①採用種目が多い。

②使用重量に無理がある。使用重量に無理があると運動の動作がどうしても不正確になる。

③トレーニングの頻度が多い。

あなたばかりでなく、一般的に初級者が犯しやすいトレーニング上の誤りは、トレーニングの量と強度を欲ばりすぎることです。少しでも早くよくなりたいという気持から、つい無理をしがちになるのでしょうが、からだの発達というものは、トレーニングの量と強度を増やせば、それに比例して発達するといったものではありません。

それどころか、量的に、あるいは質的に過度になると、かえって効果が得られなくなります。はなはだしい場合は、逆に筋を細くし、筋力を低下させることすらあります。「過ぎたるは及ばざるが如し」やりすぎるよりは、むしろ不足ぎみのほうが多少なりとも効果が期待できるだけましというものです。したがって、あなたもそのことをよく自覚して、無理のないトレーニングを心がけてください。

<採用種目について>

体位からあなたの体力を推察するとまだまだ初歩の段階にあると判断されます。したがって、採用種目が8種目というのはいかにも多すぎると思います。現段階ではせいぜい頑張って5〜6種目というところですが、はっきりいえば基礎的な運動種目と目されるシット・アップ、スクワット、ベンチ・プレス、フロント・プレスの4種目でも十分だと思われます。

そして、スクワットとベンチ・プレスが、体重と同じ重量を用いて正確な動作でそれぞれ10回ずつできるようになったら、ベント・オーバー・ローイングとカールを採用して、都合6種目の運動を行うようにしたらよいと思います。ごく初歩の段階では、腕の運動を特別に行わなくても、他の運動種目によって結構その発達が促されるものです。

<使用重量について>

あなたが用いている各運動種目の使用重量を、あなたの体位との比較において検討すると、一様に重すぎる感がします。ことにベント・オーバー・ローイング、カール、スタンディング・ローの3種目は程度を越えていると思われます。そして、そのように重すぎると思われる重量を用いて運動を行うことができるというのは、おそらく運動の動作が不正確であるからだと考えられます。

ボディビルの運動というものは、下にあるバーベルをただ上にあげればよいというものではありません。下から上へあげるときの、また、上から下へおろすときの中間動作が大切です。つまり、正しいフォームで反動を使わずに1回1回念を入れて動作を反復するようにしなければなりません。

したがって、各種目で使用する重量は、上述の動作をきちんと行えるものでなければなりません。以上のことを考慮して使用重量を再検討してください。

<トレーニングの週間頻度について>

同じ内容のトレーニングを週に4日も行うのは多すぎます。分割法という方法で行うのであれば、週に4日のトレーニングを行なったからといって別にやりすぎということはありませんが単一のコースを週に4日も行うのは、よほど体力のある人でない限り無理が生じます。無理を押してトレーニングを行えば疲労がたまり、かえって効果が得られなくなります。

効果を得るには適切な休養をからだに与える必要があります。そのためには2日続けてトレーニングを行わないようにし、週3日のペースにすることです。2週間を1つの単位として1日おきに7日行うという方法もありますが、あなたの段階ではやはり1週間に3日行うのが無難です。1週間に3日行うというのは、たとえば、月・水・金を練習日とし、火・木・土・日を休養日とするように1日おきに3日練習して、次に2日続けて休むわけですが、この2日続けて休むことが疲労を回復し、調子を維持するのに役立つのです。

【解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生】
月刊ボディビルディング1976年7月号

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