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コンテスト審査の難しさ

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月刊ボディビルディング1976年9月号
掲載日:2018.03.27
いよいよボディコンテストのシーズンがやってきた。日曜日ともなれば、必ず全国のどこかで逞しく日焼けした男たちが、審査員や観衆の前で懸命なポージング合戦を展開している。

そして、このシーズンになればいつも考えるのが、ボディコンテストの審査の難しさである。審査員にもそれぞれ好みがあり、バルクを重視する人、デフィニションを重視する人、あるいはポージング、プロポーション等にも相当重きをおく審査員もいる。

 他のスポーツ競技のように、その速さや距離を測って決定するのであれば主観の入り込む余地はないが、ボディコンテストの場合は、審査基準という大きな枠の中で、審査員のそれぞれの主観によって採点が行われる。その結果、会場につめかけたほとんどの観衆が納得するような結果になることもあれば、あるいは゛〝オヤッ″と思うような結果が出ることもある。

 ではここで、参考までに日本ボディビル協会のボディコンテスト実施規程にある審査方法を抜枠してみよう。

第15条 決勝審査は、筋肉、均斉、知性、ポージング、スポーツマン・マナーなどを総合的に判定して100点満点とする。100点満点とは当該大会の最高レベル選手を対象とし、決勝進出者の最低点は70点程度とする。採点の基準は、筋肉を50%程度均斉を30%程度、ポージング、知性 スポーツマン・マナー等を含めて20%程度の割合で考えるが、細分化して採点しない。

 そのほか、肌の美醜なども採点上の要因に含まれることになっているが、筋肉の発達状況と均斉で100点満点のうち80点程度を占めている。

 ここで思い出されるのが、過日行なわれた兵庫県ボディビル選手権でみられた順位逆転劇である。

 このコンテストは、まずショートマン、ミディアム、トールマンの3クラス別の審査を行い、次に総合審査が行われた。そしてショートマン・クラスは1位が浜田選手、2位が東海林選手と決定した。ところが、総合審査では1位が東海林選手、2位が浜田選手と順位が逆転してしまった。

 せいぜい30分か1時間の間に、筋肉や均斉が変化するはずがないから、この逆転の原因はポージングにでもあったのだろうか。しかし、東海林、浜田の2選手ともクラス別でも総合でも大きなポージングのミスもなく、どうして逆転したのかよくわからない。

 クラス別と総合の審査員が違うなら好みや主観の違いで、逆転も考えられないではないが、同じ審査員が審査していながら、どうしてこういうことが起こるのだろうか。

 1975年度のNABBAミスター・ユニバース・コンテストの総合順位の決定について、本誌増刊号に寄せた高山勝一郎氏の記事によると、ショートマン、ミディアム、トールマンの3クラスの1位の選手が総合の1位から3位までを占めることになっており、ショートマン・クラスで2位となった杉田茂選手はどうしても4位以下にしかなれないのだという。ましてや、杉田選手がショートマン1位のイアン・ローレンスを抜いて総合優勝することなど絶対あり得ない。

 審査員の主観に左右されやすいボディコンテストではあるが、自信と信念をもって自分の主観を押しとおすならば、このような結果は避けられるのではないだろうか。
                                            (沢田 二郎)
月刊ボディビルディング1976年9月号

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