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なんでもQ&Aお答えします 1976年12月号

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月刊ボディビルディング1976年12月号
掲載日:2018.08.27

スケジュールの適・不適の判定はどうするか

Q ボディビルを始めてから1年になるので、テキストどおりにではなく自分でスケジュールを作ってトレーニングを行なってみようと考えています。

 そこでお伺いします。折角スケジュールを作っても、それが自分に合ったものでなければならないので、スケジュールの適、不適を判定する方法についての要点をご教示ください。

(富山県 三村功一 工員 21才)
A いろいろなことを慎重に考慮して作ったスケジュールも、それが自分に適したものであるかどうかは、実際に行なってみなければわかりません。採用当初はちょうどよいと思ったものでも、日数を重ねるにつれて負担を感じるようになることもあります。したがって、そのようなことにならないためには、あらかじめトレーニングの内容に余裕をもたせてスケジュールを作り、日数を重ねながら徐々に適したものへと改めていくようにするのがよいでしょう。

 では、前置はこのぐらいにして、トレーニング・スケジュールの適、不適を判定する方法について述べることにしましょう。

 <適していると思われる場合>

 ①生気があり、体調も良好。

 ②次のトレーニング日が待ちどおしく感じる。

 ③トレーニングがスケジュールどおりに意欲的に行え、しかも、少しずつ能力が高まっている気がする。

 ④トレーニング後に爽快を疲労感を覚え、翌日に疲れが残らず生活にも意欲的である。

 ⑤食欲があり、気分が比較的安定している。

 ⑥就寝時に筋肉の異様な緊張感がなく、リラックスした気分になれ、安眠できる。

 以上のような状態のときは、スケジュールが適しているものと判断してよいでしょう。

 <不適と思われる場合>

 ①生気がなく、体調が悪い。

 ②トレーニングをするのに負担を感じる。

 ③負荷と体力に調和が得られなくなり所定のスケジュールを行うのに義務感が生じる。

 ④トレーニング日ごとに能力が低下し、トレーニングの効果に希望が持てなくなる。

 ⑤使用重量が低下しないまでも、日を追うごとに気分的にツラサが高まってくる。

 ⑥胃腸の調子が悪くなり、どちらかといえば気分が不安定になる。

 ⑦トレーニング後の疲れが激しく、2~3時間経過しても元気が回復せず倦怠感を覚える。また、疲れが翌日まで残り、生活の活力が低下する。

 ⑧就寝時に全身的または部分的に異様なコリを感じ、安眠もできなくなる。

 以上のような状態がたとえ全てではなくても、上述の項目に該当する事態が生じたならスケジュールが不適と考えてください。そして、それまでの蓄積疲労をとるために、からだが必要とするだけのレイ・オフ(比較的長期間の休養)期間を置くようにしてください。オーバー・ワーク状態でトレーニングを継続しても効果は得られません。

アンバランスな腹筋はトレーニングで直せるか

Q 9月号に固有背筋の発達がアンバランスな人の場合が出ていましたが、私の場合は、腹筋が左右アンバランスなのです。左側の腹筋はへソの上から3つに分かれていますが、右側は2つにしか分かれていません。

 右側も左側と同じように3つに分けることはできないでしょうか。もしもできるとすれば、どのような運動を行えばよいのでしょうか。

(福島県 郡山市 古川邦一)
A 腹直筋は白線によって左右縦に、また、腱画によって横3~4条に仕切られています。そして、その形状は先天的に定められたものなので、いかに鍛練したからといってもすっかり形を変えられるものではありません。もちろん、筋そのものが大きく発達することで多少は形が変わりはしますが、左右が著しく段ちがいであるのを直したり、初めから有りもしない腱画を新しくこさえたりすることはできません。また、腱画で仕切られた個々の筋の形をまるっきり変えてしまうこともできません。つまり、腹直筋の発達は、先天的な形状を保ってなされるということです。(ただし、上部と下部の筋量の比率をある程度変えることはトレーニングによって可能です)

 そこで、あなたの場合ですが、まず右側の腹直筋を指でよく探ってみてください。いくら探ってみても腱画が2つしかないようならばどうすることもできません。前述したように、新しく腱画を造り出すことは不可能です。また、よしんば腱画が有ったとしてもそれが微弱な場合は上下に位置する筋を、トレーニングによってはっきり識別できるほどに変えることはまず難しいといえます。

 片側の腹直筋の腱画が先天的に2つしかなかったり、また、有ったとしてもそれが微弱だったりする場合は、腹筋の全体的な印象の面で確かにハンデになると思います。しかし、だからといって、それを嘆いてみてもどうなるものでもありません。要はそのようなハンデをいかにカバーするかです。1973年のミスター・ユニバースになったボイヤー・コーは、腹直筋の腱画が先天的にはっきりしない体形でしたが、そのような欠点をカバーしてなお余りある立派なからだを造り、見事その栄冠を勝ち得ています。したがって、あなたも気を落とすことなくがんばってください。

肩幅を広くするにはどうしたらよいか

Q ボディビル8カ月、効果のほどはまずまずといったところですが、欲をいえばもう少し肩幅が広くなりたいと思っています。身長に比較してまだ狭いようです。肩幅を広くするにはどのような運動を行ったらよいでしょうか。

なお、現在の体位、および現在行なっているトレーニング・スケジュール

は下記のとおりです。
<体位>
身長 178cm
腹囲 72cm
体重 64kg
腰囲 90cm
胸囲 94cm
大腿囲 53cm
上腕囲 31cm

<トレーニング・スケジュール>
記事画像1
(埼玉県 小倉勝一 会社員 24才)
A 身長の割に肩幅が狭いであろうことは体位表を見ても想像できます。

 胸囲とか上腕囲、大腿囲のサイズは比較的短期間のトレーニングでもかなり増大する場合があります。しかし、肩の発達、ことに肩幅の大きさは短期間のトレーニングではなかなか目に見えるほどの増加は得られないものです。あなたもそのへんのところは十分心得ておられると思いますが、はっきりいって、8カ月ぐらいのトレーニングではそう多くは期待できません。これから先、1年、2年とじっくりトレーニングを重ねていく必要があると思います。

 では、肩幅を広くするための要点と運動方法について述べるとします。ただし、あなたの現在の体力を考慮して運動は内容的に中級程度のものとしました。

 <要点>

 肩幅を広くするには、三角筋を発達させなければならないことはいうまでもありません。それも三角筋の横の部分を発達させなければなりません。したがって、採用する運動種目も、前や後ろの部分に効くものよりも、横の部分に効くものを優先することが大切です。また、運動のやり方も、ただなんとなくやるというのではなく、横の部分に効くように慎重な動作で行うことが肝心です。

 三角筋の横の部分に有効と考えられる運動種目を、動作の面で分類していえば、腕をからだの前方で上下するものよりも、からだのサイドで上げ下げする種類のものがよいということがいえます。

 また、運動中に留意しなければならないことは、運動のポイントが僧帽筋にかかりすぎてしまわないよう動作を行うことです。三角筋の運動に際しては、常に僧帽筋が協応して働きますが、そこを慎重な動作で、僧帽筋にではなく三角筋に負荷が十分にかかるように行うのがコツです。僧帽筋の方に強く効いてしまうようでは三角筋のための運動とはいえません。運動のやり方が上手であれば、三角筋にきちんと効くものです。もしも、運動種目によってはどうしても三角筋に上手に効かせることができないという場合は、その種目をトレーニング・コースから除外するのがよいでしょう。

 <運動種目>

 ◎ワイド・グリップ・スタンディング・プレス
 スタンディング・プレスは三角筋の運動の中では最も基本的なものといえますが、三角筋の横の部分を強化するには左右のグリップ間隔を広くして行うのが有効です。

 左右のグリップの間隔は肩幅の倍ぐらいの幅がよいでしょう。運動のやり方で注意する点は、バーベル・シャフトを強く握り締めないで、掌の中に載せた感じで、差しあげるというよりも押しあげる感じでバーベルを上へあげてください。シャフトを強く握り締めると、腕に力が入ってしまい、腕力でバーベルをあげるようになるので、三角筋に与える効果が減少します。

 ◎ビハインド・ネック・プレス(バック・プレス)
 この運動は、中級以上の肩の運動としては最も基礎的なものです。左右のグリップの間隔が狭ますぎると、運動負荷が腕に強くかかってしまうので、その点に注意してください。また、広くしすぎても動作の運動範囲が小さくなってしまうので、左右のグリップの間隔は肩幅の倍ぐらいか、あるいは、それよりもいくぶん狭いぐらいがよいでしょう。

 運動中に留意することは、ワイド・グリップ・スタンディング・プレスと同様にシャフトを強く握り締めないようにして、バーベルをクビの後ろから頭上へ押しあげてください。胸部を前へ張り出すようにし、腕を多少後ろへ反らしあげるようにしてバーベルを押しあげるほうが三角筋の横の部分にはよく効きます。クビを前へ倒し動作の途中で肘が肩よりも前へきてしまうようなことがないようにしてください。

 ◎フロント・プレス/バック・プレス・コンビネーション
 ワイド・グリップ・スタンディング・プレスとバック・プレスを組み合わせた運動です。つまりパーベルを肩の前側からあげてはクビの後ろへおろし、クビの後ろからあげては前へおろす、といった具合いに動作を行います。運動の反復回数は前後で1回として8~10回ぐらい行うのがよいでしょう。回数を多く行うことのできないような重い重量を使用すると三角筋の横の部分に効かせにくくなるようです。

 以上の3種目の運動(場合によっては2種目でもよい)を、注意事項を忠実に守って行えば三角筋の横の部分にかなり有効と思います。

 なお、スタンディング・ローやサイド・レイズも三角筋の横の部分には有効な運動種目ですが、実際のとき、三角筋の横の部分に効かすには運動のやり方が難しい種目です。したがって、今のところはトレーニング種目から除外し、前述の運動で、三角筋が確実に意識できるようになってから行うようにするのがよいでしょう。

 <トレーニング・コース(例1)>
 (隔日的、週三日)
①ベンチ・プレス
②ワイド・グリップ・スタンディング・プレス
③ビハインド・ネック・プレス(バック・プレス)
④フロント・プレス/バック・プレス・コンビネーション
⑤ベント・オーバー・ローイング
⑥バーベル・カール
⑦ディープ・ニー・ベンド
⑧シット・アップ

 [注]筋肉優先法により、三角筋の強化種目を他の種目に優先して配列する。上記のコース例の場合は、中級者としての配慮から運動種目としての重要性を重視してベンチ・プレスを1番先にした。

 なお、過度に疲労するようであれば、三角筋のための強化種目を2種目にする。

 <トレーニング・コース(例2)>
 (分割法による。各コース週2日)

 月曜・木曜
 ①ベンチ・プレス
 ②ワイド・グリップ・スタンディング・プレス
 ③ビハインド・ネック・プレス
 ④フロント・プレス/バック・プレス・コンビネーション

 火曜・金曜
 ⑤シット・アップ
 ⑥ベント・オーバー・ローイング
 ⑦バーベル・カール
 ⑧ディープ・ニー・ベンド

 [注]分割法としては内容的にもの足りない感がするが、(例1)における運動量が、1日で行う運動量として体力的に負担になるようであればこの方法を採用するのがよい。ただし、この方法を採用する際は、場合によっては種目当りのセット数を増加してもよい。なお、各コースを週に3日ずつ行うのは、体力的に過度になるおそれがあるので慎むほうがよい。

【解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生】
月刊ボディビルディング1976年12月号

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