JBBAボディビル・テキスト40
指導者のためのからだづくりの科学
各論Ⅱ(栄養について)6ーむすび
月刊ボディビルディング1977年1月号
掲載日:2018.06.12
日本ボディビル協会指導員審査会委員長 佐野匡宣
タンパク質に関して
摂取エネルギーの量とは関係なく、タンパク質所要量は成人の場合、一般的に男子70g、
女子60gといわれている。そして、タンパク質は無機質やビタミンと同じように、必要量よりも多めにとった方が健康保持上有利であると言われている。
とくに、摂取エネルギーの多い場合には、男子1日2500カロリー、女子1日1500カロリーを一応基準カロリーと考え、それより超過した分の10%程度はタンパク質でまかなうようにし、タンパク質の摂取量を増やした方が食品構成のバランスを保つうえでも好ましいといわれている。
なお、従来よりも激しく筋肉を使いはじめた初期には、筋肉タンパク質量が増加するので、もしタンパク質摂取量が従来どおりで増加がないと、血液タンパク質が動員されるので、貧血を起こすおそれがある。(本誌51年9月号、テキスト36「タンパク質」参照)
女子60gといわれている。そして、タンパク質は無機質やビタミンと同じように、必要量よりも多めにとった方が健康保持上有利であると言われている。
とくに、摂取エネルギーの多い場合には、男子1日2500カロリー、女子1日1500カロリーを一応基準カロリーと考え、それより超過した分の10%程度はタンパク質でまかなうようにし、タンパク質の摂取量を増やした方が食品構成のバランスを保つうえでも好ましいといわれている。
なお、従来よりも激しく筋肉を使いはじめた初期には、筋肉タンパク質量が増加するので、もしタンパク質摂取量が従来どおりで増加がないと、血液タンパク質が動員されるので、貧血を起こすおそれがある。(本誌51年9月号、テキスト36「タンパク質」参照)
無機質に関して
大量の発汗にともなって水分と塩分を失う場合、水分の摂取については本誌50年12月号「水について」の項で述べたが、失われた塩分を補給することも大切である。この場合、食塩含量の多い固形物をとくに空腹時にとると胃粘膜を侵すことになるので注意すべきである。なるべくスープ等の汁ものでとるべきである。
また、汗の中にはカルシウム等もかなり含まれて共に失われる。カルシウムは筋肉運動に際して、筋肉内に動員される傾向もあるので、とくに発汗多量の筋肉運動に際してはカルシウムの補給にも配慮が必要である。さらに、発育期の年代のものについては骨格の発達のためにもカルシウムの摂取が大切である。
最近、幼少年の間で骨折が増えているとのことであるが、現代っ子にこのような骨折が増えてきたのは、食事内容が昔と変ってきたことと、教育ママ的影響で、子供たちの遊ぶ時間、つまり身体運動の時間が少なくなったためであろう。これが対策としてはチリメンジャコのようなカルシウムを多く含んだ小魚を多くとると共に、ビタミンD(レバー、卵黄、いわし等に多く含まれている)を摂ることである。
いくら小魚や乳製品等のカルシウムを多く含んだ食品をとっても、ビタミンDが不足していたのではカルシウムはうまく体内に吸収されない。また、良質のタンパク質はカルシウムの吸収を高めてくれるものである。
日頃から少々のことでは折れない丈夫な骨をつくることが大切で、そのためには食品上の注意とともに、体を常に動かし筋肉を使うことである。筋肉を使うことによって、筋肉をとおして骨に酸素がよく供給され、骨そのものが丈夫になる。
運動は骨の成長期にある小・中学生時代にはとくに必要で、運動をすれば反射神経が身につき、たとえ転んでも骨折するような転び方をしなくなるものである。
また、汗の中にはカルシウム等もかなり含まれて共に失われる。カルシウムは筋肉運動に際して、筋肉内に動員される傾向もあるので、とくに発汗多量の筋肉運動に際してはカルシウムの補給にも配慮が必要である。さらに、発育期の年代のものについては骨格の発達のためにもカルシウムの摂取が大切である。
最近、幼少年の間で骨折が増えているとのことであるが、現代っ子にこのような骨折が増えてきたのは、食事内容が昔と変ってきたことと、教育ママ的影響で、子供たちの遊ぶ時間、つまり身体運動の時間が少なくなったためであろう。これが対策としてはチリメンジャコのようなカルシウムを多く含んだ小魚を多くとると共に、ビタミンD(レバー、卵黄、いわし等に多く含まれている)を摂ることである。
いくら小魚や乳製品等のカルシウムを多く含んだ食品をとっても、ビタミンDが不足していたのではカルシウムはうまく体内に吸収されない。また、良質のタンパク質はカルシウムの吸収を高めてくれるものである。
日頃から少々のことでは折れない丈夫な骨をつくることが大切で、そのためには食品上の注意とともに、体を常に動かし筋肉を使うことである。筋肉を使うことによって、筋肉をとおして骨に酸素がよく供給され、骨そのものが丈夫になる。
運動は骨の成長期にある小・中学生時代にはとくに必要で、運動をすれば反射神経が身につき、たとえ転んでも骨折するような転び方をしなくなるものである。
ビタミンに関して
ビタミンA、B1、B2、C。ニコチン酸等については必要量に安全率を考慮して所要量が定められている。したがって一般には所要量を満たす程度にとっていれば不足することはない。またB1、B2、ニコチン酸は摂取カロリーに比例して必要量が増すが、普通、所要量にはそのことも考慮して定められている。しかし、所要量の2~3倍程度なら多く摂りすぎても害になる可能性はなく、かえって運動能力によい影響を与えることも考えられるので、激しい運動や作業のときは補給を多くする考慮も必要である。
スポーツの種類とビタミンの必要量の関係についてJakowlewは次の表のように示している。
この表からもわかるように、敏捷性スポーツよりも持久性スポーツの方がビタミンの所要量要求は大きい。
スポーツの種類とビタミンの必要量の関係についてJakowlewは次の表のように示している。
この表からもわかるように、敏捷性スポーツよりも持久性スポーツの方がビタミンの所要量要求は大きい。
疲労についての考慮
疲労は筋肉疲労と神経疲労とに分けられている。人によっていろいろな定義を下しているが、それらを総合して考えてみると、要するに疲労にともなう生体の変化を異なった面からとらえて表現しているものである。
疲労は神経系あるいは神経系と直接関係ある組織、すなわち感覚組織および筋肉、腺に関して生ずる生理的現象で、睡眠・休養によって回復し得るが睡眠を必要とするのは神経系、とくに中枢神経系で、その他の組織は時には比較的短時間の休養で回復し、とくに長時間の睡眠は必要としない。
また疲労には栄養からくるものも考えられる。食べ物の内容が不適当で、ある種の栄養が不足したり、胃腸に余分の負担をかけたり、食事時間が不規則で胃腸の調子を崩したりする場合も疲労しやすい。
筋肉を働かせればやがて疲労を感ずるが、日常の生活における運動の程度では、疲れたと感ずる場合、多くはその際に働いた筋肉の緊張、または運動に関する中枢神経の疲労であって、筋肉そのものの疲労でない神経疲労である場合が多い。しかし、激しい筋運動をした場合には、一時的に筋肉そのものが疲労するが、これは次のような原因によるものである。
①エネルギーの減少にもとずくもの
たとえば、長時間にわたって走るマラソンのような激しい筋肉運動を続けると、体内に存在する熱量の中でとくに糖質が優先的に使用消耗されその結果、血糖量が低下する。ついで次第に脂肪の燃焼量が増加し、呼吸商は低下し、疲労を感じるようになる。
②乳酸の蓄積、浸透圧の変化
たとえば短距離競争のような、短時間ではあるが、極端に激しい筋肉運動をすると、そのために活動する筋肉に局所的な酸素不足の状態が起こり、グリコーゲンが不完全燃焼して乳酸が蓄積される。そのために筋肉内のPHが低下し、浸透圧も上昇して、運動不能の状態におちいる。
③神経伝達の疲労
神経の興奮によって筋肉が収縮するためには、神経終板で刺激が伝達されなければならないが、刺激がくり返し行われると、伝達物質であるアセチルコリンが消耗し、次第に伝達が充分に行われなくなる。以上のような原因により筋肉疲労が起こるのである。
疲労は神経系あるいは神経系と直接関係ある組織、すなわち感覚組織および筋肉、腺に関して生ずる生理的現象で、睡眠・休養によって回復し得るが睡眠を必要とするのは神経系、とくに中枢神経系で、その他の組織は時には比較的短時間の休養で回復し、とくに長時間の睡眠は必要としない。
また疲労には栄養からくるものも考えられる。食べ物の内容が不適当で、ある種の栄養が不足したり、胃腸に余分の負担をかけたり、食事時間が不規則で胃腸の調子を崩したりする場合も疲労しやすい。
筋肉を働かせればやがて疲労を感ずるが、日常の生活における運動の程度では、疲れたと感ずる場合、多くはその際に働いた筋肉の緊張、または運動に関する中枢神経の疲労であって、筋肉そのものの疲労でない神経疲労である場合が多い。しかし、激しい筋運動をした場合には、一時的に筋肉そのものが疲労するが、これは次のような原因によるものである。
①エネルギーの減少にもとずくもの
たとえば、長時間にわたって走るマラソンのような激しい筋肉運動を続けると、体内に存在する熱量の中でとくに糖質が優先的に使用消耗されその結果、血糖量が低下する。ついで次第に脂肪の燃焼量が増加し、呼吸商は低下し、疲労を感じるようになる。
②乳酸の蓄積、浸透圧の変化
たとえば短距離競争のような、短時間ではあるが、極端に激しい筋肉運動をすると、そのために活動する筋肉に局所的な酸素不足の状態が起こり、グリコーゲンが不完全燃焼して乳酸が蓄積される。そのために筋肉内のPHが低下し、浸透圧も上昇して、運動不能の状態におちいる。
③神経伝達の疲労
神経の興奮によって筋肉が収縮するためには、神経終板で刺激が伝達されなければならないが、刺激がくり返し行われると、伝達物質であるアセチルコリンが消耗し、次第に伝達が充分に行われなくなる。以上のような原因により筋肉疲労が起こるのである。
要は、運動・栄養・休養の3つのバランスをいかに保ち、つねに身体を動かす事を実行するかが、身体的能力、すなわち日常生活における作業能力につながるものである。
昭和50年8月、国立京都国際会館で開かれた国際栄養学会のシンポジウムで、国立栄養研究所の鈴木慎次郎栄養生理部長は、「最近のサラリーマンや主婦に“食わず、動かず”の傾向が強まり、このままでは健康維持にも問題がある」と警告し、そして「今より1時間多く歩き、もっと栄養をとろう」と提言された。
その理由として鈴木部長は「昭和25年以来、国民の労働強度や摂取カロリーについて、家庭の主婦やサラリーマン等の実態調査をした結果、サラリーマンや家庭の主婦の多くは軽労働からさらに負担の少ない非常に軽い労働になってきている。昭和45年では国民の25%がこのランクに入っており、昭和55年までにはこのランクに入るものが30%台になるだろう」と述べている。
非常に軽い労働にたずさわる人たちの1日の平均摂取カロリーは、男子で2300カロリー、女子で1800カロリーで生命維持に最低必要な基礎代謝量(1日につき男子1400カロリー、女子800カロリー)にわずか900~600カロリーを上乗せした程度にもかかわらず、動かないために肥満が問題となってきている。
これを防ぐためには、少なくても1日に200カロリー程度の運動を加え、さらに食事面でも考慮することが望ましい。200カロリーの運動とは、速歩で1時間歩く程度の運動に相当する。
以上を要約すると、健康な日常生活をおくるためには「バランスのとれた食事(栄養)をとり、大いに身体を動かす(鍛える)ことである」ということにつきる。以上をもって「栄養について」を終る。
<栄養について>の参考文献
○ハーパー生化学(原書14版)
三浦義彰監修 丸善株式会社
○生理化学 森脇千秋著 広川書店
○現代保健体育学大系19 栄養学
大磯敏夫編 大修館書店
○動的生化学(第3版)ポールドウイン著
江上、佐藤、下村ほか共訳 岩波書店
○動物の代謝調節 中沢淳、森正敬共訳
講談社サイエンティフィック
○栄養生理学入門 小池五郎著
女子栄養大学出版部
○栄養生化学 稲垣長典、坂本清共著
三共出版株式会社
○栄養生化学 香川靖雄著
女子栄養大学出版部
○栄養の科学 大栗サダ著 東明社
○日本食品分析表 香川綾編
女子栄養大学出版部
○生物研究 森川久雄著 金子書房
○現代人の栄養 桑原丙午生著
成美堂出版
○健康をつくる栄養 桑原丙午生著
成美堂害店
○肥満の食事療法
野崎幸久、杉山二六佑共著 保健同人社
○医者いらず自強法 原崎勇次著
徳間書房
○医者いらず食事法 原崎勇次著
徳間書房
○食べてやせる 女子栄養大学出版部
○やせる健康食 中村鉱一著
KKベストセラーズ
○胃袋健康食 柴田長夫著
KKベストセラーズ
○美しくやせる食事プラン
飯塚律子著 池田書店
昭和50年8月、国立京都国際会館で開かれた国際栄養学会のシンポジウムで、国立栄養研究所の鈴木慎次郎栄養生理部長は、「最近のサラリーマンや主婦に“食わず、動かず”の傾向が強まり、このままでは健康維持にも問題がある」と警告し、そして「今より1時間多く歩き、もっと栄養をとろう」と提言された。
その理由として鈴木部長は「昭和25年以来、国民の労働強度や摂取カロリーについて、家庭の主婦やサラリーマン等の実態調査をした結果、サラリーマンや家庭の主婦の多くは軽労働からさらに負担の少ない非常に軽い労働になってきている。昭和45年では国民の25%がこのランクに入っており、昭和55年までにはこのランクに入るものが30%台になるだろう」と述べている。
非常に軽い労働にたずさわる人たちの1日の平均摂取カロリーは、男子で2300カロリー、女子で1800カロリーで生命維持に最低必要な基礎代謝量(1日につき男子1400カロリー、女子800カロリー)にわずか900~600カロリーを上乗せした程度にもかかわらず、動かないために肥満が問題となってきている。
これを防ぐためには、少なくても1日に200カロリー程度の運動を加え、さらに食事面でも考慮することが望ましい。200カロリーの運動とは、速歩で1時間歩く程度の運動に相当する。
以上を要約すると、健康な日常生活をおくるためには「バランスのとれた食事(栄養)をとり、大いに身体を動かす(鍛える)ことである」ということにつきる。以上をもって「栄養について」を終る。
<栄養について>の参考文献
○ハーパー生化学(原書14版)
三浦義彰監修 丸善株式会社
○生理化学 森脇千秋著 広川書店
○現代保健体育学大系19 栄養学
大磯敏夫編 大修館書店
○動的生化学(第3版)ポールドウイン著
江上、佐藤、下村ほか共訳 岩波書店
○動物の代謝調節 中沢淳、森正敬共訳
講談社サイエンティフィック
○栄養生理学入門 小池五郎著
女子栄養大学出版部
○栄養生化学 稲垣長典、坂本清共著
三共出版株式会社
○栄養生化学 香川靖雄著
女子栄養大学出版部
○栄養の科学 大栗サダ著 東明社
○日本食品分析表 香川綾編
女子栄養大学出版部
○生物研究 森川久雄著 金子書房
○現代人の栄養 桑原丙午生著
成美堂出版
○健康をつくる栄養 桑原丙午生著
成美堂害店
○肥満の食事療法
野崎幸久、杉山二六佑共著 保健同人社
○医者いらず自強法 原崎勇次著
徳間書房
○医者いらず食事法 原崎勇次著
徳間書房
○食べてやせる 女子栄養大学出版部
○やせる健康食 中村鉱一著
KKベストセラーズ
○胃袋健康食 柴田長夫著
KKベストセラーズ
○美しくやせる食事プラン
飯塚律子著 池田書店
月刊ボディビルディング1977年1月号
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