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くボディビル入門講座〉その1
トレーニング・スケジュールの作り方、考え方

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月刊ボディビルディング1977年3月号
掲載日:2018.08.07
国立競技場主任 矢野雅知

<1>筋肉の発達のしくみ

筋肉を発達させるには、筋肉に強い抵抗を与えなくてはならない。この抵抗に対して、筋肉は収縮することで、より強く太くなっていくのである。

筋肉に抵抗を与える方法はいろいろあるが、最も簡単で、しかも大きな効果を示すのが、バーベルやダンベルなどの運動に代表されるウェイト・トレーニングである。だから、筋肉を強く太く発達させることを目的として行うボディビルディングは、一般にはこのウェイト・トレーニングを中心に行うことになる。

しかし、ボディビルディングは、からだ全体の筋肉がバランスよく発達した“均斉美”も大切な要素である。そのためには、脚の形を整えるというときは、ウェイト・トレーニングだけでなく、ランニングやジャンプ運動などが必要に応じてとり入れられる。したがって、ボディビルディングの運動法は、かなり幅広いものである、ということを認識して、トレーニングは総合的な広い見地から行わなくてはならない。

<筋肉収縮の形態>
筋肉が収縮する形態は、大きく分けて、動的なもの(アイソトニック・コントラクション)と静的なもの(アイソメトリック・コントラクション)の2つに分けられる。

アイソトニック・コントラクションは、筋肉が伸びたり縮んだりする形態のことで、外見に動きが現われるものである。つまり、我々が物を持ち上げたり、物を投げたり、跳んだりするのがこれに相当する。これに対して、アイソメトリック・コントラクションとは、筋肉の長さが変わらずに力を発揮する形態のことで、絶対に動かないものを動かそうと力を入れるときなどがこれに相当する。

アイソトニック・コントラクションは、さらにコンセントリック・コントラクションとエクセントリック・コントラクションの2つの形態に分けられる。

コンセントリック・コントラクション(ポジティブ・ワーク)とは、与えられた抵抗よりも筋力の方が強くて、筋肉が短縮していく形態のことで、一般にバーベルを持ち上げたりする運動形態のことである。これに対してエクセントリック・コントラクション(ネガティブ・ワーク)は、与えられた抵抗よりも筋力の方が弱くて、筋肉が伸縮しながら(引き伸ばされながら)力を発揮する形態のことをいう。

<ボディビルディングに適した筋肉収縮の形態とは>
アイソメトリックスはブルワーカーなどに見られるように、短時間でOKというようにきわめて簡単である。このアイソメトリックスを筋肉トレーニングのために用いた例はかなり古く、窪田教授によるとギリシャ時代にまでさかのぼるという。

近年になってこの方法が注目を集めたのは、1921年にフィジーク・コンテストで優勝して「世界で最も筋肉の発達した男」と称されたチャーレス・アトラスにはじまる。彼は当時の青少年に多大の影響を与えたボディビルディングの通信教育を行なったのであるがアトラスのいう「ダイナミック・テンション」とは、このアイソメトリックスに近い運動方法であった。そして、この運動形態の理論的裏付けをしたのが西ドイツのへッティンガーとミューラーである。

へッティンガーによると、最大筋力を発揮してアイソメトリックスを行えば、わずか2秒間で充分であるという(実際には10秒間ほど続けられる)。このように容易に行えるので、大きなブームを巻き起こしたが、中には「初心者の段階では筋力の増加が非常に速いが、トレーニング経験者になると筋力の増加が緩慢である」「筋肉を肥大させる効果では、アイソトニックスに一歩ゆずる」という意見もある。

しかし、このアイソメトリックスを用いてウェイトリフティングで世界新記録を樹立したルイス・リーク選手や3カ月間で体重を10kgも増やしてオリンピックのゴールド・メダリストになったビル・マーチ選手の例などを窪田教授は「スポーツマンの体力づくり」(ベースボールマガシン社)で紹介しており、人によってはかなり大きな効果も期待されよう。だが、トップ・ビルダーなどでは、ほとんどの人がアイソトニック・コントラクションの筋収縮形態を用いているのが実状である。

その中でも、コンセントリック・コントラクション、つまりポジティブ・ワークが最も一般に用いられているが筋肉により強い刺激を与えるには、エクセントリック・コントラクション、つまりネガティブ・ワークの方が大きいといえる。

たとえば、アイソメトリック・コントラクションでの最大筋力を100%とした場合に、ネガティブな筋収縮では何と200%もの力を発揮したという報告もある。したがって、筋力に関心を持つウェイトリフターやパワーリフターはネガティブ・ワークを時に応じて採用しているのである。ただ、これはきわめて負荷が大きいので、長期間にわたって採用するとオーバー・ワークになる危険性があるので、注意する必要があろう。

ネガティブ・ワークが筋力向上に効果があるのは、どのような関節角度でも、常に最大限の筋力を強いるからである。というのは、筋力というのは各関節角度によって発揮される大きさが異なっており、ポジィティブな運動では関節の角度によっては充分に筋肉は働いていないということがいえるからである。(詳しくは後述のチーティングの項参照)

この点に注目して、どのような関節角度であっても、同じように筋肉を刺激するようにしたのが、アメリカのアーサー・ジョーンズが開発したノーチラス・マシーンである。

その他に、アイソキネティックスという筋収縮の形態がある。これは等速度でゆっくりと筋肉が収縮されるもので、これもまた関節角度にかかわりなく、最大限の力を発揮することができる。たとえば、坂道を自転車で登る場合は全力でペタルをふんでも、ゆっくりと同じ速度でしか進まないが、これなどはアイソキネティックスの一例である。

このアイソキネティックスは、もとは医療関係、とくにリハビリテーションで用いられたもので、800万円もするサイベックという器具もある。簡単なものではエクサゼニーとかミニジムなどの器具が市販されている。

では、アイソキネティックスとアイソトニックス(ポジティブブ・ワーク)では、どちらが筋肉により大きな効果をもたらすであろうか。これについては、被検者を2つのグループに分けてその効果を調べてみたところ、アイソキネティックスを行なったグループの方が、筋力および筋肥大により大きな効果を得たという。なかでも、負荷を小さくして行なった方が、負荷を大きくして行なった方よりも効果が大きかったという研究報告がある。

こうなると、アイソキネティックスをボディビルディングに用いるのがよいと思われそうだが、必ずしもそうではない。アイソキネティックスはアイソメトリックス同様に、運動に対する興味性に欠けるという欠点が大きい。それにどのような筋収縮の形態をとっても、その用い方によって効果は著しく変わるものであり、また、各人によっても異なるものである。だから一人一人がどのような形態を採用したらよいか判断すべきで、「ボディビルディングに最も適した筋収縮の形態はこれだ!」と一概にいえるものではないのである。

<トレーニングにあたっての原則>
トレーニングをするにあたっては、次のような原則を頭に入れておかなくてはならない。どれも簡単な原則であるが、これが意外とおろそかにされていることが多いので、実際にトレーニングを進めていく段階で、この原則どおりに実施しているかどうかを、たえずチェックしてみる必要がある。

①漸進的過負荷の原則
トレーニングはその強度を徐々に大きくしていかなくてはならない(漸進性)。そして、その強度は、筋肉が発達する強さでなくてはならない(過負荷)。

西独のへッティンガーは、最大筋力の1/3以上の負荷を与えなくては発達しないと述べている。ということは過負荷とは最大筋力の1/3以上ということになる。そうして、筋肉の発達に伴なって負荷も漸進的に高めていかなくてはならないのである。

たとえば、ベンチ・プレスを8回くり返せる重量でトレーニングしていき、それが12回くり返せるようになったら、重量を増加して再び8回しかくり返せないようにトレーニングを進めていくのである。

②継続性の原則
ボディビルディングのみならず、どんなスポーツでも一朝一夕に満足すべき効果が得られるものではない。トレーニングは長期間にわたって継続していかなくてはならないのである。

③全面性の原則
ボディビルディングは主に筋力、パワーなどに効果があるが、オールラウンドの体力を向上させなくてはならない。体力とは、筋力、パワーに加えて敏捷性、持久力、柔軟性などの要素がある。だからこれらの要素も向上させなければ、全面的な体力向上とはいえない。

また、筋肉についてみても、上体の筋肉ばかり発達させて、下体の筋肉が十分に発達していないというようではいけない。全身的に調和のとれた発達が大切なのである。

④意識性の原則
トレーニングは何のためにやっているのか、そしていま何を目的に行なっているのかを意識してやらなくてはならない。

⑤個別性の原則
トレーニングにはいろいろな方法があるが、万人に共通するベストと名のつくものはない。各人が年令、性別、体力水準、体形、その他いろいろの条件で異なっている。したがって、それらを考慮して、試行錯誤をくり返しながら、自分に最も適したトレーニング法を見い出すことが大切である。

<超回復>
筋肉が肥大したり筋力が高まるというトレーニング効果が生まれるのは、トレーニングをしているときではなくトレーニング終了後の休息期間のときである。トレーニングを行うと、筋肉組織は一時的に破壊されて、疲労物質がたまるが、休息をとることによってそれは回復される。このとき、トレーニングする前のレベルよりも高いところまで回復される。これを超回復と呼んでいる。つまり、この超回復が体力の向上なのである。

したがって、この超回復をうまくとらえていけばトレーニング効果はあがることになる。しかし、休息を充分にとらないで再びトレーニングを開始してしまうと、超回復が得られないので体力はかえって低下してしまうことにもなる。

逆に、あまりに長い休養をとると、せっかく得た超回復も失なわれてしまうので、結局は筋肉は発達しないことになる。一般にトレーニングの後では1日〜2日の休息が必要であるといわれている。そして、2週間以上もトレーニングをしないと、トレーニング効果の減退がはじまってしまう。つまり体力の現状維持には2週間に一度はトレーニングしなくてはならないことになる。一般に、積極的に体力の向上をはかるには1週間に3回トレーニングをするのが、超回復をうまく引き起こせるのでよいとされている。

<2>初心者のトレーニング

<トレーニング・コースの作成法>
「全面性の原則」からわかるように全身の各部の筋肉をバランスよく鍛えあげることが初心者の段階では大切である。この段階で、あまり片よったトレーニングばかりしていると、未発達の筋肉部位が他の部位をより大きく発達させていくうえでの制限因子となる場合も考えられるからである。

トレーニング・コースをつくるにあたっては、全身を肩、腕、胸、上背、下背、腹、大腿、下腿の8つの部位に大きく分け、各部位の基本的な運動種目を選んでコースをつくるのがよい。各部位の代表的な基本運動を主体に選んでみると―
記事画像1
以上の種目の中からピック・アップしてトレーニング・コースを構成していけばよいのであるが、その際、次に述べることを知っておかなくてはならない。

<マッスル・プライオリティ・システム―筋肉優先法>
とくに発達させたい部分の運動をトレーニング・コースのはじめにもってくるというやり方である。

たとえば、胸の筋肉をとくに発達させたいという場合には、ベンチ・プレスから始めるのがよい。トレーニングのはじめのうちは気力も充実しているので、それだけ思いきってトレーニングすることができるからである。このベンチ・プレスをコースの最後にもってくると、疲労がたまってくるので、動作がおろそかになったり、集中力も低下することになる。したがって、コースをつくるにあたっては、初心者のみならず、上級者においても、この筋肉優先法にもとづいてコースをつくるのがよいのである。

<初心者用トレーニング・コース例>
記事画像2
このコースでは、上腕三頭筋の運動が含まれていないが、これはベンチ・プレス、スタンディング・フロント・プレスの2種目で上腕三頭筋は働いているので省いてある。また、大腿二頭筋の運動も含まれてないが、これは必要に応じてコースに組み入れることができる。

参考までに、国立競技場トレーニング・センターの一般男子用のコースは次のようなものである。
記事画像3
このトレーニング・コースでは、スクワットとストレート・アーム・プルオーバーは連続して行う。つまり、スクワットを10回くり返したら、そこで休みをおかずにストレート・アーム・プルオーバーを行うのである。スクワットは運動量が大きいので1セット行うとかなり呼吸が乱れるものだが、それをストレート・アーム・プルオーバーを行うことで呼吸を調整することができる。それと同時に胸郭を大きく開くことにもなるので、胸郭そのものを拡大させる効果もある。

<セット数とレピテーション>
「個別性の原則」から、各人の能力に合わせてセット数と1セット当りのレピテーション(くり返し回数)を決めるのが望ましい。

初心者の場合は、おおむね1種目につき2〜3セット行うのが一般的である。とくに強化したい部位は3セット以上行なってもさしつかえない。

「漸進的過負荷の原則」にのっとって、漸進的にセット数を増やしていくようにするが、同時に、使用重量も増加していくようにする。たとえば、はじめベンチ・プレスを30kgの重量で10回の2セットから開始して、1セット当り10回のレピテーションが12〜15回ぐらいまで出来るようになったら、重量を2.5kg〜5kg増やして、再び10回のレピテーションになるように調整していくのがよい。そして、体力の向上につれてセット数も増やしていくわけである。

◎レピテーションの決定
一般にトレーニングに用いられる重量は、10回前後のレピテーションが可能なものであるが、必ずしもそれに従わなければならないということではない。というのは、トレーニングの目的によって使用重量は決められるものでありレピテーションはそれによって決まるからである。

1回しか持ちあげることができない重量を最大重量といい、この最大重量すなわち最大筋力によって、そのときの使用重量はだいたい決めることができる。最大筋力の80%ぐらいの重さのものであれば、通常10回前後のくり返しが可能である。最大筋力の50%ぐらいなら20回はくり返すことができる。このような使用重量とレピテーションの関係は、当然、トレーニング効果の面でも異なるので、自分がいま何を目的とするかをあらかじめ認識しておかなくてはならない。

最大筋力、もしくはそれに近い筋力(使用重量が最大筋力の80〜60%、レピテーションが6〜15回ぐらい)を発揮する運動では、筋力および筋肉の肥大に効果的であり、逆に、最大筋力の50%以下の重量で、20回以上くり返せるような運動では、筋肉の肥大よりも筋持久力に効果がある。

また、最大筋力の1/3以下の重量では筋肉に及ぼす効果はほとんど期待できないといわれている。というのは、この程度の強度では、筋肉の毛細血管を圧迫して血液の流れを止めることがないので、いつまでも運動を続けられるからである。

筋力増強とセット数、レピテーションの関係についてトーマス・ドローム博士は「筋力増強のためには最大負荷で1〜3回ずつ3〜4セットくり返すのが最良であり、筋持久力のためには10~12回ずつ3~4セットくり返すのが最良である」(筋力トレーニングの科学的基礎)といっている。

また、ソ連のザチオルスキーは「筋力(筋の集中力)を向上するには最大負荷(最大重量)かそれに近い重量でやるのがよく、筋肉を肥大させるには10回くり返せる負荷が適切である」と述べている。米国のジョン・オーシーは「筋力と筋肉を肥大発達させるには5~6回ずつ3~4セット行うのがよい」といっている。

しかし、運動種目によっては、20回以上のレピテーションが一般に用いられているものもある。たとえば、カーフ・レイズやシット・アップでは1セットあたり20〜30回のレピテーションが多く採用されている。かなりの経験を積んだボディビルダーともなると、シット・アップは「できるところまでやる」と、最大くり返し回数を行うことが多く、そのため、1セットで100回とか200回以上になることがある。

◇筋の集中カとは
ここで「筋力」と「筋の集中力」について少し説明しておこう。
「筋力は筋肉の生理的横断面積に比例する」というように、筋肉が太いほど強い筋力を発揮することができる。筋肉は何本もの筋線維で構成されており、この筋線維には運動神経が連絡されている。

この神経の刺激を受けて筋肉は収縮するのであるが、筋線維のすべてが収縮するわけではなく、一部の筋線維が働いているにすぎない。このすべての筋線維を収縮することができれば、大きな筋力を発揮することができる。俗にいう「火事場のバカ力」とは、この筋線維すべてが収縮したときに現われるものである。

そこで、この筋線維をできるだけ多く収縮させようというのが筋力トレーニングの1つの目的になる。

たとえば、ウェイトリフターやパワーリフターのように、筋力の向上を主目的としている場合は、体重制限があるので筋肉を肥大させて体重を増やすよりも、筋肉の集中力を向上させることが必要である。だから、彼らは通常のトレーニングでのレピテーションはせいぜい3回以内にとどめて、最大負荷か、あるいはそれに近い重量を使用しているのである。

しかし、筋肉を太く肥大させることを大きな目的とするボディビルダーはザチオルスキーが指摘するように10回前後のくり返しができる重量を用いるのがよいことになろう。

また、ジョン・オーシーらのいうように、筋力および筋肥大を同時に獲得しようとして、5〜6回しかくり返せないような重量を用いるという方法をとってもよいわけである。それから一般によく用いられているように、セットごとに使用重量を変えるという方法もある。

<ウェイト・インクリーズ・システム―重量増量法>
これは、セットごとに使用重量を大きくしていく方法のことで、一般によく用いられているシステムである。

たとえば、1セット目は20回くり返せる重量を用いて筋持久力の強化をねらい、2セット目は10回しかくり返せない重量を用いて筋肥大をねらい、3セット目は3回しかくり返せないような重量で筋力の向上を求めようというものである。

<ウェイト・リダクション・システム―重量減量法>
これはセットごとに使用重量を減らしていく方法のことである。別名、オックスフォード・テクニックとも呼ばれているが、マックモリスとエルキンスは「ウェイト・インクリーズ・システムよりも筋力の増加は大きい」(筋力トレーニングの科学的基礎)といっている。またザチオルスキーも「スポーツマンと体力」で同じような報告をしている。

<3>実際のトレーニング法

<第1週目>
まったくの初心者は、まず第1週目はトレーニングにからだを慣らして、正確な動作を覚えるということが大切である。そのために使用重量は楽に20回以上行える軽いものでよい。そして原則として2日続けてトレーニングをしたら1日休むというようにする。つまり、月曜・火曜とトレーニングしたら水曜を休み、木曜・金曜とトレーニングして土曜・日曜と休むようにするわけである。

セット数は各種目とも2セットずつがよかろう。

<第2週目以後>
ここからは、トレーニングの頻度は1週間に隔日的に3回がよかろう。つまり、月・水・金とトレーニングして火・木・土・日と休むか、あるいは火・木・土にトレーニングして月・水
・金・日と休むようにする。

使用重量は、決められたレピテーションで出来る最大の重量を選ぶのがよい。ただし、決められた回数を途中で姿勢をくずさないで、一定のテンポで力強くくり返せる重量を選ぶべきである。もちろん、疲労が蓄積されてくるので、トレーニングの後半の運動では決められたレピテーションが行えなくなるかも知れないが、それでもよい。

このようにして、各運動のレピテーションが4〜5回多くできるようになってきたら、2.5kg〜5kg程度増量して再びトレーニングを続けていく。
疲労が残らないようであれば、各運動とも3セットずつ行うようにしてもさしつかえない。また、2カ月以上トレーニングを行なってきて、体力がついてきたら、トレーニング・コースの中でとくに発達させたい筋肉部位の運動を5セット、あるいはそれ以上行うようにしてもよい。または、別個のトレーニング・コースをつくって実施してもよかろう。

<呼吸のしかた>
運動時における呼吸の原則は、「運動動作に呼吸を合せて、呼吸を止めない」ということである。バーベルやダンベルを用いる運動なら、持ち上げるときに息を吐いて、下ろすときに息を吸うようにする。あるいはその逆でもかまわない。とにかく運動動作に呼吸を合わせればよいわけである。トレーニングをしていくうちに自然と身についてくるものである。

次に、呼吸と発揮する筋力の関係についてみると―

①呼吸を止めたときが、もっとも強い力を発揮することができる。しかしこのとき「努責作用」という現象が起きやすいので、できるだけ呼吸は止めないで動作を行うようにする。努責は大静脈を圧迫して血液循環が低下する結果、脳貧血や意識の喪失が起こったりするので、思わぬ事故になることもあり、さらに、心臓循環機能に有害な影響を与えるともいわれている。

たとえば、ウェイトリフターがプレス(現在は競技種目から徐外)をする場合、意識を失なって倒れてしまうことがあるが、これは努責作用によるものである。しかし、この努責作用は練習を積むにしたがって、からだがそれに適応してくるといわれているが、いずれにしても初心者が何回も努責作用をくり返していくと障害を起こす危険性があるので注意しなければならない。

②次に強い力を出すことができるのは息を吐いたときである。だから、重い重量を使用してベンチ・プレスなどをするときは、息を吐きながら持ち上げるのがよい。

その典型的な例が、気合を入れた場合である。「エエーッイ!」と気合をかけるとグッと力が強まることは誰れでも体験しているであろう。また、練習を積んでいくと、息を吐き出してノドを閉じてしまうと、強い力を発揮することができるようになる。

③そして、最も弱いのが息を吸いながら力を入れるときである。

以上の、呼吸と筋力発揮の関係については、背筋力計などで試してみると簡単にわかることである。
月刊ボディビルディング1977年3月号

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