なんでもQ&Aお答えします 1977年3月号
月刊ボディビルディング1977年3月号
掲載日:2018.08.31
インクライン・コンセントレーション・カールの傾斜度と筋の発達の傾向
インクライン・コンセントレーション・カールを行う場合に、インクライン・ベンチの傾斜度を強くして行うのと、ゆるやかにして行うのとでは、上腕二頭筋の発達にどのような変化が与えられるのでしょうか。
また、からだの向きを半身にかまえて、腕をベンチに差し入れて行うのときちんと正面を向いて行うのとでは、効果の面でどのような違いが生じるのでしょうか。
(大阪府 後藤次男 学生 20才)
また、からだの向きを半身にかまえて、腕をベンチに差し入れて行うのときちんと正面を向いて行うのとでは、効果の面でどのような違いが生じるのでしょうか。
(大阪府 後藤次男 学生 20才)
A.まず、インクライン・ベンチの傾斜度と上腕二頭筋の関係について説明します。
上腕二頭筋は、カール運動などで筋を収縮させた場合、肘の角度が小さくなるにつれて、下部から上部へ強い緊張がおよんでいく傾向があります。したがって、インクライン・コンセントレーション・カールやプリーチャーズ・カールでは、ベンチの傾斜をゆるやかにした場合には、どちらかといえば上腕二頭筋の中腹部から下部に重点的に効かすことができます。
また反対に、傾斜を強くした場合には、中腹部から上部にかけて強く効くようになります。
つまり、前者の場合には、肘の角度が大きい状態のときに、より強い運動負荷が上腕二頭筋に与えられるからです。後者の場合には、肘の屈曲度が小さくなるまで運動負荷が上腕二頭筋に十分にかかるからです。
次にからだの向きの問題ですが、からだを正面に向けて行う場合には、腕がからだの前面に正しく位置するので上腕二頭筋の短頭と長頭に等分に刺激を与えることができます。
これに対して、からだを半身にして行う場合には、インナー・カールと同じような筋収縮を上腕二頭筋に促すようになるので、その効果もどちらかといえば長頭の発達に重点がおかれたものとなります。
注)上腕二頭筋は長頭と短頭の2頭からなる筋で、外側に位置している方が長頭である。
上腕二頭筋は、カール運動などで筋を収縮させた場合、肘の角度が小さくなるにつれて、下部から上部へ強い緊張がおよんでいく傾向があります。したがって、インクライン・コンセントレーション・カールやプリーチャーズ・カールでは、ベンチの傾斜をゆるやかにした場合には、どちらかといえば上腕二頭筋の中腹部から下部に重点的に効かすことができます。
また反対に、傾斜を強くした場合には、中腹部から上部にかけて強く効くようになります。
つまり、前者の場合には、肘の角度が大きい状態のときに、より強い運動負荷が上腕二頭筋に与えられるからです。後者の場合には、肘の屈曲度が小さくなるまで運動負荷が上腕二頭筋に十分にかかるからです。
次にからだの向きの問題ですが、からだを正面に向けて行う場合には、腕がからだの前面に正しく位置するので上腕二頭筋の短頭と長頭に等分に刺激を与えることができます。
これに対して、からだを半身にして行う場合には、インナー・カールと同じような筋収縮を上腕二頭筋に促すようになるので、その効果もどちらかといえば長頭の発達に重点がおかれたものとなります。
注)上腕二頭筋は長頭と短頭の2頭からなる筋で、外側に位置している方が長頭である。
スクワットの正しい運動法は?
Q.貴誌76年6月号の記事によると、フランコ・コロンブは両足の間隔を25〜30cmにしてバーベルは頸の後ろの極めて低い位置にかつぐようにといっています。
ところが、私の先輩の意見では、バーベルの位置はコロンブの場合と同じか、あるいはそれよりも下方、いわば背ともいえるぐらいの位置にかついで両足の間隔も60cmぐらいにしたほうが重い重量が使用でき、また、つぶれることも少ないとのことです。たしかにバーベルを背の方にずらしてかつぎ、両足の間隔を広くして行うと重い重量があげられます。
また、貴誌76年5月号によると、パワー・リフターの大半が“腰幅よりも大幅に広い両足間隔”で行なっているとのことですが、その間隔ですとコロンブの場合の2倍近くありそうです。その点どうなのでしょうか。
私自身は、重いものをあげるのが目的ではなく、筋を発達させるのが目的なので、両足の間隔を広くする必要はないと考えています。また、バーベルの位置も、高くも低くもない、いわば肩の線に保ってやっています。先輩のいうように肩甲骨の方へずらしてかつぐほうがよいのでしょうか。
私は1年あまり前から右腰に軽い痛みを感じています。スクワットをやったあと、バーベルをラックに置いた直後に痛むのです。レントゲン検査の結果、骨には異常はなく、たんなる筋肉痛だろうといわれました。
先輩は、その痛みをなくすためにもバーベルを低い位置にかつげというのですが、どんなものでしょうか。筋肉は一度痛めるとなかなかなおらないということなので、いっそのことスクワットをあきらめて、レッグ・プレスに切り変えるほうがよいでしょうか。ご意見をおきかせください。
なお、コロンブは、スクワットを行うときはトレーニング・ベルトが必要だといっています。また、肩にかついだバーベルを両手で支えるのに、両手の間隔をできるだけ広くし、プレートのすぐ近くを握るのがよいといっていますが、それらの点についてもお答えねがいます。
最後にスクワットの立ちあがる動作で、膝を内側へしぼるようにつぼめると重い重量があがるようになりますが、そのような運動のやり方に問題はないでしょうか。聞くところによると、そのような方法で行なったために、膝の軟骨がとび出してしまった人もいるとのことですが、どうでしょうか。
(東京都 Y·S)
ところが、私の先輩の意見では、バーベルの位置はコロンブの場合と同じか、あるいはそれよりも下方、いわば背ともいえるぐらいの位置にかついで両足の間隔も60cmぐらいにしたほうが重い重量が使用でき、また、つぶれることも少ないとのことです。たしかにバーベルを背の方にずらしてかつぎ、両足の間隔を広くして行うと重い重量があげられます。
また、貴誌76年5月号によると、パワー・リフターの大半が“腰幅よりも大幅に広い両足間隔”で行なっているとのことですが、その間隔ですとコロンブの場合の2倍近くありそうです。その点どうなのでしょうか。
私自身は、重いものをあげるのが目的ではなく、筋を発達させるのが目的なので、両足の間隔を広くする必要はないと考えています。また、バーベルの位置も、高くも低くもない、いわば肩の線に保ってやっています。先輩のいうように肩甲骨の方へずらしてかつぐほうがよいのでしょうか。
私は1年あまり前から右腰に軽い痛みを感じています。スクワットをやったあと、バーベルをラックに置いた直後に痛むのです。レントゲン検査の結果、骨には異常はなく、たんなる筋肉痛だろうといわれました。
先輩は、その痛みをなくすためにもバーベルを低い位置にかつげというのですが、どんなものでしょうか。筋肉は一度痛めるとなかなかなおらないということなので、いっそのことスクワットをあきらめて、レッグ・プレスに切り変えるほうがよいでしょうか。ご意見をおきかせください。
なお、コロンブは、スクワットを行うときはトレーニング・ベルトが必要だといっています。また、肩にかついだバーベルを両手で支えるのに、両手の間隔をできるだけ広くし、プレートのすぐ近くを握るのがよいといっていますが、それらの点についてもお答えねがいます。
最後にスクワットの立ちあがる動作で、膝を内側へしぼるようにつぼめると重い重量があがるようになりますが、そのような運動のやり方に問題はないでしょうか。聞くところによると、そのような方法で行なったために、膝の軟骨がとび出してしまった人もいるとのことですが、どうでしょうか。
(東京都 Y·S)
A.あなたの質問を判りやすく箇条書にすると次の6つに分けられます。
①バーベルをかつぐ位置について
②両足の間隔について
③腰痛とトレーニング
④トレーニング・ベルトの必要性
⑤バーベル・シャフトの握り幅
⑥膝を内側へしぼるようにして立ちあがる方法について
以上の6つの問題について順にお答えすることにしますが、その前に、スクワットの正しいやり方について簡単に定義づけてみたいと思います。
㋑運動の目的に則したやり方であること。
運動のやり方が正しいかどうかは、まず、運動をやる際の意図する目的によって違ってきます。筋の肥大と形づくりを意図して運動を行うのと、パワー・リフターとしての筋力強化を狙いとして行うのとでは、運動の目的が違うのですから、当然、運動のやり方も違ってきます。
大腿四頭筋の肥大を意図してスクワットを行うのであれば、負荷が大腿四頭筋に十分にかかる姿勢と動作で運動を行うようにしなければなりません。したがって、大腿四頭筋にかかる重量負荷を運動中に軽減させるような姿勢と動作で行うのは適切ではないということです。
しかし、パワー・リフターとしての記録向上が運動の目的である場合には少しでも重い重量をあげられるようになることが目的ですから、筋の肥大を意図として行うのとは姿勢や動作の上での違いが生じてくるのは当然のことです。
より重い重量をあげるには、大腿四頭筋だけではなく、固有背筋や腰、下半身の諸筋がよりよく協応する体勢と動作で運動を行う必要があります。その場合には、当然、テクニックの問題も含まれることになります。
㋺身体を損傷しないやり方であること
筋の肥大を意図して運動を行う場合でも、また、パワー・リフターとしての筋力強化を目的として運動を行うにしても、身体を損傷しないように配慮して運動を行うことが大切です。損傷を誘発しやすいやり方は、たとえそれで効果が得られたとしても正しいやり方とはいえません。
誤ったやり方でも効果があがることもありますが、概して一時的なものです。それよりも、誤ったやり方で運動を続けることによって、局部的に無理がかかり、故障を引き起こす危険性が増すので注意しなければなりません。重量物を用いて運動を行うのですから危険性をまったくなくするということは不可能ですが、事故を防止する意味で、姿勢、動作、使用重量などの面で正しい配慮が必要です。
では質問についてお答えしますが、上述のことがらを頭に置いて読むようにしてください。
①バーベルをかつぐ位置について
コロンブのいうことも、あなたの先輩のいうことも、双方とも正しいといえます。それならば何故、双方の言にへだたりがあるかというと、それは、運動の目的が違うからです。コロンブは大腿四頭筋の発達を促すことを目的にした方法について述べているのであり、あなたの先輩は、より重い重量の反復を可能にするやり方についていっているのでしょう。
大腿四頭筋の発達を重点的に促すには、上体を必要以上に前傾させないように留意して運動を行うことが効果的と思われます。そのためには、バーベルを肩の線に保ってかつぐのがよいと考えられます。ところが、バーベルを背の方にずらしてかつぐ方法では、バーベルを背に固定しておくために、どうしても必要以上に上体が前傾してしまうので、その点に問題があるといえます。
しかし、パワー・リフターのようにより重い重量の反復を可能にするにはむしろ、バーベルを背の方にずらしてかつぐ方がよいといえます。つまり、より重い重量を反復するには、上体をある程度前傾させ、脚の力に加えて、腰の力をも使って動作を行うほうが効率がよいと考えられるからです。バーベルを背の方へずらしてかつぐことは、テコの原理からいって、支点(腰)とおもりとの距離が、肩の線にそってかつぐ場合よりも短くなるので、それだけ重いおもりに対する支持力を増すことができます。したがって、バーベルをかつぐ位置は運動の目的によって違ってくるわけですから、その位置が正しいか否かは、目的に則しているかどうかによって判断しなければなりません。
②両足の間隔について
両足の間隔については、このようにしなければいけないといった決められた間隔はありません。運動の目的に則した間隔にすればよいわけです。コロンブがいう25〜30cmの両足間隔にして両膝を左右へできるだけ開かないようにして脚の屈伸を行えば、大腿四頭筋の前側から横にかけての発達を促すことができます。そのような理由で、コロンブは、両脚の間隔を狭くするのがよいと述べているのではないでしょうか。
大腿四頭筋の発達の仕方は、両足の間隔と脚を屈伸する際の膝の向きによって異なってきます。また、腰をおろしたときの膝の屈折度によっても違ってきます。そして、その膝の屈折度を小さくする程に、大腿四頭筋のつけねに寄った部位に強く効くようになります。
両足の間隔を狭くするということは、どちらかといえば、膝のより深い屈折を可能にします。その反対に、両足の間隔を広くして運動を行うことは、傾向として膝の屈折角度を大きくするので、同重量を使用する場合には、狭い間隔で行うよりも運動が楽になります。
したがって、フォームに馴れることももちろん必要ですが、パワーリフティングのように重い重量をあげることに関しては、両足の間隔を広くして行うほうがどちらかといえば有利なようです。しかし、ビルダーとしての脚の発達と形を求めるのであれば、両足の間隔を肩幅よりも狭くしてスクワットを行うことも必要でしょう。
③腰痛とトレーニング
スクワットの際に、多少なりとも腰痛を感じるようであれば、治るまでスクワットを中止することです。無理に行なって悪化させでもしたらとりかえしがつきません。また、痛みがさほど感じない程度に重量を減らして行なってもたいした効果は得られないでしょう。
あなたの場合は、バーベルをラックに置いたときに腰に痛みを感じるとのことですが、それは、バーベルをラックに置いた際に、バーベルのかすかなバウンドによる衝撃が、バーベルを置いて弛緩してしまっている腰に急激に伝わるからではないかと思います。もし、そうであれば、バーベルをラックにおろす際に、わずかなハネかえりもこないように注意深く置くようにすることです。また、肩とシャフトの間に座ぶとんなどをクッションがわりに当てるとよいでしょう。
いずれにしても、腰になんらかの損傷があることは間違いないのですから、運動そのものには支障がなくても、痛みの程度によってはスクワットを中止するのがよいでしょう。そのときには、レッグ・プレスを行うようにするのもよいでしょう。ただし、レッグ・プレスはスクワットの代りにはなりませんから、そのところを一応自覚しておく必要があると思います。また、レッグ・プレスは、腰を深く奥へ入れすぎると大腿四頭筋に効きにくくなりますから、その点に留意して行なってください。
④トレーニング・ベルトの必要性
トレーニング・ベルトは、腰を保護するという意味で、確かに有効です。ことに、パワー・リフターのように、能力的に限界と思れる重量や、それに近い重量を用いて運動を行う場合には、必ず着用するのがよいでしょう。しかし、ことさら腰を保護しなければならない重量を用いるのでなければ、強いてベルトを着用することもありません。保護を必要とするかしないか、そのへんの判断によってベルトの着用を決めればよいでしょう。ただし、安全性と、不測の事故に備える見地からすれば、常にベルトを着用するにこしたことはないでしょう。
⑤バーベル・シャフトの握り幅
グリップの間隔も、足の間隔と同様に、定められた幅はありません。スクワットは脚のための運動ですから、両手の間隔が直接脚の成果に影響をおよぼすということもありません。要は、運動が正しい姿勢と動作で行えるようにシャフトを握ればよいわけです。ただ、呼吸の面からいえば、あまり狭くしないほうがよいようです。
⑥膝を内がわへしぼるようにして立つ方法について
あなたがいわれるように膝を内側へしぼるようにして立つと、確かに重い重量をあげるのが容易になります。したがって、より重い重量をあげることを目的とするパワー・リフターには、テクニックとして、その方法を採用している人が多いようです。しかし、大腿四頭筋の発達を促すことを狙いとしてトレーニングを行う場合には、そのような方法をあえて採用しなければならないといった必要性はありません。むしろ、筋そのものの発達を促すためには、負荷に対する主働筋の負担を軽減させるようなテクニックを必要以上に使うのはマイナスともいえます。
大腿四頭筋の発達を促すには、的確に大腿四頭筋を刺激できる方法で運動を行うようにしなければなりません。したがって、そのためには、不必要なテクニックを用いずに、負荷が常に大腿四頭筋に十分にかかる動作で運動を行うことが大切です。
なお、膝をしぼるような方法によって、膝の故障がことさら誘発されるかどうかということについては確かなことはわかりません。パワー・リフターがそのような方法でスクワットを行なっているのを考えれば、軽卒に結論を出すことは慎まねばならないと思います。ただ、両足の間隔を広くした場合には、膝の関節に無理がかかるとも考えられるので、あるいは弊害があるかもしれません。
〔以上の解答はNE協会指導部長、'59ミスター日本・竹内 威先生〕
①バーベルをかつぐ位置について
②両足の間隔について
③腰痛とトレーニング
④トレーニング・ベルトの必要性
⑤バーベル・シャフトの握り幅
⑥膝を内側へしぼるようにして立ちあがる方法について
以上の6つの問題について順にお答えすることにしますが、その前に、スクワットの正しいやり方について簡単に定義づけてみたいと思います。
㋑運動の目的に則したやり方であること。
運動のやり方が正しいかどうかは、まず、運動をやる際の意図する目的によって違ってきます。筋の肥大と形づくりを意図して運動を行うのと、パワー・リフターとしての筋力強化を狙いとして行うのとでは、運動の目的が違うのですから、当然、運動のやり方も違ってきます。
大腿四頭筋の肥大を意図してスクワットを行うのであれば、負荷が大腿四頭筋に十分にかかる姿勢と動作で運動を行うようにしなければなりません。したがって、大腿四頭筋にかかる重量負荷を運動中に軽減させるような姿勢と動作で行うのは適切ではないということです。
しかし、パワー・リフターとしての記録向上が運動の目的である場合には少しでも重い重量をあげられるようになることが目的ですから、筋の肥大を意図として行うのとは姿勢や動作の上での違いが生じてくるのは当然のことです。
より重い重量をあげるには、大腿四頭筋だけではなく、固有背筋や腰、下半身の諸筋がよりよく協応する体勢と動作で運動を行う必要があります。その場合には、当然、テクニックの問題も含まれることになります。
㋺身体を損傷しないやり方であること
筋の肥大を意図して運動を行う場合でも、また、パワー・リフターとしての筋力強化を目的として運動を行うにしても、身体を損傷しないように配慮して運動を行うことが大切です。損傷を誘発しやすいやり方は、たとえそれで効果が得られたとしても正しいやり方とはいえません。
誤ったやり方でも効果があがることもありますが、概して一時的なものです。それよりも、誤ったやり方で運動を続けることによって、局部的に無理がかかり、故障を引き起こす危険性が増すので注意しなければなりません。重量物を用いて運動を行うのですから危険性をまったくなくするということは不可能ですが、事故を防止する意味で、姿勢、動作、使用重量などの面で正しい配慮が必要です。
では質問についてお答えしますが、上述のことがらを頭に置いて読むようにしてください。
①バーベルをかつぐ位置について
コロンブのいうことも、あなたの先輩のいうことも、双方とも正しいといえます。それならば何故、双方の言にへだたりがあるかというと、それは、運動の目的が違うからです。コロンブは大腿四頭筋の発達を促すことを目的にした方法について述べているのであり、あなたの先輩は、より重い重量の反復を可能にするやり方についていっているのでしょう。
大腿四頭筋の発達を重点的に促すには、上体を必要以上に前傾させないように留意して運動を行うことが効果的と思われます。そのためには、バーベルを肩の線に保ってかつぐのがよいと考えられます。ところが、バーベルを背の方にずらしてかつぐ方法では、バーベルを背に固定しておくために、どうしても必要以上に上体が前傾してしまうので、その点に問題があるといえます。
しかし、パワー・リフターのようにより重い重量の反復を可能にするにはむしろ、バーベルを背の方にずらしてかつぐ方がよいといえます。つまり、より重い重量を反復するには、上体をある程度前傾させ、脚の力に加えて、腰の力をも使って動作を行うほうが効率がよいと考えられるからです。バーベルを背の方へずらしてかつぐことは、テコの原理からいって、支点(腰)とおもりとの距離が、肩の線にそってかつぐ場合よりも短くなるので、それだけ重いおもりに対する支持力を増すことができます。したがって、バーベルをかつぐ位置は運動の目的によって違ってくるわけですから、その位置が正しいか否かは、目的に則しているかどうかによって判断しなければなりません。
②両足の間隔について
両足の間隔については、このようにしなければいけないといった決められた間隔はありません。運動の目的に則した間隔にすればよいわけです。コロンブがいう25〜30cmの両足間隔にして両膝を左右へできるだけ開かないようにして脚の屈伸を行えば、大腿四頭筋の前側から横にかけての発達を促すことができます。そのような理由で、コロンブは、両脚の間隔を狭くするのがよいと述べているのではないでしょうか。
大腿四頭筋の発達の仕方は、両足の間隔と脚を屈伸する際の膝の向きによって異なってきます。また、腰をおろしたときの膝の屈折度によっても違ってきます。そして、その膝の屈折度を小さくする程に、大腿四頭筋のつけねに寄った部位に強く効くようになります。
両足の間隔を狭くするということは、どちらかといえば、膝のより深い屈折を可能にします。その反対に、両足の間隔を広くして運動を行うことは、傾向として膝の屈折角度を大きくするので、同重量を使用する場合には、狭い間隔で行うよりも運動が楽になります。
したがって、フォームに馴れることももちろん必要ですが、パワーリフティングのように重い重量をあげることに関しては、両足の間隔を広くして行うほうがどちらかといえば有利なようです。しかし、ビルダーとしての脚の発達と形を求めるのであれば、両足の間隔を肩幅よりも狭くしてスクワットを行うことも必要でしょう。
③腰痛とトレーニング
スクワットの際に、多少なりとも腰痛を感じるようであれば、治るまでスクワットを中止することです。無理に行なって悪化させでもしたらとりかえしがつきません。また、痛みがさほど感じない程度に重量を減らして行なってもたいした効果は得られないでしょう。
あなたの場合は、バーベルをラックに置いたときに腰に痛みを感じるとのことですが、それは、バーベルをラックに置いた際に、バーベルのかすかなバウンドによる衝撃が、バーベルを置いて弛緩してしまっている腰に急激に伝わるからではないかと思います。もし、そうであれば、バーベルをラックにおろす際に、わずかなハネかえりもこないように注意深く置くようにすることです。また、肩とシャフトの間に座ぶとんなどをクッションがわりに当てるとよいでしょう。
いずれにしても、腰になんらかの損傷があることは間違いないのですから、運動そのものには支障がなくても、痛みの程度によってはスクワットを中止するのがよいでしょう。そのときには、レッグ・プレスを行うようにするのもよいでしょう。ただし、レッグ・プレスはスクワットの代りにはなりませんから、そのところを一応自覚しておく必要があると思います。また、レッグ・プレスは、腰を深く奥へ入れすぎると大腿四頭筋に効きにくくなりますから、その点に留意して行なってください。
④トレーニング・ベルトの必要性
トレーニング・ベルトは、腰を保護するという意味で、確かに有効です。ことに、パワー・リフターのように、能力的に限界と思れる重量や、それに近い重量を用いて運動を行う場合には、必ず着用するのがよいでしょう。しかし、ことさら腰を保護しなければならない重量を用いるのでなければ、強いてベルトを着用することもありません。保護を必要とするかしないか、そのへんの判断によってベルトの着用を決めればよいでしょう。ただし、安全性と、不測の事故に備える見地からすれば、常にベルトを着用するにこしたことはないでしょう。
⑤バーベル・シャフトの握り幅
グリップの間隔も、足の間隔と同様に、定められた幅はありません。スクワットは脚のための運動ですから、両手の間隔が直接脚の成果に影響をおよぼすということもありません。要は、運動が正しい姿勢と動作で行えるようにシャフトを握ればよいわけです。ただ、呼吸の面からいえば、あまり狭くしないほうがよいようです。
⑥膝を内がわへしぼるようにして立つ方法について
あなたがいわれるように膝を内側へしぼるようにして立つと、確かに重い重量をあげるのが容易になります。したがって、より重い重量をあげることを目的とするパワー・リフターには、テクニックとして、その方法を採用している人が多いようです。しかし、大腿四頭筋の発達を促すことを狙いとしてトレーニングを行う場合には、そのような方法をあえて採用しなければならないといった必要性はありません。むしろ、筋そのものの発達を促すためには、負荷に対する主働筋の負担を軽減させるようなテクニックを必要以上に使うのはマイナスともいえます。
大腿四頭筋の発達を促すには、的確に大腿四頭筋を刺激できる方法で運動を行うようにしなければなりません。したがって、そのためには、不必要なテクニックを用いずに、負荷が常に大腿四頭筋に十分にかかる動作で運動を行うことが大切です。
なお、膝をしぼるような方法によって、膝の故障がことさら誘発されるかどうかということについては確かなことはわかりません。パワー・リフターがそのような方法でスクワットを行なっているのを考えれば、軽卒に結論を出すことは慎まねばならないと思います。ただ、両足の間隔を広くした場合には、膝の関節に無理がかかるとも考えられるので、あるいは弊害があるかもしれません。
〔以上の解答はNE協会指導部長、'59ミスター日本・竹内 威先生〕
体重を増やす食事法と運動法
Q.私は37才の男性です。身長が167cmで体重は55kgぐらいしかありません。もともと太ったタイプではありませんでしたが、5年前にカゼをこじらせ、20日ばかり入院しました。それ以後どうしても体重がふえません。友人たちはみんな肥満といわれるほど太っています。いっしよに人前に出ると、あまりにも貧弱なので恥ずかしい思いをしています。先輩とたまに顔を合わすと「ガンじゃないの」といわれたりします。
友人たちのように肥満体にはなりたくありませんが、筋肉質に太りたいと思います。道具はバーベルとベンチ台があります。サプルメント・フードや体重増加用フードなどもほしいと思っています。
①どのような運動をしたら体重がふえるでしょうか?
②栄養補給用としてどんな製品を買い求めればいいでしょうか?
ただし、私はどちらかというと、アレルギー体質で腸が弱く、冷たい牛乳やアンコは合わないのです。
(長崎県平戸市・川上忠秋)
友人たちのように肥満体にはなりたくありませんが、筋肉質に太りたいと思います。道具はバーベルとベンチ台があります。サプルメント・フードや体重増加用フードなどもほしいと思っています。
①どのような運動をしたら体重がふえるでしょうか?
②栄養補給用としてどんな製品を買い求めればいいでしょうか?
ただし、私はどちらかというと、アレルギー体質で腸が弱く、冷たい牛乳やアンコは合わないのです。
(長崎県平戸市・川上忠秋)
A. 体重が増えない悩み、よくわかりました。結論からいうとあなたの年令でもバーベル・トレーニングと食事法の改善で必ず3〜5kg体重を増やすことができます。
毎日トレーニングを積んでいて、それでも体重が増えにくい場合とちがって、あなたの場合は、初心者としてバーベルにとりくむわけですから、最初の3カ月で3kgぐらい太ることはそれほどむづかしいことではありません。
①トレーニング種目は、ベンチ・プレス、スクワット、プレス、ベント・ロー、カール、シット・アップの6種目とし、1週間に4日、1日約1時間~1時間20分ぐらい練習してください。
②最初は軽い重量(ベンチ・プレス、スクワットは25kgくらい)からはじめて、徐々に重量をふやし、3カ月後にベンチ・プレス、スクワット共に50〜55kgやれるように目標をたてます。
③1セットの回数は6〜10回を標準とするが、重量を増やした場合は3回程度でもかまわない。
④食事はタンパク質中心にきりかえ、サバ缶詰、納豆、とうふ、鳥肉、チーズ、ちくわ、スキムミルク、卵、魚、ピーナッツなどを多目に食べるようにする。
⑤栄養補給食としてハイプロティン・パウダーを採用し、トレーニングの前後、および就寝前に飲む。牛乳にとかして飲むのがよいが、体質に合わないときは、みそ汁、ジュース,カルピスなどに加えて飲むとよい。プロティンは各社とも大豆タンパクをベースにしており、順に使用して効果、嗜好、価格など自分に合ったものを選ぶとよい。
以上のような方法で体重増加に成功したAさん(36才、男性)の例を図で示します。
毎日トレーニングを積んでいて、それでも体重が増えにくい場合とちがって、あなたの場合は、初心者としてバーベルにとりくむわけですから、最初の3カ月で3kgぐらい太ることはそれほどむづかしいことではありません。
①トレーニング種目は、ベンチ・プレス、スクワット、プレス、ベント・ロー、カール、シット・アップの6種目とし、1週間に4日、1日約1時間~1時間20分ぐらい練習してください。
②最初は軽い重量(ベンチ・プレス、スクワットは25kgくらい)からはじめて、徐々に重量をふやし、3カ月後にベンチ・プレス、スクワット共に50〜55kgやれるように目標をたてます。
③1セットの回数は6〜10回を標準とするが、重量を増やした場合は3回程度でもかまわない。
④食事はタンパク質中心にきりかえ、サバ缶詰、納豆、とうふ、鳥肉、チーズ、ちくわ、スキムミルク、卵、魚、ピーナッツなどを多目に食べるようにする。
⑤栄養補給食としてハイプロティン・パウダーを採用し、トレーニングの前後、および就寝前に飲む。牛乳にとかして飲むのがよいが、体質に合わないときは、みそ汁、ジュース,カルピスなどに加えて飲むとよい。プロティンは各社とも大豆タンパクをベースにしており、順に使用して効果、嗜好、価格など自分に合ったものを選ぶとよい。
以上のような方法で体重増加に成功したAさん(36才、男性)の例を図で示します。
Aさん(36歳、男性)の体重増加の成功例
この図から次のようなことがいえます。
A.3カ月間に約4kg体重が増えているが、腹囲や皮下脂肪は増加していないから、筋肉でこれだけ増加したわけである。
B.体重の増加とベンチ・プレスやスクワットの使用重量の増加が比例している。
C.はじめは余分な脂肪がとれるので、体重増加はあまり見られないが(人によってはむしろ一時的に減少することもある)、1カ月目くらいから増えはじめる。
D.グラフが複雑になるので記入しなかったが、この期間に胸囲5.5cm、上腕囲2.3cmの増加が得られた。
以上は標準的な経過として参考になるでしょう。図のように、期間を決めて体重のほか腹囲や皮下脂肪(へその横1〜2cmのところを両指ではさんで厚みを測定する)を測定して記録に残しておくと、途中のはげみや大切な資料として役立ちます。
なお5年前の病気はあまり関係がないと思われ、また「ガンじゃないの」という発言は悪いジョウダンでしょうね。日本人はつい「顔色がわるいですね」とか「病気じゃないですか」などと気になる言葉を不用意に使いますが人によっては気がかりなものです。むしろ元気そうなときに「調子がよさそうですね」「元気そうですね」と声をかけたいものです。
(解答=健康体力研究所・野沢秀雄)
A.3カ月間に約4kg体重が増えているが、腹囲や皮下脂肪は増加していないから、筋肉でこれだけ増加したわけである。
B.体重の増加とベンチ・プレスやスクワットの使用重量の増加が比例している。
C.はじめは余分な脂肪がとれるので、体重増加はあまり見られないが(人によってはむしろ一時的に減少することもある)、1カ月目くらいから増えはじめる。
D.グラフが複雑になるので記入しなかったが、この期間に胸囲5.5cm、上腕囲2.3cmの増加が得られた。
以上は標準的な経過として参考になるでしょう。図のように、期間を決めて体重のほか腹囲や皮下脂肪(へその横1〜2cmのところを両指ではさんで厚みを測定する)を測定して記録に残しておくと、途中のはげみや大切な資料として役立ちます。
なお5年前の病気はあまり関係がないと思われ、また「ガンじゃないの」という発言は悪いジョウダンでしょうね。日本人はつい「顔色がわるいですね」とか「病気じゃないですか」などと気になる言葉を不用意に使いますが人によっては気がかりなものです。むしろ元気そうなときに「調子がよさそうですね」「元気そうですね」と声をかけたいものです。
(解答=健康体力研究所・野沢秀雄)
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