トップ・スターの素顔
坂口賢三選手の1日
‘75’76 IFBBプ口・オール・ジャパン
このミスター・オール・ジャパンは朝帰りの常習者である。夜ともなれば友人たちをひきつれてネオン街に出没し、深夜といわず朝までも遊び続ける。収入のほとんどが交際費として消えてしまうというのだから恐れ入る。これはコンテスト前であっても変わらない。それでいてコンテスト前には最高のフィジークに仕上げているのだから不思議な男だ。
現在、テレビ和歌山でCMを2本持ち、テレビ番組、スポーツ新聞にもよく顔を出す。そのほか和歌山の雑誌“タウン・ガイド・ウィ”でケンゾウの人物対談というページを受け持つ忙がしい男である。とにかく“言い切ったことは意地でもやる”という根性の持ち主なのだ。
今月はこの坂口選手に24時間密着取材を試みた。
PM3:OO大阪・灘波から和歌山市駅まで南海電車(急行)で約1時間。和歌山市駅から車で約20分、目差す和歌山TCに着いた。
トレーニング・センターがオープンしたのは昨年(50年)の8月。トレーニング場だけでも45坪のスペースがあり、器具も充分そろっている。初心者、女性会員も安心してトレーニングを行えるように気が配られているのだ。経営者はもちろん坂口賢三選手である。
坂口選手はファン・レターに目を通していた。レコードに関する問合せや、トレーニングのアドバイス、なかには和歌山TCに通いたいから近くに就職先を世話してほしいといってくる人まである。彼はどんなに忙しくても、手紙をくれた人には必ず返事を出す。
休息室の中には坂口選手が獲得したトロフィーやメダルが並べてあった。
PM3:30さっそくインタビューさせてもらう。坂口選手と私はこの時が初対面なのだが(コンテスト会場で顔を合わせたことは何回もあるが)、彼の人なつっこくて陽気な性格はそれをまったく感じさせない。だれとでも打解けてしまい、すぐにありのままの自分をさらけ出してしまう。だから、だれとでも10年来の友人のようにすぐ親しくなってしまう。
PM5:00近くのスーパー・マーケットの中にあるスナックで、ミックス・ジュース、生野菜、ジャム・トーストの軽食をとる。
帰りがけに会員たちへの差入れも忘れない。
PM5:30「ボクの歌、聞いたことある?まだない?ほな、聞かせてあげよか。」 昨年9月「にがい酒」というシングル盤のレコードを出した。この歌は和歌山の有線ベスト10に、1月13日現在で第4位、昨年12月には第1位にランクされた。そしていま2枚目のレコードの製作に取組んでいる。そのため、カラオケを録音したラジオカセットで、暇をみつけては歌の練習をしているのだ。なお、「にがい酒」は自費製作のため、和歌山市内のレコード店にしか売っていない。
PM7:00坂口選手のトレーニング時間だ。毎日2時間半から3時間のトレーニングを行う。
ドンキー・カーフ・レイズ
ヘビー・スクワット
自分のトレーニング中であっても、会員たちのトレーニングに気を配り注意をあたえる。
ダンベル・フレンチ・プレス
リスト・カールチンニング。見事な広背の発達が見られる。
PM9:50トレーニングを終了し、シャワーを浴びる。和歌山の街では有名人であるだけに、身だしなみには人一倍気を使う。
PM10:30トレーニング・センターを閉めて、これから夕食にと向う。急なテレビ出演などの仕事が飛び込んでくる場合があるので、食事時間を何時と決めて食べる事はできないが、1日最低5食は食べるようにしている。今日はコーチの松下君ほか2名が同行。
PM11:00会員のお母さんが経営しているという「河瀬」でラーメンを1杯。ここのラーメンは遠く大阪からわざわざ食べにくる人がいる程の評判だという。
PM11:20さて、今度は夜の街のトレーニングだ。手始めにスナック「ミス45」でウイスキーの水割りを飲む。彼は煙草を吸わない。聞いてみると1月から禁煙しているのだという。以前は1日80本以上を吸うヘビー・スモーカーだったとのこと。
AW12:30スナックで貰った花を手に、ナイトラウンジ「ベガス」に乗り込む。
実際よく飲む。おもに水割りだが、1晩に1本のペースだそうだ。しかし、酒に酔ってもくずれることは絶対にない。常に周囲に気を配ることを忘れないからである。
飲みに行くと必ずといっていい程、ステージに上らされてしまう。夜のムードに彼のハスキー・ボイスがぴったりなのだ。しかし、なぜか自分の持ち歌を1回も歌わない。
AM2:45取材にあたった私は眠気でいささかグロッキー。そんなことはおかまいなしに「ほな、次はナポレオン行こか」。坂口選手、いよいよ快調。スナック・サパー「ニュー・ナポレオン」これが3軒目である。
どこに行っても、「賢坊、賢坊」とよくモテる。毎日のように通っていればと思うかも知れないが、やはり皆、彼の人柄にひかれるのだろう。
AM4:00坂口選手を除いて、皆かなり出来上ってきたようだ。
AM4:10夜食に寿司をと“紀文寿司”に入る。もう店じまいしていたのだが、それでも心よく迎えてくれる。
ビールを飲み、水槽の中で泳いでいたエビを握ってもらい、エビの頭の塩焼きに舌つづみを打つ。ほかに吸い物、厚焼き玉子を食べる。
AM5:00やっと家路につく。
AM5:15帰宅。坂口選手のアパートは北出島という所にあり、8畳1間にダイニング・キッチン付き。トレーニング・センターからは車で15分ぐらいかかる。
部屋の中は、ベッド、洋服ダンス2つ、ステレオ、テレビ、ビデオ・カセット、こたつなどでいっぱい。3人すわるのがやっと。洋酒の瓶がやたら目につく。
この人、まだ飲み足りないのかブロッコリーをつまみに1人で水割りを飲み始めた。
AM5:30‘76年度のミスター&ミス和歌山コンテストは、30分番組としてテレビ和歌山で放映された。そのときの自分のゲスト・ポーズをビデオで見る。ポージング研究にも余念がない。このあと今日ビデオに録っておいた座頭市をみてから寝るのだという。
AM7:20就寝。もう夜はとっくに明けている。朝日が眩しい。
PM1:00取材にあたった私がうっかり寝すごしてしまったのだ。坂口選手はと捜すと鉢植に水をやっていた。11時ごろには起きていたというから、わずか3時間半しか寝ていない。短時間でも熟睡するし、トレーニング・センターの長イスでたまに寝ている事もあるから大丈夫なのだという。
寝具をかたずけて朝食の用意をする。
PM1:10ミルクとフルーツ(バナナ)、ジャーム・オイルの軽い食事をとる。ふだん朝食は12時前後、ほかにトースト、生野菜を食べる事もある。そして1時ごろまでテレビを見ている事が多い。
「B面の歌、いいやろ。詩がいいから女の人にウケるんや」。にがい酒のB面“恋忘草”をステレオで聞かせてくれる。坂口選手はA面よりも気に入っているようだ。
PM1:30ヘア・スタイルを整えてアパートを出る。これから昼食である。
PM1:50会員たちの行きつけの店“グリル渡辺”でビーフ・ステーキとライスを注文。昼は必ずここでステーキを食べることにしている。ここのタン・シチューは評判らしい。
PM2:20「いつもこのままトレーニング・センター行くのやけど、今日は特別な仕事もないし、せっかくやから市内を案内してあげよか。和歌山はエエとこやでェ」 ご厚意にあまえて和歌山の名所を案内してもらうことにした。
和歌山城の児童公園でのスナップ。坂口選手が猿にピーナッツをやっているところ。
加太の海辺でサザエのつぼ焼きを食べる。ここには友人をつれてよく来るそうだ。
PM5:00トレーニング・センター着。ここは1時にコーチの松下君が開けてくれている。しかし、この松下君も昨夜から今朝5時まで坂口選手とともに飲んでいたのである。この人もタフだ。坂口選手に相当鍛えられているのではないか。
この取材にあたっては坂口選手に大変お世話になった。お礼をいって帰ろうとすると「ボクのレコード、持っていって読者の人にあげてよ」といって10枚程裏にサインをしてくれた。これは本誌愛読者にプレゼントしたいと思いますので、ハガキで当社ボディビルディング編集部あてに申込んでください。先着10名様にお送りします。 まったく型やぶりなトップ・ビルダーの1日ではあったが、また非常に楽しい1日でもあった。こういう生活をしているビルダーもいるのである。
Recommend
-
-
- ベストボディ・ジャパンオフィシャルマガジン第二弾。2016年度の大会の様子を予選から日本大会まで全て掲載!
- BESTBODY JAPAN
- BESTBODY JAPAN Vol.2
- 金額: 1,527 円(税込)
-