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赤い筋肉vs白い筋肉 PART2

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月刊ボディビルディング1977年5月号
掲載日:2018.04.27
野沢 秀雄
本誌3月号で「重いバーベルを用いてトレーニングすると、赤い筋肉ばかり発達してスポーツマンによくない。だからボディビルはすすめられない」という意見があることを書いたところ多くの方より、興味ある意見や体験が寄せられました。続編という形で紹介してみると、

まず教育大体育学部で運動生理を専攻し、私と共著「はうつうへるす」を書いたへルスワーカー原田純一郎さん(旭化成へルスセンター主任コーチ)は「赤い筋肉が大切です。赤い筋肉は運動しないでいるとすぐに退化してしまいます。さらにこの赤い筋肉が退化すると、脳細胞までが退化するといわれています。長い距離を歩いた翌日、ふくらはぎが痛くなったり、長く立っておれないときはこの赤い筋肉の赤信号と考えてください」とアドバイスしており、ひきつづきくわしい調査をしてくれるとのこと。

また本誌でおなじみの早稲田大学窪田登教授は「アメリカの雑誌“スポーツイラストレイテッド”に赤白の話題がのり、それによると近年、直接に筋肉から赤筋だけをとりだす方法ができ、長距離選手は90%台と多いのに対し、短距離選手は70%台で少ないことがわかりました。しかしどちらかばかりといったことはなく、比率の問題です。また、これは先天的な素質にもよるのでいちがいにいうことはむずかしいようだ。ウェイト・トレーニングが最高にいいというのも正しくないし、逆にランニングなどのジョッグが最高にいいというのもまちがいだと思う」というご意見でした。
「走り高とびの記録をつくるのにバーベル・トレーニングが良いことは10年以上前からソ連のブルメル選手が証明しているが、現実にはまだまだ」という真木選手の手紙や、次のような別府市・宮崎不二夫さんからの手紙にもまったく同感だ。
「私自身の経験によると、バーベルによるトレーニングが瞬発的な力を要求するスポーツにマイナスということはまったくありません。

たとえばサージャントジャンプなどはトレーニング開始時と4年後の現在とでは格段の差があり、また短距離走なども相当スピードが増したと自信をもっていえます。

次に持久力トレーニングと瞬発力トレーニングでは練習方法が異なりますが、一方だけのトレーニングをすると、もう一方の能力が低下することは、これも私の体験ではまったくありません。しかしやはり一方だけのトレーニングで両方の効果を望むことも無理のようです。すなわち、その目的にあったトレーニング法をおこなっているのであれば、バーベルを使ったウェイト・トレーニングはすばらしい効果を期待できると思っています。

私はボディビルのトレーニングがスポーツの記録向上などに有効だと信じている一人です。これからも誤解をとき、よきボディビルの普及のためにがんばってください」

最後に相模原の坂本直芳さんから、「3月号に書いてある野球部のこと、実際はみんながバーベルを用いてトレーニングをおこない、体力強化に役立っています。みんなが良さをわかりだしており安心してください。あの内容では逆になっているので……」と電話をいただいている。それはうれしいことで、私が別のケースなどと混同したようでおわびしたい。要はボディビルが非難や攻撃をされ、その価値が不当に低く評価されがちなのに対して、ボディビルをやる側に、研究やデータがまだまだ不足していて、「そうではないよ。こんなに実績がある」といえるまでにもう少し時間がいるようだ。これから少しずつ調査や研究がされてゆくだろう。私もおよばずながら、とりくんでゆきたいと考えている。
(筆者は「健康体力研究所」代表)
月刊ボディビルディング1977年5月号

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