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◆一般社会人の体力づくり◆
ウェイト・トレーニングのすすめ

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月刊ボディビルディング1977年5月号
掲載日:2018.07.27
日本ボディビル協会理事 名城大学 鈴木 正之

V 体力づくりの継続性

東京オリンピック以降、体力づくりの場としてサーキット・トレーニング場が大変な勢いでもって各地方団体や会社等によって作られた。また、そのトレーニングによる成果は認められるところだが、トレーニングの継続性というところに問題があるように思われる。

そこで、この項で取り上げる問題はサーキットとウェイトのトレーニング効果の比較ではなく、トレーニング原則のうちの継続性の問題である。つまり、一般社会人はどちらのトレーニングを好んで実施するか、また長期にわたって実施するか、ということについて考えてみたい。
愛知県下のトレーニング場(公共団休11、民間経営14、企業経営12)を調査した結果によると、民間経営の14のトレーニング場の場合、男性のトレーニング種目としてはウェイト・トレーニング、女性のトレーニング種目としては美容体操でなければ、いわゆるお客さんが集まらない、いいかえれば経営が成り立たないということである。また、トレーニングを行う側にとっては、高い民間料金を支払ってまでウェイト・トレーニング(ボディビルディングを含む)を実施するということはそこにはっきりと自覚できるトレーニング価値があるか、あるいは何か長続きする魅力があるものと思われる。

サーキット・トレーニングを中心として運営されているのは公共施設と、企業経営の一部のもので、民間個人経営のものにはほとんど見られない。この実態は、公共施設として作られたものは、低料金でも運営できるが、民間経営の場合では、採算的にもサーキット・トレーニングを中心として運営することはできないと思われる。また、公共施設のサーキット・トレーニング場として出来た施設も、徐々にウェイト・トレーニング場として利用される傾向にあることがわかった。

その理由として考えられるのは、サーキット・トレーニングの1つの欠点とも考えられる運動動作のマンネリ化と、具体的成果の把握が難しいという点であろう。これに対して、より逞しい体と筋力の向上を求めてウェイト・トレーニングに活路を見い出していく傾向が大である。

しかし現実はサーキット・トレーニング場において、指導者の未熟からウェイト・トレーニングの実施を防害したりするところもあり、このトレーニング法選択の問題は、設備及び指導者を含む問題にまで発展してきている。

また、企業経営のトレーニング場をみると、社員の厚生施設の一環としてサーキット・トレーニングを指向しているが、ここでも同じ傾向が見られ開設当初はものめずらしさもあって多数の社員が集まるが、数ヵ月すると一様に減少傾向をたどる。そのため、これら企業経営の施設でも、ウェイト・トレーニングを実施しだしたところが半数近くあり、この傾向はますます増えるように思われる。したがって、できることなら最初からウェイト・トレーニング場として計画・立案した方が結果的には有効に利用されると思う。

VI まとめ

以上に述べたような傾向をふまえて実践導指の立場より、今日の社会体育とくにトレーニング手段としての課題と展望をさぐってみると、一般社会人のトレーニング場による体力づくりについては次のようなことがいえよう。

①トレーニング方法としては、サーキット・トレーニング、ウェイト・トレーニング共に実施することによりその効果は顕著に認められるところであるが、現実の問題としては、いかにトレーニングを継続して実施させるかということが要点で、サーキット・トレーニングとかウェイト・トレーニングとかいうトレーニング種類にこだわることなく、実施者の求める方向に指導する必要がある。

②トレーニングに来る人は、まだ良い方で、なんらかの形で体力、健康等に問題意識を持ちながら、そのまま放置している人がほとんどである。これには医学関係者とも協力し合って社会全体に働きかけることが必要であろう。

③トレーニングに興味をもたせ、これを継続させていくためには、それに見合う施設が必要になる。その施設については、従来のサーキット一辺倒のトレーニング場から脱皮し、ウェイト・トレーニングが併用できるか、あるいは、最初から本格的なウェイト・トレーニング場を考える必要がある。
具体的には、トレーニング場にはバーベルを中心とした充分な器具を設置する必要があると思う。私の体験的な私見だが、トレーニングの基本はバーベルに始まり、バーベルに終るのではないかと思う。最近、新しい珍らしい器具もいくつか発売されているが、作られた固定化された器具は、最初はめずらしさもあってすぐにとびつくが、運動の最先端の筋の性質は、一方通行であるため、運動方向が単調となり、マンネリ化する傾向がある。そこで、運動の種類が豊富なバーベルを中心としたトレーニングが必然的に有効な手段と考えられるのである。

④体力づくりのトレーニングを継続させるもう1つの要因は、トレーニングを魅力的に指導できる指導員がいるかどうかにもよる。愛知県下の調査対象33のトレーニング場のうち、専任の指導者がいるのは半数でありまたいても経験不足の指導者が多くトレーニングと体力づくりの楽しさを指導できるかどうか、疑問をいだくようなものもある。

⑤トレーニング場を利用する費用と利用者の関係をみると、企業経営の無料のものから1ヵ月500円、1ヵ月5000円、中には1ヵ月13000円というものまであるが、費用が安ければ必ず利用者が多いというものではないことがわかる。一般社会人の求めている1つの傾向としては、費用はかかってもサウナやプール等を併設したトレーニング場を望んでいるといえる。

最後にトレーニングを始めた動機、利用状況などについて、愛知県スポーツ会館の利用者に対して行なったアンケートの回答を図にしたものを示す。
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月刊ボディビルディング1977年5月号

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