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スタミナ栄養シリーズ特集版④
強い空手選手になるために

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月刊ボディビルディング1977年5月号
掲載日:2018.07.27
野沢 秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.すごい人気

1976年10月30日午前10時。国電千駄ヶ谷駅におりた人は東京体育館前の広場をうめつくす若者たちの長い行列に目をパチクリ。極真会館恒例の全日本空手道選手権大会をみようと、開場の3時間も前から数千人の列ができているのだ。「うわあ、佐藤さんに逢えるかなあ」と列をかきわけ、関係者入口にゆくと、彼と前島さんがにこやかに談笑している。「おはようございますすごいですね」「ようこそ、さあ中に入って特別席でごらんください」と親切に案内され、正面席へ。大山館長はじめ有名な人の姿もみえる。かくて30日・31日の両日、熱烈な選手の好試合ときびきびした大会の奮囲気をはじめて経験した。

2.強くなりたいのは本能

佐藤勝昭さんは1975年におこなわれた第1回世界大会チャンピオン。映画「地上最強のカラテ」でおなじみだ。佐藤さんの体力強化にバーベル・トレーニングが使われたことは有名だが、そのコーチをしたのが、中野ボディビルセンターの元コーチで、現在国立競技場で練習している前島忠さんと、三鷹トレーニング・センターの栗山昌三会長。栗山会長の紹介で「76年ミスター東京コンテスト」の特別審査員として会場に来たときに知りあったのがきっかけ。
「空手を始めたいという人は、自分が弱くて、なんとか強くなりたい、けんかしても負けたくない、という動機が多いようです」「強くなるのは一にも努力、二にも努力。なにくそと自分で自分をきたえるしかありません」と謙虚に話してくれた。
ボディビルと共通するところが確かにある。実際、ボディビルをやりながら同時に空手練習をしているという人が多い。体はボディビルでつくり、ワザやすばやい身のこなしを空手でつくろうという方法だ。食事分析で知りあった国学院久我山高校の竹浪謙君もその一人。純粋な気持で両方にとり組んでいる若者だ。千葉の笠川隆明さん、広島の河崎卓美さん、函館の谷藤浩さん、福岡の野村周作さん、名古屋の松崎伸彦さん、少林寺拳法や合気道であるが富士市の渡辺広さん、大津市の今井隆さん、東京の坂口頼孝さんなど私が知っているだけでもこんなに多い。
空手とボディビルはともに良いパートナーとして歩んでゆけるようだ。

3.チャンピオンへの道

まだ学生だったころ、友人の一人が体が貧弱で顔色が悪かったので、思いきって空手道場の門をたたいた。つらい練習にもめげず、1年間やってみると、目つきがぎらりと光る鋭い空手マンに成長した。「逞しくなったね」と共に喜こんだが、彼いわく「素質があって体力が強く、体が大きい人にはどうしてもかなわない。こぼしたい気持だ」と。
だが体力は後天的な努力である程度まで強くできる。体が弱くてヒーヒー悲しんでいる人こそ、ボディビルや空手をおこなって強い人間になってほしいのだ。劣等感が強ければ強いほど、「よーし何が何でもやってゆこう」と意欲が続くものだ。誰でも最初から強いわけではない。負けん気でがんばって自分をきたえ、筋肉をいじめぬいて強くたくましい人間に変身してゆく。
日本テレビ系列「ビッグスペシャル剛柔流秘技公開」を見て、倒れても倒れてもなお戦わせる気迫に感動した人は多いにちがいない。体力がなく、体も貧弱で、運動も下手で、悩み苦しんでいる人、ハンディをおいながら練習に耐えている人に心から声援をおくりたい。がんばれよッ!

4.大きい体格が有利

「精神的なことはわかったよ」という人に次のステップは具体的な方法だ。全日本空手道選手権の出場者一覧表をザッとみると、世界大会1位佐藤勝昭179cm・85kg、第2位慮山初雄174cm・78kg、第3位二宮城光180cm・79kg。今回優勝者佐藤俊和178cm・80kg、第3位東孝172cm・83kg(2位は二宮選手)等、トップクラスの選手は身長・体重のレベルが申し分ない。もちろん脂肪ぶとりでなく、がっちりひきしまった筋肉質の体でこのレベルに達しているのだ。
いっぽう128名の参加選手の多くは体づくりの努力が不足していて、171cm–62kg、168cm-61kg、180cm-69kg、174cmー60kgといったように体重不足(イコール筋肉不足)が散見される。このような選手はバーベルやダンベル・トレーニングに時間を多くさいて筋肉の増強にはげんでほしい。
それと同時に、食事法をたんばく質中心にきりかえ、しっかりと食べることはいうまでもない。「空手の体力づくりに良いとすすめられて、私もプロティンパウダーを愛用しています。いいですねえ」とチャンピオンの佐藤選手は語っている。独身生活で、外食や給食など粗末な内容を補うのに便利だという人が多い。
〔第1回世界空手選手権大会で優勝したときの佐藤勝昭選手(中央)〕

〔第1回世界空手選手権大会で優勝したときの佐藤勝昭選手(中央)〕

5.プロティンについての誤解と迷信

ボディビルをしている人なら、プロティンパウダーについての知識や経験があって、実際に良いことがわかっていても、空手をはじめ他のスポーツ選手や一般の人に、「体力づくりや健康維持にいいですよ」といってもまだなかなかピンとこない。
プロティンパウダーは決してボディビルをする人の特別な食品でなく、体力を強化したい人全般にふさわしい食品である。価格は、たんばく質1g当り6~7円で、牛乳や鳥肉・豚肉、ハム・まぐろ・かつをなどより安価に食べることができる。そのうえコレステロールはゼロ。アルカリ性食品で、動物性脂肪や糖質過剰による成人病の心配もない。最近の製品は大豆たんぱくにアミノ酸を調整して加えてあるので、肉や魚と同じくらいの効果を持つようになっている。だから広く一般の人が使用して何らおかしくないといえる。
ただし練習やトレーニングをしないのに、やたらプロティンパウダーを飲み、「たくさん飲んだから筋肉が発達したり、体重が増加する」と考えるのは当然ながら大まちがいだ。まず十分に筋肉に刺激を与えるトレーニングをおこない、その激しさにみあって、プロティンパウダーなど、たんぱく食品を食べるのが正しい方法だ。
空手マンを目指すみなさん、トレーニング法と食事法を、ひとつ変えてみたら?一日でも早いほうがいいよ!
月刊ボディビルディング1977年5月号

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