〝魔女の一撃〟腰痛
月刊ボディビルディング1977年5月号
掲載日:2018.03.27
先日、ある学生とパートナーを組んでトレーニングをしていたところ、突然、パートナーが両手に持っていたダンベルを放り出して、そのまま前のめりにバッタリと倒れてしまいました。もちろん、すぐには起きることもできず、ヒヤ汗を流しながら痛みを訴えているのです。
いわゆるギックリ腰です。
経験された方も多いと思いますが、ドイツでは“魔女の一撃”とも言うほどで、この瞬間、腰に電気でも走ったような衝撃を感じ、気を失なう人もあるくらいです。
私も2回ほど、このひどいギックリ腰を経験したことがあり、その痛みの辛さをよく理解している1人です。とにかく2〜3日は寝返りを打つにもヒヤ汗を流し、歯を食いしばり、トイレに行くのはまさに死ぬ思い。大の男がカメレオンのように壁を伝わってヨロヨロとトイレに向うさまなど、とても彼女に見せられたものではありません。
しかし、これくらいで治ればまだいいが、腰痛のためにトレーニングが遂行できなくなるようなことにでもなれば、それこそボディビルダーにとって“ユメもキボウ”もなくなってしまいます。
ところが、最近、腰痛のためにトレーニングを中断したり、断念したという人が意外に多いということを知って驚きました。
昨年度ミスター日本4位の宮畑選手は、以前、柔道をやっていた時に腰を痛め、医者にスポーツをやるのはもう不可能だと宣告されて、しばらく運動から遠ざかっていたが、その後ボディビルをやるようになったというし、昨年度ミスター東京の六本木昇選手も腰痛のため1年ほどトレーニングから離れることを余儀なくされたということをもらしているのです。
情熱を抱いてトレーニングに励んでいるボディビルダーにとって、からだの故障のためにトレーニングが出来なくなるということほど情ないものはありません。故障の中でもとくに腰痛は厄介です。読んで字の如く、腰は人体の要で、腰を動かさない動作というものはないのですから。
腰痛にもいろいろのタイプがあり、原因によってそれぞれ分類されていますが、ボディビルダーにとって圧倒的に多い腰痛のタイプが2つあります。その2つについてこれから少し述べてみたいと思います。
1つはいま述べたギックリ腰です。ギックリ腰が起こりやすいのは、ハード・トレーニングが続いたり、寝不足だったり、多忙が続いたりして、必ず身体の疲労が蓄積したとき、そして腰部の柔軟体操を怠り、腰椎の柔軟性を喪失したときです。
そのような折、とくに腰に負担をかけるべントオーバー・スタイルでトレーニングをしたり、スクワットやデッド・リフトでちょっとフォームを崩したときなどに、ギクッと腰に電気でも走るようなショックを自覚し、まともな姿勢がとれなくなります。
背骨は鎖のように一連の関節でつながれており、そしてそれぞれの骨を椎骨といい、クッションと可動関節の役割をする椎間板を間にはさんで、強力な靭帯や沢山の脊柱起立筋群で結び合わされて、複雑な上体の動きに同調しているのですが、疲労した筋は、ふとしたはずみで収縮のバランスをくずすらしいのです。そんなとき、硬くもろくなった関節をほんの少しあらぬ方向へ引っばったのがギックリ腰と考えられています。
そもそも腰というものは、正常な状態では大へん強いものです。疲労のないときに正しいフォームですれば、自分の体重の2倍、3倍の重量を平気でスクワット出来る人が、疲れたときには何も持たずに中腰から立ち上がった拍子とか、からだをちょっとひねった拍子、あるいはクシャミをした拍子にさえ簡単にギックリ腰になることがあるのです。
予防としては充分に睡眠をとり、過労をさけ、酸性に傾かないバランスの良い食事をとるように心掛けることです。そして、腰部の柔軟体操、マッサージ、入浴などで筋肉内の循環をよくして老廃物を取り除き、栄養を高めることが望ましいといえます。また、ウォーミング・アップを充分行なって筋収縮を整え、常に正しいフォームでトレーニングするようにし、特定の部位に不自然な負担がかかるような姿勢は避けなければなりません。
もし、残念なことにギックリ腰になってしまった場合には、出来るだけ早いうちに骨の歪みを矯正してもらい、どうしても動けない場合には、患部を温めながら、痛くない姿勢を探って寝ているに限ります。冷やすのを勧める向きもありますが、カイロや、水枕にお湯を入れて、ポカポカする程度に温めるのが無難で、気持のよいものです。
"魔女の一撃”といわれるギックリ腰は、トレーニングが順調に遂行されヤル気も充分なときに、ふと襲ってくるものです。あとで取り返しのつかぬ事にならないよう。調子に乗って明らかにやり過ぎだなと思ったときは、少し控える勇気も必要です。休息は、トレーニング、栄養と共にボディビルの三大要素の1つだということを思い起こしてください。
いわゆるギックリ腰です。
経験された方も多いと思いますが、ドイツでは“魔女の一撃”とも言うほどで、この瞬間、腰に電気でも走ったような衝撃を感じ、気を失なう人もあるくらいです。
私も2回ほど、このひどいギックリ腰を経験したことがあり、その痛みの辛さをよく理解している1人です。とにかく2〜3日は寝返りを打つにもヒヤ汗を流し、歯を食いしばり、トイレに行くのはまさに死ぬ思い。大の男がカメレオンのように壁を伝わってヨロヨロとトイレに向うさまなど、とても彼女に見せられたものではありません。
しかし、これくらいで治ればまだいいが、腰痛のためにトレーニングが遂行できなくなるようなことにでもなれば、それこそボディビルダーにとって“ユメもキボウ”もなくなってしまいます。
ところが、最近、腰痛のためにトレーニングを中断したり、断念したという人が意外に多いということを知って驚きました。
昨年度ミスター日本4位の宮畑選手は、以前、柔道をやっていた時に腰を痛め、医者にスポーツをやるのはもう不可能だと宣告されて、しばらく運動から遠ざかっていたが、その後ボディビルをやるようになったというし、昨年度ミスター東京の六本木昇選手も腰痛のため1年ほどトレーニングから離れることを余儀なくされたということをもらしているのです。
情熱を抱いてトレーニングに励んでいるボディビルダーにとって、からだの故障のためにトレーニングが出来なくなるということほど情ないものはありません。故障の中でもとくに腰痛は厄介です。読んで字の如く、腰は人体の要で、腰を動かさない動作というものはないのですから。
腰痛にもいろいろのタイプがあり、原因によってそれぞれ分類されていますが、ボディビルダーにとって圧倒的に多い腰痛のタイプが2つあります。その2つについてこれから少し述べてみたいと思います。
1つはいま述べたギックリ腰です。ギックリ腰が起こりやすいのは、ハード・トレーニングが続いたり、寝不足だったり、多忙が続いたりして、必ず身体の疲労が蓄積したとき、そして腰部の柔軟体操を怠り、腰椎の柔軟性を喪失したときです。
そのような折、とくに腰に負担をかけるべントオーバー・スタイルでトレーニングをしたり、スクワットやデッド・リフトでちょっとフォームを崩したときなどに、ギクッと腰に電気でも走るようなショックを自覚し、まともな姿勢がとれなくなります。
背骨は鎖のように一連の関節でつながれており、そしてそれぞれの骨を椎骨といい、クッションと可動関節の役割をする椎間板を間にはさんで、強力な靭帯や沢山の脊柱起立筋群で結び合わされて、複雑な上体の動きに同調しているのですが、疲労した筋は、ふとしたはずみで収縮のバランスをくずすらしいのです。そんなとき、硬くもろくなった関節をほんの少しあらぬ方向へ引っばったのがギックリ腰と考えられています。
そもそも腰というものは、正常な状態では大へん強いものです。疲労のないときに正しいフォームですれば、自分の体重の2倍、3倍の重量を平気でスクワット出来る人が、疲れたときには何も持たずに中腰から立ち上がった拍子とか、からだをちょっとひねった拍子、あるいはクシャミをした拍子にさえ簡単にギックリ腰になることがあるのです。
予防としては充分に睡眠をとり、過労をさけ、酸性に傾かないバランスの良い食事をとるように心掛けることです。そして、腰部の柔軟体操、マッサージ、入浴などで筋肉内の循環をよくして老廃物を取り除き、栄養を高めることが望ましいといえます。また、ウォーミング・アップを充分行なって筋収縮を整え、常に正しいフォームでトレーニングするようにし、特定の部位に不自然な負担がかかるような姿勢は避けなければなりません。
もし、残念なことにギックリ腰になってしまった場合には、出来るだけ早いうちに骨の歪みを矯正してもらい、どうしても動けない場合には、患部を温めながら、痛くない姿勢を探って寝ているに限ります。冷やすのを勧める向きもありますが、カイロや、水枕にお湯を入れて、ポカポカする程度に温めるのが無難で、気持のよいものです。
"魔女の一撃”といわれるギックリ腰は、トレーニングが順調に遂行されヤル気も充分なときに、ふと襲ってくるものです。あとで取り返しのつかぬ事にならないよう。調子に乗って明らかにやり過ぎだなと思ったときは、少し控える勇気も必要です。休息は、トレーニング、栄養と共にボディビルの三大要素の1つだということを思い起こしてください。
(吉見正美)
月刊ボディビルディング1977年5月号
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