フィジーク・オンライン

なんでQ&Aお答えします 1977年7月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1977年7月号
掲載日:2018.07.27

ダンバーによる運動法とその効果

Q.ダンバーという器具を持っていますが、まだ充分に使いこなせません。その使用法と発達する部位を教えてください。
 また、ブルワーカーという器具についてお尋ねします。ブルワーカーは1日わずか5分間足らずの使用で大きな効果があると宣伝されていますが、
バーベルやダンベルの使用と比べて、実際には、その有効性はどのようなものでしょうか。(神戸市 S・H 34才)
A.ダンバーについての質問からお答えします。ダンバーは中央部のスプリングの太さによって強度が違うので、反復が不可能な運動があるかも知れませんが、
一応いくつかの運動法を紹介します。

〔運動1〕
<かまえ>ダンバーをオーバー・グリップに握り、胸のあたりに水平にかまえる。
<動作>左右の腕を内方向へ閉じるようにして、ダンバーをタテに押し曲げる。
<効果>主に胸(大胸筋)、腕(三頭筋、二頭筋、上腕筋、前腕)、背(広背筋)
 この運動は、左右の腕を内方向へ閉じたときのグリップの位置によって、大胸筋に与える効果がいくぶん変化する。グリップの位置を低くする場合には、
どちらかといえば下部の方に強く効き、グリップの位置を高くするにつれて強く効く部分が上部の方へ移行する。
 なおこの運動は、両肩を上方へすくめるようにして動作を行うと大胸筋に与える効果が減少するので、その点に注意。
両肩をしっかりと下方向へ引きつけるようにして動作を行うようにする。また、胸とダンバーの間隔を広くするほどに運動の負荷が増すので、
スプリングの弱いものを使用する場合は、適当にダンバーを胸から離して行うとよい。
〔運動1〕

〔運動1〕

〔運動2〕
<かまえ>ダンバーをアンダー・グリップに握り、胸のあたりに水平にかまえる。
<動作>両腕を内方向へ閉じるようにしてダンバーを屈折する。
<効果>主に胸(大胸筋)、腕(二頭筋、上腕筋、前腕、三頭筋)
〔運動2〕

〔運動2〕

〔運動3〕
<かまえ>ダンバーをアンダー・グリップで握り、肩の高さに水平にかまえる。
<動作>双方のグリップが額の上あたりにくるように、左右の腕を内方向へ閉じてダンバーを下方へ屈折する。
<効果>肩(三角筋、僧帽筋)、腕(二頭筋、前腕、上腕筋、三頭筋)、胸(大胸筋)
 この運動は、ダンバーを屈折するときに、グリップの位置が低くなりすぎると三角筋に与える効果が減少するので、その点に注意する。
〔運動3〕

〔運動3〕

〔運動4〕
<かまえ>オーバー・グリップで握ったダンバーを、頭のうしろに水平にかまえる。
<動作>双方のグリップを後頭部の上あたりで合わせるようにして、左右の腕を閉じ、ダンバーを背のうしろ斜め下方向へ屈折する。
<効果>肩(三角筋、僧帽筋)、背(上背部の筋)、腕(三頭筋、上腕筋、前腕、二頭筋)
〔運動4〕

〔運動4〕

〔運動5〕
<かまえ>アンダー・グリップで握ったダンバーを、片方の肘を体側に固定し、他方のグリップを大腿部のあたりに位置するようにして、からだの前面で斜めにかまえる。
<動作>肘を体側に固定した方のグリップを動かさないように留意して他方の腕のみを下から起こすように屈曲し、カールに似た動作でダンバーを折り曲げる。1セットずつ左右交互に行う。
<効果>主に腕(二頭筋、前腕、三頭筋、上腕筋)、胸(大胸筋)
〔運動5〕

〔運動5〕

〔運動6〕
<かまえ>ベンチに腰を掛け、アンダー・グリップで握ったダンバーを、半ば折りまげた状態で両膝の内側にはさむ。このとき両足の間隔を広げすぎないように注意する。
<動作>腕の力を使わないように留意し、股を閉じるようにして両膝を内方向へ近づける。
<効果>脚(内股の筋)
〔運動6〕

〔運動6〕

 以上、6つの運動法を紹介しましたが、この他にも使用法はないこともありませんが、運動としての実際性が乏しくては意味がないので省略させていただきます。
それでなくても、ダンバーの運動というものは、ダンバー自体の強度が固定されている関係上、1本のダンバーのみで数種類の運動を効果的に行うのは難しいといえます。
たとえば、1、2、6の運動は比較的バネの強いダンバーで行うことができますが、それらに適した強度のダンバーでは3、4、5の運動を正確な動作で行うことが困難になります。
なお、ダンバーの運動は、ダンバーを折りまげるときはもちろんのこと、元に戻すときにも力を抜かずにていねいに動作してください。ていねいな動作で行うことは、
運動としての有効度が高められるだけでなく、すじや関節の故障を防止する意味でも大切なことです。
 次にブルワーカーについての質問にお答えします。ブルワーカーによる運動は、アイソメトリックス(静的筋力トレーニング)の理論にもとづいた運動法です。
つまり、からだを動かすことなく、一定のフォームを保ったまま筋力を発揮して使用筋を緊張させ、それによって筋の肥大と筋力の強化を促すといった運動法です。
 したがって、このようにして行う運動法は、バーベルやダンベルを使用して行う運動法(アイソトニックス――動的筋力トレーニング)と比べて、消費熱量が少なくて効果が得られるという利点があります。
しかし、その反面短所もあります。
 運動における筋収縮というものは、動作に関連して使用筋の長さが変化することによって、筋自体の強く緊張する部位も変化します。
 バーベル・カールを例にとれば、肘の角度が大きい状態と小さい状態とでは、上腕二頭筋の強く緊張する部位に多少の差異があるということです。肘の角度が大きい状態では、
傾向として肘に近い部位がより強く緊張します。そして、バーベルを巻きあげ、肘の角度が小さくなるにつれて上部の方へも強い緊張が及んでいきます。このような傾向があるのは他の筋運動の場合も同じです。
 ブルワーカーによる運動は、前述したようにからだを一定の状態に固定させたまま行うので、筋自体の長さが常に一定であり、このことから、強く緊張する部位も一定であるといえます。
したがって、上腕二頭筋の運動を例にとっていえば、上腕二頭筋全体に有効な刺激を与えるには、肘の角度を変えたいくつものフォームで運動を行わなければならなくなります。
この点、バーベルやダンベルを使って行う運動の場合は、からだの動きにともなって、使用筋自体の長さが変化するので、有効な刺激を比較的容易に使用筋全体に与えることができるといえます。
 ブルワーカーの運動は動的な動作をともなわないところから、バーベルやダンベルを使って行う動きのともなう運動に比べて、運動時の消費熱量が少ないことは確かです。
 しかし、いわゆるボディビル的に筋の発達を高めるという見地からすれば動きのともなうバーベルやダンベルの運動に比べて、有効性の面で多少劣るのもやむをえないでしょう。
 体力の弱い人や、筋の発達の完成度が低い人の場合は、ブルワーカーの運動だけでもかなりの効果は得られると思います。しかし、ある程度、からだが発達した人の場合は、
ブルワーカーだけでは完成度をより高めていくという点で困難になります。したがってそのような人がブルワーカーを使用する場合は、あくまでもバーベルやダンベルの運動に主力をおいて、
ブルワーカーの運動を補助的に行うのがよいでしょう。

トレーニングの時刻と週間頻度

Q.ボディビル歴9ヵ月、自宅でトレーニングしています。学校が遠いため、帰宅するのが6時頃になります。そして夕食を6時半頃にとります。
 そこでお尋ねしますが、わたしのような場合、何時頃トレーニングをするのがよいのでしょうか。
また、時間の折り合いがつかないときは、週に1回日曜日に行うだけでも効果があがるでしょうか。現在はそのようにしています。
体のサイズとトレーニング・コースは次のとおりです。

<サイズ>  開始時  現在
身長    169cm  170cm
体重     49kg   49kg
胸困     80cm   80cm
上腕囲    27cm  27.5cm
前腕囲    24cm   24cm
大腿囲   40.5cm 40.5cm
腹囲     64cm 64cm

<トレーニング・コース>週1回
①シット・アップ   30回×2セット
②スクワット  27.5kg10回×2セット
③ベンチ・プレス 25kg10回×2セット
④スタンディング・プレス
         15kg10回×2セット

 以前は、上記の種目に加えてベント・オーバー・ローイングとバーベル・カールも行なっていましたが、現在は除外しています。各種目の使用重量は開始当時と変わっていません。
トレーニング後の疲労感は、ほどよいものです。
 なお、食事は朝食(7時半)、昼食(12時)、夕食(6時半)の3回。ごはんは3回とも普通の茶わんに各1杯ぐらいずつです。主な蛮白源は乳類(牛乳1本とチーズ1個)とプロティン90(1日大さじ1~2杯)です。
就寝は11~12時頃、平均眠時間は7~8時間です。    (栃木県 吉野信二 学生 19才)
A.まず、トレーニングをいつ行なったらよいかという質問にお答えします。トレーニングを行う時刻は、食事と就寝の時刻を考慮して定める必要があります。
 食事との関係については、食後1時間以上、できれば2時間は経過してから行うのがよいとされています。また就寝との関係については、トレーニングと就寝の間隔を2時間ぐらい置くのが望ましいとされています。
あなたの場合に当てはめて考えると次のようになります。ただし夕食とトレーニングの所要時間をそれぞれ30分とします。
 夕食(6時30分~7時) ー 2時間 ー トレーニング(9時~9時30分) ー 2時間 一 就寢(11時30分)
 これはあくまでも常識的につくった時間割ですから、トレーニング中の体調(トレーニングそのものの調子と胃の具合)と睡眠にさしさわりがなければ前後30分~1時間ぐらいはずらしてもよいでしょう。
 なお、時間的な折り合いがつかずどうしても前述の時刻にトレーニングができなければ、そのときは夕食を少し後にして、先にトレーニングを行うようにしたらよいと思います。
その場合は、トレーニング後、夕食までの時間を30~40分ぐらいおくようにして、からだのほてりがなくなってから食事をするようにしてください。
 では次に、週に一度のトレーニングでもよいかという質問についてお答えします。
 常識的にいって、筋の発達を促し、筋力を強化するには、トレーニングを週に2~3回は行う必要があるといわれ、週に一度のトレーニングでは現状を維持する程度といわれています。
 初心者の場合には、週一度のトレーニングでも多少の効果は得られるかもしれませんが、たいして期待は持てません。あなたが9ヵ月もの間トレーニングを実施してきたにもかかわらず筋力的にも、サイズ的にも、
ほとんど効果が得られなかったのはトレーニングの回数が少なすぎたことに原困があると思います。(また栄養面での問題もあると思いますが、それについては後述します)
 週に一度、休みの日にでもストレスを解消する意味で軽く汗を流すというのなら、それはそれでよいのですが、多少なりとも筋の肥大と筋力の強化を目的としてのボディビルを行うのであれば、
やはり週に2~3回はトレーニングを行うようにするのがよいでしょう。つまり、2~3日おきに週2日、あるいは1日おきに週3回のいずれかのペースで行うということです。
 ただし、お断りしておきますが、週に2~3回の頻度であるからといっても、2日続けてトレーニングを行うことは慎しんでください。トレーニングの効果というものは、運動で消耗した筋が、
トレーニング前の状態に回復した後に得られます。したがって、トレーニングを行なった日の後には、必ず消耗した筋を回復させるための休養日を置くようにしてください。
 最後に、栄養の面についてちょっとふれておきたいと思います。
 あなたの場合、効果が得られなかった原因として、トレーニングの頻度が少なかったことを先に指摘しましたが栄養の面にも問題があるのではないかと思われます。
したがって、たとえトレーニングを週に2~3回に増やしたとしても、食事の内容が現在のままでは効果が得られるかどうか疑問です。あなたのお手紙に詳しい記述がありませんので、私の推察で申しあげているわけですから、
もし間違っていたらご容赦ください。
 とくに問題とされる点は蛮白質の摂取量についてです。主食は朝、昼、夕食ともごはんを茶わん1杯ずつぐらいで、主な蛮白源は牛乳、チーズ、プロティンとのことですから、副食にあまり肉類とか魚をとっていないのではないかと思います。
そこで、あなたが1日にとっている蛮白質の摂取量を大ざっばに計算してみると、ごはん(茶わん3杯)9g、牛乳(1本)6g、チーズ(1個)7~8g、プロティン90(大さじ1杯)13~14gで合計35~38gとなります。
かりにプロティンを大さじ2杯としても48~51gということになります。
 他の食べ物によって、どれだけ蛮白質を補給しているかわかりませんが、いずれにしても1日あたりの摂取量としては不足していると思います。あなたの場合、積極的に体位と体力の向上を促していくのには、1日当り蛋白質を75~100gぐらい摂るのが望ましいといえます。
 9ヵ月経過したにもかかわらず、体重が49kgと同じなのは、蛮白質のみならず、全体的なカロリー不足もあると思います。3食ともごはんを茶わん1杯ずつとのことですが、これでは副食に相当ボリュームのあるものを食べないとカロリーが不足します。
副食に肉類、魚類、大豆製品などをつとめて多く食べるようにすることと、新鮮な野菜、果物もたっぶりとって、栄養のバランスをとりながらトレーニングを続けていけば、必ず目に見えて効果があらわれてきます。
 最後に主な食品の蛮白質含有量を記しておきますので参考にしてください。
記事画像7
解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生
月刊ボディビルディング1977年7月号

Recommend