なんでもQ&Aお答えします 1977年8月号
月刊ボディビルディング1977年8月号
掲載日:2018.08.06
回有背筋と上背部を発達させたい
Q.ボディビルを始めてから3年になります。からだの各部分のサイズは、胸囲107cm、上腕囲37cm、腹囲72cm、大腿囲58cmで、キャリアにしては上出来と思っています。
しかし、だからといって、からだの発達に全く不満がないというわけではありません。
広背筋は上部、下部ともに比較的発達しているのですが、固有背筋(とくに背中の下部のあたり)と上背部の発達があまりよくありません。
来年はコンテストにも出場してみたいと思っていますので、それまでになんとかこの部分を発達させたいと考えています。有効な運動種目をご紹介ください。 (羽曳野市 戸倉宏 26才)
しかし、だからといって、からだの発達に全く不満がないというわけではありません。
広背筋は上部、下部ともに比較的発達しているのですが、固有背筋(とくに背中の下部のあたり)と上背部の発達があまりよくありません。
来年はコンテストにも出場してみたいと思っていますので、それまでになんとかこの部分を発達させたいと考えています。有効な運動種目をご紹介ください。 (羽曳野市 戸倉宏 26才)
A.3年のキャリアにしては大変りっぱな体格です。ウエストのサイズが72cmということから考えると、体脂肪の少ない均整のとれたからだつきをしておられるように思われるので、
これから先も大いに期待がもてそうです。あせらずに、じっくり鍛えていくようにしてください。
では、お問い合わせの固有背筋の下部と上背部に有効な運動種目をいくつかご紹介します。
<固有背筋の運動種目>
①ラウンド・バック・デッド・リフト
<かまえ>両足の甲の上にバーベル・シャフトが位置するように立ち、両脚を伸ばしたまま、腰を屈してシャフトを握る。この場合、意識的に背の中間あたりまできたら背を湾曲させる。
<動作>背を湾曲させた状態で、バーベルを引きあげ、シャフトが大腿部の中間あたりまできたら背を伸ばすようにする。動作の範囲を大きくするには、バーベルをワイド・グリップで持つか、
またはべンチの上に乗って行うとよい。
②ラウンド・バック・ワン・ハンド・デッド・リフト
<動作>①で説明したラウンド・バック・デッド・リフトを片手だけにダンベルを持って行う。運動に際しては、両手にダンベルを持っているような感じで、
空いている方の手も下にさげて行うほうがよいようである。
③リーン・バック・デッド・リフト
<かまえ>バーベルを大腿部の前にぶらさげ、壁に背と臀部を当てて寄りかかる。両足を壁から30~40cm離して位置させる。
<動作>背または腰の一部が常に壁にふれている範囲で、背を湾曲・伸展させてバーベルの上下運動を行う。背を湾曲するときに、上体を壁から離すと効果が半減するので注意。
これから先も大いに期待がもてそうです。あせらずに、じっくり鍛えていくようにしてください。
では、お問い合わせの固有背筋の下部と上背部に有効な運動種目をいくつかご紹介します。
<固有背筋の運動種目>
①ラウンド・バック・デッド・リフト
<かまえ>両足の甲の上にバーベル・シャフトが位置するように立ち、両脚を伸ばしたまま、腰を屈してシャフトを握る。この場合、意識的に背の中間あたりまできたら背を湾曲させる。
<動作>背を湾曲させた状態で、バーベルを引きあげ、シャフトが大腿部の中間あたりまできたら背を伸ばすようにする。動作の範囲を大きくするには、バーベルをワイド・グリップで持つか、
またはべンチの上に乗って行うとよい。
②ラウンド・バック・ワン・ハンド・デッド・リフト
<動作>①で説明したラウンド・バック・デッド・リフトを片手だけにダンベルを持って行う。運動に際しては、両手にダンベルを持っているような感じで、
空いている方の手も下にさげて行うほうがよいようである。
③リーン・バック・デッド・リフト
<かまえ>バーベルを大腿部の前にぶらさげ、壁に背と臀部を当てて寄りかかる。両足を壁から30~40cm離して位置させる。
<動作>背または腰の一部が常に壁にふれている範囲で、背を湾曲・伸展させてバーベルの上下運動を行う。背を湾曲するときに、上体を壁から離すと効果が半減するので注意。
リーン・バック・デッド・リフト
<上背の運動種目>
①ハイ・プルアップ
<かまえ>両手の間隔を肩幅より狭くしてバーベルをオーバー・グリップで持ち、大腿部の前にぶらさげる。
<動作>腕をまげながら、肘で引くようにしてバーベルを引きあげ、手首をかえさずに額のあたりまでバーベルを持ちあげる。
①ハイ・プルアップ
<かまえ>両手の間隔を肩幅より狭くしてバーベルをオーバー・グリップで持ち、大腿部の前にぶらさげる。
<動作>腕をまげながら、肘で引くようにしてバーベルを引きあげ、手首をかえさずに額のあたりまでバーベルを持ちあげる。
ハイ・プルアップ
②スティッフ・レッグド・クリーン
<かまえ>両足の甲の上にバーベル・シャフトが位置するように立つ。両足の間隔は後述の動作がやり易い幅にする。
両脚を伸ばしたまま、バーベルをオーバー・グリップで握る。
<動作>脚は伸ばしたまま、上体を起こしてバーベルを頸のあたりまで引きあげ、腕と手首をかえして首の前で受けとめる。
(註:バーベルを肩の前から大腿部の位置におろすときは膝をまげてもよい)
この運動は固有背筋にも有効。
③リア・ラタラル・レイズ
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、上体を床面と平行になるまで前傾する。
<動作>下方にぶらさげた左右のダンベルを、腕を伸ばしたまま(あるいはいくぶんまげた状態で)、真横へあげる。
④べント・フォワード・ラタラル・レイズ
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、上体を45度ぐらいに前傾する
<動作>ぶらさげた左右のダンベルを腕を伸ばしたまま(あるいはいくぶんまげた状態で)、真横へあげる。
腕をあげるときに、左右の肩甲骨を意識的に中側へ寄せるようにすると上背の内側に強く効く。
(註:この運動を三角筋のために行うときは、肩甲骨をできるだけ中側へ寄せないようにするほうがよい)
⑤べント・オーバー・ダンベル・エクササイズ
<かまえ>③のリア・ラタラル・レイズと同じ。
<動作>両腕を伸ばしたまま前方にあげ、前から横、さらに後方へと、平泳ぎの感じで両手のダンベルを移動させる。
臀部のあたりまで移動させたら、腕を伸ばしたまま、いったん下におろし、また再び同じ動作を反復する。
なお、両腕をおろさずに、前→横→後ろ→横→前といったように動作を行なってもよい。
<かまえ>両足の甲の上にバーベル・シャフトが位置するように立つ。両足の間隔は後述の動作がやり易い幅にする。
両脚を伸ばしたまま、バーベルをオーバー・グリップで握る。
<動作>脚は伸ばしたまま、上体を起こしてバーベルを頸のあたりまで引きあげ、腕と手首をかえして首の前で受けとめる。
(註:バーベルを肩の前から大腿部の位置におろすときは膝をまげてもよい)
この運動は固有背筋にも有効。
③リア・ラタラル・レイズ
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、上体を床面と平行になるまで前傾する。
<動作>下方にぶらさげた左右のダンベルを、腕を伸ばしたまま(あるいはいくぶんまげた状態で)、真横へあげる。
④べント・フォワード・ラタラル・レイズ
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、上体を45度ぐらいに前傾する
<動作>ぶらさげた左右のダンベルを腕を伸ばしたまま(あるいはいくぶんまげた状態で)、真横へあげる。
腕をあげるときに、左右の肩甲骨を意識的に中側へ寄せるようにすると上背の内側に強く効く。
(註:この運動を三角筋のために行うときは、肩甲骨をできるだけ中側へ寄せないようにするほうがよい)
⑤べント・オーバー・ダンベル・エクササイズ
<かまえ>③のリア・ラタラル・レイズと同じ。
<動作>両腕を伸ばしたまま前方にあげ、前から横、さらに後方へと、平泳ぎの感じで両手のダンベルを移動させる。
臀部のあたりまで移動させたら、腕を伸ばしたまま、いったん下におろし、また再び同じ動作を反復する。
なお、両腕をおろさずに、前→横→後ろ→横→前といったように動作を行なってもよい。
リスト・カールの使用重量の増やし方
Q.ボディビル歴は8ヵ月です。リスト・カールについてお尋ねします。私は握力が75あり、かなり強い方だと思っていますが、
25kgのリスト・カールをやって手首を痛めたことがあります。それまでは、1セットの反復回数を15回として22.5kgで行なっていたのですが、
2.5kg増量しただけで手首を痛めてしまったということは、この増量に無理があったのでしょうか。リスト・カールの増量のやり方についてお教示ください。 (川崎市 服部敬二 23才)
25kgのリスト・カールをやって手首を痛めたことがあります。それまでは、1セットの反復回数を15回として22.5kgで行なっていたのですが、
2.5kg増量しただけで手首を痛めてしまったということは、この増量に無理があったのでしょうか。リスト・カールの増量のやり方についてお教示ください。 (川崎市 服部敬二 23才)
A.バーベルを使用するリスト・カールであれば、増量の単位が2.5kgというのは決して重すぎる重量ではありません。しかし、ダンベルを用いて片手ずつ行う
リスト・カールの場合には、2.5kgずつ増量するのは少し無理がともなうといえます。
あなたの場合、種目名にダンベルという語が付されていないところから、バーベルを用いたリスト・カールを行なっていたものと判断されますので、
2.5kgの増量は妥当なものであったと思われます。それにもかかわらず、手首を痛めたというのは、2.5kgの増量が原因ではなく、他になにか原因があったものと考えられます。
たとえば、22.5kgの段階でさほど余裕がなかったのに、無理に増量したとか、あるいは、22.5kgで多少余裕が感じられたので増量したが、
所定の回数(15回)を行うのに無理をしたといったようなことです。
手首はとりわけ故障しやすい箇所ですから、運動に際しては、そのことを十分念頭において慎重な動作で行うことが大切です。まして重量をふやしたときは、
目いっぱい動作を反復しないで、余裕の感じられる範囲に回数を止めるぐらいの注意深さが必要です。
リスト・カールの場合には、2.5kgずつ増量するのは少し無理がともなうといえます。
あなたの場合、種目名にダンベルという語が付されていないところから、バーベルを用いたリスト・カールを行なっていたものと判断されますので、
2.5kgの増量は妥当なものであったと思われます。それにもかかわらず、手首を痛めたというのは、2.5kgの増量が原因ではなく、他になにか原因があったものと考えられます。
たとえば、22.5kgの段階でさほど余裕がなかったのに、無理に増量したとか、あるいは、22.5kgで多少余裕が感じられたので増量したが、
所定の回数(15回)を行うのに無理をしたといったようなことです。
手首はとりわけ故障しやすい箇所ですから、運動に際しては、そのことを十分念頭において慎重な動作で行うことが大切です。まして重量をふやしたときは、
目いっぱい動作を反復しないで、余裕の感じられる範囲に回数を止めるぐらいの注意深さが必要です。
腹筋台の傾斜度と反復回数について
Q.ボディビルを始めて2ヵ月になります。腹囲はさほど大きいほうではありませんが、腹の部分をとくに鍛えたいと思っています。
現在、腹部のための運動として次の2種目を行なっています。
〇デクライン・シット・アップ 15回x2セット
〇レッグ・レイズ(べンチの上で) 40回x1セット
以上のとおりですが、デクライン・シット・アップの場合に、傾斜度を変えずに反復回数を増やしていくのと、
反復回数をある程度におさえ、傾斜を強めていくのとでは、どちらの方法が効果的でしょうか。 (山口県 赤川徹 学生15才)
現在、腹部のための運動として次の2種目を行なっています。
〇デクライン・シット・アップ 15回x2セット
〇レッグ・レイズ(べンチの上で) 40回x1セット
以上のとおりですが、デクライン・シット・アップの場合に、傾斜度を変えずに反復回数を増やしていくのと、
反復回数をある程度におさえ、傾斜を強めていくのとでは、どちらの方法が効果的でしょうか。 (山口県 赤川徹 学生15才)
A.年令が15才で、まだボディビルを始めて2ヵ月ということですから、ふつうならからだ全体を平均的にのびのび鍛えるのがいいと思いますが、
腹部のそれもデクライン・シット・アップの傾斜度と反復回数に限定された質問ですので、それにしぼってお答えします。
傾斜度を変えずに反復回数を増やしていく方法も、また、反復回数はある程度の回数におさえて、傾斜度を変えていくようにする方法も、
腹筋運動のやり方としてはどちらもそれなりの利点はあります。したがって、腹筋運動のやり方として、どちらの方法がより効果的であるかといった質問には
端的にお答えすることはできません。
ということは、運動法、および運動種目の有効性を問題とする場合トレーニングの目的抜きにしては、それを論ずることができないからです。
このことは、あなたが質問されているデクライン・シット・アップの運動法の有効性を論ずる場合についてもいえると思います。
デクライン・シット・アップを行うからには、それなりの目的があると思います。たとえば、
a.腹部の脂肪を落とすのが目的
b.腹筋力の強化が目的
c.腹筋の隆起をよくするのが目的
など、なんらかの目的意識をもって運動を行うものと思います。
他にも目的とされることがらはあるでしようが、ビルダーのトレーニングとしては、上記の3つの項目に該当する場合が最も多いと考えられるので、
一応その3つに限定して、デクライン・シット・アップの運動法の有効性をそれらの目的と関連して考えてみたいと思います。
a.腹部の脂肪をおとすのが目的
腹部の脂肪をおとすには、多回数を行うのがよいと考えられています。したがって、傾斜度を強めることによって反復回数を抑制するやり方よりは、
傾斜度を変えずに反復回数を増やしていく方法のほうが目的にかなっていると思います。
しかしこのことは、運動的に、腹筋に適切な運動負荷が与えられていることが条件になります。反復回数をただ多くするために反動を使ったり、
運動時の負荷を軽減するために、動作の範囲を縮少して行なったりする場合にはその限りではありません。
動作の範囲を縮少して行うことも、腹筋を鍛練していくうえで必要な場合もありますが、脂肪をおとすためには反動や加速を利用しないで
可動範囲いっぱいに運動を行うことが大切です。(註:いま述べたこととは一見矛盾するようですが、脂肪をおとすための方法として、
低回数による特殊な運動のやり方もないではありませんが、あなたの場合、現段階では上述の方法にそって行うのがよいと考えられますのであえて省略させていただきます)
b.腹筋力の強化が目的
腹筋の持久力ではなく、腹筋のカそのものを強化するには、腹筋力が向上するにつれて運動負荷を増していくのがよいと考えられています。
したがって、そのためには腹筋台の傾斜を強めていくのも1つの方法です。しかし、腹台の傾斜を変えるという方法には
腹筋の強化を部分的にとらえた場合に問題となる点があります。
つまり、腹筋は肋骨から恥骨につながる長い筋肉で、腹筋運動において上部から下部まで同じ度合で緊張するわけではありません。
そして、そのような腹筋の部分的な緊張の度合は、腹筋台の傾斜が変わることによって変化します。しかし、どのように変化するかということについては、
運動時のフォームの違いによっても変化するので、いちがいにはいえません。背すじを伸ばしたフォームで行うのと、背をまるめるようにして行うのとでは、
腹筋の部分的な緊張のあり方に差異が生ずるからです。
ともかく、腹筋の運動というものは腹筋台の傾斜を変えることによって、強く効く部分が変化するわけです。
したがって、腹筋力を強化するにしてもただ腹筋台の傾斜度を強めていけばすむといったものではありません。
上から下まで腹筋全体を多角的に強化鍛練するという意味では、もちろんいろいろな傾斜度で運動を行うことが要求されますが、腹筋力の強化を目的とする場合は、
傾斜度を変えずに運動負荷を強めて行うといったことも必要です。それには、クビの後ろに鉄アレーとかプレートを保持して運動を行なってみるのもよいでしょう。
c.腹筋の隆起をよくするのが目的
腹筋の隆起をよくするには、どちらかといえば傾斜の強いほうが有効なようです。しかし、このことはあくまで一般的な傾向としていえることです。
腹筋の隆起を促すうえで大切なことは、腹筋を十分に伸展することと、より短い状態にまで収縮させることの2つです。したがって、そのような意味で、
あなたの質問にかかわりなく述べれば、隆起を促すには次のような運動が比較的に有効といえます。
<腹筋を十分に伸展させる運動>
①ローマン・チェア・シット・アップ
②クロス・べンチ・シット・アップ
③高い台の上に上体だけをのせて行うレッグ・レイズ
<腹筋をより短い状態にまで収縮させる運動>
①ニー・べント・シット・アップ
②足を固定しないで行うフロア・シット・アップ
③トルソー・テンション・1/4シット・アップ
④傾斜度の強いデクライン・シット・アップ
⑤比較的傾斜の強い台の上で行うレッグ・レイズ
他にもいろいろとありますが、ある程一般的な種目としては以上のようなものです。
そこで、あなたの質問の主旨にそってデクライン・シット・アップについて考えてみることにしましょう。
デクライン・シット・アップという運動は、腹筋台の傾斜度にかかわりなく、腹筋をより短い状態にまで収縮させることが可能です。
たしかに、腹筋の隆起を促すには、腹筋をより短い状態にまで収縮させることが必要ですがただそのように運動を行えばよいといったものではありません。
運動としての有効性を考えるときには、腹筋をより短い状態にまで収縮させたときに、腹筋に十分な負荷がかかっているかどうかが
問題になります。腹筋をより短い状態にまで収縮させても、負荷が十分にかかっていなければ効果は期待できません。
デクライン・シット・アップの場合には、傾斜度が緩やかなのと、急なのとでは、急なほうが上体を起こしたときに、
より十分に負荷が腹筋にかかります。したがって、そのような見地からすれば、腹筋の隆起を促すには、どちらかといえば傾斜度を強めて行うのがよいということになります。
しかし、腹筋の隆起を促すにしても最終的には上腹部、中腹部、下腹部といった具合にポイントをしぼって運動を行うことが必要になります。
そのためには背すじを伸ばしたままのフォームで行なったり、あるいは、上体を巻き込むような感じで行なったりすることも必要です。
つまり、腹筋の隆起をよくするには、部分的にポイントをしぼって、その部分を十分に伸展させるか、あるいは、より短い状態にまで収縮させるかのやり方で
運動を行うことが必要であるということです。
以上、デクライン・シット・アップについて腹筋台の傾斜と反復回数の関係について述べましたが、現段階ではそれらのことがらを知識として頭に入れておくだけにしておいてください。
まだ初心者であるといえる今の段階では、あれこれ考えずに、反復回数が20回前後行えるようになったら、腹筋台の傾斜を少しずつ強めていくようにするのがよいと思います。
(解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生)
腹部のそれもデクライン・シット・アップの傾斜度と反復回数に限定された質問ですので、それにしぼってお答えします。
傾斜度を変えずに反復回数を増やしていく方法も、また、反復回数はある程度の回数におさえて、傾斜度を変えていくようにする方法も、
腹筋運動のやり方としてはどちらもそれなりの利点はあります。したがって、腹筋運動のやり方として、どちらの方法がより効果的であるかといった質問には
端的にお答えすることはできません。
ということは、運動法、および運動種目の有効性を問題とする場合トレーニングの目的抜きにしては、それを論ずることができないからです。
このことは、あなたが質問されているデクライン・シット・アップの運動法の有効性を論ずる場合についてもいえると思います。
デクライン・シット・アップを行うからには、それなりの目的があると思います。たとえば、
a.腹部の脂肪を落とすのが目的
b.腹筋力の強化が目的
c.腹筋の隆起をよくするのが目的
など、なんらかの目的意識をもって運動を行うものと思います。
他にも目的とされることがらはあるでしようが、ビルダーのトレーニングとしては、上記の3つの項目に該当する場合が最も多いと考えられるので、
一応その3つに限定して、デクライン・シット・アップの運動法の有効性をそれらの目的と関連して考えてみたいと思います。
a.腹部の脂肪をおとすのが目的
腹部の脂肪をおとすには、多回数を行うのがよいと考えられています。したがって、傾斜度を強めることによって反復回数を抑制するやり方よりは、
傾斜度を変えずに反復回数を増やしていく方法のほうが目的にかなっていると思います。
しかしこのことは、運動的に、腹筋に適切な運動負荷が与えられていることが条件になります。反復回数をただ多くするために反動を使ったり、
運動時の負荷を軽減するために、動作の範囲を縮少して行なったりする場合にはその限りではありません。
動作の範囲を縮少して行うことも、腹筋を鍛練していくうえで必要な場合もありますが、脂肪をおとすためには反動や加速を利用しないで
可動範囲いっぱいに運動を行うことが大切です。(註:いま述べたこととは一見矛盾するようですが、脂肪をおとすための方法として、
低回数による特殊な運動のやり方もないではありませんが、あなたの場合、現段階では上述の方法にそって行うのがよいと考えられますのであえて省略させていただきます)
b.腹筋力の強化が目的
腹筋の持久力ではなく、腹筋のカそのものを強化するには、腹筋力が向上するにつれて運動負荷を増していくのがよいと考えられています。
したがって、そのためには腹筋台の傾斜を強めていくのも1つの方法です。しかし、腹台の傾斜を変えるという方法には
腹筋の強化を部分的にとらえた場合に問題となる点があります。
つまり、腹筋は肋骨から恥骨につながる長い筋肉で、腹筋運動において上部から下部まで同じ度合で緊張するわけではありません。
そして、そのような腹筋の部分的な緊張の度合は、腹筋台の傾斜が変わることによって変化します。しかし、どのように変化するかということについては、
運動時のフォームの違いによっても変化するので、いちがいにはいえません。背すじを伸ばしたフォームで行うのと、背をまるめるようにして行うのとでは、
腹筋の部分的な緊張のあり方に差異が生ずるからです。
ともかく、腹筋の運動というものは腹筋台の傾斜を変えることによって、強く効く部分が変化するわけです。
したがって、腹筋力を強化するにしてもただ腹筋台の傾斜度を強めていけばすむといったものではありません。
上から下まで腹筋全体を多角的に強化鍛練するという意味では、もちろんいろいろな傾斜度で運動を行うことが要求されますが、腹筋力の強化を目的とする場合は、
傾斜度を変えずに運動負荷を強めて行うといったことも必要です。それには、クビの後ろに鉄アレーとかプレートを保持して運動を行なってみるのもよいでしょう。
c.腹筋の隆起をよくするのが目的
腹筋の隆起をよくするには、どちらかといえば傾斜の強いほうが有効なようです。しかし、このことはあくまで一般的な傾向としていえることです。
腹筋の隆起を促すうえで大切なことは、腹筋を十分に伸展することと、より短い状態にまで収縮させることの2つです。したがって、そのような意味で、
あなたの質問にかかわりなく述べれば、隆起を促すには次のような運動が比較的に有効といえます。
<腹筋を十分に伸展させる運動>
①ローマン・チェア・シット・アップ
②クロス・べンチ・シット・アップ
③高い台の上に上体だけをのせて行うレッグ・レイズ
<腹筋をより短い状態にまで収縮させる運動>
①ニー・べント・シット・アップ
②足を固定しないで行うフロア・シット・アップ
③トルソー・テンション・1/4シット・アップ
④傾斜度の強いデクライン・シット・アップ
⑤比較的傾斜の強い台の上で行うレッグ・レイズ
他にもいろいろとありますが、ある程一般的な種目としては以上のようなものです。
そこで、あなたの質問の主旨にそってデクライン・シット・アップについて考えてみることにしましょう。
デクライン・シット・アップという運動は、腹筋台の傾斜度にかかわりなく、腹筋をより短い状態にまで収縮させることが可能です。
たしかに、腹筋の隆起を促すには、腹筋をより短い状態にまで収縮させることが必要ですがただそのように運動を行えばよいといったものではありません。
運動としての有効性を考えるときには、腹筋をより短い状態にまで収縮させたときに、腹筋に十分な負荷がかかっているかどうかが
問題になります。腹筋をより短い状態にまで収縮させても、負荷が十分にかかっていなければ効果は期待できません。
デクライン・シット・アップの場合には、傾斜度が緩やかなのと、急なのとでは、急なほうが上体を起こしたときに、
より十分に負荷が腹筋にかかります。したがって、そのような見地からすれば、腹筋の隆起を促すには、どちらかといえば傾斜度を強めて行うのがよいということになります。
しかし、腹筋の隆起を促すにしても最終的には上腹部、中腹部、下腹部といった具合にポイントをしぼって運動を行うことが必要になります。
そのためには背すじを伸ばしたままのフォームで行なったり、あるいは、上体を巻き込むような感じで行なったりすることも必要です。
つまり、腹筋の隆起をよくするには、部分的にポイントをしぼって、その部分を十分に伸展させるか、あるいは、より短い状態にまで収縮させるかのやり方で
運動を行うことが必要であるということです。
以上、デクライン・シット・アップについて腹筋台の傾斜と反復回数の関係について述べましたが、現段階ではそれらのことがらを知識として頭に入れておくだけにしておいてください。
まだ初心者であるといえる今の段階では、あれこれ考えずに、反復回数が20回前後行えるようになったら、腹筋台の傾斜を少しずつ強めていくようにするのがよいと思います。
(解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生)
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