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”ゼラチンと寒天”

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月刊ボディビルディング1974年4月号
掲載日:2018.07.28
野沢 秀雄

<似た者同士だが>

 ”ゼラチン”といっても聞きなれない人が多いにちがいない。夏になるとゼリーやプリンが人気を呼ぶが、あのプリプリした感触は、ゼラチンや寒天あるいはペクチンなどの物質による。また「煮こごり」といってカレイやヒラメなどの魚を煮て一晩冷蔵庫などに置くと、液の部分がプリプリしてくるが、これはゼラチンのせいである。
 ゼラチンは動物の骨や皮からとったタンパク質である。また寒天は、てんぐさ・おご草などの海藻から得られる糖質であり、ペクチンは野菜や果物などに含まれる高分子の糖質である。
 どれを使用しても透明なゼリー状態になるので、水羊かん・和菓子・ジャム・ゼリー・プリン・アイスクリーム・シャーベット・ヨーグルト・洋菓子のクリームなどに広く使用されるが、成分的にはかなりちがうわけだ。

<肥満児大歓迎!>

 ”ゼラチンや寒天は美容食によい”と一般に言われている。これは水分を固まらせる作用を応用して、あらかじめ弁当箱にゼラチンか寒天をぬるま湯でといておき、その中にみかんの缶詰などを流すだけで、いとも簡単に水分の多い”おやつ”ができる。ゼラチンや寒天そのものはカロリーはほとんどゼロで、しかも満腹感が味わえるためである。
 だから若い女性ばかりでなく、肥満が気になる中年男性にまで愛用者がひろがっている。だが過信はあぶないもの。評論家の大宅壮一氏は、他の食事を極端に減らして、寒天のゼリーばかりを食べたために栄養失調症におちいり死亡したともいわれている。これでは何んにもならない。大宅氏が寒天のゼリーでなく、ゼラチンのゼリーを利用していたとしたら、まだ救われていたかもしれない。

<86%たんぱくパウダー>

 スーパーで売っているゼライスは86%がたんぱく質。30gが100円だから25.8gの純たんぱく質をとることができる。豚肉は100円で100g買えるが、そのうち純たんぱく質は約17gだから同じ金額でゼラチンの方が約8.8g多く純たんぱく質をとることができるわけだ。都合の良いことに動物性たんぱく質なので、必須アミノ酸も多く、しかも消化されやすい形になっている。
 アミノ酸のうちトリプトファンが少ないことを指摘する人もなかにはいるが、ほかの肉や魚などと比較してそれほど劣るわけではない。
 ヘルスフードとして発売されている商品に、ココアの混ぜられている製品が多いが、これはココアにトリプトフファンが多いこと、およびおいしい風味をつくり出すためである。
 昔のゼラチンは鯨の骨や皮からとることが多く、生ぐさい臭いがつきまとっていたが、現在は牛や豚、にわとりなどの骨からもとるようになり、しかも精製技術が飛躍的に進歩したのでほとんど気にならなくなっている。
記事画像1

<上手な食べ方>

 さて高純度のたんぱくパウダーも使用法が悪いと、何とも食べにくいものである。そこでよい方法を公開することとしよう。
 スプーン大さじ2杯(約20g)のゼラチンに、同じく大さじ2杯の水、または生ぬるい湯を加え、そのまま約5分待つ。不思議なことに熱湯を加えるとかえって凝固して溶けにくくなる。また、ゼラチンとほぼ同量の砂糖とゼラチンを混ぜ合わせて、水や湯に溶かすといっそうよく溶ける。砂糖を入れるかどうかは個人の好みや方針によるのでどちらでもよいが、こうして出来たゼラチンの粘調な液に、新鮮なレモンのしぼり汁を約半個分混ぜて均一にする。
 これをそのままスプーンで食べるのだが、かなりベタベタして糊のような感触だが、寒いときでも暑いときでもなかなかおいしい。消化されやすいので、トレーニングの前や後に食べると、筋肉にゆきわたるのが早いと考えられる。野沢式マル秘処方の一つである。
 量として、この2倍~3倍食べても差しつかえない。
 なおやせたい人やデフィニションをつけたい人は、ごはん・パン・麺類、コーラやジュース類を避ける傾向にあるが、若い女性などは抜きすぎてたんぱく質まで不足になりがちだ。こんなときに、ぜひこの処方を利用していただきたい。貧血で倒れたり、献血のとき断られたり、栄養失調になったりすることは決してない。
 寒天はグラグラ煮て冷やす方が固まる力が強いが、栄養的にはあまり意味がない。美容にいいからといってこれにたよりすぎるのは危険である。同じ似たものを食べるならゼラチンの方に軍配があがるのだ。
月刊ボディビルディング1974年4月号

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