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なんでもQ&Aお答えします 1974年5月号

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月刊ボディビルディング1974年5月号
掲載日:2018.08.06

スタンディング・プレスをすると腰がいたい

Q 生れつきの弱いからだを,なんとか強くしたい気持で1ヵ月前にトレーニングを始めました。

 専門家の指導は受けていませんが,本を参考にして,シット・アップ,スクワット,ベンチ・プレス,スタンディング・プレスの4種目を各2セットずつ1日おきに行なっています。トレーニング後の疲労感はごく軽いものですが,なぜかトレーニングを始めた日以来,スタンディング・プレスを行なっているときに腰が痛くなります。

 初めのうちは,腰が痛くなるのは,自分に体力がないからであろうと簡単に考え,トレーニングを続けていけば腰が強くなり,痛みも感じなくなるものと思っていました。しかしながら,1ヵ月を経過した現在,一向に痛みはなくならず,かえってひどくなっていくような気がして心配になっています。体力を強化したい一心でボディビルを始めたのですが,こんな具合では断念しなければならないとも考えています。僕みたいな虚弱体質の者には,もともとボディビルは向いていないのでしょうか。(静岡市・野村芳文)
A まず,虚弱体質の者にボディピルは不向きかということについてですが,絶対にそのようなことはありません。

 いかに虚弱な体質であっても,医学的に運動を禁止されるような疾患がないかぎり行なってさしつかえなく,正しい方法でトレーニングを行えばそれなりに体力の強化は可能です。

 あなたの場合,腰に痛みを感じるということで,医師の診察を受ける必要がありますが,診察の結果,別に異常がなければ止めてしまうのは思い止どまるべきです。今ここで止めてしまえば,折角の体力を強化できる機会は失われ,一生弱いからだで過さなければならなくなります。

 そもそも,弱気のもとはスタンディング・(フロント)プレスのときの腰痛にあるようですが,腰が痛くなるのは,おそらく運動の仕方に原因があると思われます。大事をとり,医師の診断を得た上で,次に述べる事柄に留意して,スタンディング・プレスを行うようにしてください。

①使用重量一正確な動作で10回挙上して,なお2回くらい挙上できそうな余裕のあるものを使用する。初心者の段階では,この程度の重量で十分に効果が得られる。したがって,危険度の高い無理な重量の使用は絶対に慎むこと。

②反復回数-①で述べた重量で10回行う。無理な重量の使用と同様,無理な回数の反復は慎しむ。たまたま調子が悪くて10回の反復が困難であれば,適当な回数で止める。極端に調子が悪いようであれば思いきって運動を中止する。

③バーベルを上胸の前にかまえたら,内ももと殿部を内側へ引きしめるよう力を入れ,その状態でバーベルを挙上する。

④バーベルを挙上した姿勢のときに,肩が腰椎よりも後へいかないようにする。つまりからだを後ろへ反らしすぎて腹部を前へ出っぱらさないようにする。図①のように腹部を前に出すような姿勢は腰に負担が強くかかり,腰を痛める原因になる。

 挙上した姿勢では,図の@のようにからだを後ろへ反らすというよりは,胸を前へ突き出すようにする。
記事画像1
⑤セット数-2~3セットが適当であ る。初心者の段階ではセット数を多くしすぎると,始めのセットと最終セットとの筋力差が大きくなり,動作に無理が生じる。また,消耗が強くなり,いたずらに筋を疲労させることにもなるのでこの点に留意。体力の弱いうちは2セットが妥当。

⑥使用重量の増加一使用重量の増加は①~④の事柄に十分留意して,所定のセット数を,トレーニングの日数で5~6日続けて,10回ずつ完全に行えたら2.5キロ増量する。5~6日続けてということは,その間,不完全な日を含まないということであるから,その点を誤解しないように。また,増量したい一心から無理をすることは禁物である。

 2.5㌔増量した当初に10回の反復が無理と感じたならば,回数にこだわらず適度な回数で行うようにする。そして,筋力の向上にっれて,徐々に回数を増やし,10回行うようにずる。 10回ずつ行えるようになったなら,先に述べた要領で再び増量するようにする。

 以上,ボディビルは,健康を保ち,体力を強化するための運動ですから,そのことをよく自覚して,くれぐれも身体を損うようなことは慎んでください。絶対に無理をしてはいけません。無理したい気持を自制ナることが,明日のあなたの健康を約束し,体力の強化を可能なものにします。

運動量を増やしたが,かえって効果がない

Q  Qボディビルを始めたのは昨年の6月です。開始当初は,基本種目の中でもとくに重要といわれているベンチ・プレス,スタンディング・プレス,スクワット,シット・アップの4種目を2~3セットずつ,隔日的に週3日のスケジュールで行いました。経過は良好で,徐々にではあるが身体的な向上も見られ,自分でも満足のいくものでした。

 そこで4ヵ月目から,上記の4種目にベンド・オーバー・ローイングとカールの2種目を加え,都合,6種目の運動を3セットずつ行うようにしました。その結果も非常に良好で,体格的にも筋力的にも順調に向上が見られ,今さらながらボディビルの効果に目を見はる思いでした。

 それに気をよくし,スペシャリストとはいかないまでも,それに近い体格と体力の持主になりたいという考えから,意を新たにして,下記のスケジュールによるトレーニングを始めました。

 トレーニング・コースを作るに当っては,従来,各部位1種目ずつであったのを2種目ずつにし,次のようにセット数も3~5セットの範囲で行うようにしました。
記事画像2
以上,隔日的に週3日。各種目の使用重量は,所定の回数を反復し得る最大限のものを用いています。

 しかしながら,その結果は,意欲を持ってトレーニングを行なったにもかかわらず,3ヵ月を経過した現在,体格的にも筋力的にもほとんど効果が得られませんでした。

 現在のスケジュールで行う前の6カ月間は順調に向上していたのに,現在のスケジュールにしてからはほとんど向上が見られなくなったのはなぜでしょうか。その理由について自分なりに考えてみましたが,経験の浅い私にはさっぱりわかりません。

 疲労もそれほどなく,栄養にも充分注意していながら効果かあがらないのはなぜでしょうか(柏市・亀田一夫)
A 現在のトレーニング・スケジュールで行うようにしてから,これといった効果がみられなくなったのは,おそらくトレーニング量を急激に増したことが原因でしょう。トレーニング量を現在のものに倍増する前までは順調に効果があがっていたのですから,現在のトレーニング量が少なすぎるということは考えられません。

 現在,あなたが行なっているトレーニング・スケジュールは,採用種目,反復回数,セット数,トレーニングの日取りなどに,それなりの考慮がはらわれており,一見して不備な点は見うけられないように思われますが,効果が得られないというからには,やはり,以前のトレーニング址との比較において,現在のトレーニング量に無理があると考えるのが正しいようです。

 トレーニングの効果というものは,栄養を充分に摂り,有効と思われる種目を,ただ多数採用して隔日的に行いさえすれば得られるというものではありません。いかに有効と思われるトレーニング・スケジュールで行なっても,そのトレーニング量および強度が,現在の自分の体力に対して過度であっては思わしい効果を得ることはできません。

 ボディビルのような性質の運動の効果は,トレーニングによって消耗したからだが,トレーニング前の状態に回復した後に,超回復というかたちで得られるのです。

 したがって,自己の体力を無視してトレーニング量および強度をむやみに多くしたり強めて行うと,消耗が大きくなり,回復も遅くなるので,隔日的にトレーニングを行なっているとしても,効果(超回復)の得られる前に次回のトレーニングを行うような結果になってしまいます。

 あなたの場合,以前のスケジュールで行なっていたときには,トレーニングによる消耗も今ほどではなく,回復も早く,十分な効果(超回復)が得られてから次回のトレーニングを行うようになっていたものと考えられます。

 しかし,現在のスケジュールで行うようになってからは,トレーニング量も急激に増え,そのために以前より消耗が大きくなって回復にも時間がかかるようになり,隔日的な日程では,効果(超回復)が得られないままに次回のトレーニングを行うような結果になってしまったものと思われます。

 したがって,あなたの場合,十分な効果(超回復)を得るには,

①現在のトレーニング・コースで,2~3日おきに週2日の日程でトレーニングを行うようにして,休養を十分にとるようにするか,

②または,トレーニングによる消耗を軽減するために,トレーニング量を減らして従来どおり隔日的,週3日の日程で行うか,

のいずれかの方法に改める必要があると思います。回答者としては,前者よりも後者の方法に改めることをおすすめします。

 くりかえして述べますが,ボディビルとは,トレーニング量を多くし強度を強めて行えば効果が得られるというものではありません。

 つまり,自分のトレーニングの日程において,回復と超回復がスムーズになされる範囲のトレーニング量で行うことが大切です。トレーニング量および強度を増ナときは,急激に増加しないで,自分の体力の向上につれて,その体力的な余裕とてらし合わせて段階的に徐々に増やすようにしてください。

 トレーニング・スケジュールを作るに当っては,採用する種目,反復回数,セット数などについて十分に検討することは必要ですが,同時に,全体のトレーニング量および強度が,現段階の自分の体力において過度なものにならないかという点について配慮することも大切です。

 〔注〕ここで述べた回復とは,感覚的な回復のことではなく,筋の組織的な回復のことです。

 筋組織の量的および質的な回復,超回復は,食物から吸収された栄養が,消耗した組織に送られ,徐々に同化されることによってなされるので,思いのほか時間がかかるものです。したがって,感覚的に疲労が解消したからといっても,それが必ずしも筋組織の回復と一致するとは限りません。疲れを感じていないようでも,実際にトレーニングを行なってみると意外に重量が重く感じたりすることがあるのはそのためです。

 トレーニングの効果を得るには,休養というものを感覚的な面だけで判断しないで,筋組織の回復および超回復のなされる経過を念頭において考えることが大切です。超回復は,トレーニングによって消耗した筋組織が,トレーニング前の状態に回復した後になされるものであることをよく自覚しておく必要があります。たとえ,感覚的な疲労感が感じられなくても,今現在,超回復が進行中であると考え,泰然として休養をとるくらいの心のゆとりが欲しいものです。

ピップ・アップをはかりたいが

Q 30歳という年齢のせいか,最近,殿部に張りがなくなり,垂れ下った感じになってきています。まだ独身ということで,年がいもなく少々気にしている次第です。年齢的にいって無理かもしれませんが殿部の張りをよくする方法はないでしょうか。恥をしのんでおききします。(青梅市・T・K) 
A ひきしまったウェストと,張りのあるヒップは,女性の場合にかぎらず,男性にとって若さのシンボルといえます。

 年齢にかかわらず,若々しいからだを維持しようとするのは当りまえのことで,ましてやまだ独身ということであれば気にするのはもっともなことです。

 年齢が30歳ということですが,殿部の張りがなくなってきているのは,あながち年齢のせいばかりではなく,むしろ運動不足のせいでしょう。

 殿部のための運動としては,スクワットが有効ですが,とくにかたちをよくするにはバック・キックを行うのが効果的です。

<殿部に有効なスクワットの仕方>
 まず,両足の間隔を肩幅より少し狭いくらいにとり,左右のつま先を90度くらいに閧きます。

 動作は普通のスクワットとほぼ同じですが,脚を屈伸するときに両膝がつま先の差す方角,つまり股が90度に開く状態で行うようにします

 動作上の注意は,深く脚を屈することと,上体をあまり前傾させないことです。ただし,背を極端に後ろへ反らしすぎると腰を痛めるおそれがありますから,その点に注意してください。また脚を伸ばすときに両膝をつぼめないように留意することも大切です。 90度の角度を保って脚の屈伸を行うことがポイントになります。踵の下に板かプレートを敷いて行うと運動がしやすくなります。

<パック・キック>

 この運動は前述したように殿部のかたちをよくするには非常に有効であり,かつ,ウェストの後ろ側をひきしめるのにも役立ちます。

 運動の動作は,立った姿勢で,片脚を伸ばしたまま斜め後方へあげます。このとき,上体を多少前傾さ世てもよく,また,足をできるだけ高くあげるために,動作の半ばから勢いをつけるようにしてもかまいません。回数を決めて片方ずつ行なっても,1回ずつ交互に行なっても効果の面では同じです。

 バスの停留所や駅のホームなどで安直に行える運動ですから,腰を痛めない程度に思いついたら行うようにするとよいでしょう。

 (解答は'59ミスター日本,NE協会指導部長・竹内 威氏)
月刊ボディビルディング1974年5月号

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