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知っていると有利 栄養ミニ知識
脂肪の話

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月刊ボディビルディング1974年6月号
掲載日:2018.08.24

<イヤな脂肪ぶとり>

脂肪のついた体は単にスタイルが悪いだけでなく、動作をにぶくしたり、手術の際にメスが届きにくく充分な手当ができないという、生命にかかわる問題をふくんでいる。
皮ふを指でつまんで、5ミリ以上ある人は努力して脂肪を落すようにしたほうが賢明である。

<脂肪の役割は>

脂肪がなぜ体につくかは合理的な説明がなされている。一つは外傷などのショックから身をまもること、および寒さ暑さから内臓器管をまもるためである。
とくに赤ちゃんをはらむ宿命にある女性は皮下脂肪が厚く、なめらかな丸味のある体つきになることは当然である。
もう一つ重要なことは、われわれ人類の祖先は野山にはえる草や木の実、あるいは野生動物を食糧としており、いつ天候の変化により飢餓にみまわれるかわからない状況にあった。

したがって、常にある程度の備蓄を身体の内部に用意することが要求される。実際、秋になると太りだす猫や犬、冬眠に入るクマなどを見ても、食糧を体にストックしている自然の知恵がよくわかるだろう。
この場合、脂肪は1g当たり9カロリーあるから、ほかのタンパク質や糖質より少量でハイエネルギーが出せることになり、合理的であることがわかるだろう。

<ホルモンの原料にも>

そのほかに脂肪はビタミンA・D・E・K等のビタミンを溶かして、体内の必要な場所に運搬する役割をする。
また、ストレスから身をまもる副腎皮質ホルモンや性差をつくる性ホルモンの原料として重要である。
「脂肪も食べると太ったり、コレステロールがふえたりするので脂肪は悪人だ」と誤解している人が多いが、太るのはむしろ糖質のためだし、かえって腹もちをよくして空腹感をストップさせるので肥満防止によいともいわれている。

コレステロールに関しても、バターやラードのような動物性脂肪は確実に血中コレステロール値をふやすが、
ゴマ油や大豆油はプラス・マイナス・ゼロ、米ぬか油・サフラワー油・小麦胚芽油・ひまわり油は、逆に血中コレステロールを低下させる効果が判明している。

<バターよりもマーガリン>

マーガリンは今から100年も前の1875年パリ万国博覧会の際、全世界の化学者に懸賞金をつけて、よき発明を募集したときに特賞採用となったものである。
メージュというフランスの化学者が、魚油・鯨油・大豆油・なたね油等を調合してバターに似た製品をつくったのだ。
臭いが強いために最近まで敬遠する人が多かったが、近年、油脂の精製技術が進歩し、無臭のよい品質の商品を市場に出せるようになった。

そのうえ、リノール酸・リノレン酸などの不飽和脂肪酸にコレステロール沈着を防止する効果が認められて以来、続々と愛用者がふえ、いまや代用品のイメージはほとんど消えている。
諸外国に比べて、日本人の油脂摂取量は一日約30gで半分ぐらいだという統計がある。チャーハン・野菜いため・ぎょうざなど、油の多い料理が成長期にある若者やスポーツマンの体力をささえる原動力の一つだと私は考えている。
野沢秀雄
月刊ボディビルディング1974年6月号

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