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なんでもQ&Aお答えします 1974年9月号

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月刊ボディビルディング1974年9月号
掲載日:2018.07.27

三角筋の横への発達を促すには

Q

 ボディビル歴3年です。大胸筋、広背筋、上腕等、上体の発達に関しては自分なりにかなり自信を持っていますが、三角筋の横への発達が弱いのが不満です。今までにも、貴誌や専門書を参考にして、バック・プレス、ワイド・グリップ・フロント・プレス、スタンディング・ラテラルなど、三角筋の横の発達を促すために、あれこれ試みているのですが、さしたる効果が得られません。運動の動作も正確に行っており誤りがあるとは思えません。それなのに効果が得られないというのは、上記の運動種目が私に向いていないということなのでしょうか。他に有効な運動種目がありましたらご指導ください。
(島根県 武井猛男 22才)
A

 同一の運動種目の効果が、だれにでも等しく持たらされるとはかぎりません。人間の骨格は、こまかくいえば十人十色であって、形態が少しずつちがうのものです。肩のかたちを例にとっていえば、あがり肩、さがり肩などがあり、肩の骨の大きさ、傾斜度などに各人各様、個別的な特徴があります。したがって、同じようにトレーニングを行なったとしても、形態的にいって、十人が十人とも同じような筋の発達の仕方をするとはかぎりません。

 私の推察ではありますが、あなたの肩の骨は水平よりもかなり下方へ傾斜しているのではないかと思われます。肩の骨がそのように下方へ傾斜している場合は、がいして三角筋の盛りあがりと横への発達に困難がともないます。もしも、あなたの肩の骨のかたちが私の推察どうりであれば、三角筋の発達を形態的に満足のいくものにするにはひと一倍の努力が強いられるかもしれません。誰にでも、発達のしにくい部分というものがあるのですから、たとえ、そうであっても気を落とさないでじっくり鍛えるようにしてください。

 では、私の推察が当たっているかどうかはわかりませんが、一応、前述のことを考慮して、三角筋の盛りあがりと横への発達を促す運動について説明します。

◎フロント・プレス/バック・プレス・コンビネイション(コンビネイション・プレス)

<動作>ワイド・グリップ・フロント・プレスとバック・プレスを1回ごとに交互に行います。つまり、左右のグリップの感覚を肩幅の倍くらいにしてバーベルを持ち、前からプレスして頭の後ろへおろし、後ろからプレスして前へとおろすという要領で行います。このように前後のプレスを連携して行うと、フロント・プレスとバック・プレスをそれぞれ単独で行うよりも、三角筋の横の部分に十分な刺激を与えることができます。

◎ナロウ・グリップ・フロント・プレス(ウィズ・エルボウズ・ポインティッド・アウトワーズ)

<かまえ>バーベルを1~2こぶしくらいの間隔で持ち、両肘を肩の高さで左右横へ張った状態で保持します。

<動作>かまえの状態から、両肘をできるだけ前へ出さないように留意して、バーベルをプレスします。

◎サイド・ライイング・ワン・アーム・ダンベル・レイズ・オン・インクライン・ベンチ

<かまえ>片手にダンベルを持ち、ダンベルを持っていない方を下にしてインクライン・ベンチに横向に寝ます。ダンベルは手の甲を上にして大腿部の上に保持します。

<動作>横向に寝た姿勢のまま、肘をあまり曲げないようにして、ダンベルを大腿部の位置からあげます。

<注意事項>手の甲を上にしてダンベルの水平を保ち、肩をできるだけすくめないように動作を行います。重すぎる重量を用いると、かえって動作が粗雑になり効果が半減します。

 なお、ダンベルを腕が垂直になる状態まで挙上する必要はありません。

<スタンディング・ラテラルについての注意点>

 スタンディング・ラテラルは、三角筋の横の部分を発達させるには非常に有効な種目です。あなたも、そのことを考えてこの運動を採用したのでしょうが、それにもかかわらずよい結果を得ることができなかったというのは、おそらく、運動のやり方に誤りがあったのではないかと思われます。そのことを考えて、一応、スタンディング・ラテラルにおける運動場の注意についてふれておきますから、もう一度ふれてください。

(イ)手の甲を下に向け、できるだけダンベルを水平に保って行う。

(ロ)反動を使わずに、できるだけ正確な動作で行う。加速を利用しない。

(ハ)肩を頸の方へすくめないように行う(肩をすくめると、僧帽筋に強く効いてしまい、三角筋の効果が半減する)

(ニ)背の上部を湾曲させずに、背すじを伸ばして行う。(背の上部を湾曲させると、三角筋よりも僧帽筋に運動の重点がかかってしまう)

(ホ)水平、もしくは肩よりも少し高い位置までダンベルをあげるのがよい。(正確な動作では、あまり高い位置までダンベルを挙上することはできない)

(ヘ)ダンベルをあげたとき、三角筋の発達を意図する部分が真上に向く姿勢で行う。したがって、場合によっては、上体をいくぶん前傾させた姿勢で行ってもよい。ただし、背の上部を湾曲させないように注意する。

ト腕の負担を軽くするために、肘を少しまげて行ってもさしつかえない。以上のことがらに付け加えれば、的確な刺激を与えるにはいくぶん余裕のある重量を使用するのがよく、重すぎると動作が粗雑になり、かえって、効果が半減するので注意してください。
(担当・竹内 威)

ブランクのあとのトレーニング

Q

 東京で下宿生活をしている大学生で、ボディビル歴は2年4カ月です。通学期間中は、5~6人の仲間と友人の家でトレーニングを行っていますが、休暇中は郷里へ帰えるので、その間、トレーニングも休むことになりおす。

 正月と春の休暇は期間が短いので、さほど体調に影響を感じるとは思いませんが、夏季休暇には約2カ月のブランクができるので、筋力と体位がかなり低下します。そのようなわけで、昨年の夏季休暇後には、2カ月間のブランクを取り戻そうとして、すっかりコンディションをくずしてしまいました。

 そこで、昨年のような失敗をくりかえさないために、長期のブランクがあった後のトレーニングの仕方についておたずねします。

 夏季休暇直前まで行っていた私のトレーニング・スケジュールは次の通りですので、できるだけ具体的にご指導いただきたいと思います。
記事画像1
 以上、隔日的に週3日、所要時間80~90分。
(富山県 山本 静男 21才)
A

 2カ月間もトレーニングを休止すれば、当然のことながら身体的な低下がもたらされます。長期休止による身体的な低下は、一般的な傾向として、修練年月の短い者ほど著しいといえます。しかし、修練によって一度獲得した身体的効果は、長期間のトレーニングの休止によって失われても、比較的短時間のトレーニングによって取り戻すことが可能です。

<長期休止後のトレーニング法>

 トレーニングの再開時においては、身体的な組織と能力が休止前よりも低下しているのであるから、このことを十分考慮してトレーニングを行うようにしなければなりません。つまり、初めは、休止前よりもかなり割り引いた重量と練習量で行い、日数をかけて少しずつ重量と練習量を増やしていきながら休止前の状態に戻すようにしなければなりません。

 そのためには筋力と体位が休止前の状態に戻るまでは、力を出し切るようなトレーニングのやり方をさけ、体力的にいって、使用重量と練習量を常に8分程度の範囲に止めて行うようにします。その程度のトレーニングで、からだを休止前の状態に回復させることは充分可能ですから、あえて無理なトレーニングを行う必要はありません。焦って無理なトレーニングを行うことは、筋組織の消耗を強め、かえってからだが休止前の状態に回復されにくくなり、無理の度が過ぎるときは体調をくずしてしまうことにもなります。

 長期間の休止による筋力の低下、および筋量の減少は、筋組織の細化に由来するのですから、これを以前の状態に回復させるには、それ相応に時間の経過が必要です。いかにトレーニングを再開したからといって、細化している筋を、風船をふくらますように元の状態に戻すことはできません。力を出し切らないように留意して、徐々に回復を図るように心がけてください。

 具体的な方法としては

イ再開初日は、休止による筋力の低下を調べる意味で、ごく軽い重量を使用してからだをならす程度に行う。運動種目は、各部位における主要な種目のみに止どめ、セット数は休止前より少なくする。

ロ2日目は、初日のトレーニングから判断して、さほど無理と思われない重量を使用して行う。つまり、体力的にいって八分程度と思われる重量を使用して行う。

ハ3日目以後は、筋力の回復を考慮しながら、使用重量を少しずつ増やしてゆく。(注。力を出し切ることなく常に八分程度の範囲で止めること)また、反復回数も、所定の回数にこだわらずに、無理をさけるためにときには所定の回数よりも少ない回数で止めるくらいの配慮が必要である。

二各部位における主要な運動種目の筋力が、休止前の状態に戻るまでは、補助的な種目をあまり行わない方がよい。あなたの採用種目でいえば、

<主要項目>
シット・アップ
スクワット
ベンチ・プレス
ネック・ビハインド・プレス
ベント・オーバー・ローイング
バーベル・カール
フレンチ・プレス・スタンディング

<補助的な種目>
ダンベル・ベンチ・プレス
スタンディング・ロー
ワン・アーム・ローイング
インクライン・ダンベル・カール

 ということになり、主要種目の筋力が休止前の状態に戻った部位から補助的な種目を採用し、余裕のある重量で始めるようにす。(担当・竹内 威)

胃弱を治す良い方法はないか

Q

 身長170cm、体重55kg、26才の会社員です。以前から胃が弱く、いつも満腹しないと堪えられず、よく間食もしました。

 胃を治し、体重をせめて60kgくらいに増やしたいと思って1年ほど前からボディビルを始めましたが、一向によくなりません。いまは会社で事務系の仕事に従事し、通勤は車を使っていますが、あるいは車が胃によくないのではないかとも考えております。なにか良い分法はないでしょうか。
(大阪府・Y・S)
A

 日本人に胃の弱い人が多いのは、日常生活の習慣に起因している面も多分にあると思います。あぐらを組んで座る習慣もその1つで、この姿勢はいつも前かがみになり、常に胃を圧迫していることになります。また、日本人は腹式呼吸が不得手であり、腹部の筋肉が貧弱であることも原因して、猫背の人が多く見られます。この猫背は矯正、整形することはきわめて困難です。

 また、日本人の老人に多い動脈硬化症、脂肪過多などの老人性病因は、若い頃の姿勢の悪いことも原因になっております。その理由はいくつかありますが、寝具もその一つです。

 ふかふかしたフトンやベットをいかにも豊かな生活様式だと思い違いをして、幼少期から老人にいたるまで利用していますが、金で身体の欠陥の補修はできません。むしろ病変は転移し、死期を待っているようなものです。堅い平らなベットや畳の上に薄いフトンを敷くのが一番よく、夏は板の間にゴザを敷いて寝ることも身体的機能からみると大変良いことです。

 もちろん、先天的にアミノ酸代謝機能不全による骨の傷害がある場合は別として、ボディビルダーの諸君にも姿勢が悪く、背が丸まったり脊椎の故障が生じやすい人がいます。たんにプロポーションが悪いということより、健康を害す原因になります。

 姿勢と健康との関係はいま述べたように非常に大きいので、あぐらを組むときは上体を垂直にして後ろへ引いて座る、椅子に腰かけるときは尻を適当な角度まで引く、立位のときは左右の足の間隔を7cm程度にとり膝をむりせず身体をまっすぐに保つ、というふうに日常生活の中で常に正しい姿勢を保持するように心掛けたいものです。

 さらに腹式呼吸を有益にして腹壁筋を強くすることは、腹腔内圧の調整を良くし、姿勢の矯正にも効果があります。ボディビルダーの場合、一般の体表の筋肉を発達させることに夢中となり、姿勢や生理機能を軽視しているようではスポーツと健康のバランスは破壊され、そのために胃腸障害を生じ、内臓下垂症(胃下垂)やヘルニア(腸)に罹りやすくなります。日常生活の必要最小限度の条件として心掛けたいものです。

 そのほか一般的な注意事項としては
1.消化不良の食物の摂取を極力避けること。
2.食事時間を規則正しくし、暴飲暴食を避けること。
3.薬物の誤飲、過飲を避けること。
4.神経の安静につとめる。
5.食後はしばらく右を下にして休む。
等があります。
(担当・能丸康司)

身長を伸ばすにはどうしたらいいか

Q
 現在17才、高校2年生です。ボディビルを始めて3カ月になり、いくらか筋肉はついてきました。しかし、身長が164cmと小柄で、筋肉をつけると同時に身長がもう少し伸びないものかと思案しています。どんな栄養をとり、どんなトレーニングが効果的なのか教えてください。
(北海道・斎藤靖昭)
A

 ボディビルダーの諸君はもとより、一般に、青少年期に悩む問題事象として身長があります。チビで悩み、大男で悩む、これらは第二次性徴(ホルモンの生成、分泌)によって発育する性毛、体毛、性器などとともに骨端の発達によって決定されるようです。

 各人の顔や体格が違うように、男性化現象は一般に新しい骨質の増加によって骨芽細胞を増殖させるために骨格は発達し形成するものですが、発育と成長にはカルシウム、燐、ビタミン、生成ホルモン、甲状腺ホルモンなどのバランスがとくに大切で、これらの一部が不足することによって化骨化し、障害を起こします。

 たとえば、ビタミンDの欠乏によるくる病、ブドウ球菌による骨結核(カリエス)などは成長を阻害し、病変は異物の生成によって重篤な場合もあります。

 身長の問題はいろいろの関連性があります。下垂体、性腺、副腎などのホルモン活動や、運動、栄養、眠り(神経の休養)のバランスを日常生活において最も大切にしなければなりません。とくに成長・発達期の諸君は栄養に充分留意する必要があります。それは、前記の骨組織の成長がこの時期に促進されて、やがて一定期に成長は停止されます。良質の動物性蛋白質、ビタミン、ミネラル、カルシウムの摂取は骨の発達(身長の発育)に大切な栄養源であります。

 一般に日本人の体格は、細身、肥満、小型、弱身など、諸外国に比し慎重型の傾向にあります。幼児期の偏食、親の過保護、放任、カギっ子、遊び場の少ないことなどが原因であり、大切なこの時期を親の不注意によってもたらした結果ともいえましょう。

 あなたも心に思い当るところがあるでしょう。きょうからでも遅くはありません。次の諸点を実行するように心がけてください。
1.運動量を一定にし、縄跳びを毎日50回以上実行すること。
2.ビタミン、カルシウム、蛋白質の摂取量の増加。
3.最低7時間以上の睡眠。
4.ホルモンの分秘障害をなくすため、自為行為の過度の疲労をさける。
5.姿勢に注意し、立体、坐位、直立の正しさを慣行する。
6.健全な遊戯を行う。

このほかに骨組織の生理と筋肉の作用も考え、食事の不摂生と偏食、栄養源の破壊となる物質などにとくに注意することです。

 万一成長促進がすぐれない場合、今日では成長促進のための薬物が使用されますが、これはあくまでも医師の診断を必要とすることです。薬物による成長促進とは、生命の本体である必須アミノ酸によって、食欲、発育を促進させ、栄養補給剤として使用されるものです。リジン、エルゲン、モリビタン、リジーゼなどが固有の生理作用を発揮するものです(担当・能丸康司)

やけどの跡は治らないものか

Q

 ボディビルを始めて3年、22才の大学生です。子供のとき熱湯でやけどをし、右腕に20cmくらいのケロイド状の跡が残っています。このため、夏季やコンテストになると消極的になってしまいます。なにか良い方法はないでしょうか。
(千葉・高木浩一)
A

 皮膚疾患で悩んでいる人は意外に多く、いままでにも何回か質問がありましたので、それらを含めて一般的な皮膚失患について述べることにします。

 皮膚疾患の多くは、幼児期のごっこ遊びや親の不注意が原因で、だれにも大なり小なりあるものです。コンテストに出場する、しないにかかわらず、瘢痕が目立つところにあるのは気になるものです。

 瘢痕もその面積によっては手術が可能ですが、温度の異常変化(放射能、光線、凍傷)等によって組織が破壊されており、療痕も範囲によっては専門医に相談することです。

 もし万一の健康のために、とくに火傷について説明をします。

<火傷>
第1度 紅班性火傷
第2度 水泡性火傷
第3度 壊死性火傷
第4度 炭火性火傷

 第1度、第2度の場合は、そのときの治療効果によって瘢痕もなく治療できますが、第3度では潰傷や肉芽組織が壊死におちいり、第4度になると死亡します。火傷の場合、受傷部位の体液が急激に消失し、血圧が下降します。一般に体表面積の三分の一以上が火傷すると死亡するものです。

 質問のように後遺症となった瘢痕は、色素が沈着したり潰痕化、変性壊死におちいります。治療は第1度第2度の場合は抗生物質を加えた軟膏(アズノールかステロイド)を塗布し、またリゾール浴、3%硝酸銀液、5%尿素水湿布を行います。壊死におちいった組織は酵素軟膏や植皮形成手術にて整形します。

 もし万一、火傷したときの応急手当としては5°~17°C冷水中で30分間くらい冷やします。

 火傷以外に凍傷、レントゲンやラジウム、光線、電流、日光等による皮膚炎もあります。ボディビルダーの場合よく日焼けした褐色の肌と筋肉、体格の均整は美学の要素でありますが、よくコンテストの前日などに急に紫外線ランプで無理に肌を焼いて赤味をおびたビルダーを見ることがあります。こうしたことは、日常から注意して計画的に一定の時間、一定量の日光浴で補うように心がけることが皮膚の代謝機能という点からも大切なことです。
(担当・能丸康司)

解答は'59ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・能丸康司先生
月刊ボディビルディング1974年9月号

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