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なんでもQ&Aお答えします 1974年10月号

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月刊ボディビルディング1974年10月号
掲載日:2018.07.28

僧帽筋と腰背部の発達を促したい

友人になかば強制されて昨年の7月にボディビル始めたのですが、1年経った現在、自分でも見ちがえるようなからだになり今ではボディビルを始めてよかったとつくづく思っている次第です。そしてこれからも一層トレーニングに励み、コンテストに出場できるようになりたいとも考えております。

 そこで質問ですが、僧帽筋と腰背部の発達を促すための効果的な運動種目を教えていただきたいと思います。

(山形県 猪本次郎 18歳)
A

 ボディビルを始めて1年ぐらいの人は、とかく胸や腕の発達にこだわるものですが、あなたが僧帽筋や腰背部の発達に関心をもたれたというのは、からだ全体をバランスよく発達させるという点において大へんよいことです。

<1>僧帽筋のための運動種目
僧帽筋は三角筋に付随して働く、という作用上の傾向がありますので、三角筋のための運動によっても、僧帽筋の発達をある程度は促すことができます。しかし、僧帽筋の発達をとくに期待するのならば、次に説明する運動を行う必要があります。

○シュラッグ
<かまえ>バーベルを両もも幅よりも少し広い間隔に、オーバー・グリップで持ち、立った姿勢で大腿部の前にぶら下げます。

<動作>バーベルをぶら下げた状態で、つまり、両腕を曲げないようにして、両肩をすくめるように上にあげます。この場合、ただ両肩をすくめるだけでなく、前から、あるいは後ろから回わし上げるように運動を行なっても、変わった角度からの刺激が得られるので効果がありま

○ダンベル・シュラック
 左右の手にそれぞれダンベルを持ち、体の横にぶら下げたら、バーベルの場合と同じような要領でシュラッグ(肩をすくめる動作)を行ないます。

○ハイ・プルアップ
<かまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、立った姿勢で大腿部の前にぶら下げます。左右のグリップの間隔は1~2こぶしくらいがよいでしょう。

<動作>両肘を左右横へ張るようにして、つまり、スタンディング・ローと同じ要領でバーベルを引き上げ、手首をかえさずに、ぶら下げたままの状態で、前頭部の高さくらいまで持ちあげます。

<呼吸>バーベルを引きあげながら息を吸い、下ろしながら吐く。

<2>腰背部のための運動種目
○デッド・リフト
<かまえ>両足の甲の上にバーベルのシャフトが位置するように立ち腰と膝を屈して、オーバー・グリップ、またはオールターニット・グリップ(リバース・グリップ、つまり左右の手の一方が順手、他の一方が逆手の握り方)の方法でシャフトを握る。このとき、腰の位置が肩よりも高くならないように留意し、また背の下部と腰を彎曲させないで、むしろ反らすようにします。左右のグリップの間隔は、次に説明する動作が行いやすい間隔にします。

<動作>腰と背の下部を彎曲しないように留意しながら、腰と膝を伸ばして上体を起こし、バーベルを大腿部の前まで引きあげます。バーベルを下ろす動作は、臀部を後ろへ突き出すようにして、バーベルを上げるときの動作の逆に行うようにしてください。

○スティッフ・レッグド・デッド・リフト
<動作>両脚を伸ばしたままの状態(スティッフ・レッグ)で、デッド・リフトを行います。この場合、終始背すじを伸ばしたまま行っても、あるいは、背すじを彎曲させた状態で引きあげ動作を始め、引き上げながら背すじを伸ばすように行なっても、どちらでもかまいません。ただし、効果の面では多少異なり、前者の方法は比較的下部に効き、後者は上部に強く効く傾向があります。

○ダンベルによるデッド・リフト
 右左いずれか一方の手にダンベルを持って、デッド・リフト、またはフティッフ・レッグド・デッド・リフトを行います。

 この運動による腰背部に対する効果は、右手にダンベルを持てば左側に効き、逆に、左手に持てば右側に効きます。したがって、腰背部の左右不均等な発達を是正するのに有効といえます。その場合、発達の少ない側に負荷が強くかかるように、片方の運動だけを行うという方法もあります。

 しかしながら、不均等な発達を是正するのが目的ではなく、たんに腰背部の強化種目として行う場合は、セットごとに小休止をとりながら、持ち手を変えて行うようにしてください。

<3>僧帽筋と腰背部の双方に有効な運動種目
○ハイ・クリーン
<かまえ>デッド・リフトの場合と同じようにかまえます。左右のグリップの間隔は、肩幅よりやや広い間隔がよいでしょう。

<動作>デッド・リフトの動作にスタンディング・ローのような動作を連携した動作によって、バーベルを頸のあたりまで一気に引きあげ、引きあげたなら、腰を少しおとし、腕と手首を返して肩の前で受けとめます。


下ろすときは、バーベルをいったん大腿部の前まで下ろし、次いで、落ちついた動作で、デッド・リフトのときの下ろす動作と同じ要領で、下まで下ろすようにします。


○クリーン・アンド・プレス
<動作>ハイ・クリーンの動作でバーベルを肩の位置まで持ちあげ、次いで、頭上へプレス(挙上)します。腰背部と僧帽筋にとくに効かす場合には、スティッフ・レッグド・デッド・リフトとハイ・プルアップの動作を連携した感じでバーベルを引き上げ、ゆっくりとした動作で肩の前に受けとめるようにします。そして、プレスの動作を行うときは、引きあげ動作による反動を使わないように留意することが肝心です。

 なお、この運動は、12~15回くらいの多回数で行うほうが効果的と思われ、運動中に終始、負荷を意識できるように、ゆっくりとした動作で行うことがポイントといえます。したがって、そのためにはいくぶん余裕のある重量を用いて行うようにします。
(担当・竹内 威)

トレーニングのマンネリを防ぐには

トレーニングを始めてから6カ月経ちます。初めのうちは目に見えて効果もあがっていたのですが、近頃は、あまり変りばえがしなくなりました。殊に腕と背の筋肉の感じがほとんど変わりません。開始時より、トレーニングの基本を守り、基礎的な運動種目のみを行なってきましたが、近頃になって目だつような効果が得られなくなったのはなぜでしょうか。自分では、トレーニングがマンネリになったためではないかと考えていますが、アドバイスをお願いいたします。

 開始時、および現在の体位とトレーニング・スケジュールはつぎのとおりです。

<体位> 開始時 現在
身長 171cm 171cm
体重 53kg 56kg
胸囲 83cm 89cm
上腕囲 26cm 29cm
腹囲 68cm 70cm
大腿囲 46cm 49cm

<トレーニング・スケジュール>
記事画像1
 トレーニング後の疲労感は快よいものです。
(三重県 G・Y 21歳)
A

 同じトレーニング・スケジュールを長期間続けると、筋肉に与えられる刺激が次第に弱くなり、効果があがらなくなるということは事実です。そして、そのような筋肉に対する刺激が恒常化することによってもたらされる効果の面での不本意な現象は、傾向として、筋力と体位の向上が個別的な限界に近くなるほど、厚いカベとなって現われるようになります。

 したがって、長年月の修練を積み、ビルダーとして成長した人ほど、トレーニングの効果を停滞させないために、有効な刺激をからだに与えるよう、トレーニングの内容を吟味し、変化させるなどの配慮が必要になってくるのです。

 しかし、現在のあなたのように、トレーニング開始後6カ月あまりで、しかも、ビルダーとしても身体的に未熟な段階では、トレーニングのマンネリ化ということについて、それほどこだわる必要はないでしょう。トレーニングに対する意欲をかきたてるために、多少の変化を持たすことはよいのですが、マンネリ化ということにこだわることで、トレーニングの量と強度が過度になるようなことは絶対に慎むことです。

 正直にいって、現在のあなたは、筋力的にも、体格的にも基礎的な段階を脱したとはいえません。まだまだ基礎的な運動種目によって、じっくり鍛えていく必要があります。いたずらに高度な運動種目やトレーニング法を採用することは、筋の消耗を増し、オーバーワークの状態をきたし、効果の面でかえって意に反する結果をまねくことになります。今は、ただ黙々と基礎的なトレーニングを続けることが大切であると思われます。

 しかし、どうしてもトレーニングに多少の変化を持たせたいというのでしたら、次に述べることがらを参考にして行うようにしてください。

①まず、初級者の段階で体力的に許容できる範囲の変化を与えるように配慮する。それには、種目数とセット数をむやみに多くしないようにする

②新しい種目を採用するときは、高度な種目はさけ、基礎的な種目か、あるいはそれに準ずる種目の中から選ぶようにする。そして、新しく選び出した種目を、今まで行なっていた種目に加えて行うという考えにとらわれずに、代替して行うという考えの種目に加えて行うという考えにとらわれずに、代替して行うという考えを優先させる。

③体力的な余裕があり、どうしても種目を増したいときは、全体を通じて1~2種目の増加に止どめる。その場合、新たに加えた種目のセット数を、初めのうちは少な目にし、体力的な負担をきたさないよう配慮する。

④トレーニングに変化を与えるには、種目を変える方法の他に、反復回数を変える方法もある。今まで、1セット10回の反復で行なっていたものを1セット7~8回の少ない反復回数で行うようにしたり、あるいは、反復回数を多くして、1セット12回~15回の多回数で行うようにしたりするやり方である。その場合当然のことながら、新たに採用する反復回数に合わせて、使用重量を無理のない範囲で増減することを忘れてはならない。ただし、初級者の段階では、極端な低回数(1セット1~5の回くらいの反復回数)を採用することは、直接、専門家についてトレーニングを行なうのでないかぎり慎むことである。

 また、低回数を採用するときは、消耗しすぎないように、ときにはセット数を少くして行うといった配慮も必要である。

⑤初級者の段階では、過度な消耗をともないやすいトレーニング法の採用は慎む。つまり、スーパー・セット法とかチーティング法などの方法でトレーニングを行なわいようにする。

 以上であるが、要は体力的に負担にならない範囲でトレーニングに変化を与え、内容的にも現在の段階にふさわしいトレーニングを行うことが大切です。せめて、ベンチ・プレス―55kg10回、スクワット―60kg以上で10回くらいを正確な動作で行えるようになるまでは、あまり欲ばらずにじっくりと鍛えてほしいものです。

◎トレーニング・スケジュール

<例1>新しい種目を代替して行う場合
記事画像2
(注、あなたが現在使用しているカールの重量は重すぎます。もっと軽い重量で正確に行うようにしてください)

<例2>種目を増やす場合
記事画像3
(注、初めからセット数を多くしないようにし、体力的な余裕に応じて増やしてください)

<例3>反復回数を変化させる場合(低回数)
記事画像4
(注、比較的小さい部位を鍛練する運動は、初級者の段階ではあまり回数を少なくしないほうがよいでしょう。また、ベント・オーバー・ローイングは、腰に負担が強くかかるので、少なすぎる回数を採用するのは初級者には危険です)

<例4>反復回数を変化させる場合(多回数)
記事画像5
(注、小さい部位を鍛える種目にはどちらかというと極端な多回数は適さないようです)。

 以上に述べた4例は、トレーニングの内容に変化を与えるための方法を方向的に示したものですから、全てそのとおりに行わなければならないというものではありません。場合によってはいろいろな方法を取りまぜて行なってもよく、また、必要とあれば、他の適当な種目を採用するようにしてもさしつかえありません。

◎初級者向きの運動種目。

<胸>
①ベンチ・プレス
②ダンベル・ベンチ・プレス
③ラテラル・レイズ・ライイング

<肩>
①スタンディング・(フロント)プレス
②オールターニット・プレス
③ネック・ビハインド・プレス
④スタンディング・ローイング

<背>
①ベント・オーバー・ローイング
②エンド・オブ・バー・ローイング
③ツー・ハンディッド・ダンベル・ローイング
④ラット・マシン・プル・ダウン

<腕>(上腕二頭筋)
①カール
②ダンベル・カール

<腕>(上腕三頭筋)
①ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
②ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ

<脚>
①スクワット
(注、脚の運動は、初級者の段階ではスクワットに専心するのがよい)

 その他、腰の運動種目として、デッド・リフト・ダンベル・デッド・リフト、腹部の運動としてはレッグ・レイズがあり、またふくらはぎ、手首、前腕、頸等の運動で初級者に向いたものもありますが、それらの運動は、体力的に余裕があり、かつ必要とあれば行うようにしてもよいです。ただし、その場合、全体のトレーニング量が多くなりすぎることのないように配慮する
(担当・竹内威)

胆のう炎に腹筋運動は悪いか

ボディビルを始めてまだ1カ月足らずのものです。これまでに胆のう炎を2回わずらい医者からも腹筋運動はなるべく避けた方がよいといわれました。それでいまは10回×3セットやっていますが、別に痛くもならないので5セットに増やしたいと思っています。16歳で腹囲が80cmもあるので、なんとかもっと引き締めたいと考えています。シット・アップのような腹筋運動は胆のうに悪いのでしょうか。アドバイスをお願いします。
(岐阜市・安斉英幸)
 胆嚢炎症のために腹囲を引き締めるシット・アップ運動などが思うようにできないとの質問ですが、まず、胆嚢炎症はどうして起こるのかということについてちょっとられておきます。
 一般に胆嚢炎症の病巣は、病原菌による感染で、ことにその大部分は球菌および大腸菌によって感染するものです。病原菌は腸管から胆道を経て血行的に感染します。胆管は閉塞を起こしやすく、これも胆嚢炎の原因の1つでもあります。

 胆嚢内には通常胆汁が貯蔵され、胆汁は細菌の感染に敏感に働きます。先天的に胆道が閉塞しているものもいますし、小児、幼児期に腸チフス症にかかったりすると、その病原菌が胆嚢内に入り、胆汁に繁殖し、炎症の病巣となって感染することになります。

 一般に急性胆嚢炎の場合は、粘膜面が肥厚し、胆管が閉塞され、腫瘍(おでき)ができ膿(うみ)が蓄積され粘膜面が癒痕化する場合です。これが慢性胆嚢炎に移行すると、結合組織やリンパ組織が瘢痕化し、胆汁色素は吸収され壊死に陥いります。

 また、代謝異常によっても胆嚢炎症は起こります。胆石がそれであります。コレステロールの多い栄養を摂取するビルダーはとくに注意が肝要です。胆石はビリルビン、コレステリンの蓄積によって黄疸、肝炎を併発します。腹部の膨満もあり、ビルダーの中で腹筋の弱い者はとくに食事に注意することです。

 とかくビルダーは動物性蛋白質万能のように考えがちですが、必ずしもそうではありません。むしろ各種蛋白質、炭水化物、ビタミン類をバランスよく摂取し、さらに植物性蛋白質をもっと重要視するようすすめます。

 胆嚢炎症の場合は、ごく軽い運動は結構ですが、激しいトレーニングは慎しまなければなりません。まず医師とよく相談し、早く治療してから本格的なボディビルを始めた方が賢明です。決して無理をしてはいけません。お手紙にもありましたように、軽く3セット程度が適当です。

 重量あるバーベルを持ち上げることによって、全血流時間が短く、肝臓の負担から胆嚢を圧し、さらに障害が加わるものです。胆嚢炎症の食事に対する注意としては、肝臓障害者と同様に刺激性食品、動物性食品はとくにさけるべきです。
(担当・能丸康司)

胃腸が弱くて練習ができない

 21歳の大学生です。1年ほど前からボディビルを始めました。すでに高校時代から胃腸が弱く、大学受験のとき、規則正しい食事と適当な運動を計画的に行うよう医師にもすすめられました。その後、いくらかよくなりましたが、最近また下痢や胸やけがひどくなり、練習も休みがちです。どのようにすればよいでしょうか。
(東京都・村井)
A

 消化器官の中でとくに多い病因としては胃や腸の生理機能の障害があります。口腔から咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸を経て肛門に終わる管状組織体は、付属器官である消化線の働きによって胃や腸の粘膜に酵素を分泌します。消化管は食物の通路ではありません。消化、吸収、分泌の生理機能によって、それぞれの構造は一定の条件を保っているものです。

 食道は歯の機械的作用によって咀嚼消化し、咽頭によって嚥下運動を起こし、胃は食道と連続し、時間の間隔を経て粘膜から分泌される胃液と、筋層の収縮作用から粥状となり、タンパクの成分は消化され、小腸で消化吸収されます。

 通常、口腔から肛門にいたる管状組織は、成人男子で8~10mあります。これらは腹腔内にセットされた大切な内臓器管です。栄養素は小腸下行部で吸収されるもので、小腸の働きが悪いと逞しい肉体をつくることはとても不可能です。そして、これがさらに悪化すると一生涯持病として悩む原因にもなります。したがって、消化器の生理的機能はボディビルを行うものにとって最も大切なものといえます。

 また、下痢、便秘、嘔吐、腹部膨満、疼痛といった諸症状は、自意識で止めることはできません。また、コンテストの最中に起るというような突発的症状も考えられます。

 消化器の構造は粘膜、粘膜下組織、筋層、外腹、または奨腹に分かれ、粘液質で栄養を消化吸収する働きが特徴的です。

 一般に消化器疾患にかかると、薬物などによる一時的治療をする傾向にありますが、これで完全に治るということは少なく、病変は再発するものです。ビルダー諸君も、薬物療法よりもまず食事療法で治すようにすべきです。良質の栄養素を規則正しく、しかも適量に摂取することが大切です。そのためには過剰蛋白、過剰脂肪を避け、植物性脂肪、ビタミンA、C、Dを多くとるように心掛け、さらに量的、質的に自分にあった献立表をつくることをおすすめします。
(担当・能丸康司)

痔の痛みと出血で悩んでいます

 21歳の大学生です。ボディビルを始めて3年になります。高校時代からバレーボールをやっており、現在も放課後のバレーの練習と1日2時間のジムでのトレーニングで疲れて帰ります。

2年ぐらい前から便をするとき、ときどき痛みと出血があり、練習中に軽い目まいがすることもあります。最近は毎朝痛みがあり、多分持が悪いのではないかと思い、薬局で痔の薬を買い自分で治療していますが、良くも悪くもなりません。トレーニングしていても以前より強く疲労を感ずるようになりました。なにかよい方法はないものでしょうか。
(府中市、T・S)
 日本人には痔の悪い人がとくに多いようです。痔にもいろいろな症状がありますので、まずそれらについて説明しましょう。

 消化管は口腔、食道から起こり、終末部分は直腸、肛門となっています。この直腸、肛門の働きは排泄作用であり、消化・吸収はありません。排便運動は条件反射によって起こり、障害があると便秘、下痢、失禁を起こし不愉快となります。

 直腸、肛門の病気は、排便異常が誘因となることがあります。このため、長時間の坐業、乗馬、自動車の運転手スポーツ選手に多くみられ、また、飲酒も原因となることがあります。あなたの症状では出血と痛みがあるとのことですが、その他の性状がわかりませんので、次に一般的に起こる症状について記述します。

◎持核(いぼじ)
 肛門の周囲外持核と肛門より内、直腸下部に1個または多数のこぶ状をつくります。外痔核は平素は痛みませんが、炎症によって排便時に通過障害による出血があり、長期間にわたると貧血症状を呈します。日本人の大多数の者が痔核をもっています。

<手当>安静にし、便通を整え、局所を清潔にして、刺激物、アルコール類をさけ、坐薬、軟膏を局所に使い、化学療法剤の使用によって数日間で回復します。ただ、本症と脱肛貧血、炎症のある場合は手術を要します。

◎痔裂(きれじ)

 便が固いとき、肛門の粘膜に炎症があるときなどに起こる傷がきれ痔で、初期の場合は治りますが、くり返されると浅い潰瘍をつくります。両足を大きく広げてリキんだりするスポーツ選手によく見かけます。括約筋のけいれんによって痛み、出血は痔核ほどありません。

<手当>食事療法、緩下剤で便秘の治療、坐浴入浴で肛門を清潔にし、患部を切除する手術は、2本の指を肛門に入れ括約筋を延ばすだけでよくなるものです。


◎肛門周囲炎

 直腸、肛門の粘膜下には無数の静脈が存在しています。直腸粘膜の小さな凹部から大腸菌、化膿菌、結核菌が入って炎症を起こし、排便は困難で、便意をたえず感じます。

<手当>切開と化学療法を併用する

◎痔瘻(じろう)

 肛門の周囲にろう孔が出来るもので、結核性のものが多く、痔ろうは少量のうみが出ます。痔ろうは枝状に複雑な形を呈します。

<手当>化学療法を併用し、手術でろう孔を除去します。

◎脱肛

 痔核、便秘、老人性委縮、先天性など痔疾の大半はこの脱肛です。排便時や、歩行、労働、スポーツの際肛門の粘膜が外に脱出します。通常は手指で押しもどせますが、炎症が続くと激痛、出血をともないます。

<手当>軽痛の場合は、入浴時に清潔にして押し込めば治るが、出血がともなうような場合は手術をして脱肛部を除去することです。

 以上のほかには直腸、肛門癌、鎖肛(奇形)、肛門湿疹などがあげられます。ボディビルダーの諸君はよく汗をかき、重量物を上げ、両足に力を入れてふんばったりする運動が多いので、痔疾患者も多いようです。つねに肛門部を清潔にし、定期的に検査を受ける。ことも必要です。出血が原因で悪性貧血症に罹患することもあります。またアルコール、刺激物を好む人はすでに痔疾患者かもしれません。

  8月号で説明した腸の疾患と同様に早期に回復しないとやっかいな病気であることを忘れてはなりません。終末部の排泄作用から、もっとも病原菌の多いところでもあります。 質問に、練習中に目まいがするとありますが、出血のために貧血症状を起こしているものと思います。一度専門医を訪ねてみることです。肉体が優秀であっても、病気持ちでは悩みが将来必ず弊害となります。
(担当・能丸康司)

[解答は'59ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生と慶応大学医学部法医学教室・都丸康司先生]
月刊ボディビルディング1974年10月号

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