49年度指導員認定講習会を顧みて
月刊ボディビルディング1974年10月号
掲載日:2018.07.29
日本ボディビル協会指導員審査会委員長
佐野誠之
佐野誠之
日本列島水害縦断に荒れたことしの梅雨、その梅雨空のように重くるしい空気に満ちたスポーツ界。機構改革等議論百出、心ある者よりその本質を云々されている日本体育協会の現状。また高野連の北陸地区代表選出(軟式)の頑迷さ等、スポーツ関係者の石頭に腹を立てていたらキリがないが、規則の血の通った運用を考えようとしない関係者の体質が何とかならないものだろうか。
1億総スポーツとか国民総スポーツとかうたう社会体育において看板倒れにならぬよう、この際、体協はじめ各スポーツ団体は、なすべきことは何なのか、小手先の改革ではなく、そのあり方を洗い直す必要があるのではないだろうか。
このことは他団体のことだけでなく以って他山の石となし、わがボディビル界においても大いに反省すべきことであろう。
このようなスポーツ界の現状のもと梅雨空における晴れ間のごとく、第2回全国統一指導者認定講習会および研修会、すなわち、国民健康づくり、体力づくりを旗印に、社会体育のパイオニアとして、また、地域活動の尖兵として協会活動の第一線であり原動力でもある、非常に重要な役割を果たしている指導員の養成と資質向上のための昭和49年度講習会を去る7月27、28日の両日にわたり、大阪体育大学において実施したことは意義深いものであると確信する。
本年も中島直矢教授のご配慮により大阪体育大学の理解あるご協力を得、各科目に、昨年ご指導願った各講師の先生方を再び招聘でき、講義内容も昨年とは違った点よりご教授を受けたことは、協会の方針なり姿勢なりをご理解いただけたのみならず、国民健康づくり、体力づくりの推進力として今後の協会活動をご指導ご鞭撻していただいたものと痛感、その責任の重大さを改めて反省した次第である。
まず受講者の内容をふり返ってみよう。遠く青森、九州等全国各地よりの申込者65名、当日欠席者7名、受講者58名であった。
その内容を分析してみると、昨年度認定者23名で受講者の40%を占め、本年度認定希望者35名で60%であった。これを年令的にみると、40才以上7名(12%)、30才以上24名(41%)、20才代27名(47%)で、30才以上が53%と半数以上を占めていた。
経験年数別では10年以上が12名(20%)、7~10年が25名(43.5%)、5~7年が21名(36.5%)となり、7年以上のベテランの人たちが63.5%と約3分の2を占め、各地区における中心的な人たちが多かった。
参考のために学歴別に分析すると、大学卒25%、高校卒54%、中卒11%となっているが、受講後に実施した試験成績より判断すると、必ずしも学歴と理解度とは比例しておらず、中卒11%の方たちの中には理解度良好で優秀な成績の方が何人もおり、たんなる学歴偏重の誤りを如実に示している結果がここでも出た。いかに本人の熱意と努力が大切であるかということを実証を以って示している。
経験年数別にしても同様のことが実証されており、ただ経験を積んだだけでは不充分であることが昨年と今年の2回にわたり同様の結果が出た。
つぎに本年度受講者の質的な向上ぶりが目についた。これは講習後実施した試験成績を昨年度と対比してみればよくわかる。すなわち
○優秀なるもの.........14%(昨年4%)
○優良なるもの.........14%(昨年11%)
○良好なるもの.........41%(昨年0%)
○概ね良好なるもの23%(昨年65%)
○今後一層努力を要するもの7%(昨年30%)
良好なるもの以上を見ると本年69%。昨年は15%で、理解度に雲泥の差を見ることができる。この結果は、本年度受講者の中に昨年受講したものが40%近く占めていたことも1つの原因であると思う。このことは、機会あるごとに受講(勉強)されることが、いかに自分の知的水準や能力を高め、また実力をつけるために有効であり、有益であるか実証したものと思う。
審査委員会としては、このような実績を得たことは非常に嬉ばしく、また力強く感ずるとともに、今後一層、地域活動の中心としてご健斗あらんことを期待してやまない。ここに改めて受講者各位の熱意と努力に敬意を表する次第である。
さて、全般的なことはこれぐらいにして、各科目の要点を簡単に復習してみよう。
第1日目午前8時30分集合。出席者確認、注意事項伝達後、谷口副会長の開講の挨拶に始まり、第1時限は体育学界の第一人者、加藤橘夫教授(大阪体育大学体育学部長)の講演である。
教授は本年5月、西ドイツ、ポーランドを重点にヨーロッパの体育状況を視察されたが、それらの国々における体育の考え方や現況を中心に話を進められ、欧米諸国との比較対照や体力づくりに欠くことのできない諸要素、実施上注意すべき要点を平易な中にも意味深い内容で講演された。
さらに、本講習会の意義や、ボディビルを通じての社会体育のあり方等まで言及され、昨年の「わが国における体育科学の歩み」を中軸とした講演といい、非常に意義深い内容で受講者全員大いに啓発されたことであろう。
第2時限は、体育概論の時間で、昨年同様、加藤元和教授に教えていただいた。教授のご専門である「体育の歴史と哲学」の中より、体力づくりに必要な諸要素や考え方を、古代オリンピックの歴史を中心として、現在における体力づくりと比較対照のうちに、真にあるべき姿を講義された。
昨年は体育の意義を哲学的な面より非常にわかり易く、本年は古代オリンピックの面より講義され、また、体育とボディビルの関連や注意しなければならない点を非常に格調高い難しい内容でありながら、それを極めて平易に言及された。
引き続いて第3時限。栄養についての時間である。講師は昨年もお願いした横山広之教授で、大阪市立大医学部でも後進の指導に当っておられる循環器系の権威者である。
昨年は三栄養素の化学を中心とした講議で非常にむずかしかったが、今回はエネルギー代謝を中心に、栄養と運動の関連について、知っておかなければならない重要事項を中心に講義された。すなわち、エネルギー代謝を
①基礎体力と栄養の関係
②競技能力の養成と栄養の関係
③以上の2点において、それぞれ留意しなければならない事項
を具体的な事例を引用して極めて平易に組み変えて説明された。
なにかの宣伝にある「蛋白質が足りないよ」式の考え方を持ちがちなビルダーのかたよった栄養観を本講義によって再認識されたことと思う。
栄養に関する基本的な重要事項を、エネルギー代謝面より理解できるよう工夫された内容ある講義であった。
強行スケジュールのため、遅まきの昼食休憩も最少限にとどめ、午後1時30分より第4時限の体育生理の講義を受ける。講師は昨年と同じく金子公有教育学博士で、故猪飼博士門下の第1人者である。
今回は神経系の概要を中心に運動能力面に言及された。すなわち、重要ではあるが一般にはあまり親しまれない非常に複雑な神経支配を
①神経と筋の関連について
②姿勢の制御における神経の働き
③筋収縮における刺激の伝導
④反応と反射の相違
⑤相反神経支配の概要
等々、難解な事項をかみくだいて平易に講議された。
この講義により、筋運動においては神経支配のないところに筋運動があり得ないこと、また、運動を機能面より考える場合、ビルダーにありがちな筋誇示や、筋一点ばりだけでなく、神経面がいかに重要であるかを理解されたと思う。
第5時限は「トレーニング理論」で講師は同じく金子博士である。「筋力を考える」というタイトルのもとに、目標とする体力水準についての考え方や、筋肥大の原理等を中心にして、トレーニング上注意しなければならない事項を具体的な事例をもって講義され
た。
われわれがトレーニングを実施するうえで非常に重要な事項で、とくに注意しなければならない点を具体的に、
また、現在市販宣伝されている「トレーニング・マシーン」に対する考え方や、これらの器具を使用するときとくに注意しなければならない点等にも言及され、直接トレーニングに必要な要点や取扱実施上の問題点等を教えていただいた。今後トレーニングを実施するうえにおいて大いに役立ててもらわなければならない内容の講義であった。たんなる経験主義だけでは不充分なことを受講者一同認識したことと考える。
第2日目、第1時限は午前9時より中島直矢教授によるスポーツジャーナルの講義により始まった。
毎日新聞運動部長を勤められたジャーナリストとしての経験を活かされた講義は、簡明な中にも重要なポイントを分かり易く講義された。このことは受講者がそれぞれの地域活動を紹介したり、行事の経過発表等の文を作成するのに大いに役立つことと考えている。
第2時限は「社会体育について」講師は社会体育やレクリエーションの研究で知られる池田勝教授である。
現在わが国で社会体育といわれているものの真の意義と実態を、その発生と変遷を通じて、分かり易く講義された。その中で、本年5月、加藤橘夫学部長と同行されたヨーロッパ視察、特に西ドイツ、ポーランドの現状と比較対照されながら、社会体育を実際に推進していくために必要な諸事項や注意しなければならない事項等を具体的な例を引用され、そのあり方や考え方さらに推進していくうえでの実践的な方法等を講義された。
この講義は、われわれがボディビルの指導に当る場合、その考え方、進め方、あるいは持っていき方を考えるうえに、具体的に示された事例の中に非常に有益なことが多く、直ちに引用させていただける内容のものであった。
第3時限は鷹野健次教授による「心と身体」についての講義の予定だったが、教授が中国視察という事情のため変更のやむなきにいたり、この時間を私が受持つことになり、「健康についての考え方」というタイトルで、身体的要因についての問題点、およびとくに注意しなければならない事項について概要的に話し、午前中の日程を終了した。
午後は協会講師担当の時間で、大阪ナニワ・クラブ伊集院明也コーチ(1級公認指導員)による「初心者コースに対する協会統一見解」の解説をお願いした。とくに虚弱体質者に対して実施する場合の注意事項等を説明、各問題点について質疑応答を実施した。
以上、講習日程終了後、しばらく休憩し、前半、後半の2回にわけて各1時間ずつ「体育概論」「体育と栄養」「体育生理」「社会体育」「トレーニング理論」の5科目につき試験(レポート形式)を実施した。
今回も試験を通じて本講習会の講義内容をどの程度理解したかを判定するために行なったもので、たんに試験成績だけで合否を決めるというのではなく、試験を通じて、自己の現在における基礎学の知識度や理解度を知り、自己反省をしていただき、今後のあり方なり自己啓発に資せんがためのもので一般における選抜試験とは多少考えを異にしていることを了解願いたい。
今回の講習会にもとずく認定決定は遅くとも10月4日の全国理事会までにはする予定であることを附記しておく。
本年もまた2~3の地区で地方協会の行事と重なり、参加に不都合を生じてしまったことをお詫びいたします。来年度もご協力をいただく大阪体育大学との関係上、7月末の土・日を予定していますので、昨年ならびに本年、地方協会の行事と重なり参加に不都合を生じた地方協会は、来年度は行事日程をご配慮のうえ多数参加されんことを望みます。
文献等で勉強されて理解し難い点も直接講義を受けていると「あァーそうか」と理解できることも多く、また、直接講師の先生に質問して教えていただくこともできますので、認定を受けたからもう講習会や研修会は受けなくてもよいというのではなく、できるだけ多く参加されんことを望みます。このことは、回を重ねて受講することの必要性を今回の試験結果も示していると確信するからです。
講習会を、たんに数日の講習とひきかえに認定証を渡すだけであったり、指導員の頭数を増やすだけに終わるのではなく、その活用を考え、講習会を通じてお互いに意見交換をし、意志の疎通をはかり、打って一丸となってボディビルの今後の普及発展に努力していきたいと考えています。
各位の賛同とご協力を望む!!
なお、今回は協会関係者以外の方より問合わせや受講希望もあったが、本講習会受講資格が協会規定で定められており、さらに認定問題とも関連があるので、その趣旨を説明、ご了解のうえ一応受講をお断りいたしましたが、この点ここに改めて本誌面をかりてご了解を得たくお願いいたします。
今後、講習会の運営について、広く正しい普及のため、なんらかの方法を考慮し、ご希望にそえるよう努力しなければならないと痛感しております。
1億総スポーツとか国民総スポーツとかうたう社会体育において看板倒れにならぬよう、この際、体協はじめ各スポーツ団体は、なすべきことは何なのか、小手先の改革ではなく、そのあり方を洗い直す必要があるのではないだろうか。
このことは他団体のことだけでなく以って他山の石となし、わがボディビル界においても大いに反省すべきことであろう。
このようなスポーツ界の現状のもと梅雨空における晴れ間のごとく、第2回全国統一指導者認定講習会および研修会、すなわち、国民健康づくり、体力づくりを旗印に、社会体育のパイオニアとして、また、地域活動の尖兵として協会活動の第一線であり原動力でもある、非常に重要な役割を果たしている指導員の養成と資質向上のための昭和49年度講習会を去る7月27、28日の両日にわたり、大阪体育大学において実施したことは意義深いものであると確信する。
本年も中島直矢教授のご配慮により大阪体育大学の理解あるご協力を得、各科目に、昨年ご指導願った各講師の先生方を再び招聘でき、講義内容も昨年とは違った点よりご教授を受けたことは、協会の方針なり姿勢なりをご理解いただけたのみならず、国民健康づくり、体力づくりの推進力として今後の協会活動をご指導ご鞭撻していただいたものと痛感、その責任の重大さを改めて反省した次第である。
まず受講者の内容をふり返ってみよう。遠く青森、九州等全国各地よりの申込者65名、当日欠席者7名、受講者58名であった。
その内容を分析してみると、昨年度認定者23名で受講者の40%を占め、本年度認定希望者35名で60%であった。これを年令的にみると、40才以上7名(12%)、30才以上24名(41%)、20才代27名(47%)で、30才以上が53%と半数以上を占めていた。
経験年数別では10年以上が12名(20%)、7~10年が25名(43.5%)、5~7年が21名(36.5%)となり、7年以上のベテランの人たちが63.5%と約3分の2を占め、各地区における中心的な人たちが多かった。
参考のために学歴別に分析すると、大学卒25%、高校卒54%、中卒11%となっているが、受講後に実施した試験成績より判断すると、必ずしも学歴と理解度とは比例しておらず、中卒11%の方たちの中には理解度良好で優秀な成績の方が何人もおり、たんなる学歴偏重の誤りを如実に示している結果がここでも出た。いかに本人の熱意と努力が大切であるかということを実証を以って示している。
経験年数別にしても同様のことが実証されており、ただ経験を積んだだけでは不充分であることが昨年と今年の2回にわたり同様の結果が出た。
つぎに本年度受講者の質的な向上ぶりが目についた。これは講習後実施した試験成績を昨年度と対比してみればよくわかる。すなわち
○優秀なるもの.........14%(昨年4%)
○優良なるもの.........14%(昨年11%)
○良好なるもの.........41%(昨年0%)
○概ね良好なるもの23%(昨年65%)
○今後一層努力を要するもの7%(昨年30%)
良好なるもの以上を見ると本年69%。昨年は15%で、理解度に雲泥の差を見ることができる。この結果は、本年度受講者の中に昨年受講したものが40%近く占めていたことも1つの原因であると思う。このことは、機会あるごとに受講(勉強)されることが、いかに自分の知的水準や能力を高め、また実力をつけるために有効であり、有益であるか実証したものと思う。
審査委員会としては、このような実績を得たことは非常に嬉ばしく、また力強く感ずるとともに、今後一層、地域活動の中心としてご健斗あらんことを期待してやまない。ここに改めて受講者各位の熱意と努力に敬意を表する次第である。
さて、全般的なことはこれぐらいにして、各科目の要点を簡単に復習してみよう。
第1日目午前8時30分集合。出席者確認、注意事項伝達後、谷口副会長の開講の挨拶に始まり、第1時限は体育学界の第一人者、加藤橘夫教授(大阪体育大学体育学部長)の講演である。
教授は本年5月、西ドイツ、ポーランドを重点にヨーロッパの体育状況を視察されたが、それらの国々における体育の考え方や現況を中心に話を進められ、欧米諸国との比較対照や体力づくりに欠くことのできない諸要素、実施上注意すべき要点を平易な中にも意味深い内容で講演された。
さらに、本講習会の意義や、ボディビルを通じての社会体育のあり方等まで言及され、昨年の「わが国における体育科学の歩み」を中軸とした講演といい、非常に意義深い内容で受講者全員大いに啓発されたことであろう。
第2時限は、体育概論の時間で、昨年同様、加藤元和教授に教えていただいた。教授のご専門である「体育の歴史と哲学」の中より、体力づくりに必要な諸要素や考え方を、古代オリンピックの歴史を中心として、現在における体力づくりと比較対照のうちに、真にあるべき姿を講義された。
昨年は体育の意義を哲学的な面より非常にわかり易く、本年は古代オリンピックの面より講義され、また、体育とボディビルの関連や注意しなければならない点を非常に格調高い難しい内容でありながら、それを極めて平易に言及された。
引き続いて第3時限。栄養についての時間である。講師は昨年もお願いした横山広之教授で、大阪市立大医学部でも後進の指導に当っておられる循環器系の権威者である。
昨年は三栄養素の化学を中心とした講議で非常にむずかしかったが、今回はエネルギー代謝を中心に、栄養と運動の関連について、知っておかなければならない重要事項を中心に講義された。すなわち、エネルギー代謝を
①基礎体力と栄養の関係
②競技能力の養成と栄養の関係
③以上の2点において、それぞれ留意しなければならない事項
を具体的な事例を引用して極めて平易に組み変えて説明された。
なにかの宣伝にある「蛋白質が足りないよ」式の考え方を持ちがちなビルダーのかたよった栄養観を本講義によって再認識されたことと思う。
栄養に関する基本的な重要事項を、エネルギー代謝面より理解できるよう工夫された内容ある講義であった。
強行スケジュールのため、遅まきの昼食休憩も最少限にとどめ、午後1時30分より第4時限の体育生理の講義を受ける。講師は昨年と同じく金子公有教育学博士で、故猪飼博士門下の第1人者である。
今回は神経系の概要を中心に運動能力面に言及された。すなわち、重要ではあるが一般にはあまり親しまれない非常に複雑な神経支配を
①神経と筋の関連について
②姿勢の制御における神経の働き
③筋収縮における刺激の伝導
④反応と反射の相違
⑤相反神経支配の概要
等々、難解な事項をかみくだいて平易に講議された。
この講義により、筋運動においては神経支配のないところに筋運動があり得ないこと、また、運動を機能面より考える場合、ビルダーにありがちな筋誇示や、筋一点ばりだけでなく、神経面がいかに重要であるかを理解されたと思う。
第5時限は「トレーニング理論」で講師は同じく金子博士である。「筋力を考える」というタイトルのもとに、目標とする体力水準についての考え方や、筋肥大の原理等を中心にして、トレーニング上注意しなければならない事項を具体的な事例をもって講義され
た。
われわれがトレーニングを実施するうえで非常に重要な事項で、とくに注意しなければならない点を具体的に、
また、現在市販宣伝されている「トレーニング・マシーン」に対する考え方や、これらの器具を使用するときとくに注意しなければならない点等にも言及され、直接トレーニングに必要な要点や取扱実施上の問題点等を教えていただいた。今後トレーニングを実施するうえにおいて大いに役立ててもらわなければならない内容の講義であった。たんなる経験主義だけでは不充分なことを受講者一同認識したことと考える。
第2日目、第1時限は午前9時より中島直矢教授によるスポーツジャーナルの講義により始まった。
毎日新聞運動部長を勤められたジャーナリストとしての経験を活かされた講義は、簡明な中にも重要なポイントを分かり易く講義された。このことは受講者がそれぞれの地域活動を紹介したり、行事の経過発表等の文を作成するのに大いに役立つことと考えている。
第2時限は「社会体育について」講師は社会体育やレクリエーションの研究で知られる池田勝教授である。
現在わが国で社会体育といわれているものの真の意義と実態を、その発生と変遷を通じて、分かり易く講義された。その中で、本年5月、加藤橘夫学部長と同行されたヨーロッパ視察、特に西ドイツ、ポーランドの現状と比較対照されながら、社会体育を実際に推進していくために必要な諸事項や注意しなければならない事項等を具体的な例を引用され、そのあり方や考え方さらに推進していくうえでの実践的な方法等を講義された。
この講義は、われわれがボディビルの指導に当る場合、その考え方、進め方、あるいは持っていき方を考えるうえに、具体的に示された事例の中に非常に有益なことが多く、直ちに引用させていただける内容のものであった。
第3時限は鷹野健次教授による「心と身体」についての講義の予定だったが、教授が中国視察という事情のため変更のやむなきにいたり、この時間を私が受持つことになり、「健康についての考え方」というタイトルで、身体的要因についての問題点、およびとくに注意しなければならない事項について概要的に話し、午前中の日程を終了した。
午後は協会講師担当の時間で、大阪ナニワ・クラブ伊集院明也コーチ(1級公認指導員)による「初心者コースに対する協会統一見解」の解説をお願いした。とくに虚弱体質者に対して実施する場合の注意事項等を説明、各問題点について質疑応答を実施した。
以上、講習日程終了後、しばらく休憩し、前半、後半の2回にわけて各1時間ずつ「体育概論」「体育と栄養」「体育生理」「社会体育」「トレーニング理論」の5科目につき試験(レポート形式)を実施した。
今回も試験を通じて本講習会の講義内容をどの程度理解したかを判定するために行なったもので、たんに試験成績だけで合否を決めるというのではなく、試験を通じて、自己の現在における基礎学の知識度や理解度を知り、自己反省をしていただき、今後のあり方なり自己啓発に資せんがためのもので一般における選抜試験とは多少考えを異にしていることを了解願いたい。
今回の講習会にもとずく認定決定は遅くとも10月4日の全国理事会までにはする予定であることを附記しておく。
本年もまた2~3の地区で地方協会の行事と重なり、参加に不都合を生じてしまったことをお詫びいたします。来年度もご協力をいただく大阪体育大学との関係上、7月末の土・日を予定していますので、昨年ならびに本年、地方協会の行事と重なり参加に不都合を生じた地方協会は、来年度は行事日程をご配慮のうえ多数参加されんことを望みます。
文献等で勉強されて理解し難い点も直接講義を受けていると「あァーそうか」と理解できることも多く、また、直接講師の先生に質問して教えていただくこともできますので、認定を受けたからもう講習会や研修会は受けなくてもよいというのではなく、できるだけ多く参加されんことを望みます。このことは、回を重ねて受講することの必要性を今回の試験結果も示していると確信するからです。
講習会を、たんに数日の講習とひきかえに認定証を渡すだけであったり、指導員の頭数を増やすだけに終わるのではなく、その活用を考え、講習会を通じてお互いに意見交換をし、意志の疎通をはかり、打って一丸となってボディビルの今後の普及発展に努力していきたいと考えています。
各位の賛同とご協力を望む!!
なお、今回は協会関係者以外の方より問合わせや受講希望もあったが、本講習会受講資格が協会規定で定められており、さらに認定問題とも関連があるので、その趣旨を説明、ご了解のうえ一応受講をお断りいたしましたが、この点ここに改めて本誌面をかりてご了解を得たくお願いいたします。
今後、講習会の運営について、広く正しい普及のため、なんらかの方法を考慮し、ご希望にそえるよう努力しなければならないと痛感しております。
【谷口副会長】
【加藤橘夫体育学部長】
【加藤元和教授】
【横山広之教授】
【金子公宥教授】
【中島直矢教授】
【池田勝教授】
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