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'74ミスター日本コンテスト展望
優勝は石神か須藤か糸崎か

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月刊ボディビルディング1974年10月号
掲載日:2018.07.05
とき:10月5日12時30分開始
ところ:大阪毎日ホール
 第20代日本一のタイトルをかけた、1974年ミスター日本コンテストを40日あまり後にひかえた8月25日、松戸市民館でNABBAミスター・ユニバース・コンテストに派遣する日本代表選抜大会が盛大に行われた。出場選手8名は、いずれも昨年のミスター日本コンテストの時よりさらにいちだんと成長していた。

 とくに上位3名の選手の成長ぶりはいちじるしく、協会がミスター日本と派遣選手とを分離し、選抜大会によって派遣選手を決めるようにした意味、およびそのねらいが、昨年の杉田選手、本年決定の宇戸選手ともにミスター日本獲得時よりいちだんと充実した内容で選ばれたという結果を持って如実にこれを示した。

 このように選手の意欲と質的向上をもたらしたことは、われわれボディビル関係者にとって非常に嬉しい限りである。選抜大会に特別ゲストとして来日したジム・モリス('73ミスター・アメリカ)と比較して、クラス別の差はあっても決して損色を感じさせない宇戸選手の充実ぶりは、きっとロンドンにおいても良い成績をあげてくれることであろう。

 一連の地方大会、実業団大会、選抜大会、ミスター・アポロ等を観戦して、本年度のミスター日本コンテストを推測してみると、質的内容において非常に見応えのある大会となることはまちがいない。

立直り素晴らしい石神

 まず今回の予想をズバリいうならば石神、須藤、糸崎の3選手が表彰台にのぼることは間違いないと思う。過日行われた第1回ミスター関西に優勝したときの石神を見て、その立ち直りの見事さに驚かされた。おそらくその後も大会目指して調整に全力投球しているにちがいない。

 須藤、糸崎両選手の成長は、選抜大会で見るごとく、他を大きく引き離した感じで、前述の石神、須藤、糸崎のその後の調整次第でまったく予断を許さない。

 ではこの3選手についてもう少し詳しく見てみよう。

 石神日出喜選手は、昨年度優勝候補にありながら、大会に姿を見せず一抹のさびしさを感じさせたが、今回は県協会とか本部推薦としてではなく、初心にかえり、一昨年、杉田選手とミスター日本を争ったとき以上に、心身共に充実成長し、断然他を引き離してミスター関西を獲得、いち早く大会出場を表明したが、その努力と熱意は素晴らしく、これこそトップ・ビルダーだとの感を深くした。

大型ビルダーとしての須藤

 須藤孝三選手は、昨年石神選手の欠場で絶好のチャンスと思われたが、宇戸選手の驚異的努力の成果に追い抜かれてしまったが、その後1年、さらに一回り大きくなり、それにデフィニションも加わって着実に成果をあげており、まだまだ成長する可能性を秘めた大型ビルダーとしての期待を一層深めてきたことは非常に心強い限りで、石神選手とのガップリと組んだ四つ相撲は見応えのあるものとなろう。

 糸崎大三選手は前記2選手に比べて色の白さが損をして迫力を弱めている感があるが、そのプロポーションの良さは抜群で、1つの風格が出てきたように思う。昨年表彰台に立ったことが自信につながり、今度こその努力をより一層高めたためであろう。石神、須藤両選手にいかに肉迫するかが見ものである。

 以上、バランスよく発達した筋肉と定評あるデフィニションに加えて、下半身も充実した石神選手。大型ビルダーとしてのスケールの大きさに、さらにスゴみの出てきた須藤選手。プロポーションの美しさでは随一の好漢糸崎選手。これら3選手の激突が本年最大の魅力であろう。審査員の先生方がいずれに軍配をあげるか楽しみである。
【石神日出喜選手】

【石神日出喜選手】

【須藤孝三選手】

【須藤孝三選手】

【糸崎大三選手】

【糸崎大三選手】

【長宗五十夫選手】

【長宗五十夫選手】

【加藤一男選手】

【加藤一男選手】

【榎本正司選手】

【榎本正司選手】

まれにみる前半戦の激突

 次に前期の3選手を追うものとして決勝進出を目指して火花をちらして闘う選手たちを予想してみよう。

 決勝進出者12名中、いま述べた3名を除き、残る9つの席を争うものは、これまた近来にない激突が予想される九州地区から順次東へ追ってながめてみよう。

 重量あげから転向、その進境著しい高橋威選手(長崎)と、野性味溢れる牧島進一郎選手(北九州)は、それぞれミスター西日本、ミスター九州両大会で活躍した本年度九州のホープである。また、往年の小笹選手をしのばせる寺川和昭選手(住友金属)は、西日本、実業団等で活躍の強豪、昨年は姿を見せなかったが本年は活躍してくれるだろう。人柄の良さで定評のある知名定勝選手(沖縄)と、以上4名がまず九州勢として独特の持ち味を示してくれることだろう。

 次に中国・四国であるが、京都から広島に移った奥田孝実選手。四国の木村秀俊選手がどこまで食い込めるか。

 関西をながめると長宗五十夫、中田米三郎、山部正の兵庫勢、木本五郎、塚本猛、鉾之原尚の大阪勢、それに京都の坂井敏夫、以上7選手の健闘が見ものである。

 中部へくると、ミスター中部日本、ミスター実業団で善戦の野崎清重(富山)、阿野田英生(四日市)、梅村輝雄(トヨタ)の実業団のベテラン3選手が目につく。とくに阿野田選手の年齢を超越して若い世代への挑戦がファンをわかせるにちがいない。

 関東以東では、宮畑豊、加藤一男両選手の東京勢、石川長男(神奈川)、昨年アポロで優勝した岩手の清水岩雄選手、それに本年度のアポロで活躍した榎本正司、三浦巌一の両選手があげられる。とくに、アポロで優勝した榎本選手がどこまで上位に迫るか、ダークホースとして注目に値する。

 東北勢については資料不足のため、清水選手以外はあげなかったが、ダークホースの出現を期待したい。

 以上、九州勢4名、中国・四国勢2名、関西勢7名、中部勢3名、関東勢5名、東北1名の計22名の選手たちが、最初にあげた石神、須藤、糸崎の3選手と12のポストを争う前半戦の魅力が本大会の特徴となろう。
月刊ボディビルディング1974年10月号

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