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なんでもQ&Aお答えします 1977年9月号

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月刊ボディビルディング1977年9月号
掲載日:2018.07.21

上腕二頭筋と肩をよくするには

Q
ボディビル歴は5年,自宅でトレーニングを行なっています。まじめにトレーニングを続けてきたかいがあり,今ではビルダーとしてけっこう見られるからだになったと自分なりに思っています。来年は県のコンテストに出場してみようと考えています。そこで,次の2点のことがらについてお尋ねします。
①上腕二頭筋の盛りあがりをよくするには,どのような運動を, どのように行なったらよいでしょうか。
②肩の前の部分に集中的に効く運動種目をご紹介ください。
 以上の2項目についてお答えいただきたいと思います。なお,所有している器具はバーベル・シャフト2本, ダンベル・シャフト2本,プレート〈大小とりそろえて) 150kg,フラット・ベンチ,インクライン・ベンチ(自家製の腹筋台,デクライン・ベンチ兼用1台), スクワット・ラック(自家製1台)です。たいていの器具は自分で作りますので,このほかに必要なものがあれば教えてください。
(青森県 丹野良雄 自営24才)
A
 自宅でコツコツと5年間もトレーニングを続けることは大へんなことだと思います。これからもがんばってください。では①の質問からお答えします。

①上腕二頭筋の隆起をよくするには
上腕二頭筋の隆起をよくするためには,ニー・カールやベント・フォワード・カールなども有効ですが,できることなら,プリーチャー・ベンチを用いた運動も行うようにするとより効果的です。ニー・カールやベント・フォワード・カールについては,5年のキャリアからしてご存知のことと思いますのでここではプリーチャー・ベンチを用いて行う運動についてのみ説明していきます。たいていの器具は自分で作るとのことですから,プリーチャー・ベンチも雑誌や専門書を参考にしてこしらえてください。できれば板の部分の傾斜を変えられるように工夫してください。
 プリーチャー・ベンチ・カールとはプリーチャー・ベンチの上に上腕部を固定して行うカールのことですが,これにも多様なやり方があります。たとえばバーベルを用いる方法,両手にそれぞれダンベルを持って行う方法,片手だけにダンベルを持って行う方法等がありますが,初めは自分に最もしっくりした方法を選んで行えばよいと思います。
 運動そのもののやり方としては,ベンチの傾斜を変えたり,上腕部をできるだけ下方へ伸ばして行なったり,肩をすくめるような状態で動作を行なったりというように,これまたいろいろなやり方があります。
 ベンチの傾斜を強めて行う場合は,どちらかといえば上腕二頭筋の中央あたりから肩のつけ根に寄った部分に強く効きます。したがって,この部分をとくに発達させたい場合は,ベンチの傾斜を強めて行うようにします。とくに上部に強く効かしたいときは,ベンチの傾斜を垂直に近いくらいにして,肩をうしろ上方へすくめるようにして行うとよいようです。
 ベンチの傾斜をゆるやかにして行う場合は, どちらかといえば上腕二頭筋の付着部(前腕に近い部分)に強く効きます。したがって,上腕二頭筋の隆起を付着部に近い部分からきわだたせてよくするには,傾向としてベンチの傾斜をゆるやかにして行うのがよいようです。その場合は,上の方に効かせる場合とはちがって,肩を下前方へさげ,上腕部をできるだけベンチの上に深く差し入れた状態で行うのがよいと考えられます。
 以上がプリーチャー・ベンチ・カールを行う際の要点ですが,いずれの場合も,筋の伸縮を意識して,ていねいな動作で行うことが大切です。上部に近い部分の発達をとくに促したい場合は,上腕二頭筋がより短い状態になるまで完全に収縮させ,付着部に近い部分の発達を促す場合には,できるだけ上腕二頭筋を伸張させるように意識して運動を行うようにしてください。
〔プリーチャー・ベンチ・カール〕

〔プリーチャー・ベンチ・カール〕

②肩の前の部分を発達させるには
この部分の発達を促すには, フロント・レイズか,ナロウ・グリップによるフロント・プレスを行うのが効果的です。では,それからの運動のやり方を説明します。


◎フロント・レイズ(フォワード・レイズ)
<かまえ>
バーベルをオーバー・グリップで持ち,大腿部の前にぶらさげて立つ。
<動作>
両腕を伸ばしたまま,前方から頭上へ持ちあげる。真上まであげないで,斜め上方でとどめるようにするほうが三角筋の発達には効果的なようである。また,この運動は両手の間隔(両肘の間隔)を狭くするほど,傾向として肩の前の部分に効くようになる。

◎ナロウ・グリップ・フロント・プレス・ウイズ・アームズ・パラレル
<かまえ>
両手の間隔を1~2こぶしくらいにしてバーベルを持ち,両腕の前腕がクビの前で垂直、かつ並行になるようにかまえる。
<動作>
両肘をできるだけ左右へ開かないように留意してバーベルを挙上する。バーベルを挙上したときに両腕が伸びきらなくてもよいが,動作はできるだけていねいに行う。
 以上ですが,②③は双方とも,重量的にいくぶん余裕のあるものを用いて正確,かつていねいな動作で行うようにしてください。なお,三角筋の前の部分に集中的に効かすには,グリップに力を入れないで,バーベルを手のひらで軽く支持するようにして動作を行うのが効果的です。

初・中級者向きの腹部の運動は

Q
ボディビル歴は約1年です。
現在は隔日的に週3日のスケジュ一ルでトレ一ニングを行なっています。雑誌などでみますと,腹部の運動だけは毎日行うほうがよいと書かれていますが,1年ぐらいの経験者の場合でもあてはまりますか。また,普通のシット・アップとレッグ・レイズのほかに,初・中級者向きの腹部の運動があったら教えてください。
( 東京郎太田浩社員19才)
A
腹部の運動だけは毎日行った方がよいか,ということですがお答えするのに大へん難しい質問です。実際には,そのように行なっている人もたくさんいますが,その良否について簡単にお答えすることは困難です。それぞれの場合に応じて,その良否を判断すべきだと思いますので, 一応,参考までにその良否を判断するための基礎的な考え方について述べておくことにします。


①腹部の脂肪をおとすのが目的の場合
一般的にいって,腹部の脂肪をおとすのが目的の場合は,腹部の運動を毎日行うのがよいと考えられています。つまり,腹部の脂肪をおとすには,腹部の運動の頻度を多くするのが効果的だというわけです。そのような考え方から,他の部分の運動は1日おきとか2日おきでも,腹部に限って毎日行うとか,中には,1日に2回も3回も行う人もいます。
 たしかに腹部の脂肪をおとすには腹部の運動を行う頻度を多くするほうがよいということはいえますが,だからといって,むやみに多くすればよいといったものでもありますん。つまりオーバー・ワークにならない範囲で行うようにすることが肝心です。
 全身的なオーバー・ワークはもちろんのこと,腹部の筋肉が局部的な修練過度になるようなことも避けなければなりません。要するに,全身的にも局部的にも,正常疲労のかたちで,消耗した体力が回復される程度に,腹部の運動の頻度を定めることです。
 なお,正常疲労のかたちで,疲労したからだを回復させるためには,運動時の負荷の大きさも無関係ではありません。つまり,運動の負荷を大きくすると,筋の消耗が強くなるので,腹部の運動の頻度を多くする場合には,疲れたからだが,正常疲労のかたちでなかなか回復しなくなります。
 したがって,腹部の運動の週間頻度を多くする場合には,シット・アップやレッグ・レイズの際の傾斜を弱くするなどの配慮もときには必要です。また,おもりを使用して運動を行うのであれば,同様な意味で,そのウェイトを軽減する必要もあるでしょう。


②腹筋そのものを発達させるのが目的の場合
腹筋そのものを発達させて大きくするには,運動の頻度をやたらに多くするよりは運動時の負荷を強めて行うほうがよいように思われます。つまり,腹筋を発達させてより大きくするには腹筋に強い刺激を与えることが必要であり,運動の週間頻度を多くしていくというよりは,腹筋の筋力が向上するにつれて,運動時の負荷を漸増するのが目的に合っているように考えられるからです。なお,腹筋の発達を促すためには,一般的なシット・アップやレッグ・レイズを運動負荷を大きくして行うというだけではなく,ローマン・チェア・シット・アップやツイスティング・シット・アップ,あるいはボディ・リバーなどの趣きを異にした種目を採用することも必要です。
 しかし,いずれにしても負荷を強くしたり,運動種目を増やして腹筋の運動を継続していくときは,腹筋の消耗が深くて強いものになります。したがって,運動の週間頻度を多くしすぎると,疲労が完全に回復されないままに次回のトレーニングを行うことにもなるので,その点は充分注意しなければなりません。
 もとより回復カには個人差があるので,いちがいに毎日行なってはいけないと決めつけることはできませんが,腹部の発達をより促すための特別な強化コースでトレーニングする場合にはその翌日は腹部のための強化種目を休むようにするほうがよいでしょう。かりに,腹部の発達をより大きく促したいということに加えて,①で述べた腹部の脂肪をおとしたいという目的があったとしても,毎日行うのは慎しむほうがよいでしょう。そのような場合には,週間頻度をせいぜい4~5回にして,腹部の運動の内容を日によって変えて,強弱をつけて行うのがよいでしょう。
 つまり,腹筋の発達を促すために比較的強い刺激を与えるための運動を行う日と,皮下脂肪をおとすために比較的軽い運動負荷で反復回数を多回数にして行う日とを別けて行うようにするのがよいでしょう。もちろんその場合でも,腹筋の発達のための強化コースを実施した次の日は,腹筋の運動は休むように日取りを決めるのがよいでしょう。
〔ボディ・リバー〕

〔ボディ・リバー〕

〔クロス・ベンチ・シット・アップ〕

〔クロス・ベンチ・シット・アップ〕

◎腹筋のためのスケジュール例

◎腹筋のためのスケジュール例

では次に,普通のシット・アップやレッグ・レイズ以外の,比較的,初・中級者向きの腹部の運動をいくつか紹介します。


①ベント・ニー・シット・アップ
<かまえ>
傾斜した腹筋台に,両膝をそろえて90度くらいまげた状態で頭の方を下にして仰臥し,足首を固定する。
<動作>
両膝を90度ぐらいに屈したままの状態で,普通のシット・アップと同じような要領で動作を行う。
<効果>
主に腹直筋。


②ツイスティング・シット・アップ
<かまえ>
傾斜した腹筋台に頭の方を下にして仰臥し,足首を固定する。
<動作>
普通のデクライン・シット・アップに,上体のひねりを加えた動作を行う。つまり,上体を左右いずれかにひねりながら倒し,ひねったまま起こす。または,ひねらずに上体を倒し,起こしながらひねるなどの動作を行う。
<効果>
腹直筋,外腹斜筋。


③ クロス・ベンチ・シット・アップ
くかまえ>
上体をうしろへ倒したときに,ベンチと体が交差した形になるように,横向きにベンチに腰をかける。両足はパートナーに押えてもらうか,パートナ一がいない場合は,あらかじめバーベルをベンチと平行に置いて,そのバーベルのシャフトの下に足を差入れて固定する。
< 動作>
上体をうしろへ倒していき弓なりになるまで十分に倒したなら起こして元へ戻す。上体を起こしたときに,腹筋に負荷がかからなくなってしまうまで起こさないようにする。つまり,完全に起きあがらないようにする。
<効果>
腹直筋。
〔V・シット〕

〔V・シット〕

〔トランク・ツイスト〕

〔トランク・ツイスト〕

④ トランク・カール
<かまえ>
床または平らなベンチの上に両脚を伸ばして仰臥する。両足はべつに固定しなくてもよい。
< 動作>
背の下部が床(またはベンチ)から離れない範囲で,頭と肩を床(またはベンチ)から浮かす。
<効果>
腹直筋,とくに上部。


⑤Vシット
<かまえ>
床に両脚を伸ばして仰臥する。
<動作>
臀部を支点にして体でV字型をつくるように,上体と脚を同時にあげる。つまり,シット・アップとレッグ・レイズをいっしょにした動作を行う。頭のうしろで両手を組み合わせるようにしなくてもよい。
<効果>
主に腹直筋。


⑥シーテッド・レッグ・レイズ
<かまえ>
床,またはベンチの端に両脚を伸ばして坐り,上体を少しうしろへ倒し,両手をうしろ手について上体を支える。ベンチの端に腰をかける場合は,両脚を水平よりもやや下げる。
<動作>
上体をそのままの状態にしたまま,脚だけを上へできるだけ高くあげる。その際,両脚lはなるべくまげないように留意する。
<効果>
主に腹直筋


⑦ニー・スラスト
<かまえ>
シーテッド・レッグ・レイズと同じように,床,またはベンチの端に坐る。ベンチの端に腰をかける場合は,両脚を水平に保つ。
<動作>
両膝を屈して胸の前に位置させたら,両脚を前方へ水平に伸ばす。負荷を強めるには,足首からスネにかかるようにプレートを平らに置くとよい。この場合,スネの部分にタオルなどの当てものをする。
<効果>
主に腹直筋。とくに下部から中央の部分。


⑧サイド・ベンド
くかまえ>
片手だけにダンベルをぶらさげ,両脚を少し開いて立つ。
<動作>
上体を前後に傾けないように留意しながら,左右,横へ屈伸する。1セットごとに交互にダンベルを持ちかえて行うようにする。
<効果>
主に外腹斜筋。左手にダンベルを持って行うときは右側。右手にダンベルを持てば左側の外腹斜筋に効く。


⑨トランク・ツイスト
<かまえ>
スクワットと同様に,バーベルを肩にかつぎ,肩幅よりやや広く両足を開いて立つ。ただし,スクワットの場合よりは,ずっと軽い重量を用いる。
<動作>
両足のつま先の位置を動かさないようにして,体を左右へ交互にひねる。このとき,上体を傾斜させないように留意する。また,余裕のない重量を用いて無理な動作を行うと腰を痛めるおそれがあるので厳につつしむこと。
< 効果>
外腹斜筋の広範囲な強化。
一一X一一一一X一一一

以上が,初・中級者向きの腹部のための運動ですが, これらを採用するにあたっては,いま述べた中から2~3種目を選んで採用するようにするのが無難です。
 なお,腹部の運動は全般的に無理をすると腰を痛めるおそれがあるので,そのことをよく自覚して行うようにしてください。
(解答= 1959年度ミスター日本, NE協会指導部長・竹内威先生)

砂糖,果糖,蔗糖,はちみつ

Q
本誌2月号の「最近話題の栄養食品」の記事の中で,果糖について「砂糖は果糖とぶどう糖からできているが,化学的に分離して果糖の白い結晶をとり出せるようになった。体内で変化するスピードが早いため……以下略」とありましたが私の手元にある某蜂密本舗のパンフレットには「ハチ密の主成分は天然の果糖とブドウ糖であるから,砂糖の精分(蔗糖)と違って胃腸に負担をかけずそのまま体内に吸収されます」と書いてあります。
 この2つの文章を読むと果糖と砂糖(庶糖)は別のもののように感じられますが,糖分の種類と性質をわかりやすく説明してください。
(徳島県 奥山登〉
A
糖分の中で代表的なものとしては,砂糖, (蔗糖),ぶどう糖,果糖,乳糖,水あめなどがありますが,まずこれらについて簡単に説明します。

①砂糖
一一庶糖ともいい,ぶどう糖50%と果糖50%が結合したものです。一般に,白砂糖,角砂糖,グラニュー糖などとしてひろく使用されています。三温糖は精白の程度が少ないので,やや着色していますが,カルシウムや鉄が少量含まれます。黒糖はほとんど精製されていないので,カルシウムや鉄がいっそう多く含まれており望ましいものです。


②ぶどう糖
一一いもやとうもろこしのでんぷん類を分解してつくられる場合が多く,値段も比較的安価です。甘味度は砂糖の約65%。砂糖にくらべて吸収が早いので,スポーツマンの飲料や,街で売っているドリンク剤に用いられます。

③果糖
一一果物やはちみつの甘さの主成分で,甘味度は砂糖の1.4倍。ぶどう糖と同様に吸収が早く,エネルギーにすぐ変わるので,スポーツマンの体力強化,疲労回復によいとされています。甘味度が強いので少量の使用ですむところから,女性の美容食にも用いられます。

④乳糖
一一午乳やスキムミルクに含まれる糖で,甘さは砂糖の約10%。甘くないので薬品粉末や錠剤に使われます。消化はあまりよくないのでー般には使われない。

⑤水あめ
ーーでんぷんを分解してできる糖で,ぶどう糖が主成分。麦芽糖とも呼ばれる。

一一X―ーXーー

以上が代表的な糖で, このほかにガラクトースやマンノース,アラピノースなどの糖があります。還元麦芽糖水飴(マルチトール)は学問的には「糖アルコール」とも呼ばれています。
さてご質問の「はちみつ」は,果糖が主成分で,ぶどう糖,蔗糖などが同時に含まれています。消化吸収されやすくエネルギーに変わりやすいので疲労回復などにもよく,また,微量ながらミネラルやミタミンも含まれるので好ましいわけです。

 さらに糖尿病などの人に対して砂糖やぶどう糖は血糖値(血液中のぶとう糖量)を上昇させるが,果糖やマルチトールは上昇させないので,望ましいとされています。

 以上のような理由から,精製された白砂糖より,はちみつは健康にいいわけで,健康食品コーナーなどでズラリと販売されているわけです。

 ただし,はちみつでも食べすぎると過剰な糖分は皮下脂肪に変わります。また,消化吸収が早いといっても「砂糖とくらべて格段の差があるわけではない」といわれています。つまり,砂糖でも体内で消化吸収されて果糖とぶどう糖に分解され,エネルギー化し,疲労回復などに役立つのです。

 最後にはちみつを選ぶときの注意としては,レーベルをよくみて「純粋」の文字が入り,産地や花の名前が書かれているものが良いのです。水あめを混入した粗悪品も出廻っていますので気をつけてください。はちみつを放置しておくと白いザラザラした結晶が出るのは果糖の結晶です。良い品質の証拠ですから心配はいりません。
(解答=健康体力研究所・野沢秀雄〉
月刊ボディビルディング1977年9月号

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