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身長を伸ばす食事法

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月刊ボディビルディング1977年11月号
掲載日:2018.08.18
健康体力研究所 野沢秀雄

首を伸ばしても効果はない

 数年前、「長身機」という、背を伸ばす機械を使用中に、誤ってベルトが首にひっかかって窒息死!というショッキングな事故が全国各地でおこり、たいへん騒ぎになったことがある。
 この機械は、首から背中にかけて脊柱のひずみを正し「身長がぐんぐん伸びる」と宣伝販売されていたものだ。1日に何回もこの機械にぶら下ったものの、発育期を過ぎた人には効果がほとんどなく、メーカーに返金を求める使用者が多かったという。
 身長が伸びるのは、大腿骨・脛骨・腓骨・上腕骨など、主として長骨といわれる骨の先端部の軟部組織、つまり骨端線が分裂や増殖をくり返し、骨を上下に伸ばしていくことによる。
「座高はあまり変わらないが、下肢の長さに個人差があって、背の高い人と低い人に分かれる」と一般にいわれているのは事実である。したがって、首やあごを引き伸ばしてもあまり効果はない。

背を伸ばすのに有効な食べ物

 では、どのようにすれば有効に背を伸ばせるだろうか。方法は2つ、食事法と運動だ。運動についてはいずれ述べるとして、ここでは食事法のヒントを述べよう。
 まず骨の成分となるタンパク質、とりわけアミノ酸のリジンが発育に欠かせない。おすすめしたい食品とそれに含まれるタンパク質の量は次のとおりである。
牛肉・鳥肉……100g中約20gがタンパク質。脂肪が少ないのが利点。
豚肉……100g中約17gがタンパク質。ビタミンB₁が多く含まれる。
さばの缶詰……1缶220g中約40gがタンパク質。100円当りもっとも安くタンパク質がとれる。リジンやビタミンEも多い。
プロティンパウダー……スプーン1杯(7g)で5.8gのタンパク質とカルシウム、ビタミン類が同時にとれる。
納豆……1包80g中13.2gのタンパク質がとれる。大豆よりも消化がよくビタミンB₂が豊富である。
牛乳……200cc1本中に5.8gのタンパク質を含み、かつ200mgのカルシウムがとれる。
 また、カルシウムの多い食品として小魚の佃煮、丸干いわし、油揚げ、がんもどき、スキムミルク、さんま、わかさぎ、ゴマ、黒砂糖などを心がけて食べればよい。

プロティンパウダーの使い方

 背を伸ばすのに有効な食べ物の中にも出てきたプロティンパウダーは、とくに逞しい体の発達を目指すビルダーには関心が深いと思うので、これの正しい使い方を記しておこう。
 プロティンパウダーは、「サプルメントフード」という名前で呼ばれるように、栄養補給食品です。つまり、毎日の食事を基本にして、それだけでは不足しがちの「タンパク質」「ビタミン」などを補助的に摂取するという考え方です。
 ところが、「たくさん食べればいいだろう」と、やたらに量をふやしてプロティンパウダーを食べる人をみかけます。ふつう、1カ月に1缶(約480g)が基準になっていますが、ビルダーの中には、月に2缶とか3缶、あるいは誇張されているせいか1日に300~400gも食べる、という例が伝わったりします。
 タンパク質も食べすぎれば、単に排泄されるだけでなく、肝臓で脂肪にかわり、脂肪ぶとりの原因になります。またその過程で、イオウやアンモニアなどの有害物質を生じるので、必要以上に食べるのは決して有利ではありません。
 タンパク質の必要量は、当然、年令や労働量によって変わります。懸命に1日に数時間もトレーニングする第一線のビルダーなら多く要求されますが、普通程度のトレーニングをする人が同じだけ食べてもまったく無駄です。また、トレーニングする日もしない日も同じように食べることも意味がありません。
 厚生省が昭和50年度に発表した年令別1日当りのタンパク質必要量によると、15~17才が110g、18~19才が105g、20~30才代が95g、40~50才代が93gとなっています。これを参考にして1日に食べるプロティン量を計算すればよいでしょう。
 1例を示すと、普通の人は三度三度の食事から、約80gのタンパク質をとっています。20才代で毎日トレーニングしている人なら、あと15gの純タンパク質をとればいいわけです。そのためには、プロティンパウダーを1日に大さじ山もり約2~3杯とればいいことになります。
 もちろん、身長や体重や筋肉量に個人差があり、多少の増減はあります。「体重1kg当り2g」という方法で計算すれば、体重60kgの人は1日に120gとなり、プロティンパウダーに依存する量はもう少しふえます。それでも1日に大さじ6杯(約40g)~7杯(50g)とればよいわけです。この場合、日常の食事も普通の人よりは多いはずですから、プロティンパウダーとしては1日に4~5杯(約30g)でよいでしよう。
月刊ボディビルディング1977年11月号

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