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なんでもQ&Aお答えします 1977年11月号

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月刊ボディビルディング1977年11月号
掲載日:2018.08.19

初・中級者に欠かせない基礎種目

Q ボディビル歴1年3カ月、仲間と会社でトレーニングを行なっています。効果のほどはまずまずといったところですが、仲間との競争意識もあって、近頃ではからだづくりに欲が出てきました。来年あたりは全員でコンテストに出場しようではないかと仲間内で語り合っています。
 しかし、しっかりとした技術指導をしてくれる人がいないので、その点が私たちの悩みです。そこで次の2つのことがらについてお尋ねします。
①ボディビル歴6カ月から1年6カ月くらいの初・中級者のトレーニングにおいて、できるかぎり採用したほうがよいと考えられる基礎的な運動種目とトレーニング・コース例をご教示ください。
②ベント・アーム・プルオーバー・アンド・プレスという運動種目の名を耳にしたのですが、この種目のやり方と効果についてご説明ください。(宫城県 M·Y生 会社員 24才)
A 質問にお答えする前に一言申しあげます。しっかりとした技術指導をしてくれる人が身じかにいないとのことですが、どこかトレーニング・センターの指導員のコーチを受けたらよいと思います。最近では、たいていのトレーニング・センターには1日会員の制度がありますので、それを利用されることをおすすめします。
 では①の質問からお答えします。
 練習者の修練年月だけを基準にして採用すべき基礎的な運動種目を論じるわけにはいきませんが、一応の目安として<表1>を参考にしてください。

◎トレーニング・コースの具体例
<1>修練期間が6カ月以上経過したといえども、体力的にある段階(<2>の項を参照)に到達していない人の場合は、表に示してあるA(またはA')とB(またはB')に該当する種目の範囲でトレーニング・コースを作るのが無難といえます。
☆トレーニング・コース(例1)
 ①シット・アップ
 ②スクワット(またはダンベル・スクワット)
 ③ベンチ・プレス(またはダンベル・ベンチ・プレス)
 ④ベント・オーバー・ローイング(またはダンベル・ベント・オーバー・ローイング)
 ⑤フロント・プレス(またはダンベル・プレス)
 ⑥カール(またはダンベル・カール)

 以上の種目を行えば、顎を除いて一応はからだを全体的に鍛錬することが可能です。
<2>運動に対する熟練度が増し、そのうえ、体力がある段階に達したならば、従来の採用種目に加えて1~3種目ほどの運動を漸時採用するようにします。なお、体力的な段階を測る目安として、次のことを基準にして、それを初級者から中級者への関門とするのもよいでしよう。

○べンチ・プレスにおいて、体重の80%以上の重量を用いて、正しいフォームで正確に10回反復可能。
○スクワットで、体重の90%以上の重量を用いて、正しいフォームで正確に10回反復可能。

☆トレーニング・コース(例2)
 ①シット・アップ
 ②スクワット
 ③ベンチ・プレス
 ④ラタラル・レイズ・ライイング
 ⑤ベント・オーバー・ローイング
 ⑥フロント・プレス
 ⑦ビハインド・ネック・プレス
 ⑧カール

<3>いま述べた<2>の段階から一層の体力的な向上が認められたならさらに漸次採用種目を増やす。
☆トレーニング・コース(例3)
 ①シット・アップ
 ②レッグ・レイズ
 ③スクワット
 ④カーフ・レイズ
 ⑤ベンチ・プレス
 ⑥ダンベル・ベンチ・プレス
 ⑦ビハインド・ネック・プレス
 ⑧スタンディング・ロー
 ⑨ベント・オーバー・ローイング
 ⑩ベント・アーム・プルオーバー
 ⑪カール

<4>体力の向上につれて採用種目を増加していけば、やがて1日ではとうてい消化しきれないトレーニング量になる。したがって、そのような状態に至ったなら、上級者がよく用いているスプリット・ルーティン(分割法)を採用してトレーニングを行うようにするのがよいでしょう。ただし、この段階は初・中級者の範囲を越えるので、ここではそのトレーニング・コース例は省略します。

  ――×――×――×――
 つぎに②のベント・アーム・プルオーバー・アンド・プレスについての質問についてお答えします。
☆運動法(写真参照)

<かまえ>ベンチから頭を出し、ベンチの端に頸のうしろが当るように仰臥し、肩幅よりいくぶん狭い間隔にオーバー・グリップで握ったバーベルを、両腕を屈した状態で、胸から上腹部のあたりに保持する。そして次に述べる動作の際中に臀部が浮かないように、両脚をベンチにからませる。

<動作>腕を曲げたままバーベルを顔から頭(頭は床の方へのけぞらしておく)の上を通過させて床の方へおろす。
 両肘はなるべく開かないように留意し、おろしきったときに、ワキを締めるようにして、左右の上腕部の内側(直立姿勢の手をさげた状態でワキに触れる部分)を上方へ向けないように留意する。両肘を開きすぎたり、上腕部の内側を上方へ向けすぎたりしすぎると肩を痛めるおそれがある。ときには脱臼することもある。関節がかたくて上述の動作がうまくできない場合は、左右のグリップの間隔を狭くして行うとよい。
 バーベルを安全な動作でできるだけ深くおろしたなら、おろしたときの逆の動作を行なって元の位置に戻す。
 次に、その位置からバーベルをナロウ・グリップ・ベンチ・プレスの要領で上方へ1回プレスし、プレスしおわったら再びかまえの位置からベント・アーム・プルオーバーを行う。要するに、ベント・アーム・プルオーバー・アンド・プレスとは、ベント・アーム・プルオーバーとナロウ・グリップ・ベンチ・プレスを交互にくり返して行う運動です。
 【注】頭をベンチの端から出さずに、ベンチの上に載せた姿勢で行う方法もあるが、その場合は、いくぶん使用筋の動きが異なるが、運動の要領はだいたい同じです。

<呼吸>バーベルを床の方へおろしながら息を吸い、バーベルを元の位置に戻しながら息を吐く。バーベルを元の位置に戻したならその状態で息を吸い、上方へプレスしながら息を吐く。次いで、バーベルをおろしながら息を吸い、おろしきったところで息を吐く。

<効果>大胸筋のバルクを増し、胸郭の拡張を促す。また、広背筋と上腕三頭筋の発達を促すのにも顕著な効果がある。したがって、この運動の能力を実質的に(チーティングなどを用いないで)向上させることは上体のバルク・アップにもつながります。80~90kgの重量で10回行えるようになれば40cm前後の上腕囲も夢ではありません。
<表1>基礎的な運動種目と効果をおよぼす部分

<表1>基礎的な運動種目と効果をおよぼす部分

ベント・アーム・プルオーバー・アンド・プレス

ベント・アーム・プルオーバー・アンド・プレス

胸が発達しない原因はなにか?

Q ボディビル歴は5年です。今年はじめて県のボディ・コンテストに出たのですが、結果は予選で落ちました。自分ではかなりいけるのではないかと考えていたのですが、これもしょせん「井の中の蛙」で、まだまだ決勝進出は無理だということがよくわかりました。
 コンテスト終了後、審査員の方に意見を求めたところ、胸の発達具合が筋量的にも形状的にも未熟であり、最大のウィークポイントであるといわれました。
 自分でもある程度そのことはわかっていましたので、この1年間、胸のトレーニングに最も力を入れてやってきましたが、ほとんど効果が得られませんでした。ちなみに私が行なってきた胸のためのトレーニング法は次のとおりです。
<胸のトレーニング・コース>

<胸のトレーニング・コース>

 以上ですが、トレーニングはもちろんスプリット・ルーティーンを採用しています。そして、胸の運動と同じ日に肩の運動(4種目で合計18セット)と上腕三頭筋の運動(4種目で合計14セット)を併せて行なっています。なお、もう1つのコース(腹・脚・背・上腕二頭筋・首・下腿で合計14種目、トータル53セット)と交互に週3日ずつ行なっています。
 トレーニング後の疲労感は、かなり強度なもので、金曜日、土曜日などはぐったりします。効果のほどは、肝心の胸を含めて全体的に低調でした。低調というよりも、むしろゼロといったほうがいいかもしれません。
 そこで質問しますが、私の場合、からだ、とくに胸部が発達しなかった原因はどこにあるのでしょうか。栄養の面については、バランスを考えて食事をとり、蛋白質は1日に140g(体重1kg当り2g)は摂るようにしています。睡眠も平均7~8時間はとっています。先月受けた健康診断の結果でも全く異常は認められませんでした。
 したがって、自分では、運動の効果が得られなかった原因は、やはりトレーニングのやり方にあったと考えています。不備な点の指摘とトレーニング上の適切なアドバイスをお願します。
<現在の体位>(I・H 地方公務員 26才)

<現在の体位>(I・H 地方公務員 26才)

A 一応、栄養状態と健康状態に問題はないものとして、効果の得られなかった原因をトレーニング上の問題にしぼって考えてみることにします。
 まず、不備な点として考えられることは次のようなことがらです。
 ①トレーニング量が多すぎる
 ②トレーニングの重点が不確定
 ③休養が不十分
 以上の3点ですが、問題をもう少し掘り下げて考えてみることにしましょう。

①トレーニング量が多すぎる
 トレーニング量の適、不適は、もとよりトレーニングの週間頻度や休養などの諸事項と関連して考えなければなりませんが、あなたの場合、そのようなことをぬきにしても多すぎるような気がします。
 トレーニングの効果は、すでに何回も説明しましたように超回復というかたちで得られるのですから、運動をたくさん行うことが必ずしもよい結果をもたらすということにはなりません。つまり、次回のトレーニング時までに、超回復が十分可能であるように推量してトレーニング量を定めることが必要です。しかも、あなたのように、同一種目を週3日の頻度で行なっている場合には、ことさらそのようなことが強くいえます。そして、いまの週3日の頻度を週2日にしたとしても、それでもなおトレーニング量が多すぎるような気がします。
 もちろんこのことは、現時点においてのことで、ずっと後になって、体力が大幅に向上した場合はまた別の問題です。この際、思いきってトレーニング量を減らしてみるのも必要なことではないかと思います。案外よい結果が得られるかも知れません。

②トレーニングの重点が不確定
 あなたのトレーニング法を拝見すると、トレーニングの焦点がぼけていて、極論すれば、からだを疲れさすために運動を行なっているように見うけられます。
 現在のあなたの段階では、同じ日に3つの部分を徹底して集中トレーニングをするのは少し無理があるようです。あなた自身は胸部のみを集中トレーニングしていると考えておられるかも知れませんが、実際には他の部分に対してもかなり強度のトレーニング量を課しているといえます。
 したがって、結果的にはトレーニングの焦点がぼけてしまって、ただいたずらに体力のみが消耗するばかりで、部分的にも、全身的にも効果が得られない原因になっているのではないかと思われます。
 胸部のトレーニング量そのものについても検討する必要がありますが肩と上腕三頭筋のための運動量を少なくしてみてはいかがでしょうか。また、ベンチ・プレスは最も重い重量を使用して実施するときにトレーニングの重点を置くようにすればよいと思います。つまり、あなたの場合なら、70kgまでは意識的に筋力の発揮をいくぶんセーブして行い、体力と気力が充実したところで最高重量の80kgを行うように心がけたらよいと思います。

③休養が不十分
 あなたの場合、効果の得られなかった最大の原因はこの点にありそうです。
 トレーニング量が少なければ、各コースを週3日ずつ行なってもさしつかえない場合もあるが、しかし、ある程度からだが発達し、さらにそのうえの発達を望むようになると、トレーニングの量と強度が必然的に増加します。そうすると、傾向として週3日ずつの週間頻度ではトレーニングが負担になってきます。もちろん、中には回復力が並はずれて強いという例外の人もあります。
 ボディビルを続けていくうえでビルダーが最も犯しやすい誤りは、自分がその例外の1人だと思い込むことです。そのために、いつしか無理なトレーニングを行うようになり結果的には筋肉の発達をさまたげてしまうことになります。早く大きく発達させたいというのが人情でしょうが、それをぐっとこらえて、地道なトレーニングを行うことが成功につながります。
解答=1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
月刊ボディビルディング1977年11月号

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