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なんでもQ&Aお答えします 1977年12月号

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月刊ボディビルディング1977年12月号
掲載日:2018.08.21

腕橈骨筋と肘筋の発達を促したい

Q ボディビル経験3年、自宅でトレーニングしています。からだの発達は良いのですが、腕橈骨筋の起始部(筋頭部)の発達と肘筋の発達がおもわしくありません。そのため、これからはこの部分に重点をおいてトレーニングしようと思っています。

現在の所有器具は、バーベル、カーリング・ベンチ、ダンベル、ローイング・バーです。これらの器具を使って腕橈骨筋の起始部と肘筋を集中的に鍛える運動があったら教えてください。(富山県 M・I 学生)
A 質問が専門的なのには驚きました。腕橈骨筋は上腕二頭筋と上腕筋の運動に、また、肘筋は前腕部の伸筋群の運動に主に協応して働くので、それらの運動を行うことによってある程度発達を促すことができます。しかし、とくに腕橈骨筋と肘筋を発達させようとするならば、やはり、あなたの考えておられるようにそのための専門の運動を行う必要があると思います。

では、そのための運動について説明しましょう。

<腕橈骨筋のための運動>

腕橈骨筋の発達を促すには、なんといってもリバース・カールが有効なようです。したがって、リバース・カールのバリエーションについて述べることにします。

①リバース・カール

左右のグリップの間隔を両ももの幅ぐらいにして、バーベルをオーバー・グリップで持ち、立った姿勢で大腿部のあたりからオーバー・ハンドによるバーベル・カールを行う。上腕筋に効かすには、両肘を少し開きながらバーベルをあげるほうがよいが、腕橈骨筋に効かすには、両肘を内側へ引き締め、左右の前腕が常に平行を保つようにして行うのがよい。〔写真参照〕
〔リバース・カール〕

〔リバース・カール〕

②リバース・ハーフ・カール

いま説明したリバース・カールの全動作の半分の範囲(ハーフ・レインジ)で行うやり方。つまり、下から上までの完全な動作を行うのではなく、前腕が水平になった状態から上半分、もしくは下半分だけの動作を反復するリバース・カールのことである。ただし、腕橈骨筋の起始部に近い部分の発達をとくに促したい場合は、上半分の動作を行うのがよいようである。

③リバース・カール・プリーチャー・ベンチ(プリーチャーズ・リバース・カール)

プリーチャー・ベンチ(カーリング・ベンチ)の上に左右の上腕を載せて行うリバース・カール。リバース・ハーフ・カールを行うようにしてもよい。

<肘筋のための運動>

肘筋は、いま説明したリバース・カールによっても、ある程度、発達を促すことができますが、どちらかといえば、グリップをタテにした状態で行うカールが有効のようです。したがってそのようなカールに部類する運動を紹介することにします。

①サム・アップ・カール

ダンベルを縦に持ってカールを行う。つまり、親指(サム)を上にした状態でカールを行うことになるのでこの名がある。〔写真参照〕この運動をカーリング・ベンチの上に上腕を載せた状態で行なってもよいがその場合はカーリング・ベンチの傾斜をできるだけ垂直に近い状態にして行うのがよいようである。
〔サム・アップ・カール〕

〔サム・アップ・カール〕

②ゾットマン・エクササイズにおけるからだの後方で行うカール

この運動のやり方は、75ページの高田豊広さんからの質問「ゾットマン・エクササイズのやり方とその効果について」への解答欄に記載してありますので、それを参考にしてください。

テニスの補強運動としてのウェイトトレーニング

Q 私は1年ほど前から硬式テニスをやっています。ボディビルのキャリアは2年ぐらいですが、自分なりに基礎体力もついていると思われますので、これからはテニスの補強運動としてのウェイト・トレーニングをやっていきたいと考えています。

そこでお伺いします。週に2~3日の頻度でトレーニングをするつもりですが、どのような運動を、どのようなスケジュールで行えばよいか、できるだけ具体的にご教示ください。

なお、トレーニングは自宅で行なっていますが、所持しているボディビル用具は次のとおりです。

バーベル・シャフト
ダンベル・シャフト
プレート65kg
フラット・ベンチ
腹筋台(傾斜度を変えられる)
エキスパンダー

(神奈川県 服部敬二 会社員 23才)
A 結論的にいうと、脚と腰と上肢の強化を主眼としたトレーニングを行う必要があるといえます。とはいえ、脚と腰と上肢のパワーをアップさせるにしても、他の部分を併せて強化する必要があるので、その点を考慮したスケジュールでトレーニングを行うようにしなければなりません。

運動種目の個々の説明は後まわしにして、先にスケジュール例を記述しますので、種目の採用にあたっての参考にしてください。

<スケジュール例>
①ツイスティング・シット・アップ
②トランク・ツイスト
③サイド・ベンド
④ライイング・クロスオーバー
⑤ストレート・アーム・プルオーバー・ウイズ・ダンベル
⑥クリス・クロス・ラタラル
⑦ストレート・アーム・フロント・プル・ウイズ・エキスパンダー
⑧リスト・カール
⑨リバース・リスト・カール
⑩ストラッドル・ジャンプ
⑪フライイング・スプリット
⑫ジャンピング・スクワット

【注】実際のトレーニングにおいては上記の種目を全て採用しなければならないということではないので、その点を誤解しないこと。各人の体力と状況に応じて、必要と思われる種目から採用するようにする。ベンチ・プレスやスクワットなどのボディビル的な種目は、必要とあらば体力的に余裕の感じられる範囲で行うようにしてもよい。リスト・カール、およびリバース・リスト・カールの代りに、手首の運動としてレバレッジ・バー・エクササイズを行うようにしてもよい。握力を強化する意味で、ハンド・グリッパーやゴムまりを用いて手指の開閉運動を行うのもよい。各種目のセット数は、翌日に疲労が残ることのないように、全身的な疲労をも考慮して定める。

では、個々の種目について説明します。

①ツイスティング・シット・アップ
<動作>普通のシット・アップと同じように腹筋台に寝て、(イ)上体を左右いずれかにひねりながら倒し、ひねったまま上体を起こす。(ロ)または、ひねらずに上体を倒し、起きながら上体を左右どちらかへひねる。いずれの場合も、通常は、1回ごとに上体を逆方向へひねる。〔写真参照〕
〔ツイスティング・シット・アップ(左)シット・アップ・タッチング・ザ・オポズィット・ニー(右)〕

〔ツイスティング・シット・アップ(左)シット・アップ・タッチング・ザ・オポズィット・ニー(右)〕

なお、この運動に似た種目でシット・アップ・タッチング・ザ・オポズィット・ニーという運動があるので、ついでに説明しておくことにする。<動作>両膝を90度前後に屈した状態にして腹筋台に寝、両手を頭の後ろで組み合わせ、上体をひねりながら起こし、起こしたときに一方の肘が反対側の膝に触れるようにする。つまり、1回ごとに上体を反対方向へ交互にひねりながら起こし、左肘と右膝、右肘と左膝が触れるようにする。〔写真参照〕

<効果>腹直筋と外腹斜筋の強化。

②トランク・ツイスト

<動作>バーベルを両肩にかつぎ、肩幅よりやや広く両足の間隔を拡げて立ち、両足の位置を動かすことなく体を左右へ交互にひねる。余裕のない重量の使用は腰を痛めるおそれがあるので注意。

<効果>腹部と腰部の強化(上体を捻転する力の強化)。

立った姿勢ではなくベンチに腰掛けた姿勢で行う方法もあるが、その場合は運動の効果が側腹部のあたりに集中する。

③サイド・ベンド

<動作>片手にだけダンベルを持って両足を少し開いて立ち、上体を前後に傾けないように留意しながら、左右、横へできるだけ深く腰を屈伸する。1セットごとに交互にダンベルを持ち変えて行う。

<効果>外腹斜筋の強化。左手にダンベルを持つ場合は右側、右手にダンベルを持てば左側の外腹斜筋に効く

④ライイング・クロスオーバー

<動作>左右それぞれの手に持ったダンベルを、ベンチに仰臥した姿勢で上方へ差しあげ、その位置から左右の腕をそれぞれの反対側の体側へ向けて倒すようにしておろす。おろすときに腕を曲げてもよい。

この運動は、両腕が胸の上で交差したかたちになるので、1回ごとに交互にちがう腕が手前にくるように行う。

また、この運動をラタラル・レイズ・ライイングと連係した動作で行う方法もあるが、テニスの補強運動としては、むしろそのような方法で行うのがよいようである。

<効果>三角筋、上腕三頭筋、上背部の筋の強化。ラタラル・レイズと連係して行う場合は大胸筋の強化にも有効。

⑤ストレート・アーム・プルオーバー・ウイズ・ダンベル

<動作>両手にそれぞれ持ったダンべルを、ベンチに仰臥した姿勢で腕を垂直に伸して胸の上方に差しあげ、その位置から肘を伸したまま頭ごしに床の方へおろし、十分におろしたなら、肘をまげないように留意して元の位置へあげ戻す。おろすときに両手の間隔を広げすぎると肩を痛めるおそれがあるので注意。なお、この運動は、ダンベルを頭ごしに床の方へおろしながら息を吸い、あげ戻しながら息を吐くように行う。

<効果>大胸筋、広背筋、上腕三頭筋の強化。
〔リスト・カール〕

〔リスト・カール〕

〔リバース・リスト・カール〕

〔リバース・リスト・カール〕

〔レバレッジ・バー・エクササイズの4種類の運動〕

〔レバレッジ・バー・エクササイズの4種類の運動〕

⑥クリス・クロス・ラタラル

<動作>立った姿勢で、左右の手にそれぞれぶらさげたダンベルを、腕をできるだけ伸したまま、横から頭上へあげ、連続した動作で円を描くようにして、両腕を体の前で交差させるようにしておろす。以上の動作を逆に行なってもよい。また、1回ごとに横からの動作と前からの動作を交互に行うようにしてもよい。

<効果>三角筋と僧帽筋の強化。

⑦ストレート・アーム・フロント・プル・ウイズ・エキスパンダー

<動作>エキスパンダーの両端の把手を両手でそれぞれ握り、両腕を前方へ水平に伸してかまえ、その姿勢から両腕を伸したままエキスパンダーを左右、横へ引き拡げる。引き拡げるときに、エキスパンダーを傾けないように留意する。拡げるときにエキスパンダーを傾けると、胸郭がいびつになるおそれがあるので注意。

<効果>三角筋、上背の諸筋、上腕三頭筋の強化。

⑧リスト・カール

<動作>バーベルを1~2こぶしくらいの間隔にアンダー・グリップで持ち、ベンチに腰を掛け、手首から先をのぞかせるようにして左右の前腕をそれぞれの大腿部の上に固定し、その状態で手首だけのカール運動を行う。

また、横向きに置いたベンチの手前に両肘を付き、前腕をベンチの上に載せて行うやり方もあります。〔写真参照〕

<効果>手首の強化。

⑨リバース・リスト・カール

<動作>バーベルをオーバー・グリップで持ってリスト・カールを行う。〔写真参照〕

<効果>手首の強化。

⑩ストラッドル・ジャンプ

<動作>両足をそろえた(あるいは間隔を狭くとった)姿勢から上方へできるだけジャンプし、左右へ開脚して着地する。着地したら再びジャンプして両足を元の位置へ戻す。以後これを連続して行う。

<効果>跳躍力の強化。

⑪フライイング・スプリット

<動作>ジャンプ運動の1種であり、上方へ跳びあがり、前後に開脚して着地をするように行う。1回ごとに前後の脚を交互にする。

<効果>跳躍力の強化。

⑫ジャンピング・スクワット

<動作>スクワットの状態(しゃがんだ姿勢)から上方へできるだけ高くジャンプする。これを連続して行う。

<効果>跳躍力の強化。

――×――×――×――

以上ですが、各種目とも1セットの反復回数は10回以上(ときには20回以上)にして、リズミカルな動作で行うのがよいでしょう。

なお、ジャンプ運動は、できるだけ高く跳躍するように行えば空身でも効果はありますが、運動時の負荷を増したい場合は、軽量のダンベルを両手にそれぞれぶらさげて行うようにすればよいでしょう。また、これらジャンプ運動は、器用性の促進にも効果があり、反復回数を多くする場合には持久力の養成にも効果があります。

ハンド・グリッパーやゴムまりを用いた握力の強化運動は、やり方が簡単なので運動法の説明は省略させていただきます。また、レバレッジ・バー・エクササイズについては、写真を掲載しておきますので、それを参考にしてください。いずれも握力と前腕の強化に効果があります。〔写真参照〕

ゾットマン・エクササイズのやり方とその効果について

Q ボディビル歴は3年です。この半年あまり上腕三頭筋の発達がかんばしくありません。それで、ゾットマン・エクササイズを試みてみようと考えています。

ゾットマン・エクササイズには数種類のカール運動があると聞いていますが、それらの運動のやり方と効果について教えてください。

(青森県 高田豊宏 会社員 32才)
A ゾットマン・エクササイズは普通のダンベル・カールの場合とは趣きの異なる刺激を上腕二頭筋に与えることができます。したがって、あなたもこれによって、あんがい伸び悩みを解消できるかも知れません。では、運動のやり方と効果について説明します。

①ツイスティング・カール(スパイネーション)

<動作>オーバー・グリップでダンベルを持ち、手首を回外しながらカールする。つまり、ダンベルを下にぶら下げた状態で、手前に向いていた掌を手首をひねって上へ向けるようにカールを行う。

ダンベルをあげるとき、できるだけ脇を開かないようにする。また、肘を横の方へずらさないように注意する。脇が開いたり、肘が横へずれたりすると、上腕二頭筋の短頭に与える効果が半減する。

なお、この運動は、片方ずつ行うほうがよいようである。

<効果>上腕二頭筋(ことに短頭に効く)

②ツイスティング・カール(プロネーション)

<動作>アンダー・グリップでダンベルを持ち、手首を回内しながらカールする。つまり、ダンベルを下にぶら下げた状態では前方に向いている掌を、手首をひねって下に向けるようにカールを行う。要するにスパイネーションの場合とは逆方向に手首をひねるようにする。

<効果>上腕二頭筋、上腕筋、前腕。

③サーカムデュクション・カール

<動作>写真のように、体の前で円を描くようにカールを行う。1回ごとに円を描く方向を変えて行う。〔写真参照〕
〔サーカムデュクション・カール〕

〔サーカムデュクション・カール〕

運動中は上体を横へ向けないように注意し、また、脇をしめて、ていねいな動作で行うように留意する。

<効果>上腕二頭筋。この運動を上手に行うときは、上腕二頭筋の短頭と長頭に、それぞれ的確な刺激が与えられるので、上腕二頭筋のバルク・アップにかなり有効と考えられる。

④体の後方で行うカール

<動作>両手にそれぞれダンベルを持ち、臀部の位置から左右交互に、背中のあたりへカールする。カールするときに、肩をすくめないように注意する。また、ダンベルは縦向きにあげるようにする。

<効果>上腕二頭筋(とくに短頭に効く)
解答は1959年ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
月刊ボディビルディング1977年12月号

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