フィジーク・オンライン

★自分でつくる栄養料理シリーズ★③
チキン・チャーハンの作り方

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1978年2月号
掲載日:2019.05.07
野沢 秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.おもしろいレストラン風景

 仲のいいグループが食堂にやってきてテーブルに座る。「ご注文、何にいたしましょうか?」---お互いに顔を見合わせて「うーん。キミ何にする?」「メニューはこれとこれとこれ・・・・・うーん、キミは?」「えーと、えーと・・・・・みんなと同じでいいや」「ボクはこれ」「ボクも・・・・・」「じゃあおれもそうするか」---というわけで、みんな同じ食事を注文することになる。
 海外旅行のときにもまったく同じ。決定するまでにやや時間がかかるが、レストランのウエイターやウエイトレスは大よろこび。というのは、同じ料理がまとまるため、作るコックさんも会計をする人もたいへん楽。サッと運んでサッと食べてもらえるからだ。日本人以外の観光客だとこうはいかない。てんでバラバラ。10人テーブルについても個人ごとにちがって、注文を覚えきれずに悲鳴をあげる。個性豊かといえば豊かだ。どっちがいいのかなあ。

2.カロリーNo.1チャーハン

 ウインドウに並んでいる本物そっくりの「ろう細工」のメニュー。東京浅草のカッパ橋問屋街にゆくと、レストランやスナック・食堂を開業する人のために、さまざまな道具や材料を陳列した店が数百店も並んでいて壮観だ。人気のマトは、おいしそうにつくられた料理の見本。外国人がおみやげに「そば」「うどん」「天ぷら」「すし」などをまとめて買ってゆくという。
 さて、街のレストランで食事をするとき、われわれビルダーが選ぶとすればNo.1はチャーハン。約800カロリー、たんぱく質20gもとれる。空腹のとき注文するならチャーハンか、第1回目に紹介した焼ソバが断然よい。これはふつうのラーメン屋にとび込んだときも、この原則をおぼえておくとよい。つまり、中華ソバは448カロリー、たんばく質5gだが、焼ソバを注文すれば840カロリー、たんぱく質19gになる。もちろん店の材料の使用法で差があるのは当然だが・・・・・。
 チャーハンや焼ソバが栄養素に富む理由は、つくるときに、ラードや植物油を一人前につき20gも使用するためである。この脂肪だけで180カロリーも増加する。そのほか豚肉やベーコンにカロリーやたんぱく質が多い。
 したがって、体力をつけたい人には「安い価格で高栄養」のチャーハンや焼ソバをおすすめしたい。
 逆に、太りたくない女性や中高年者は、余分なカロリーが皮下脂肪を増加させる原因になるので、もっとあっさりしたメニューをえらぶほうがよい。

3.ごはんが先か、後か?

「読んでから見るか、見てから読むか」というCMが話題を集めたが、チャーハンを自分でつくるとき、どの時点で油を加えるかが大切なポイントになる。つまり、ごはんをつくっておいて後で油いためにするか、ごはんをたく前に、米を洗ってすぐバターやマーガリンを加えて、ごはんをたくかだ。
 後者の場合「ピラフ」といって、ヨーロッパやアメリカで、たきこみごはんをつくるときに一般的に用いる方法だ。鳥肉や玉ネギを入れてたくと「チキン・ピラフ」になるわけだ。
 いっぼう中華風のやり方は、ごはんをいろいろな材料と共に、後からフライパンや大なべでサッといためる方法をとる。「街の食堂やレストランでは前日の余りごはんを翌日油でいためてチャーハンを作りお客さんに出す。だから値段が安いんだよ」と裏話をしてくれた人がいるが、そのとおり。実際にごはんがパサパサになって水分が飛んで固くなったほうが、おいしいチャーハンになる。(といっても2日も3日も前のごはんはダメ。腐敗しやすく使いものにならない。ご注意ください)
 自分の家庭でつくるとき、一日前くらいの残りごはんに、とり肉やハム、ベーコンなどをまぜて、スタミナ・チャーハンをつくると、もっとも合理的である。

4.おいしい作り方

 さて、栄養効果満点、しかも味がおいしくて、簡単にできるチャーハンの作り方を紹介しよう。

<用意する材料>
 ごはん・マーガリン30g・とり肉75g・玉ねぎ小1/2個・にんじん小1/4・粉末チーズ・砂糖小さじ1/2・しょうゆ小さじ1/4・塩・こしょう少々・化学調味料・トマトケチャップかソース。

<用意する道具>
 フライパン・しゃもじ・包丁・まな板・スプーン。

<作り方>
①とり肉・玉ねぎ・にんじんをトントンと細かくきざむ。玉ねぎを切るとき、涙がポロポロでるが、じっとがまん。
②フライパンを火にかけ、マーガリンをサッと溶かす。
③細かくきざんだとり肉・玉ねぎ・にんじんをサッといためる。このとき砂糖・しょうゆ・塩・こしょうで味をつけておく。
④ごはんをフライパンに入れ、しゃもじでほぐしながら、油や材料を均一によくまぜる。化学調味料をこのときパラパラとふりかける。(化学調味料が嫌いな人は使わなくてもよい)
⑤ガスの火は最初は弱火で、ごはんなどの水分を蒸発させ、ベタつきが少なくなったら、火を強くして、ごはんにこげ目を軽くつける。(といってもあまりパサパサにして全体を焦がしてしまうと、固くて食べにくくなるので、ほんの少し焦げるくらいがよい)
⑥大皿に盛りつけ、粉末チーズを上からパラパラ振りかける。好みによりケチャップまたはソースをかけて、「いただきまーす!」

5.スタミナ倍増の食べ方

 チャーハンについているのは紅しょうが。着色のひどい製品があって、ごはんや皿にまでべっとり赤色にそまる店があり気持が悪い。安全上問題がないとはいえ、いい加減の小メーカーでは食品衛生法の知識もなく、問屋から仕入れて製造していることが多いので心配だ。
 チャーハンとあうのはとりのがらや豚足でだしをとった中華スープ。ネギをきざんで浮かしてある。家庭でつくるときはとりのガラを煮こみ、しょうゆでうすく味をつけるとよい。
 たんばく質をもう少しとりたい人は卵一個を割ってよくかきまぜて、ぐらぐら煮えているスープに加えるとよいのだ。スープが冷たいうちに卵を入れると、卵が固まらずに、にごったスープになるのでご用心。
 新鮮な野菜が不足するので、パセリやピーマン、あるいはほうれん草や春菊をリリーフするとよい。この4つの野菜の共通点は、緑色が濃くて、分析すると1,000単位以上のビタミンAが含まれるので、「有色野菜」と呼ばれることだ。それに対して、キャベツやきゅうり・はくさい・トマトなどは1,000単位ないので物足りない。
 ポパイがキャベツやトマトでなく、ほうれん草を食べて強いイメージを植えつけたのは、ビタミンAやCや鉄などの栄養素のためである。
 最近の栄養調査では、野菜や果物の消費量はふえているが、ハウス栽培などの淡色野菜で、日本古来の有色野菜は減少の一途でなげかわしい。体にいいものを多く食べたいものだ。
 レストランや食堂で皿についているパセリを残す人が多い。なぜ食べないか聞いてみると、「あまり洗わずに出てくるから」「洗っても合成洗剤なので、洗いが十分でないと、残っている心配がある」と答える人が多い。
 せっかくの栄養源だから、レストランを経営する人や働く人たちは「人びとの健康のため」という点を重視して親切な配慮をしてほしい。
 自宅で食べるときは、パセリやピーマンを水道水でよく洗い、なまでバリバリ食べるのがよい。ピーマンはうすく切り、マヨネーズをかけて食べると栄養的によい効果がある。(ビタミンCが豊庫で、ミスター大阪になった塚本猛義選手も愛用している)
 なお、チャーハンやパセリ、ピーマンなどはゆっくりよくかんで食べること。同じだけの栄養を持っていても、その人の食べ方により、体に利用される割合はちがってくる。また、チャーハンや焼ソバのように、油の多い料理は胃腸で消化吸収されるまでに時間がかかるので、「腹もちがいい」という利点がある。
 チャーハンを主体にしたメニューのカロリー計算は次のとおり。
記事画像1
月刊ボディビルディング1978年2月号

Recommend