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★自分でつくる栄養料理シリーズ★⑤“うまいトンカツの作り方”

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月刊ボディビルディング1978年4月号
掲載日:2019.05.14
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野沢秀雄(ヘルス・インストラクター)

1 個人差がこんなに大きい!

「オレは一生懸命食べているのにあまり効果が出ない」「ほかの人の体験談くと良い結果をあげているのになぜだろう?」と疑問や不安を持っている人はいないかな?
 この疑問に答える興味深い記事を紹介しよう。(朝日新聞2月11日)

「消化をするときに大切な役割をする胃酸。この胃酸を分泌する細胞は正常な人で約10億個。ところが個人差があって、少ない人は1億数千万個。多い人になると10数億個。実に10倍の能力差がある。したがって、胃酸の分泌ひとつみても胃の能力は生れつきによって大きな開きがある」という内容だ。
 つまり同じ食事をとっても、ある人はたちまち消化吸収して、血や肉にするのに対して、生れつき消化能力の弱い人は、いつまでも胃にもたれ、体内に吸収されにくく、せっかくの栄養素が通過するだけで便になって出てしまう。ひどい人は下痢や便秘をしやすく食べたものが身につかない。
 ジャイアンツの王選手は「自分をじょうぶに産んでくれた親にいつも感謝しています」と謙虚に語っているが、事実、彼のような健啖家と「オレいつも胃の調子が悪い」とこぼしている人とでは「天と地」の差がある。

2 内臓を強くするには

「うーん、まいったな、そういうわけか。生れたときからの消化力に差があるので、いくら栄養のあるものを食べたり、一生懸命にトレーニングしても体が大きくなりにくいんですね。なんとか方法はありませんか?」ーーこんな質問や希望がおこってくる。
 確かに「生れつき胃腸が弱い」という人が存在する。こんな人にかぎってより強烈に「じょうぶな体をつくりたい」と念願している。ボディビルは体の外側の筋肉をたくましく発達させるのに有効だが、同時に次のようなことを実行すれば、体の内側の内臓まで強くすることが可能である。

① あきらめずにトレーニングを続ける

運動しないときと練習したときでは腹のすき具合が違うことは誰でも実感している。適度に体を動かし、エネルギーを消耗すると新陳代謝能力が高まって空腹状態になる。空腹のときは消化酵素や胃酸の分泌が高まるので、栄養素がよく利用される。

② 満腹のときは無理に食べない

まったく運動をしない人の場合は、食事と食事の間隔を6時間くらいおくのがよいといわれる。運動する者はこの限りではないが、食べたくないときに無理に食べるのは効果がないだけでなく、かえって内臓に負担をかける。

③ よくかんでゆっくり食べる

口の中でかむと、機械的な消化と同時に、唾液酵素のプチアリンなどにより、化学的消化を受けて、胃腸の作用をカバーしてくれる。

④ コーヒー・たばこ等の刺激物をなるべくさける

「コーヒーを飲むと胸やけがする」という人は体質があわず、カフェインが胃の粘膜を刺激しているので、遠ざけたほうがよい。飲みたい人はミルクをたっぷり入れると緩衝作用をする。

⑤ 良質のたんぱく質を食べる

NHKで放映されている「サラリーマンライフ」に東大の内科教授が出演して、「胃自体もたんぱく質でできている。胃をじょうぶにするには良質のたんぱく質の補給が大切。食事として胃に入ってきたたんぱく質は、ガストリンの分泌をうながし、胃の細胞をつくってくれる」と語っている。

⑥ 精神的な余裕を持つ

 胃腸にとって大敵はストレスだ。たとえば「勉強をしなければならない」「自分に合わない仕事をしており、いつもイライラしている」「何か大きな不安や心配がある」一こういう場合に胃腸の機能は大幅に損われる。胃腸を支配する自律神経はきわめてデリケートだ。苦しいことがあると、まっ先に胃が重くなり、ついには胃かいようや十二指腸かいようになる。若い人にふえているのでご用心。

⑦ その他

 以上のほか、全身にあるツボを刺激するマッサージ、指圧ハリなどで体質を強めることができる。入浴や睡眠も重要な要素である。

3.いよいよトンカツの登場

 さて前月にひきつづき、高栄養の王者フライ料理の第2弾として「トンカツの作り方」を伝授しよう。
 実は「天ぷら」に比べれば、トンカツやえびフライは簡単にでき、はじめのての人でも失敗なく料理できる。

<材料>(一人前)

トンカツ用豚肉1枚(150g)・卵1個・小麦粉少々・パン粉少々・天ぷら油約500cc・レモン・キャベツ・ソースなど。

<道具>

フライパン・はし・まな板・包丁・大皿。

<下ごしらえ>

肉を買うとき、塩・こしょうを軽くふってもらっておく。フライする30分くらい前に下味をつけておくのが理想的である。

<作り方>

a.フライパンに油を入れて加熱する。
b.卵1個を茶わんに割り、よくかきまぜておく。
c.豚肉をまな板に乗せ、包丁の背でトントントンと叩いて、肉のせんいを柔かくしておく。
d.小麦粉を全体にまぶす。
e.卵の中に入れて、すぐに引き上げる。
f.パン粉を敷き、肉を一様にパン粉でまぶす。
g.油が煮立って170度くらいになったら(パン粉を落して、ジュッとすぐに浮かんでくればOK)、パン粉をまぶした豚肉をそろりと中にすべりこませる。
h.約2~3分すると,水分が蒸発して表面に浮びあがる。おいしそうな茶褐色になってきたら、ひきあげる。

4 スタミナ倍増の食べ方

豚肉はビタミンB1が多いがジストマ細菌が残っているので、よく揚げるほうがよい。牛肉のステーキは生やけ(レアーやミディアム)で食べられるが、豚肉は血のしたたるような肉を食べることは禁物である。
 トンカツの「相棒」として、必ずきざんだキャベツがつけあわせに出てくるが、豚肉の酸性とバランスをとったり、消化をよくするためだ。
 揚げたてのトンカツに包丁を入れ好みに応じて、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、辛子をつけて食べる。「ホッカホカ」の白いごはんと、赤だしでつくったおみそ汁、白菜か野沢菜のおしんこをつけると、最高級の「とんかつ定食」が出来上がり。
卵が余るので、ビルダーなら納豆1袋とまぜて、食膳に加えるとよい。デザートはりんごや夏みかん、いちごなど季節のものでよい。
 この連載が始まってから、全国のみなさんより「カレーをつくったが、うまくおいしくできた。たくさん作りすぎて何食もカレーが続きましたよ」「私はベーコンとハムでチャーハンを作ったら、うまくできた。スナックに出してもいいくらい」「こんなに安く自分でつくれるとは知らなかった」ーと、うれしい便りをいただいている。
トンカツの場合も、以上の内容なら外で食べれば800円くらいはかかる。しかも肉はせいぜい80gしかないことが多いだろう。自分であげれば2倍多いカロリーやたんぱく質がとれる。なお「ひれ肉」を買って(これは脂肪が少なくて、たんぱく質が多く、やわらかい)、最初に小さく切ってから同様にフライにすると、おいしい「一ロカツ」ができる。
 豚肉のかわりにとり肉(ささみがよい)をフライにすることもできる。もちろん、えび(大正えび)のカラをとらって同じようにパン粉をまぶしてフライにすると、デラックスな「えびフライ」ができる。
 こった人は2~3種類の材料をあげて皿に盛りつけるとよい。「ミックスフライ定食」というわけだ。
 キミもコックさんになれるかな?自分でつくった料理の味は格別だ。ゆっくり味わって、血や肉にしていただきたい。
 トンカツ料理を夕食にした場合のカのロリー計算は次のようになる。
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月刊ボディビルディング1978年4月号

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