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女性のためのボディビルディング

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月刊ボディビルディング1978年5月号
掲載日:2018.07.11
V.オリンピックに出場したゴツイ女子選手に驚きと疑い
Ⅵ.スティーブ・デービスのすすめるトレーニング・ルーティン
VⅡ.ミス・ビューティ・チャンピオンのトレーニング法


国立競技場指導係主任 矢野雅知

V.オリンピックに出場したゴツイ女子選手に驚きと疑い

前号では、女性がいくら一生懸命ウェイト・トレーニングを実施しても,ホルモンの関係で、決して筋肉隆々のゴツイからだにはならないことを述べた。ただ,オリンピックの女子砲丸投げの選手など,「え!あれが女の子?」と疑いたくなるような選手がいることも事実である。
しかし彼女たち、国際オリンピック委員会がセックス・チェックを実施すると発表したとたん、なぜか現役を引退してしまった。これでまたまた話題をまいた。「彼女たちは実は彼らたちじゃなかったんだろうか?」といわれたのである。とにかく,染色体に異常をきたすような一性ホルモンのバランスを乱すようなことをしとったんじゃないか,といった臆測もあったようだ。
そして、さきのモントリオール・オリンピック。ここでは東ドイツの女子水泳選手の圧倒的勝利が話題をさらった。そして、彼女たちのからだに,やたらと太い筋肉がついていることに焦点が集まった。優勝してバンザイと両手を上げたポーズなんか見ると、太い三頭筋、大きな三角筋などが印象的であった。とくに水泳の場合には,からだの線をはっきり見ることができるので,よけい目立ったのかも知れない。
金メダルを東ドイツに独占されくやしさも手伝ってか,強気のヤンキー娘は「あんなからだになったら,恥かしくって往来を歩けゃしないワ!」といっていたくらいだから,実際に近くで見るとモノスゴイものだったにちがいない。
マスコミの伝えるところによると,彼女らは1日に7時間ものウェイト・トレーニングをやったから,あれだけの体力をつけることができたのだ、とコーチは語ったそうである。それにしても,その筋肉の逞しさには誰もが驚かされた。驚きは同時に疑問でもあった。女性が,いくらウェイト・トレーニングをやったからといって,あんなに筋肉が発達するものだろうかという疑問である。
これについては、多くの人は男性ホルモンであるアナボリック・ステロイドを服用したからだと信じている。女性には本来ないところの男性ホルモンを用いることによって、突然,男性のように筋肉が発達してくる。ステロイドを服用しない一般の女性は,いくらウェイト・トレーニングを行なっても筋肉の発達は制限されてしまうが、服用すればグッと強くなり,記録は向上する。
極論すると,ふつう男性の筋力の2/3までにしか発達しない女性の力では,これらの男性並みの筋力を身につけた選手には、とても立ち打ちできるものではない,ということになる。
ともかく,ステロイドなどというものを用いないかぎり,女性はいくらウェイト・トレーニングをやったとて,そんなに変形するものではない。だから,大いにボディビルディングをやるべきである,という結論には変わりないのである。
余談ではあるが、伝えられるところによると,なにがなんでも強い選手をつくりだそうとしたある国では、水泳で浮力を大きくして,からだを水に浮かせれば記録がよくなるだろうという発想で,オシリの穴ボコから腸に空気を注入して泳がせる,なんてこともやったそうである。いやはやたいしたもんである。なかなかこんなことは考えつくもんじゃない。
もっともこれは、泳いでいるうちにブクブクとオナラになって空気がもれちゃうのでダメだったそうである。いやオナラだって推進力に一役かうだろう,なんて考えるむきもあるが、選手が大反対したそうな。空気カンチョウされて、お腹をふくらまされるんじゃ誰だって気持イイもんじゃありますまい。
[ベント・アーム・フライ]

[ベント・アーム・フライ]

[ベンチ・プレス・マシーン]

[ベンチ・プレス・マシーン]

(レッグ・イクステンション)

(レッグ・イクステンション)

VI.スティーブ・デービスのすすめる女性のためのトレーニング

くだらんことをいってないで話を戻そう。まあ、女性とボディビルディングについては,これ以上よけいな理屈はいらないだろう。
そこで,バレンチナ・ヘルス・クラブの経営者で、実際に美しい奥さんと一緒に女性のボディビルディングを指導しているスティーブ・デービスが、大きな成功を収めており,自信をもっておすすめ出来るという女性のためのトレーニング・ルーティンを紹介しよう。
記事画像4
以上の12種目からなるコースを1週間に3回実施する。

Ⅶ.ミスアメリカーナ,サンディ・ニスタのトレーニング法

では,ここで1人のミス・ビューティチャンピオンにスポットを当ててどういったトレーニングを行なっているのか紹介してみよう。
 彼女の名はサンディ・ニスタ。IFBBのビルダーであるジョー・ニスタの娘である。母親もファミリー・ヘルス・クラブの女性部門を経営しているので,まさに健康一家といえよう。
そんな家庭環境だから,彼女はゆりかごの時代からフィジカル・フィットネスに親しんでいたという。そして,8才頃からフィギュア・スケートを始めて,フリー・ダンス・スケーターとしてメキメキ頭角を現わし,16才のときに早くもカリフォルニアのシングルチャンピオンになった。
この当時、週6日,1日8時間のスケート練習を行なっていたという。その後、世界選手権で第3位に入賞している。ABCテレビの「ワイド・ワールド・オブ・スポーツ」で,“氷上の恋人”として紹介されたりして,男性の憧れのマトになったらしい。
しかし,ハイ・スクールを卒業してからはスケートをプッツリとやめて,大学に通うかたわら,ハードなウェイト・トレーニングとエアロビック・スポーツに打ち込むようになる。この成果が実って,18才のとき,ミス・カリォルニアに選ばれ、つづいてミス・ウェスタン・アメリカ,ミス・アメリカーナと次々とビューティ・コンテストのタイトルを獲得したのである。
いま彼女は27才。自分の経験をもとに,サンディ・ニスタ・ヘルス・クラブをオープンして指導に当っている。ちなみに彼女はいまだに独身だというのだから,アメリカの男性は女性を見る目がないのだろうか。
それでは、彼女が好んで行なっているトレーニングを紹介しよう。彼女はこのコースをおよそ1時間~1時間20分で消化している。
(レッグ・レイズ)

(レッグ・レイズ)

(スクワット・マシーン)

(スクワット・マシーン)

(スティッフ・レッグド・デッドリフト)

(スティッフ・レッグド・デッドリフト)

(フォワード・レンジ)

(フォワード・レンジ)

(レッグ・スイング)

(レッグ・スイング)

(ベンチ・レッグ・スイング)

(ベンチ・レッグ・スイング)

記事画像11
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以上のコースを火・木・土の3日間行なっている。また,この日は5時半に起床して,海岸を2マイル走ることも怠らない。残りの4日間はフリーとし、テニスやジョッギングを楽しんでいるという。
さらに彼女は,日常のトレーニングだけでなく、食生活にも注意を払っている。ある日のメニューを簡単に紹介すると一

<朝食>

プロティン・ドリンク
玉子3個,新鮮な果物
[註]パンは食べない

<間食>

チーズ,プロティン(タブレット)

<昼食>

低脂肪カッテージ・チーズ
肉,野菜サラダ

<間食>

りんご,またはチーズかバター・ピーナッツかプロティン・ドリンクのうち1つ。

〈夕食〉

基本的には昼食と同じである。これに加えて魚などを摂る。彼女はステーキが大好物なのだが,脂肪を多く含んでいるので,あまり食べない。
彼女は以上のほかに,毎食後パパイヤの酵素を飲用している。これに含まれるビタミンB群とミネラルが、深い睡腫を与え,こころよい朝を迎えられる手助けになっているという。
とにかく彼女の食事は、皮下脂肪がつかないように工夫しており,しかもプロティン・フードをよく用いているのが特徴である。こんなところが、今後の女性ビルダーの参考になろう。
彼女は言う。「私はあなた方女性はからだを変えるべきだと信じている。より有意義な人生を送るために!」
ボディビルディングの真理を含んだ実に味わい深い言葉ではないか。
(この稿のトレーニング写真のモデルはサンディ・ニスカ嬢)
月刊ボディビルディング1978年5月号

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