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なんでもQ&Aお答えします 1978年6月号

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月刊ボディビルディング1978年6月号
掲載日:2018.07.29

からだのサイズの正しい測定方法

Q ボディビルをはじめて3年になります。もう今年あたりはボツボツ地方コンテストにも出場してみたいと思っております。
 それにつけて、ときどき不審に思うことがあります。というのは、いろいろなコンテストを見にいき、実際に近くで選手を見た感じと、プログラムに印刷されたサイズが少し違うように思われるのです。私もよく測って、トレーニングの効果をノートに控えているのですが、私の測り方が悪いのか、そのときどきによって、前よりも太くなっていると思われるのに、小さな数値が出たりします。正しい測り方をお教えください。
(東京都・SK生)
A からだのサイズの正しい測定方法について、窪田登先生が著された「正しいボディビルディング」に詳しく記載されておりますので、それを引用して、あなたへの解答といたします。
 ---ボディビルディングを志す人は人一倍、体格や体力という面に関心をもっていることが多い。それはそれでたいへんよいのだが、つい熱心さのあまり、少しでもサイズが大きくなったと思い込みたいというのも人情だ。そのために、身体各部のサイズをルーズにはかるようになる。たとえば、よくあることだが上腕囲をはかるときに、上腕部に直交するように巻尺をまくのが正しいのだが、これを斜めに巻いて測定し、正常な数値よりも太く読むという具合にである。
 常識から考えてみてもわかるようにこれでは正確な体格を知ることはできない。そこで、体格をある程度まで正しく把握し、トレーニング効果をうまくとらえていくためには、まず決められた方法で、一定の箇所を正しく測定するようにしなくてはならない。そして、この測定は、同じ測定者により、同じ測定用具を用いて、同じ時刻に行なっていくことが大切で、もし、運動中に測定した場合であれば、それはおそらくパンプ・アップしているときのサイズだから、必ず「パンプ・アップ時」とか「ウォーム(Warm)」と書いておいた方がよいだろう。
 また、運動をしていないときに、いきなりはかったものであれば「コールド(Cold)」、つまりからだの冷えているとき、というように書き添えておくのがよい。
 
〈身 長〉身長計を用いてはかる。軽くあごをひいて、後頭部、背部、臀部、かかとが垂直固定尺に軽く触れるように立ってはかる。

〈座 高〉座高計に腰をかけて、ひざと腰を直角に曲げ、両足裏を床の上にぴったりとおいたまま、軽くあごを引き、背と後頭部を固定尺に触れさせてはかる。

〈体 重〉裸になって体重計ではかる。

〈頸 囲〉頭をまっすぐ立てて、頸の力を抜き、ノド仏のすぐ上部で、もっとも細い部分を巻尺ではかる。

〈胸 囲〉自然な姿勢で立ち、巻尺を前面では乳頭上、背面では肩甲骨下縁にあてて胸のまわりに巻き、話をしながら、自然に息を吐いたときの目盛りを読む。このとき、両手は体側にぶら下げておく。最大囲は、そのまま息をいっぱい吸い込んで胸を張ったときの目盛り、最小囲は、息を吐ききったときの目盛りを、それぞれ読む。

〈上腕囲〉ひじを伸ばしたまま、水平に腕を上げ、そのまま力いっぱいひじを曲げる。そして、その上腕部に直交するように巻尺をまきつけて、そのときの目盛りを読むと上腕屈曲囲である。そのまま、静かにひじをまっすぐ伸ばすか、下にさげて、その位置の巻尺の目盛りを読むと、これが上腕伸展囲である。

〈前腕囲と手頸囲〉手のひらを普通に開いたまま、ひじを伸ばしてぶら下げて前腕の最大部位を、前腕長軸に直交するように巻尺をまいてはかる。これが前腕囲だ。同じ要領で、手くびの関節の上部で前腕の最小部位をはかれば、これが手頸囲である。

〈腹 囲〉両手を体側にぶら下げて自然な姿勢で立ち、腹の力を抜いたまま、自然に呼吸をしながら息を吐いたときの腹部の最小囲をはかる。

〈腰 囲〉両手を体側にぶら下げて、両足をそろえたまま自然な姿勢で立ち、腰部の最大囲を水平にはかる。

〈大腿囲〉両足を約10cm開いて、ひざを伸ばして立ち、体重は両足に均等にかける。そして、大臀部と大腿部の境目に水平に巻尺をまきつけて、そのときの目盛りを読む。

〈下腿囲と足頸囲〉ひざをまっすぐ伸ばして、左右に両足を約10cm開いて立ったまま、ふくらはぎの最大部位に巻尺を水平にまきつけ、そのときの目盛りを読めば下腿囲である。そのまま足くびの最小囲を同じ要領ではかれば、これが足頸囲である。

〈写真撮影〉これは巻尺や体重計といった数値で表す測定とは異なるが、トレーニング開始前に裸体で写真をとっておいて、そのあと一定期間をおいて同じ姿勢の写真を撮っておくようにしたら、発達の様子がひと目でわかる。カメラから同じ距離に立ち、カメラの角度や照明もほぼ同一に決めておく方がよい。
[解答=早稲田大学教授窪田登著、「正しいボディビルディング」より]
[体位の正しい測定箇所]

[体位の正しい測定箇所]

スプリット・ルーティーン(分割法)によるスケジュールのつくり方

Q ボディビル歴は3年です。開始以来、隔日的週3日のペースでトレーニングを続けてきました。ところが最近では採用種目も増え、また、セット数も多くなり、1日で全部の運動量を消化するのが困難になってきました。それで、現在行なっている運動種目の他に、新らたに数種目を加えて、それを2分割してスプリット・ルーティーンで行いたいと考えています。
 ちなみに、新しいスケジュールに採用を予定している運動種目は下記のとおりです。それらの運動種目を2分割したトレーニング・スケジュールをつくっていただきたいと思います。

◎採用を予定している運動種目
〈腹〉
①シット・アップ
②レッグ・レイズ

〈胸〉
①ベンチ・プレス
②ダンベル・ベンチ・プレス
③バー・ディップス

〈肩〉
①バック・プレス
②スタンディング・ロー
③ベント・フォワード・ラタラル

〈背〉
①ベント・オーバー・ローイング
②ワン・ハンド・ローイング
③ストラドル・バーベル・ローイング

〈腕〉
①バーベル・カール
②ダンベル・カール
③ニー・カール
④トライセプス・プレス・スタンディング
⑤トライセプス・プレス・ライイング
⑥クロスオーバー・トライセプス・イクステンション
⑦リフト・カール
⑧リバース・リスト・カール

〈脚〉
①フル・スクワット
②ハーフ・スクワット
③ベント・オーバー・ニー・ロッキング
④カーフ・レイズ

〈腰〉
①デッド・リフト
②ワン・ハンド・デッド・リフト

(栃木県 山本光治 会社員 24才)
A 採用を予定されている運動種目が25種目、そのうち、新らたに加えられた種目が数種目あるということなので、そのことから考えると、現在は20種目近くの運動を1日で行なっているということになります。全体のセット数については手紙に記述されていないのでなんともいえませんが、1日に20種目近くの運動を行うというのは非常な努力がいるものと思われます。
 一般的な社会人の生活環境では、1日に20種目も実施するというのは体力的にも、また時間的にも、かなり無理があるのではないかと思います。したがって、場合によっては、体力的な消耗が過度になり「労して功なし」といった結果にもなりかねません。そのような意味で、今度はスプリット・ルーティーン(分割法)を採用してトレーニングを行うというのは大変よいことだと思います。
 ではつぎに、トレーニング・スケジュールの1例をあげてみましょう。

◎トレーニング・スケジュール(例)
〈Aコース〉---月曜・木曜の週2日
①シット・アップ
②レッグ・レイズ
③ベンチ・プレス
④ダンベル・ベンチ・プレス
⑤バー・ディップス
⑥ベント・オーバー・ローイング
⑦ストラドル・バーベル・ローイング
⑧ワン・ハンド・ローイング
⑨バック・プレス
⑩スタンディング・ロー
⑪ベント・フォワード・ラタラル
⑫トライセプス・プレス・スタンディング
⑬トライセプス・プレス・ライイング
⑭クロスオーバー・トライセプス・イクステンション

〈Bコース〉---火曜・金曜の週2日
⑮シット・アップ
⑯レッグ・レイズ
⑰フル・スクワット
⑱ハーフ・スクワット
⑲ベント・オーバー・ニー・ロッキング
⑳カーフ・レイズ
㉑デッド・リフト
㉒ワン・ハンド・デッド・リフト
㉓バーベル・カール
㉔ダンベル・カール
㉕ニー・カール
㉖リスト・カール
㉗リバース・リスト・カール

 上述のスケジュールは、あくまでも例であるから、これが絶対的なものというわけではありません。例えば、背の運動をBコースに入れ、そのかわりに上腕二頭筋と前腕のための運動をAコースに組み入れて行うようにしてもなんらさしつかえありません。要は、使用筋がA、B、双方のコースでいちじるしく重複して使用されることのないようにスケジュールを作成すればよいということです。

体重と胸囲を増やすトレーニング法は

Q ボディビル歴は8ヵ月です。僕は身長のわりに体重や胸囲がなく、これらのことを解消したいと思ってボディビルを始めました。しかし、実際にトレーニングを始めてみると、なかなか効果が得られず悩んでいます。体重が増え、胸囲が大きくなる方法を教えてください。
 なお、僕は背中の広がりが小さいので、もっと広背筋を発達させて逆三角形の体にしたいと思っています。その点についても適切な運動法を指導してください。
〈現在の体位〉

〈現在の体位〉

(埼玉県・斉藤幸男 中学生 13才)
A あなたの手紙には、あなたが現在行なっているトレーニング・スケジュールと、トレーニング開始時の体位が書いてないのでどんな内容のトレーニングをして、体位がどのように変化したのかまったくわかりません。
 トレーニングの内容と体位の経過はいわば相互関係にあるので、それらのことをできるだけくわしく手紙に書いてほしいと思います。なにせQ&Aは質問依頼者からの手紙に記された資料を元にして回答するのですからよろしくお願いします。
 というわけで、資料不足のため、あなたの個別性を重視した回答はしかねます。そこで一応、初級者向けの一般的な方法に基づいたごく常識的なことがらについて述べることにします。

〈1〉体重の増加について

 体重を増やすためのトレーニング法としては、からだの中でも比較的大きな筋肉部位に重点を置いてトレーニングを行うのがよいようです。つまり、上腕二頭筋や下腿三頭筋といった比較的小さな部位に重点を置かずに、大胸筋、広背筋、大腿四頭筋などの発達に重点を置いたトレーニングを行うほうがよいということです。
 採用する運動種目にしても、より広範囲にわたって筋を十分に刺激することのできる種目を優先的に選択するのがよいようです。大胸筋を中心に鍛練する運動種目に例をとっていえば、ラタラル・レイズ・ライイングのような運動よりも、ベンチ・プレスのような運動を優先するほうがよいということです。

〈重視すべき運動種目〉
①ベンチ・プレス
 胸(大胸筋)を主として、肩(三角筋)、腕(上腕三頭筋)等、上体の基礎的なバルク・アップ(筋肉量の増加)を促す。
②スクワット
 大腿部(大腿四頭筋と内股諸筋)および臀部(主に大臀筋)の発達を促すことによって、下半身の基礎的なバルク・アップをもたらす。なおスクワットは腰背部の筋力を強化するので、そのような見地からも基礎種目として重要である。
③ベント・オーバー・ローイング
 広背筋、僧帽筋、その他の上背部における諸筋の発達を促し、からだの背面のバルクと面積を増す。
④シット・アップ
 腹部を適度に刺激することによって、消化器の働きを促進する。したがって、健康的に体重の増加を図る場合には適当に腹筋の運動を行うとよい。

〈トレーニング・コース作成の要点〉
①トレーニング量は体力的に許容できる範囲に止める。身体的に未熟な年少者や、また体力的に自信のないものは、始めはいま述べた4種目(場合によってはベント・オーバー・ローイングを除いた3種目)のみを行うようにするのが無難である。
②各種目のセット数は、トレーニング全体の疲労度を考慮して定める必要があるが、1種目当り2~3セットが無難である。
③1セットの反復回数は、10~20回ぐらいが適当といえるが、一般的には10~12回ぐらいの回数で行うのがもっとも妥当とされている。20回くらいの多回数で実施するときは、体力的な消耗を考慮し、場合によってはセット数を少なくすることも必要である。筋力の弱い初心者が無理な重量を使用して低回数で行うのは危険である。
④使用重量は反復回数との関係において定める。ただし、あくまでも正しいフォームで所定の回数を行うことができるものでなければならない。
⑤トレーニングの頻度は、週に2~3日が適当である。ただし、あまり変則的な日程にならないように留意する。また、2日続けてトレーニングを行うことも慎むほうが無難である。
⑥体重を増加するためのトレーニング法とは、要するに初級者におけるごく基礎的なトレーニング法のことである。体重の減少を目的としてトレーニングするのでない限り、筋力の向上と身体各部位のサイズの増大は体重の増加に結びつきます。したがって、いいかえれば、筋力と体位の向上を効率よく促す方法が体重増加の方法としてもよいということになります。
⑦トレーニングの効果をあげるためには充分な栄養をとらなければなりません。いかに熱心にトレーニングを行なてっも、栄養が不足していてはその努力も空振りにおわってしまいます。健康管理という見地からすれば、バランスのとれた食事をとることが大切ですが、ボディビルダーとしては次のことに留意する必要があると思います。
 筋の肥大を促し、かつ筋力を強くするためには蛋白質を十分に摂ることが大切です。ふつう、1日に体重1kg当り1.5g~2gの見当で摂るのがよいとされていますので、あなたの場合なら1日にだいた65~87gぐらいになります。
 また、体重の増加を主たる目的とする場合は、炭水化物、油脂、蛋白質等を多量に含むカロリー価の高い食物を十分に摂ることが必要です。中でも、体内で体脂肪にかわりやすい炭水化物を多量に含む食物(澱粉や糖分を多く含む食物)を十分にとるように心がける。

〈2〉胸囲の増大について

 胸囲が増大するための要素としては次のようなことがらが考えられます。①大胸筋の発達、②背筋、とくに広背筋の発達、③胸郭の発達の3つです。この3つのことがらについて、もう少し具体的に説明してみます。

①大胸筋の発達について
 大胸筋の発達が胸囲の増大に結びつくことはいまさら説明するまでもありません。大胸筋の発達を促すための初級者向きの運動種目としては、ベンチ・プレス、ダンベル・ベンチ・プレス、ラタラル・レイズ・ライイングなどがあげられます。
 その中でも、大胸筋のバルク・アップのためにはベンチ・プレスが最も有効と思われます。そして、ベンチ・プレスにおける筋力の向上が大胸筋のバルク・アップに密接なかかわりをもっているといえます。いい方を変えれば、大胸筋のバルク・アップを図るには、ベンチ・プレスの筋力を向上させることに重点を置いてトレーニングを行うのがよいということになります。
 したがって、体力の弱い初級者の段階では、大胸筋のための運動を何種目も行わずに、ベンチ・プレスのみに専念するのが得策だと思われます。

②背筋、とくに広背筋の発達について
 胸囲の増大を促すことについては①の大胸筋よりも、むしろ広背筋のほうが大きなかかわりを有しているといえます。したがって、たんに胸囲の増大を目的とする場合には、広背筋の運動は大胸筋の運動以上に効果的だということになります。
 広背筋の発達を促すための初級者向きの運動種目としては、ベント・オーバー・ローイング、レバレッジ・バー・ローイング、ラット・マシーン・プルダウンなどの運動があります。しかし、胸囲の増大を図るということからすれば、同じ広背筋の運動であっても、どちらかといえば下部よりも上部の方に強く効く運動の方が有効のようです。このことから、ごく初歩的な段階ではレバレッジ・バー・ローイングを行うよりもベント・オーバー・ローイングかラット・マシーン・プルダウンを行うほうがよいといえます。そして、広背筋の幅広い発達を促すということを考慮するならば、シャフトまたはバーを握るグリップの間隔を肩幅の1.5~2倍くらいの広さにするのがよいともいえます。

③胸郭の発達について
 胸郭の発達を促すことも胸囲増大の要素であることはいうまでもありません。このための運動種目や運動方法といったものもありますが、それはどちらかといえば上級者向きのものですからここでは説明を省略することにします。
 初級者の場合には、胸郭の発達を促すための運動をことさら意図的に行わなくても、他の基本的な運動を行うことによって結構促されます。ベンチ・プレスはいうにおよばず、スクワット、ベント・オーバー・ローイング、スタンディング・プレス等の運動によっても初級者の段階では胸郭の発達は促されます。

[追記]あなたは現在13歳とのことですが、そのことから判断して、効果の得られない最大の原因は年令的なものにあるのではないかと思われます。ボディビルのように筋の肥大と筋力の強化を主目的とする運動の場合には、13歳という年令的な体質から考えて多大の効果を期待するのは無理なことといえます。もう少し歳をとり、身体が男性としての完成期に入れば一段と効果を得られるものと思われます。それまでは絶対に無理なことは慎み、余裕のあるトレーニングを行うようにしてください。できることなら、ボディビルのトレーニングはほどほどにして、身体の敏捷性や器用性を促進するスポーツや運動を今のうちに行なっておくのがよいと思います。
 なお、広背筋の質問については回答を省略させていただきますので、〈胸囲の増大について〉の②の項を参考にしてください。
[解答=1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
月刊ボディビルディング1978年6月号

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