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★自分でつくる栄養料理シリーズ★⑧“うまいサバの料理法”

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月刊ボディビルディング1978年7月号
掲載日:2018.08.22
野沢秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.タイは上魚、サバは下魚?

 どういうわけか、自分の目や耳で本当のことを確かめもせず、ききかじりだけで根拠のないことを信じてしまう人が多い。

 たとえば「タイは上魚、サバは下魚」という言葉。江戸の昔からタイは釣りにくい魚で貴重なのに対し、サバは群れをなして泳いでおり、漁獲量が圧倒的に多く、値段が安いために「庶民の魚」と言われてきたのは事実である。また背びれの青いサバ・カツオ・サンマなどの魚を食べると「アレルギーをおこす」という人がいて、このような人はタイやヒラメなど白味の魚なら平気というケースがある。

 だが、そうだからといって「タイは栄養価が高くてすぐれているが、サバは栄養的に劣っている」と考えることは大まちがいだ。

 下表に示すように食品成分分析値の数字を比べればすぐにわかる。カロリー・たんぱく質・脂肪・ミネラル・ビタミンなど、栄養的にみてサバに軍配があがることは明白だ。
<100g当りの成分比較表>

<100g当りの成分比較表>

 価格が安くて(1匹丸ごと買っても200円くらい)、しかも栄養豊富なサバをスポーツマンの体力づくりに見逃がすべきではない。今月は、うまいサバの料理法について述べよう。

2.まるごと利用しよう

 「近ごろの主婦はなっていねえや。魚を買いに来ても、ポリエチレンで包装してある切身を持っていくだけ。台所で包丁を使って料理するのがめんどうなのか、こわくてできないのか、全然やりゃしねえ。イヤになっちまうぜ」と魚屋の兄さんたちは口をそろえてこぼす。

 確かに観察していると、まるごと買ってゆくのは年配客ばかり。若奥さんはスーパーにいって、パックに包んだ調理ずみの魚しか買わないようだ。

 これでは料理の腕がおちるだけでなく、ミスミス栄養のある成分を失ってバランスの悪い食べ方になってしまっている。たとえば「アラ」と呼ばれる部分だが、血合肉はたんぱく質としていちばん良質で、ビタミンA・Dが多い。また魚の目の下のホホの筋肉や首すじに当る部分の肉は、魚の中でもっともおいしい部分だ。さらに魚の皮にはカルシウム・鉄・ビタミンA・B₁・B₂・Dなどが豊富に含まれている。

 小魚なら「骨まで愛してー」ではないけれど、骨の部分にカルシウムやリンが含まれて、コリコリかじって食べるほうが体にいいことは周知のとおりである。

 つまり食物は、丸ごと全体を食べる場合に、いちばん有効に栄養素をとることができるわけだ。最近の風潮のように部分的に切身を買って食べることは、経済的にも栄養的にも無駄をしていることになる。

 「よおし、女どもがだらしがないならオレたちが自分でやるぞ!」というくらいの気概をもって、親愛なるサバくんと付きあってほしい。

3.良いサバの見わけ方

 鮮度が落ちると、魚はまずいだけでなく、栄養価が下がり、おまけに食中毒の危険をともなう。一にも二にも新鮮なサバを買っていただきたい。

 よいサバの見わけ方を教えよう。

㋑魚の目をにらんで、トロンと白く濁っている魚は失格。キラキラと鮮やかな目の色をしている魚が合格。

㋺背びれや皮の色が、ツヤツヤと鮮やかなこと。

㋩ウロコがはげないでしっかりついていること。

㋥表面がヌルヌルした感じで、プーンと異臭がする魚はさけること。

㋭手に持ったとき、ズシーンと重量感がある魚は新しい。

㋬指でさわって、プリプリした強い弾力感がある魚は新しい。ブヨブヨした魚は危険。

 魚屋の店頭にゆけばわかるが、生きの良い魚に見せようと、バシャバシャ水をかけていることが多い。できたら氷の中から出してすぐの魚を買求めるのが賢明だ。

4.下ごしらえ

 こうして望ましい魚を手に入れたらさっそく下準備をしよう。まな板と包丁をご用意いただきたい。

㋑まず水道水でザーザーと全身をきれいに洗ってやる。

㋺頭の部分を横にスパッと切りおとす

㋩脇腹の内臓のある部分に包丁の刃をいれて、たてに切りさく。

㋥内臓を指でとりだし、水できれいに洗いながす。

㋭ついで、骨に沿って平行に刃をすべらして、魚を切りひらく。(2枚におろすという)

㋬片身ずつ2枚にし、これをそれぞれ半分に切る。(4切れできる)

㋣ふつうはこの状態で焼いたり、煮たりするが、しめさばにしたり、フライやフリッターにするときには、もう一方の片身の骨もとる。㋭に書いたように、包丁の刃を骨と平行にすベらしてゆき、骨の部分をとる。(3枚におろすという)

 さあこれで準備は完了だ。さほどむずかしくない。アラといわれる頭の部分や骨に少し肉がついた部分は捨てないでおこう。アラを利用した料理法がいくつかあるので試してみよう。

5.こんなにある料理法

 「サバが安くて栄養のあることは理解できたが、毎日毎日サバを食べると飽きませんか?」と心配する人があるのでは?もちろん毎日続くと飽きるけれど、サバの料理法はバラエティに富んでいる。「えっ、これがサバ?」とびっくりするくらい、うまーい料理をいよいよ作ってみよう。

㋑サバの塩焼き
 2枚におろして、2等分したサバの上から、食塩をパラパラとふりかけておく。フライパンにバターをひき、最初はフタをしないで、中火で3~4分間焼く。ついで裏にひっくりかえし、ふたをして、やや弱火で3~4分間焼く。これでもうできあがり。皿にうつして、レモン汁をジュジューとたっぷりふりかける。大根おろしをつくり、しょうゆをふりかけて食べてもよい。(魚焼きの金網を使って焼いてもいいが油が火にポタポタ落ちて、部屋中が煙だらけになる。最初はフライパンで焼くのが無難である)

㋺サバのみそ煮
 なべに、しゃもじ軽く一杯のみそ、スプーン一杯の砂糖を入れ、約50ccの水でといて、よくかきまぜておく。

 サバの生ぐささをとるために、土しょうがを5~6切れスライスしてなべに加える。

 2枚におろして、さらに2つに切ったサバをみそで浸して、コトコトと約10分間よく煮る。みそを全体によくまぶして、煮つめてゆくことがポイントである。これも簡単にすぐできる。

㋩シメサバ
 新鮮なサバを3枚におろす。キリッと身をひきしめるために、約1時間前に塩をパラパラとふりかけておく。

 サバに包丁をいれ、やや斜めに約5ミリの厚さでスライスしてゆく。

 カップ1杯(200cc)の酢に、小さじ2杯(10g)の砂糖を加え、よくとかす。こんぶ1枚をこの中にひたしておくと風味がいちだんとおいしくなる。

 さきほどスライスしたサバを一列に並べて、たっぷり酢に浸す。約3~4時間で酢がしみこんで、味のいいシメバができあがり―。

㋥サバのフライ
 3枚におろし、パラパラと軽く塩をふる。2つ~3つに切って、小麦粉・卵・パン粉をまぶしてフライの下準備をおこなう。フライパンに油を入れて、約170度までわかす。この温度になったら静かに、パン粉をまぶしたサバをすべりこませ、パチパチと約3分間フライする。パセリやキャベツをつけあわせにして、モリモリ食べていただきたい。

㋭サバのフリッター
 同様に油でフライする方法だが、サバは一口で口に入るくらいに、小さく切っておく。(えびフライくらいの大きさ)

 小麦粉を水にといて、天ぷらの衣をつくる。この中にサバを浸して、よく衣をきってから、同じく約170度の温度で、つぎつぎと揚げてゆく。

 いわば「サバの天ぷら」であるが、ケチャップ・マヨネーズ・からしをつけて、パセリやレタスと共に洋風に食べるところがおもしろい。

㋬サバ汁
 豚汁と同じように、人参・大根・サトイモ・ネギなどと、サバのアラ(頭や首、肉のついた骨)をグツグツとなべで煮る。基本は塩としょうゆであっさりした汁をつくることにあるが、好みにより、みそを少し加えたり、酒かすをまぜてもよい。

 だしがよく抽出されて、うまみの濃い栄養料理ができあがる。

㋣野菜とサバの煮もの
 ブリやハマチのアラは煮物によく使われるが、サバのアラもおいしい煮物ができる。適当な大きさにブツ切りにしたアラ・大根・人参などをなべに入れて、しょうゆ・砂糖でやや濃い味つけにする。ゴトゴト、グツグツと何時間も煮る。といっても単に火にかけておくだけで手数はかからない。
月刊ボディビルディング1978年7月号

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