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なんでもQ&Aお答えします 1978年8月号

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月刊ボディビルディング1978年8月号
掲載日:2018.07.31

体重を増やすトレーニング法は

Q ボディビル歴1年です。開始後3ヵ月で体重が4kg増加しましたが、それ以降は1kgしか増えません。私は体重の増加を目的としてボディビルを始めたのですが、この半年というもの全然体重が増えないので悩んでいます。

 この1年間に行なったトレーニングのプログラムと現在の体位は下記のとおりです。

<初めの5ヵ月間のスケジュール>
(隔日的、週3日)
①シット・アップ 3セット
②スクワット 4セット
③ベンチ・プレス 4セット
④ベント・オーバー・ローイング 3セット
⑤バック・プレス 3セット
⑥スタンディング・ロー 3セット
⑦カール 3セット

<6ヵ月目以後のスケジュール>
 体重を増やすことに重点をおいて大きな筋群のトレーニングに種目をしぼって行うようにしました。また学校が遠いため、時間的な関係で分割して行いました。トレーニングの日取は、週5日(水・木は休み)で下記のA、Bの2つを交替に実施しています。

A
①スクワット
 67.5kg 7~11回×5セット
B
①ベンチ・プレス
 47.5kg 7~11回×5セット
②チンニング 6~8回×4セット

<現在の体位>
身長 166cm 腹囲 68cm 体重 51kg 上腕囲 30cm 胸囲 95cm 大腿囲 50cm

 私の希望としては、なんとしても体重を60kgにしたいのですが、この半年間に体重が殆ど増えなかったのは、身体的に素質がないからでしょうか。生まれつき骨格の細い体質なので、いま以上に太るのは不可能でしょうか。それとも、トレーニングのやり方に問題があったのでしょうか。その点についてお答えください。
 (千葉県木更津市 安田孝)

 体重が思うように増えないからといって、その原因を単純に身体的な素質の有無に結びつけて考えるのは誤りです。体質的に太りやすい人とそうでない人がいることは確かですが、だからといって、あなたがいま以上に太ることができないという論拠はどこにもありません。

 生まれつき骨格が細いとのことですが、それもさほど気にすることではありません。1969年度ミスター日本の吉村太一選手をはじめ、骨格が細くとも大成したビルダーはたくさんいます。こういってはなんですが、1年ぐらいの経験で素質を云々するのは早すぎます。もっと大らかな気持でからだづくりに取り組んでください。

 トレーニングによって得られる効果の度合は、もとより身体的な素質と無関係ではありません。しかし、この半年間、あなたの体重が増えなかった原因は、素質の問題だけでなく、トレーニング法と食生活の面にも問題があると思います。

 そこで、この2つの問題について検討してみることにしましょう。

①トレーニングの方法的な問題

 あなたは体重を増やす目的で、大筋群のトレーニングに種目をしぼって行うようにしたとのことですが、そのことには誤りはありません。「体重を増やすには大筋群を鍛練する」というのは、ボディビルの基本的な理論の1つです。

 しかし、実際に半年間そのような理論に基づくトレーニングを行なった結果、これといった効果が得られなかったのであれば、前記の理論をもう少し拡大して考えてみる必要があるのではないでしょうか。つまり、「大筋群のトレーニング種目にしぼって」ではなく、「大筋群のトレーニング種目に重点をおいて」というように考えてみてはどうでしょうか。

 あなたは現在、採用種目をスクワット、ベンチ・プレス、チンニングの3種目にしぼってトレーニングを行なっておられますが、それらの種目の他に採用種目をいくつか増やしてみてはいかがでしょうか。つまりスクワット、ベンチ・プレス、チンニングの3種目にしぼってではなく、それらの3種目に重点をおいたトレーニングを行なってみるということです。

 新たに追加する種目としては、バック・プレス(またはスタンディング・ローかフロント・プレス)、ベント・アーム・プルオーバー、カール、シット・アップ等が適当かと思います。

 あなたは現在、シット・アップをやっておられないようですが、この運動は、適度に行えば消化器の機能を促進するので、ぜひとも採用種目の中に加えることをおすすめします。

 なお、あなたはどちらかといえば変則的な日程でトレーニングを行なっておられますが、できるならば次に記すいずれかの日程に改められるのがよいと思います。

<例1>
第1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日
 A  B  休  A  B 休  休

<例2>
第1日 2日 3日 4日 5日 6日  7日
 A  B  A  休  B  A  休

②食生活における問題

 体重を増やすことを主な目的としてトレーニングする場合、食事の内容が大きなかかわりを有しています。

 体重を増加するためには体重の増加を促すための献立が必要であり、また筋の肥大を促し、筋力の強化を計るためには、そのことを意図した献立が必要です。食事の問題を無視しては、せっかくのトレーニングも、ときには徒労に帰すこともあります。

 といっても、単に献立だけの問題ではなく、必要な栄養素をいかに効率よく摂るかが大切です。栄養価の高いものをいくらたくさん食べても、それらが消化・吸収されなければ意味がありません。そのような意味で、場合によっては、食事の回数を増やしたり、間食をしたりして、一度にたくさん食べないようにすることも必要です。

 体重の増加と、からだの実質的な発達とは必ずしも一致しませんが、ただ単に体重が増えればよいというのであれば、カロリーの高い食事をとるようにすればよいでしょう。それも、からだの中で体脂肪に転化しやすい炭水化物を多く含む米飯、パン、めん類、いも類などを努めてたくさん食べるようにすることです。

 また、穀類や砂糖を主原料にした菓子類も体重を増やすには有効な食べ物なので、消化が可能な範囲で間食するとよいでしょう。

 あなたの場合、体重を増やすことがボディビルの目的のようですが、単に体重を増やすだけでなく、実質的なからだの発達をも共に促していきたいというのでしたら、上記の食べ物に加えて、肉、魚、卵、牛乳、チーズ、豆類等の蛋白質を多量に含む食品も併せて食べるようにしてください。

 蛋白質は、実質的なからだの発達といえる筋の肥大を促すのに不可欠の栄要素です。健康体を維持するためにはもちろん、ビタミンやミネラルも欠かすことのできない栄養素ですが、ビルダー的な男らしい体型をつくるには蛋白質を十分に摂ることが肝要です。

 以上、体重の増加を促すためのトレーニング法、および食事に関する問題について述べましたが、他に、あなたの場合、体重が増えなかった理由として時期的な問題も考えられます。

 というのは、あなたに限らず、誰にでもあることですが、体重の増加にしても、また、筋の肥大、および筋力の向上にしても、常にとどこおりなく効果があらわれるというものではありません。面白いように効果のあらわれる時期があるかと思えば、反対に、トレーニングと食生活の面で、いかに努力をしても、なかなか効果が得られないという時期もあります。

 だからといって、効果があらわれないからといってボディビルをやめてしまうのは、その後の、体位向上と体力強化の可能性を放棄してしまうことになります。何事にも辛抱が必要です。いま現在、思うような効果が得られなくても、2年、3年とじっくりトレーニングを続けていけば、必ずそれだけの効果は得られるものです。できましたら、1年後ぐらいに、もう一度その後の経過をお知らせください。

仕事とトレーニングを両立させたいが

Q 私はまだいくらもキャリアはありませんが、ボディビルが大好きです。そして、将来は一流ビルダーといわれるようになりたいと思っています。

 私の体位は、以前には身長が172cmで体重62kg、胸囲98cm、上腕囲37cm、前腕囲28cm、腹囲68cmぐらいでしたが、今はこれよりもはるかにおとろえています。

 というのは、今年の4月に職場を変わって以来、仕事がきつくてトレーニングをしていないからです。

 職種はパン屋の見習いですが、勤務時間が長く、その上、1週間ごとに昼夜二交替勤務なので、肉体的にも時間的にもかなりきついものです。

 昼勤は朝5時から夕方5時まで、夜勤は夕方5時から翌朝5時までですがその他、通勤時間もあるので、睡眠時間を確保するのがやっとです。寮の近くにジムがあるのですが、そのようなわけで入会することもできません。

 筋力にしても、以前はベンチ・プレスで90kgをやれましたが、今ではどれだけの重量があげられるかまるで自信がありません。そして、日ごとにおとろえていく自分のからだを見るにつけどうにもいたたまれない気持になります。といって、ボディビルをあきらめることもできず、思いあまって相談した次第です。なんとか現在の状態に対処できるよい方法はないものでしょうか。トレーニング法、食事法の両方についてアドバイスをお願いします。 (千葉県松戸市 T・Y 18歳)

 結論から申しあげますと、今の生活状態では、本格的なボディビルのトレーニングを行うのは無理といえます。仕事第一主義の人が聞いたら、「それほどまでしてボディビルをやることはない」というかも知れませんが、人にはそれぞれ生き方があると思います。

 もとより仕事についている以上は、その仕事をおろそかにすることはよくありませんが、現在の仕事を変えるかどうかはご自分で慎重に考えて決めてください。その結果、今の職場を変えないと決断したならば、当分の間はボディビルの本格的なトレーニングに対する執着心を断つように心がけてください。ずいぶんと酷なこととは思いますが、現在の生活に身体が順応し、体力的に余裕が生じてくるまでは、そうされることをおすすめします。そして今後はできるだけ栄養に留意して、その上で、健康法といった意味でのごく軽いトレーニングを行うようにしてください。

 では、そのような観点に立って、今後のトレーニングのやり方等についてアドバイスすることにしましょう。

◎栄養について

 まず、栄養に留意することが大切です。現在のあなたの日常生活は、時間的のみならず、肉体的にもかなりきついとのことですが、身体の消耗を軽減し、体力の回復を早めるには栄養価の高い食べ物をとることが必要です。ビタミン類やミネラルを多く含む新鮮な野菜や果物はもとよりのこと、良質の蛋白源である肉、魚、卵、牛乳、チーズ、豆腐、納豆などを努めて多く摂るようにしてください。

 したがって、職場や寮の給食で栄養が不充分の場合は、自分で副食物を補足するぐらいの心がけが必要です。また、勤務時間が長いので、できれば休憩時間に、胃に負担がかからない程度に栄養価の高いものを少量でも摂るようにするのがよいと思います。

◎トレーニングについて

 現在の仕事にも馴れ、また食生活を充実させることによって体力的な余裕が生じてきたら軽度のトレーニングを行うようにするとよいでしょう。しかし、この場合、トレーニングとはいっても、あくまでも現在の生活において体力的に負担にならない程度に行うようにしなければなりません。トレーニングの疲労が翌日まで残り、仕事をするのがつらくなるようではよくありません。また、そのようなことではトレーニングの効果もあがりません。

 条件的にいって、あなたのような生活事情では、体力的に負担にならない程度にトレーニングを行うのが効果をあげるのに最もよい方法であるといえます。そして、その結果得られる効果がたとえわずかであっても、そのことに満足して地道にトレーニングを続けるようにしなければなりません。はっきりいって、現在のあなたの生活事情では短期間に多大な効果をあげるのはとうてい無理なことなのです。そのへんのところをよく自覚してトレーニングするようにしてください。

◎トレーニングに関する要点

 次に、トレーニングを実際に行う場合の要点を述べることにします。

①当分の間はジムに入会するほどのこともないと思うので、寮でトレーニングするのがよいでしょう。したがって、採用種目は器具を必要としない運動の中から選んでください。

②採用種目は、最初は、シット・アップ(腹筋運動)、プッシュ・アップ(腕立て伏せをして腕を屈伸する運動)、ヒンズー・スクワット(重量を用いずにやるスクワット運動)の中から1種目だけを選ぶようにするのがよいと思います。そして、体力的に余裕が感じられるようになったら、それに応じて2種目にし、さらに余裕が出てきたら3種目を行うようにしてください。

③セット数は、初めのうちは1セットでよいと思います。

④トレーニングの週間頻度は当分の間2~3度がよいと思います。たとえば、昼勤の週は月・水・金、夜勤の週は月・木といったように行うのもよいでしょう。

 だいたい以上のような要領でトレーニングを行えばよいと思いますが、体調の悪いときには無理にトレーニングをしないようにしてください。

◎トレーニング・スケジュール(例)

 第1段階から第5段階までは昼勤、夜勤に関係なく週2回(月・木)、第6段階では、昼勤の場合は週3回(月・水・金)とし、夜勤の場合は週2回(月・木)とする。

<第1段階>

①シット・アップ 正確に行える回数を1セット

<第2段階>
①シット・アップ 2セット

<第3段階>
①シット・アップ 2セット
②プッシュ・アップ 正確に行える回数を1セット

<第4段階>
①シット・アップ 2セット
②プッシュ・アップ 2セット

<第5段階>
①シット・アップ 2セット
②プッシュ・アップ 2セット
③ヒンズー・スクワット 正確に行える回数を1セット

<第6段階>
①シット・アップ 2セット
②プッシュ・アップ 2セット
③ヒンズー・スクワット 1セット

 [注]ヒンズー・スクワットは、馴れれば非常に多回数の反復が可能になるので、常に、1セットでよい。

 以上のようにして第6段階までいったら、あとはジムに入会するなり、あるいはボディビル用具を購入するなりして、徐々に運動種目を増やしてトレーニングするようにしてください。もちろんその場合も、体力を過度に消耗させないように留意し、少しずつトレーニングの量と強度を増していくことが大切です。

トランク・カールとトルソー・テンション・1/4シット・アップについて

Q 腹筋の運動についてのお尋ねですが、トランク・カールとトルソー・テンション・1/4シット・アップとでは、運動法にどのような違いがあるのでしょうか。また、効果の面での違いはどうなのでしょうか。(山梨県大月市 清水登 19歳)

 トランク・カールとトルソー・テンション・1/4シット・アップとは、腹筋の運動種目としては同種類の運動です。双方の運動法上の類似点と相違点とを解りやすくするために、念のために両種目の運動法を記述しておくことにします。[写真参照]
[トランク・カール]

[トランク・カール]

◎トランク・カール

 床(または腹筋台)に仰臥し、背の下部が床(または腹筋台)から離れない範囲で、普通のシット・アップの途中までの動作を反復する。
[トルソー・テンション・1/4シット・アップ]

[トルソー・テンション・1/4シット・アップ]

◎トルソー・テンション・1/4シット・アップ

 床に仰臥し、膝を曲げた態勢で上体を起こす。姿勢の関係で途中までしか上体が起きないが、それでよい。運動時の体形がトルソー(胴体だけの塑像)に似ているところから、このような名称が付された。

 以上がトランク・カール、およびトルソー・テンション・1/4シット・アップの運動法です。そして、双方とも腹筋運動としては、腹直筋の上部から中央のあたりに集中的に効く運動であるといえます。したがって、インクライン・シット・アップやレッグ・レイズなどの一般的な腹筋の運動によって、腹直筋の上部および中央部の発達が思うように得られない場合は、これらの運動を補強種目として採用するとよいでしょう。

 なお、双方とも、上体を屈曲するときに、息を完全に吐き出すようにするほうが、腹直筋の収縮が強められるので効果的であると考えられます。
[解答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
月刊ボディビルディング1978年8月号

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