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★自分でつくる栄養料理シリーズ★⑩ スタミナ野菜いため

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月刊ボディビルディング1978年9月号
掲載日:2018.07.17
野沢秀雄(ヘルス・インストラクター)

1.サタディ・ナイトフィーバー

 “土曜の夜はフィーバーさ”というキャッチフレーズで、ジョントラボルタ主演の映画が各地で大ヒット。

 フィーバーという単語は、「狂熱」「熱狂」を意味しており、かっこよくいろいろなPRに使われだしている。

 もともとアメリカでは、フィーバーという言葉がよく用いられ、以前から「やせるフィーバーがアメリカ全土をおおっている」とか「やせる方法の大旋風がおこっている」と報道されていた。

 ボディビル運動も、アメリカでは「ややフィーバー気味」といわれ、シュワルツェネガーはじめ、一流選手たちがスクリーンやブラウン管のスターとして大活躍している。各地で開催されるコンテストの数が年ごとにふえ、観客がおしよせている。人気が高まっているわけだが、日本でも「ボディビル・フィーバー」がもっとおこってほしいものである。

2.Mr.東京・朝生選手の体験談

 健康体力研究所の研究会に、ゲストとして来場したミスター東京・朝生照雄選手が、トップビルダーになるまでの体験をくわしく話してくれた。その内容は非常に適切で、出席者に深い感銘を与えたが、ポイントをいくつか紹介しよう。

①ボディビルは70%まで精神力が支配する。「やる気」「集中力」が大切。

②毎日記録をつけていると、過去の進歩や現在の状況がよくわかる。

③スランプも人間だから当然ある。そんなときは他のジムを見学したりして発奮する。逆に「調子がいいな」と感じたときに力をがんがん伸ばしておくのがコツである。

④最初の3年間に70%くらいのびるが、それからあとパワーを伸ばしていくのが大変である。

⑤食べることにも「努力」が必要と思う。重量挙げの三宅選手は、ボールー杯の野菜を苦しんで食べたという。おいしい食品を食べるだけではダメだ。プロティンやサバの缶詰など利用しているが、毎日昼食にサバの缶詰1缶を食べ続けることはやはり大変である。これを乗りこえて、飽きずに毎日毎日食べることが成功の一つのカギだと信じている。

⑥コンテスト出場の直前に、無理な減量をしすぎると、当日舞台でポージング中に、筋肉がけいれんをおこして、思うように動けず、敗因になることがある。

 ―このような迫力ある話で、「さすがトップ・ビルダーだなあ」と感心した次第だ。

3.夏バテと油切れ

 夏の終りから秋にかけて、気温にムラがあり、「夏にムリした疲れ」が出やすい季節である。

 夏バテは誰にでもおこる現象だが、個人差があるのも事実である。

 そこでまず「なぜ夏になるとバテやすいか」「防ぐ良い方法は何か」について、ポイントを述べておこう。

①「気温32度以上、湿度80%以上になれば急に体内の生理機能がおとろえる」といわれる。この条件は「不快指数80」などといわれる状況に一致する。日本の夏は連日この条件になることが多く、全員がバテやすくなる。

②バテる原因に汗のかきすぎがある。牛乳・お茶・水・アイスクリーム・ジュース類・氷・スイカなど、飲みすぎ・食べすぎが原因になっていることがある。水分は控え目に。

③暑いときに筋肉を激しく使うと、発熱するために、体はよけいに汗を出して、蒸発熱を奪って「定温36~37度」に保とうとする。同じトレーニングするなら、夜少し涼しくなってからのほうが体には楽である。

④胃腸の働きが高温になるとにぶり、下痢などしやすくなる。とくに冷たい飲食物のとりすぎはマイナスである。「夏でも熱い麦茶に少量の食塩を加えて飲む」という運動チームがあるが、秋以後全員の体調はひじょうによく好成績をあげている。

⑤油やたんぱく質を多く含む食品は、「なんとなく重苦しい」感じがして「ひやむぎ」「そうめん」「もりそば」など淡白な食事をとりやすい。本当は夏こそ、しっかりと栄養ある食事をとらないと、ビタミンやミネラルが大幅に不足して、バテる最大の原因になる。

⑥食欲をなくしやすいが、そんなときは「カンキツ系」が役に立つ。

 つまり、あっさりした食事を毎日食べていると「油切れ」「ビタミン・ミネラル切れ」をおこす。「土用のうしの日」にうなぎを食べる習慣があるように、とくに暑い夏には体をベスト・コンディションに保つために、おいしい「スタミナ料理」を食べていただきたい。

4.特製・野菜いための作り方

 というわけで、今月は「たんぱく質・脂肪・ビタミン・ミネラル」など、夏から秋にかけて、体調をよくする栄養素が一度にたっぷりとれる「スタミナ野菜いため」をご紹介しよう。

 初心者でも簡単にすぐ作れるので、ぜひ「自慢料理」の1つに加えていただきたい。

<用意する道具>
フライパン・スプーン・はし・包丁・まな板

<材料2人前>
にんじん1/3本・キャベツ2枚・ピーマン4個・たまねぎ中1/2個・もやし少々(1/2山くらい)・ハム200g・にんにく1片・マーガリンまたは植物油・砂糖・食塩・こしょう・ソースまたはマヨネーズ

<作り方>
①まず、にんにくの皮をむいて、包丁で細かく刻んでおく。

②野菜を水でよく洗って、適当な大きさに切る。やや大き目に切ったほうがおいしい。

③フライパンにマーガリンまたは植物油を、スプーン2杯分入れて、火にかける。

④野菜のうち、組織が固くて煮えにくい「にんじん」「キャベツのしん」をフライパンに入れて、サッといためる。(にんじん・じゃがいもなど固い野菜から順に調理することはどの料理にも共通する原則である。おぼえておくとよい)

⑤次にスプーン半分の砂糖、耳かき1~2杯の食塩、追加としてスプーン2杯の油を加えてよくまぜる。

⑥ハムを適当な大きさに切って、フライパンに入れる。

⑦たまねぎ・キャベツを加える。

⑧最後にピーマンともやしを入れて、サッと軽くいためる。

 ーこう書くと大変のようだが、実際には5分~10分間ですぐにできる。

 はしでにんじんを突いて、柔かくなっていればOKだ。ピーマンやもやしは火にかけすぎると、水分が飛んでしぼんでまずくなる。そればかりでなくせっかくのビタミンや酵素が破壊されてしまうので、サッと軽くいためるだけでよい。

 ガスの火をとめ、こしょうをふりかけて味を見る。薄く感じても、好みにより、マヨネーズをかければ「うまーい」と感心する味になるから心配はあまりいらない。

5.食欲不振に「カンキツ系」

 「さわやかで清潔なカンキツ系を使おう」と男性化粧品メーカーがPRに懸命である。

 「カンキツ系? 知らないなあ」と最初思った人でも、CMをくりかえし聞き、街にあふれるポスターや週刊誌の広告を見ているうちに、「ああみかんやオレンジのことか」とわかってくる。くわしく分類すると、温州みかん(いわゆる普通のみかん)・夏みかん・伊予柑・ネーブル・グレープフルーツ・三宝柑・ぶんたん・ハッサク・レモン・ゆず・キンカン・バレンシアオレンジ・ポンカン・ライムなど、ひじょうにバラエティに富んでいる。

 特有の新鮮な香りと共に、クエン酸を主成分とする酸味とビタミンC・ビタミンA・果糖などの糖類・少量のアミノ酸が含まれていて、栄養的にみてたいへん興味深い食品である。

 とくに注目したいのは、夏バテで食欲がないとき、レモン汁をふりかけるとモリモリ回復してくることだ。

 ある有名なビルダーに「自分は無理に食べなくてはいけないと、毎日思うものの、いざ食卓につくと、予定の量はとうてい食べられない。ふつうの人よりも少ない量しか食べられない」と悩みを相談されたことがある。

 なるほど、メニューをきいてみると「大食漢」というほど食べようとしているわけではなく、食事量は激しいトレーニングの割に少なすぎる。これでは体がバテるのも無理はない。

 「レモンを利用するといい。ごはん・みそ汁・魚・肉・とうふ・納豆・野菜・そば・うどん……何でも食べるものにレモンをかけて食べるといい」と「アドバイスをし、体調をみることにした。

 1週間もたたないうちに、彼からの報告で「たいへん胃腸の調子がよくなった。体重も少しずつ増えてきた」と喜びの声である。

 このように「カンキツ系」は食欲増進作用があるので、ぜひ毎日1個は利用したいものだ。たんぱく質の分解・吸収にもよく役立つことが知られている。もちろん「野菜いため」をつくったときも、じゅうじゅうレモンをしぼって、たっぷりかけて食べるとよい。

 レモンが手に入りにくいときは、代わりに梅干しや酢を使用してもいい。食欲を高めて、胃腸強化に役に立つ。
月刊ボディビルディング1978年9月号

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