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☆第1回ミス実業団健康美コンテストに寄せて☆
女性の健康美とウェイト・トレーニング

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月刊ボディビルディング1978年11月号
掲載日:2018.07.10
日本ボディビル実業団理事 望月秀明

<1>はじめに

 去る9月10日、品川公会堂において第13回ミスター実業団コンテスト、ならびに第1回ミス実業団健康美コンテストが盛大に開催された。男子の部においては、すでに13年の積み重ねがあるため、各選手とも充実し、極めて高いレベルでその栄冠が競われた。とくに、壮年の部(35歳以上)では、48歳にもなる出場者がおり、驚くほどの肉体年齢の若さを感じたのは私だけではなかったと思う。
 今回、はじめての試みとして行われた、女子の部、第1回ミス実業団コンテストについては、各方面から注目されていたと思う。今や、バーベル等のウェイトを使用してのボディビルディング的トレーニングを行なっている女性は決して少なくない。その意味で、男性のボディ・コンテストと併催されたミス実業団コンテストは意義あることと思っている。以下、このミス・コンテストについて述べてみたい。

<2>健康美について

 「健康」という言葉は、日常われわれがよく使う言葉であるが、きわめて漠然としており、定義づけるとなるとなかなかむづかしい。
 広辞林によると、「健やか、じょうぶ、無病、達者」とあるが、WHO憲章ではもう少し具体的に、「単に病気でないというだけでなく、身体的、精神的、および社会的にも完全に良好な状態であることを言う」と定義している。つまり、病気をせず、精神的にも健全で、安定した社会生活を営んでいる状態を称して健康といえよう。
 また、ドイツの美学者バウム・ガルテシは「美とは人の心に満足や快感を与えるもの」と定義づけているが、この”美”の意味も、人により、あるいはその時代の背景や場所によっても当然異なってこよう。
 顔かたちやプロポーションがすぐれていることだけでなく、礼儀正しいこと(マナー)も“美しさ”に含まれることはもちろんである。いくつかの共通点はあるにせよ、室町時代や江戸時代に美人と言われた人が、現代の美的感覚にそのままあてはまるかどうかは疑問である。
 このような意味からも、ミス・コンテストは、たんに美女を選び出すだけではなく、現代における個性的な理想の“美”の形象を追求していくところに意義があると思う。

<3>プロポーションについて

 世界最高のプロポーションは、ミロのビーナスやマリリン・モンローなどとよく言われるが、たんにサイズだけを争うのであれば大きい方が有利だし顔かたちを云々するのであれば、それは、生まれながらにしてほぼ決ってしまう。また、年齢的にも、女性としての成熟期に近いほど美しいに決っている。
 しかし、このような1つ1つの要素について“美”の優劣を論義するのではなく、それらすべてのものを包含した、からだ全体からかもし出される健康的な美が、現代的な美の感覚ではないだろうか。
 とりわけ、日本人は日本人としての個性的な美しさがあるであろうし、それが、時に見る人の心に満足や快感を与え、審美的な美しさを生み出すことが出来る。つまり、身長や体重、体型に比例したバランスのよい肉体と、精神面でのゆとりのある健康美が要求される。
 したがって、上体のサイズに比例してウェストが太すぎたり、脚が細すぎたりすれば、当然、減点の対象となろう。ここに、トレーニングの必要性が生じてくることは言うまでもない。
 すでに欧米諸国では、女性が健康と美しさを求めてウェイト・トレーニングを実践することは常識にさえなっている。女性がボディビル的なエクササイズを行なっても、男性のように筋肉隆々とならないのはご承知のとおり。むしろ、負荷をかけての運動は、時としてその効果を早めることが多い。

<4>マナーについて

 人が歩くということは、それ自体に動線の美しさがある。座る時、静止した時の状態もまたしかり。マナーの良し悪しは、その人がふだんいかに正しい基本に心を配り、それをしっかりと身につけているかどうかで決まる。コンテスト会場で、いきなり良く見せようとしても、やはり、ふだん身についたものでなければ、どこかで必ずボロが出てしまう。
 歩き方1つを見ても、正しい歩き方はなかなかむづかしい。視線、顔の表情、手の振り方、歩幅等、正しい姿勢で歩く練習がいかに大切かはコンテストを経験した人なら誰でも強く感じたことと思う。
 今回の健康美コンテストの採点基準では、100点満点中、マナーが30点となっているが、この中には、いわゆる知性美も含まれている。審査員との質疑応答の中で、ちょっとした言葉の表現にも、その人の人柄が現われるものである。むづかしい質問や、ちょっと意地悪な質問に、モジモジしたり、うつむいてしまったり、舌を出したりした人はさすがにいなかったが、やはり人との応対は明るく、正しく、はっきりと、しかも、女性らしさを失なうことなく、相手に対してさわやかな好感を与えることが大切である。

<5>トレーニングの効果

 女性の場合、必ずしも男性と同じように、あまりに重い重量を使用してトレーニングする必要はないが、身体各部の矯正をして美しさを保つためには何らかのトレーニングは欠かせない。つまり、規則正しい日常生活、バランスのよい食事、適度な運動の上になり立つ精神的な自信やゆとりが、健康美を維持するのに欠かすことのできない条件である。
 今回の第1回ミス実業団コンテストで優勝した大島幸子さんは、石崎光子フレッシュ体操アカデミーにて、週5日、1日2~3時間のトレーニングを行い、多い時は1時半の練習コースを3回もこなすことがあるという。ウォーキラン、ビューティサイクル、シット・アップ、スクワット、ダンササイズ等のエクササイズを行なった結果、身長164cm、体重50kg、バスト84cm、ウエストは半年で6cmも減って58cm、ヒップ88cmという美事なプロポーションづくりに成功したのである。

<6>おわりに

 健康美の大切なのは必ずしもミスに限ったものでないことは当然で、将来はミセスの部を設けるか、あるいは両者をいっしょに含めた「ミズ・コンテスト」にしたいと考えている。
 このたび、日本ボディビル実業団が女子の部を設けたのは、たんなる興味本位的なものではなく、真にボディビルを通して健康と美しさを磨き上げた人たちの発展を祈り、今後より多くの人がこの大会に参加して、女性の健康美を競っていただきたいと願ってやまないからである。
左からミスター実業団青年の部優勝・朝生照雄選手、ミス実業団優勝・大島幸子さん右端はミスター実業団壮年の部優勝・梅村輝雄選手

左からミスター実業団青年の部優勝・朝生照雄選手、ミス実業団優勝・大島幸子さん右端はミスター実業団壮年の部優勝・梅村輝雄選手

月刊ボディビルディング1978年11月号

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