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‟オートミールとビタクランチ″

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月刊ボディビルディング1974年6月号
掲載日:2018.09.03
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野沢 秀雄

〈駅の立ち喰いソバがはやるのは〉

 朝のふとんから起き出すまでの5分間は,まさに昼間の一時間に相当する……。こんな実感を持っている人は多いと思う。日本でもマイホームがだんだん遠のいて,サラリーマンを対象にした訓査では,都心の会社まで片道一時間以上かかる人が全体の約1/3にのぼっている。

 それだけ朝の時間帯にしわよせがくるわけで、寝床から起きて洗顔と着替えに5分,朝食に5分,計10分間で玄間から飛び出す人が多い。朝食に5分かけられる人はまだよく,4分,3分,2分………,ついに0分となり,かくて駅のミルクスタンドやそば屋が繁盛することになる。住宅政策の貧困がサラリーマンを苦しめ,スタンド業者を儲けさせているわけだ。

<アメリカの朝食戦争>

 ある銀行で女や行員にアンケートをとったところ,42%の女性が朝食抜きで出勤しており、いくら美容にいいといってもこれでは健康を損い,みもふたもなくなる,と勤労担当者はあわてたという。実際女性の血液を調べると比重が1,052以下の,いわゆる血液の薄い人が多く,日赤血液センターではくわしい栄養アドバイスを与えて注意をうながしている。

 小中学生の間でも体力のない生徒がふえているので先生が尋ねると,母親が朝寝坊して朝食をつくってくれないケースがふえており,これでは学校でいくら栄養知識を与えても何にもならないわけだ。

 さて,こんな事情はアメリカでも同じこと。刺食を短時問に,おいしく,しかも安く愈べられるようにとキャンペーンが開始された。それに応じて多数のメーカーが朝食用食品を発売したのだが,その競争は激烈をきわめ,「朝食戦争」といわれている。

<オートミールとビタクランチ>

 この朝食戦争に勝ち残ったのはオートミールとビタクランチだ。オートミールは燕麦を蒸して圧縮したもので,せんいが消化されやすくなっているほか,たんぱく質含有量が米・小麦・大麦などに比べて3割程度多い利点がある。さらにカルシウム・鉄・りん・ビタミンBI・B2・ E・二コチン酸に富んでいるので,栄養価値が高いわけだ。

 ビジネスホテルなどで朝食にオートミールを出しでくれるところがあるがこれはグツグツ数時間煮たもので,非常に手数がかかっている。朝食用オートミールは冷たい牛乳やフレッシュジュースをかけるだけで,インスタントに消化しやすい状態になるものだ。

 ビタクランチはこのオートミールをさらに加工して、小麦胚芽・はちみつ・アーモンド・三温糖などを配今し,オーブンでパリッと焼きあげたものでフレーク状になっている。100g 当り約400カロリー,純たんぱく質10~12gを含んでいる。この製品がアメリカでベストセラーになり,日本でも青山や原宿,赤坂などの外国人の多いスーパーで販売されている。

<朝食に150円かけるなら>

 喫茶店のモーニングサービスは,コーヒーにトースト・玉子一個で最近は180円。これで約350カロリー,たんぱく質15g程皮だ。また駅で150円奮発して天ぷらソバを食べても, 334カロリー,たんぱく質12.8g程度の計算になる。

 いまビタクランチ80gと牛乳1本を食べるとすれば, 438カロリー,たんぱく質14.6gをとることができ,これで120円くらいですむ。ボリュームがそれほど多くないので,5分くらいで食べられる。ただし毎日食べるのはあきるので,トレーニング前やトレーニング後の間食に使用したり,就寝前の夜食に食べたりするとよい。また,みそ汁に入れてみるのもよい。いずれにしろ,独身生活者には手軽で便利である。

 朝食が充実している人は一日の生活に活力があふれ,元気で快活な生活が約束されるのに対し,朝食を軽視する人は疲れやすく,気力に欠けることは明白である。もし自分に体力をつけたいと思ったら朝食を充実させることを考えてはどうだろうか。

 食事療法の効果はボディビルのトレーニング同様に,3ヵ月くらい続けたときに効果が出てくる。いっもより起床時間を30分だけ早くし,朝食をおいしく食べるだけで,イメージチェンジができるのだ。

<ドリンク剤の効果のほどは?>

 最後に駅で見かけるもう一つの風景……,ドリンク剤をググツと飲みほすことについて感想を述べたい。

「よお,お疲れさん!」とか「メガネがずりおちるよ」など,テレビのコマーシャルがゆきとどいて,つい150円~200円を投じてアンプル剤や小びんを買ってしまう人が多い。これらの成分は漢方薬のエキスや朝鮮人参,クエン酸などの酸味料,ビタミンやミネラル等であり,それなりの意義は確かにあろう。だがカロリーやたんぱく質の点ではまったく問題にならない。一本lOOccを飲んでも,せいぜい60カロリー,純たんぱく質2~3gといったところだ。だから栄養剤という名称は,ちょっとまちがいをおこしやすいわけだ。たとえば,朝食の代わりに一本飲めば大丈夫というわけにはゆかずエネルギーとなるべき炭水化物や,体を構成するたんぱく質がどうしても必要なのだ。これらが無ければ,いくらビタミンやミネラルを摂取しても身体にプラスにならない。ちょうどガソリンが無ければ,いくらアンチノック剤や不凍液を与えても車が走らないのと同様である。

 食品の価値は総合的,かつ多角的にみないとダメなことを忘れないでほしい。
月刊ボディビルディング1974年6月号

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