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なんでもQ&Aお答えします 1980年5月号

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月刊ボディビルディング1980年5月号
掲載日:2019.10.18

大腿部の形を整え、迫力をつけるには

Q ボディビル歴は6年、勤務先の同好会でトレーニングしています。実は昨年、県のボディ・コンテストに出場しましたが、その結果は残念ながら予選落ちでした。なんとか決勝には残れるのではないかと思っていたので、いくぶん自信の鼻をそがれたかの感もあり、出場したことを悔やみましたが、今では出場してむしろよかったと思っています。

 というのは、コンテストに出場したことが刺激となって、以前よりもトレーニングに対する意欲が出てきたからです。そのようなわけで、これからはコンテスト・ビルダーとして本気になって頑張ってみるつもりです。

 ところで、同好会の仲間の意見によると、私のからだは上半身に比べて下半身の印象が弱いとのことです。なかでも大腿部の迫力が欠けるとのことです。サイズ的には、身長167cmに対して59cmあるので、それほど細いとは思いませんが、どうもいまひとつ大腿部のかたちがピリッとしません。仲間の意見によると、その原因は、大腿部の前面の発達が弱いことと、カットが足りないことにあるとのことです。

 私は現在、大腿のトレーニングとして、フル・スクワットとレッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーンを行っていますが、このままの方法で上述の欠点を解消することが可能でしょうか。

 大腿部を鍛練するための器具としては、レッグ・フレクション・マシーンとスクワット・スタンドしかないのでいろいろやりたいと思っても運動の種類が限られてしまいます。とはいうものの、もしも手持の器具で行える効果的な運動があれば教えてください。

(神戸市 F・B 会社員 25歳)
A まず、質問に対しては一応可能であるとお答えしておきましょう。しかし、設備の点を考慮したとしても、現在の方法が大腿の欠点を解消するのに最善の方法であるかどうかについては多少疑問を感じます。

 現在、大腿部のために2種目採用されているとのことですが、そのうち、フル・スクワットについては、おそらく初歩的な段階からずっと採用していたものと思います。とすれば、フル・スクワットをずっと行ってきたにもかかわらず、大腿部が今のような印象の弱い形に発達したということになります。ということは、このままフル・スクワットを続けていっても、果たして大腿部があなたが望んでいるような形になるかどうかは疑わしいといえます。

 それでは一方の、レッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーンが、フル・スクワットの不備な点をカバーして大腿部の欠点の解消に有効かというと、そんなに取り立てていうほどの効果は期待できなのではないかと思います。したがって、上述のことがらを考慮すれば、現在、あなたが実行しておられる方法にはいささか疑問がともなうということがいえると思います。

 では、問題を解消するための実技的なことがらにつかて述べていきます。
 スクワットは、運動時のフォームの違いによって大腿部における効果が異なってきます。傾向として、両膝の間隔を狭くして運動を行うほうが大腿部の前面により有効なようです。

 あなたの場合、どのようなフォームでフル・スクワットを行っているのか判りませんが、大腿部の前面の発達、により有効と考えられるスクワットのやり方を一応、説明しておくことにしましょう。
〔スクワット・ウイズ・フィート・パラレル〕

〔スクワット・ウイズ・フィート・パラレル〕

◎スクワット・ウイズ・フィート・パラレル〔写真参照〕

<かまえ>
バーベルを肩にかつぎ、左右の爪先を開かずに、両足を並行にして立つ。この場合、両 足の間隔は腰の幅くらいか、あるいは、それよりも少し狭くする。

<動作>
左右の大腿部が常に並行を保つように留意してスクワット運動を行う。運動中に両膝が 開くと大腿部の前面に与える効果が減ずる。

 この運動は、脚を深く屈しにくいが、重心を踵にかけ、腰背部が湾曲しない範囲で、できるだけ深くしゃがむようにする。踵の下に適当な厚さの板を敷くと運動がやりやすくなる。
 次に大腿部前面のカットを強化する方法について述べることにします。
 あなたが現在採用されているレッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーンは、通常的には、大腿部前面のカットを強化するのに適した運動であると考えられていますが、実際には、とくに取り立てていうほどの効果は期待できないようです。
 というのは、レッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーンのような運動は、脚の伸展動作を行う際の大腿部に対する運動負荷のかかり方が、膝に近い部分の強化には適していても、大腿中腹部前面のカットを強化するにはあまり適していないように思われるからです。

 大腿部中腹部前面のカットを積極的に強化するには、レッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーンのような膝を完全に伸展したときに強く負荷がかかる運動ではなく膝を屈している状態で大腿部により十分な負荷がかかる形式の運動を行う必要があるといえます。

 したがって、同じレッグ・イクステンションでも、レッグ・フレクション・マシーンで行う運動よりも、アイアン・シューズを用いて行うライイング・レッグ・イクステンションのような運動の方が大腿中腹部前面のカットの強化にはより有効であろうと考えられます。

 ライイング・レッグ・イクステンション・ウイズ・アイアン・シューズについては後で説明しますが、その前にあなたの意向にそって、現在の設備の範囲で行える運動法を紹介することにします。

◎パートナーの助力による
レッグ・イクステンション・オン・レッグ・フレクション・マシーン

 膝が深く屈している状態で大腿部により十分な負荷が与えられるようにするためにパートナーの助けを借りて運動を行う。

<かまえ>
普通の場合と同様に、レッグ・フレクション・マシーンに腰をかけ、足を下段のロール の下に差し入れる。このとき、パートナーは上段のロールの縁をつかんで負荷を与える 準備をする。

<動作>
パートナーに負荷を与えてもらいながら、ていねいな動作で脚を伸展させる。パートナ ーは、運動の実行者がスムーズに動作が行えるように上手に力を配分して与えるようにする。

<注意>
大腿中腹部に重点的に効かすのであれば、あえて脚を完全に伸ばすようにしなくてもよ い。
 なお、パートナーの負担を軽くするために、ある程度の重量(プレート)をあらかじめ マシーンにセットしておくとよい。

◎ライイング・レッグ・イクステンション・ウイズ・アイアン・シューズ

<かまえ>まず、アイアン・シューズを足にはいて床に仰臥する。次に片方の脚を手前に引き寄せ、足を床から浮かして両腕で大腿部を抱える。

<動作>
両腕で大腿部を固定しながら脚を深くまずた状態から、膝を支点にして下腿を上方へ伸展させる。この場合、大腿部を垂直な状態にするよりも、いくぶん向こう側へ傾斜させるほうが、大腿中腹部を行為範囲に刺激できるようである。
 また、大腿中腹部に重点的に効かすのであれば、強いて脚を完全に伸ばす必要はない。
以上がアイアン・シューズを用いたライイング・レッグ・イクステンションの運動ですが、アイアン・シューズのない場合には、パートナーに負荷を与えてもらいながら、同様の動作で運動を行なってもよいと思います。

器具なしか、エキスパンダーを使って簡単にできるトレーニング法

Q ボディビル歴1年2ヵ月、自宅で1人でトレーニングしています。仕事の関係上、私には2ヵ月に一度の私で7~10日間ほどの出張があります。そのようなわけで出張中は、やむを得ずウェイトのかわりにエキスパンダーを使って、下記の内容のトレーニングを行うようにしています。

◇出張中のトレーニングコース
(註:初めの3種目目は「器具なしの種目です」)

(1)シット・アップ(腹)
(2)プッシュ・アップ(胸)
(3)シングル・レッグ・スクワット(脚)
(4)フロント・プレス(肩)
(5)ストレート・アーム・フロント・プレス(肩・上背)
(6)ダウンワールド・プル(広背)
(7)カール(上腕二頭筋)

 ところで、ご覧になってお解りになると思いますが、上記のトレーングコースには上腕三頭筋の運動と腰の運動が入っていません。それにダウンワールド・プルのみでは後背筋の運動もいまひとつの足りなさを感じます。バーベルを用いるトレーニングと同じというわけにはいかないにしても、もう少しトレーニングの内容を充実させたいと思います。

 「エキスパンダー種目」または「器具なし種目のどちらでも結構ですから上述の不備な点を補える運動がありましたらご紹介ください。

(鳥取県 佐藤 兼昭 会社員 27歳)
〔フレンチ・プレス・ウイズ・ケーブル〕

〔フレンチ・プレス・ウイズ・ケーブル〕

〔シーテッド・ラバー・プル〕

〔シーテッド・ラバー・プル〕

A 2ヵ月に一度の割で7~10日の日程でしたら、思い切ってその間をレイ・オフの期間に当てるのもひとつの方法であろうかと思います。しかし、あなたの意志が、現在のところトレーニングを行うことにあると思われるので、強いてすすめるということではありません。

 それでは、補充種目を部位ごとに順を追って紹介しますので、採用する種目を適当に選んでください。

◇上腕三頭筋の運動
◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ

<動作>
普通の場合よりも両手の間隔を狭くしてプッシュ・アップの動作を行う。上腕三頭筋の筋力が弱い場合には、両手の間隔を肩幅よりも狭くする。床に膝をつくか、あるいは机など高いところに両手をつき、腕にかかる負荷を軽減して運動を行うようにしてもよい。

フレンチ・プレス・ウイズ・ケーブル〔写真参照〕

<かまえ>
エキスパンダーを背のうしろでタテにかまえる。
<動作>
上方の上腕部を垂直に固定した状態で、肘を支点にして前腕を伸展させてエキスパンダ ーを伸ばす。上腕部を動かすと効果が半減するので注意。

◇腰の運動
◎バック・イクステンション

<動作>
床に伏臥し、下腹部を支点にして状態と脚を浮かし、からだ全体をできるだけ上へ反ら す。多少いきおいをつけて行ってもよいが、反らしたあげたときに、その体勢を一瞬維 持するようにする。

◎倒立した状態で行うリア・レッグ・レイズ

<かまえ>
壁に接近して頭と両手による三点倒立をし、臀部を壁に寄りかける。この場合、頭の位置が壁に近すぎると、次に説明する動作がやりにくくなるのでその点を配慮する。

<動作>
壁に臀部を寄りかけたまま、上に伸ばした両脚を腰をまげながら床の方へゆっくりおろし、おろしたなら元の位置へ上げ戻す。腰背部の筋力が弱い場合には、両股を左右へ拡げ、その状態で脚を上げ下げすると負荷が軽減できる。しかし、いずれにしてもクビで体重を支える運動なので、より慎重に動作を行う必要がある。

◇広背筋の運動
◎フロア・プル・ウイズ・ケーブル

<かまえ>
両脚を前方に伸ばして床に座り、エキスパンダーの一方の把手を片方の足にひっかけ、もう一方の把手を上記の足と同じ側の手で握る

<動作>
腰を90度にまげ、上体を垂直に固定した状態で肘を後方へ引き、エキスパンダーを引き伸ばす。エキスパンダーを引き伸ばすときに、腰をひねったり、腰背部の力を必要以上に使ったりすると効果が減ずる。肘による引き運動だけでエキスパンダーを引き伸ばすようにする。

 この運動は、背の低い人(必然的に脚が短いと考えられる)の場合には、運動の範囲が小さくなるのが難点である。したがって、そのような場合には、自転車の古チューブを利用して行うシーテッド・ラバー・プルという方法もある〔写真参照〕。このやり方はチューブの中央を両足に引っかけその両端をそれぞれ左右の手で握り左右同時に引き運動を行うようにする。

ボディビル歴1年4ヵ月、15種目を採用するとしたら、どんな運動がいいか

Q ボディビルを始めてから1年と4ヵ月になります。これまではのんびりとした気持ちでトレーニングをしてきましたが、それも開始当初に比べると、からだつきも2まわりほど大きくなり、筋力もぐんと強くなりました。そのようなわけでこれからは少し気を入れてトレーニングをしていこうかと考えています。

 私は現在、8種目の運動を採用していますが、さし当たりそれを15種目ほどに増やすことを検討しています。自分なりにあれこれと採用を希望する種目をピック・アップしてみましたが、その結果、欲がからんで種目の数が多くなりすぎ、どうも15種目ほどにしぼりきれません。

 そこでお願いですが、私に適すると考えられる種目を下記のリストの中から選んでいただけたらと思います。

<胸>
(1)ベンチ・プレス
(2)ダンベル・ベンチ・プレス
(3)ラタラル・レイズ・ライイング
(4)インクライン・プレス
(5)バー・ディップ
<肩>
(1)フロント・プレス
(2)バック・プレス
(3)オールタ―ニット・プレス
(4)サイド・レイズ
(5)シュラッグ
<背>
(1)バーベル・カール
(2)インクライン・ダンベル・カール
(3)コンセントレイション・カール
(4)サム・アップ・カール
<上腕二頭筋>
(1)トライセプス・イクステンション
(2)トライセプス・イクステンション・ライイング
(3)トライセプス・プッシュ・アウエイ
<腰>
(1)デッド・リフト
<脚>
(1)スクワット
(2)カー・フレイズ
<腹>
(1)シット・アップ
(2)ベント・ニー・シット・アップ
(3)レッグ・レイズ

◎現在の体位
記事画像4
(東京都町田市 渡辺 保 22歳)
A 種目の選択にあたっては、かなりのベテランでも苦労するものです。とかく運動種目に対する執着心から、予定よりも種目の数が多くなりがちになります。とはいえ、ボディビルというものは、採用種目を多くしさえすれば効果があがるといったものではないので、無制限に数を増やすわけにはいきません。したがって、採用種目を決める場合には、そのような意味での自粛と、余分な種目に対する思い切りが必要です。

 それでは、あちたのご依頼にお答えすることにしましょう。
 15種目の運動を選択する前に、まず各部位ごとにトレーニングの根幹となる基礎的な運動を1種目ずつ選び出してみることにします。

<胸>――ベンチ・プレス
<肩>――バック・プレス
(中級以上の段階を考えてフロント・プレスではなくバック・プレスとした)
<背>――ベント・オーバー・ローイング
<上腕二頭筋>――バーベル・カール
<上腕三頭筋>――トライセプス・イクステンション・ライイング
(スタンディングに比 べて、どちらかといえば動作が正確に行いやすいという意味でラ イイングを選ぶ)
<腰>――デッド・リフト
<大腿>――スクワット
<腹>――シット・アップ

 以上、基礎的な運動だけで9種目になります。したがって、問題は残りの6種目にどのような運動を選んだらよいかということになります。

 ところで、大腿、下腿、腰の3部位に関しては、いまの段階では各1種目ずつでもこと足りると思われるので、問題はさらに残りの6部位の運動を選ぶことにしぼられると思います。それでは、そのような考えに添って残り6種目の運動を選んでみましょう。

<胸>――バー・ディップ
  (運動時における大胸筋の作用の仕方がプレス系統の運動といくぶん異なる事を考慮 してこの種目を選ぶ)
<肩>――オールタ―ニット・プレス
  (中級以上とはいえ、まだバルクをつける段階を終えたとは思えないので、この種目 を選ぶ)
<背>――チンニング
  (広背の上部と大円筋を強化する意味で、この種目を行う必要があると思う)
<上腕二頭筋>――インクライン・ダンベル・カール
  (まだまだ、バルクを増す必要があると思われるので残りの中では基礎的な運動と考   えられるこの種目を選ぶ)
<上腕三頭筋>――トライセプス・インクステンション・スタンディング
  (プッシュ・アップはもう少し上の段階で行うのに適した運動と考えられるのでこ   の種目を選ぶ)
<腹>――レッグ・レイズ

 では、次に、トレーニング・コース例を記しておきますので、種目の順番を決める場合の参考にしてください。

◇コース例(その1)

(1)ベンチ・プレス
(2)バー・ディップ
(3)バック・プレス
(4)オールタ―ニット・プレス
(5)ベント・オーバー・ローイング
(6)チンニング
(7)バーベル・カール
(8)インクライン・ダンベル・カール
(9)トライセプス・イクステンション・スタンディング
(10)トライセプス・イクステンション・ライイング
(11)スクワット
(12)カーフ・レイズ
(13)デッド・リフト
(14)シット・アップ
(15)レッグ・レイズ

〔註〕スクワットの前にデッド・リフトを行うのは、固有背筋を疲労させ、スクワットの際に腰を損傷する危険性が増すと思われる。したがって、デッド・リフトはスクワットを終えてから行うようにするほうが安全と考えてコースを組んだ。

◇コース例(その2)

記事画像5
〔註〕(11)と(12)、(13)と(14)はそれぞれスーパー・セットそして行う。腹部の運動を最初にもってきたのは、冬期などにおいて、準備運動に引き続いてウォーム・アップをより一層高めるためである。次いで脚の運動をもってきたのは、体力が消耗しないうちに比較的、体力的な負担の重いスクワットを済ましておくためである。

 コース例(その1)と比べて、肩と背の運動を逆にしたのは、胸の運動によって上腕の伸筋、すなわち、上腕三頭筋が一時的に疲労し、肩の運動がやりにくくなるような場合を考慮したためである。

〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生〕
月刊ボディビルディング1980年5月号

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