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誌上コーチ 部分的トレーニング法
背のトレーニング法

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月刊ボディビルディング1979年5月号
掲載日:2018.11.19
モデル●NEトレーニング・センター=山室益祥

竹内 威
 背には広背筋、大円筋、棘下筋、菱形筋、僧帽筋、仙棘筋等、さまざまの筋があるが、トレーニングに際しては広背と上背の2つの部位に大別して行うようにするのがよい。

広背の運動における要点

 広背の部位には広背筋と大円筋とがある。
 広背筋の発達は、傾向として、上部は比較的容易といえるが、下部には困難がともなうようである。
それというのも、上部に対してはごく自然な動作で容易に刺激を与えることができるが、下部に対しては、動作的に多少拘束された運動法によって意識的に刺激を与えるようにしないと、十分な刺激を与えることができないからである。
 したがって、広背筋のトレーニングは、基礎的な段階を終えたならば、ただ漠然として行うよりも、意図的に上部と下部に区分して行うほうが効果をあげるうえにおいて得策といえる。

広背筋の上部のための要点

①ローイング系統の運動
 この種の運動は、背を湾曲させ、両肩を下方へおとした状態で重量を引きはじめ、引きあげるにつれて背すじを伸ばすようにする。
ただし、背すじを伸ばしたときに、上体を起こしてしまっては効果が減少するので注意。

②チンニング系統の運動
 この種の運動は、左右のグリップの間隔を広くするほうが効果的である。
ただし、あまり広すぎては広背筋の収縮が制限されるので、この点に留意して間隔を定める必要がある。

③ラット・マシーンによる運動
 この種の運動は、チンニング系統の運動と同様な点に留意して行えばよい。
が、上方、もしくは斜め上方からバーを引くようにするのが効果的と考えられる。

大円筋の発達と広背筋の広がりのための要点

①ローイング系統の運動
 背を湾曲し、両肩をできるだけ深くおとしたままの状態で重量を引き上げるようにするとよい。
 
②チンニング系統の運動
 左右のグリップの間隔をワイドにして、上体を垂直に引き上げるようにする。
 
③ラット・マシーンによる運動
 左右のグリップの間隔をチンニングの場合と同様にワイドにし、バーを頭上から垂直に引きおろすようにするのがよい。

広背筋の下部のための要点

①ローイング系統の運動
 この種の運動については、肩を前の方(首の方)へすくめないように留意し、十分に後方へ引きつけた体勢で重量を引きあげる。
また、引きあげるときに両肘をできるだけ後方へいくようにし、シャフトが腹部の下(片手の場合は脇腹の横下あたり)へくるようにする。
この場合、手首を巻き込むようにして重量を引きあげると、肩が前方へ出やすくなるので注意する。
 広背筋の運動というものは、すべて、腕の力をできるだけ使わないようにして、附で重量を引くようにするのがよい。
 なお、広背筋の下部に効かす場合は、肩甲骨を正常な位置に固定させた状態で動作を行うようにするのがよい。
 
②チンニング系統の運動
 この種の運動においては、胸を張り、背をできるだけそらし、上体をのけぞらすようにして引きあげるのがよい。
このような姿勢を保つためには、下半身の力をできるだけ抜くようにする必要がある。
そして、引きあげたときに、運動の重心がなるべく上体の下部の方へいくようにする。
 なお、体を引きあげたときに、バーにからだが触れなくても別にさしつかえない。

③ラット・マシーンによる運動
 上体をチンニングの場合と同様な形にしてバーを引きおろすとよい。
しかし、広背筋の作用の性格から考えると、真上から引きおろすよりも斜の上方から引くほうがよいようである。
 
 では次に、広背に対する基礎種目、準基礎種目、補強種目を列挙してみよう。
◎基礎種目
①ベント・オーバー・ローイング
②ベント・オーバー・ダンベル・ローイング
③ツー・ハンディッド・ダンベル・ローイング
④チンニング
⑤ラット・マシーン・プルダウン

◎準基礎種目
①バー・ローイング
②ストラッドル・バーベル・ローイング
③チンニング・ビハインド・ネック
④ラットマシーン・プルダウン・ビハインド・ネック
⑤フロアー・プーリー(ホリゾンタル・プル)

◎補強種目
①ワン・ハンド・ベント・オーバー・ローイング(ワン・アーム・ローイング)
②ワイド・グリップ・チンニング
③ベント・バック・チンニング
④クロス・グリップ・チンニング
⑤ワイド・グリップ・ラット・マシーン・プルダウン
⑥ラット・セレイト・ストレッチング

上背の運動における要点

 上背部の諸筋の発達は、僧帽筋、三角筋、広背筋等の運動によって可能である。
 運動種目の面から考察すれば、ハイ・クリーンとクリーン・アンド・プレスは上背部のバルクを増すのに有効であり、ラウンド・バックによる各種のデッド・リフトは上背部中央(主として仙棘筋上部および菱形筋)の発達に効果的であるといえる。
また、ベント・オーバーの体勢で行うダンベルによる各種のエクササイズは、上背部における1つ1つの筋の隆起を高め、デフィニションをよくするのにも効力がある。
 なお、上背部の発達には、エキスパンダーによる運動も非常に有効なので、この種の運動をトレーニング・コースに採用するのもよいと思う。
とくに、腕を伸ばしたままの状態で、胸の前で拡げる運動が有効のようである。

◎ベント・オーバー・ローイング
 広背筋のための最も基礎的な種目で、広背筋全体に効く。
く運動法>上体を床面と平行になるぐらいに前倒し、その体勢で、下にぶらさげたバーベルを腹部のあたりへ引きあげる。
左右のグリップの間隔は肩幅よりも1~2こぶしくらい広くするほうがよいようである。
<呼吸>バーベルを引きあげながら息を吸う。
ベント・オーバー・ローイング

ベント・オーバー・ローイング

◎チンニング
 広背筋の基礎的種目の1つで、とくに上部の広がりを増すのに効果がある。
く運動法>手のひらを前方へ向けた握り方(オーバー・グリップ)でチンニング・バーにぶらさがり、腕を屈してからだを上方へ引きあげる。このとき、脚と腰の反動を使わないように注意し、下半身の力を抜いて行うことが肝要である。
バーを握るグリップの幅は、肩幅よりも2~3こぶしくらい広くして行うのがよい。
 なお、筋力が弱いために十分な懸垂運動ができない場合は、箱などに乗って、体重を多少支えた状態で運動を行うようにするとよい。
<呼吸>上体を引きあげながら息を吸う。
チンニング

チンニング

◎ラット・マシーン・プルダウン・ビハインド・ネック
 この運動はチンニング・ビハインド・ネックと同様に、広背筋の上部と大円筋に有効である。
く運動法>できるだけラット・マシーンの真下に座し、バーを上から垂直に引きおろすようにする。
グリップの間隔は、肩幅の倍くらいか、それよりも広くする方が大円筋に対して有効のようである。
ラット・マシーン・プルダウン・ビハインド・ネック

ラット・マシーン・プルダウン・ビハインド・ネック

◎ワン・ハンド・ベント・オーバー・ローイング(ワン・アーム・ローイング)
 広背筋の補強種目として非常に大切な種目である。慎重な動作で行うことによって、広背筋の完成度を高め、運動の仕方によって、好みの部分を鍛えることができる。
<運動法>片手にダンベルを持ち、上体を床面と平行になるぐらいに前倒し、その体勢でダンベルを脇腹のあたりへ引きあげる。
他方の手はベンチなどにつき、体重を支えるようにして運動を行うとよい。
ワン・ハンド・ベント・オーバー・ローイング(ワン・アーム・ローイング)

ワン・ハンド・ベント・オーバー・ローイング(ワン・アーム・ローイング)

◎ラット・セレイト・ストレッチング
 この運動は広背筋の発達に効果があるばかりでなく、広背筋の緊張を意識するための訓練として有効である。
筋の意識度を高めることは、広背筋のための他の運動を行う際にプラスになる。
く運動法>柱(または窓枠など)に両手(または片手)をかけ、両足でふんばるようにして広背筋に負荷を与え、意識を広背筋の伸縮に集中させながら腕の屈伸を行う。
できるだけ腕に力を入れないようにして、肘でからだを引き寄せる感じて動作を行うようにする。
 片手で行う場合は、足の位置を、使用する手と反対側へ少しずらして行うとよい。
ラット・セレイト・ストレッチング

ラット・セレイト・ストレッチング

◎ハイ・プルアップ
 上背部の運動で、とくに僧帽筋と菱形筋に有効である。
く運動法>バーベルをオーバー・グリップで持ち、大腿部のあたりから頭上へ引きあげる。
このとき、手首をかえさないようにする。左右のグリップの広狭によって、上背部に与える効果が多少変化する。
狭い間隔では、どちらかといえば中央の部分に、広い間隔では比較的、棘下筋、小円筋など、肩のつけ根によった部分に効果がある。
ハイ・プルアップ

ハイ・プルアップ

月刊ボディビルディング1979年5月号

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